三富今昔村とは?里山環境教育フィールドを体験!

三富今昔村とは?里山環境教育フィールドを体験!
三富今昔村のくぬぎの森交流プラザ
写真提供:三富今昔村

子どもに環境問題について知ってほしいと思っていても、なかなか親から伝えるのは難しいものですよね。もしも机に向かって学習するのではなく、遊びながら学べる場所があったとしたら…。子どもでも楽しみながら、環境問題について学べると思いませんか?

そこで今回は、子どもも大人も楽しめる里山環境教育フィールド「三富今昔村」へ、わたくし「ゆみくろ」が家族で体験してきました!わたしが感じた「三富今昔村の魅力」や、「楽しみ方」についてご紹介していきます。

三富今昔村とは?産業廃棄物処理業者による里山環境教育フィールド

三富今昔村(さんとめこんじゃくむら)は、埼玉県入間郡三芳町の「三富」と呼ばれる里山に開かれた「環境教育フィールド」です。東京ドーム4つ分の広大な里山の中には、リサイクルについて楽しみながら学べる工夫がたくさんつまっています。

この施設を運営しているのは、石坂産業株式会社という産業廃棄物処理業とリサイクル事業を行う会社。 自社で生産したリサイクル製品を三富今昔村に利用したり、リサイクル工場の見学を実施したりと、自社の事業のノウハウを存分に生かした運営をしています。

そのリサイクルへの取組みは、テレビ東京の番組「カンブリア宮殿」でも紹介されたことも(2016年7月28日放送)。そんな企業が運営する三富今昔村は、都心から1時間で行ける、ちょっと珍しいリサイクル学習スポットです。

参考:カンブリア宮殿/テレビ東京 石坂産業 社長 石坂 典子(いしざか のりこ)氏

三富今昔村の歴史!里山環境教育フィールドが誕生した経緯

三富今昔村のある現在の里山は、美しい森となっています。しかし以前の里山は、不法投棄が繰り返されるゴミだらけの場所でした。ここでは、ゴミだらけの里山が、美しい森へと再生するまでの歴史について、簡単に解説していきます。

三富今昔村は自然豊かな里山だった

江戸時代、三富今昔村がある里山は、自然豊かな雑木林でした。「三富(さんとめ)」とよばれたこの里山は、木を燃料にしたり、落ち葉を堆肥に利用したりと、人の手によって管理されていたのです。人が管理することで里山の環境はきれいに保たれ、多様な生物を育んでいました。

三富今昔村が里山から不法投棄場所に

時が経つにつれて、人々の暮らしは便利なものへと変化していきました。燃料には石油を使うようになり、畑では便利な化学肥料が使われるように…。すると、すっかり里山は人に管理されなくなり、荒れ果てた姿になってしまったのです。

いつしか荒れ果てた里山にはゴミが捨てられるようになり、里山は不法投棄が繰り返される場所になってしまったのです。

不法投棄場所から里山環境教育フィールドになった理由

石坂産業は産業廃棄物処理業者として、工場周辺のゴミをなくしたいと思っていました。従業員で工場周辺のゴミ拾いを始め、工場の周辺に広がる「三富」地域でも不法投棄をなくす活動が始まったのです。里山に再び不法投棄が行われないよう、少しずつ森の整備もしていきました。

その努力が実を結び、2012年には企業の生物多様性への取り組みを評価する「JHEP認証」で国内最高ランクの「AAA(トリプルA)」の認定を受けます。

しかし、「ただ森を管理するだけではもったいない」と考え、生物多様性を維持しながら人も集まる森に育てることを目的に「三富今昔村」をオープンさせたのです。

こうして三富は、「人と自然と技術の共生」をテーマとし、自然とふれあうことを通じて環境やリサイクルについて学んだり、考えたりする場所に生まれ変わりました。

参考:日本の人事部 石坂典子代表取締役に聞く 石坂産業を地域で愛される会社にした“考える”マネジメントとは

三富今昔村に行ってみた!見どころや楽しみ方

ここからは、わたしが実際にスタッフの方々へお聞きした内容や、体験したことをご紹介していきます。今回わたしは、主人と、子ども(6歳の女の子と4歳の男の子)と一緒に行きました。お伝えしたい魅力はたくさんありますが、その中から4つの見どころを独自にピックアップします!

1. 森の至る所にあるリサイクルスポット

里山の森のなかには、リサイクル製品を利用しているスポットが、至る所に存在します。しかもその一つ一つが、三富今昔村のスタッフの方々が作成したものなのだそうです。

そのためか、通りがかったスタッフの方に「リサイクルしたものを使っている場所を教えてください!」と聞くと、どの方も嬉しそうに答えてくださいました。

「くぬぎの森」の道にはリサイクルがいっぱい

「くぬぎの森」は三富の里山の名称です。森の道には、赤砂利、木のチップ、木の板、藁が敷かれた場所があります。実はこれらすべてが、元は産業廃棄物だったというのが驚きです。

「赤砂利」や「木のチップ」は、取り壊した家屋の屋根瓦と柱が原料。赤砂利は、古い家屋の屋根瓦の表面に塗られた青い塗料を落とし、赤土色の瓦にして破砕したもの。木のチップは家の柱を破砕したものです。

赤砂利(左)と木のチップ(右)

「木の板」はなんと、電車の線路の枕木に使われていたもの。言われてみれば、確かにその面影がありました。「藁」は、木を害虫や寒さから守るために木の幹に巻き付ける「菰(こも)」として使われていたもの。雨が降ったあとに土の道がぬかるむことを防ぐために、敷いているそうです。

線路の枕木(左)と菰(右)

森を歩いていると、道の端に落ち葉の山をいくつも発見できます。落ち葉は堆肥として、施設内の農園「石坂ファーム」の土づくりに使用しているのだそう。

江戸時代から三富地域では、落ち葉堆肥を使った「循環農法」をしています。昔からの農法を石坂ファームでもおこなうことで、里山の資源を無駄にせずに使用し、化学肥料と農薬を一切使わない有機栽培を行っているそうです。

落ち葉の山は堆肥になる

森では、ユニークなアート作品も見られます。廃材を利用した、3つのアート作品を展示。一度使えなくなったものが蘇り、永遠に生き続けるという意味から「火の鳥」と名付けられています。

産業廃棄物を利用したジャンクアート

トイレの手拭き紙もリサイクル

トイレの中にもリサイクルを発見!トイレの手拭き紙は、使用された後、石坂産業のプラントで可燃物として加工処理され、固形燃料へと生まれ変わるそうです。固形燃料は、発電や乾溜ガス化燃焼、ボイラーなどの燃料として商品となり、販売されています。

トイレの手拭き紙もリサイクル

「くぬぎの森交流プラザ」の空調は地中の熱を利用している

三富今昔村の玄関口「くぬぎの森交流プラザ」の空調換気システムにも、驚きの技術が隠されています。取り込んだ外気を冷やしたり、温めたりしているのは、なんと地中の熱。

一年中、15度という安定した温度を保っている地中の熱により、夏の暑い外気を冷やし、冬の冷たい外気を温めて、室内に送るというシステムを利用しています。さらに冬は外気を温めて室内で利用したのち、再度地中に送って温め直して利用することで省エネ効果を出しているそうです。

わたしが体験に行ったのは夏でしたが、施設内はとても涼しく、快適な温度に保たれていました。この空調換気システムは、「消費電力」と「二酸化炭素の排出」の削減効果があるため、地球温暖化問題も解決できるかもしれない、究極のエコシステムなのです。

参考:石坂産業株式会社 地中熱利用システムが雑誌『地球温暖化』に掲載されました。

「語りべ館」の展示品のほとんどはリサイクル品

そのほかに、スタッフの方が教えてくださったリサイクルスポットは、「語りべ館」という施設。今回は残念ながら行くことができなかったのですが、昭和の時代に使われていたものが展示されているそうです。

なかには、近所の農家の方が持ってこられた農機具も展示しているのだとか。

2. 子どもも大人も楽しめるリサイクル学習体験

子どもだけでなく、大人も楽しめる体験も豊富。事前申込みが必要なものと、当日でも参加できるものもあります。

ベジタブルスクール

野菜ソムリエや野菜のプロが、旬の地元野菜をおいしく味わう方法を教えてくれる料理教室。季節に関係なく様々な野菜が簡単に手に入る時代だからこそ、地元の旬の野菜を味わうことの大切さがわかる教室です。畑から食までのストーリーを学ぶことで、食から環境を学ぶきっかけに。野菜を自ら収穫し、洗って、切って、グリルしていただきます。

ベジタブルスクール。
写真提供:三富今昔村

アウトドアワークショップ(※開催日限定)

お子さんの体験には、里山の自然を材料とした工作はいかがでしょうか。自然の素材からどんなものが作れるのか、リサイクルの方法と作る喜びを体験できるプログラムです。開催日は限定されているため、参加をご希望の場合は事前にお問い合わせするといいでしょう。

昆虫や生き物の見学ツアー

生き物が好きなお子さんには、専門ガイドと一緒に里山の昆虫などの生き物を探すツアーがおすすめです。明るい場所や暗い場所で捕れる虫の違いや、触ってみた感触など、自然を肌で感じられるプログラムです。

リサイクル工場の見学

解体後の家屋や建物から出た廃棄物を、リサイクルしている現場を見学できます。大きなショベルカーなどの重機を見学できたり、廃棄物の選別体験、石坂産業のリサイクル技術について学ぶことができます。昼食付のプランもあるので、リサイクルについて一日中学ぶことができる、人気の体験です。

3. アスレチックやSLなどの遊び場もある

リサイクルの学習だけでなく、子どもが楽しめるコーナーがあることも魅力の一つ。ターザンロープや、ツリーハウス、うんてい、ぐらぐら揺れる橋、水遊び場など、里山の遊びを存分に楽しめる工夫があります。

様々なアスレチックや水遊び場

「やまゆり鉄道」は、大人も子どもも乗車できるミニSLとミニ新幹線です。どちらも ソーラーパワーで走っているという、三富今昔村ならではのエコなアトラクション。受付で森の保全費として入村料を支払うと、一回分の乗車券を受け取れます。

なんと線路の設置は、スタッフの方々がされたのだとか。走った時の音にまで、こだわりをもって設置されたそうです。わたしも乗車してみましたが、小さな鉄橋やトンネルをくぐったり、自然の中を駆け抜けていったりと、とても爽快な気分を味わえました。

4. 交流プラザやカフェは施設内の農場で栽培されたものや自家製のものを提供

たくさん遊んだあとは、埼玉県産の食材や、施設内の「石坂ファーム」でとれた新鮮な旬の野菜を味わうのがおすすめです。

カフェでは、フェアトレードの砂糖や埼玉県産の牛乳を使用したアイスクリーム、生姜や複数のスパイスをきかせた自家製ジンジャエールなど、三富今昔村ならではのメニューを楽しめます。

「くぬぎの森交流プラザ」では、彩り豊かな野菜をたくさん食べられる「おいしい体験」のメニューが豊富。わたしも実際にいただいてみましたが、里山の落ち葉堆肥で育てられた、化学肥料・農薬不使用のオーガニック野菜は、味が濃く、香りが豊かでした。

「くぬぎの森交流プラザ」のランチ

お子さまメニューもあるので、小さなお子さんも一緒に楽しめます。料理が運ばれてくるまでは、「くぬぎの森交流プラザ」のBook Cafeにある本を読みながら待つことも可能です。料理を待つ間も、飽きない工夫が素敵な場所です。

切り株のお皿にのったお子様ランチ

三富今昔村へのアクセスとルール

最後に、そんな魅力的な三富今昔村への行き方や、利用のルールについて紹介します。

アクセス

まずは三富今昔村への行き方をご紹介します。

車の場合

関越自動車道「所沢IC」より、国道463号線浦和所沢バイパス、県道所沢堀兼狭山線を経由して約20分程度となります。(カーナビには「三芳町上富1589-2」と入力) ※専用の駐車場や駐輪場の利用が可能です。

電車の場合

東武東上線「ふじみ野駅」の西口、西武線「所沢駅」のバスロータリーを抜けた付近から発着している、無料送迎バスに乗車して30分の距離です。

今回わたしは、所沢駅から出ている無料送迎バスを利用しました。所沢駅から出発する無料送迎バスは、10時30分の一本のみ(2019年8月現在)なので、ご注意ください。

無料送迎バスは、20人ほどが乗れる小さなバス。わたしが行ったのはお盆休みだったせいか、乗車人数は少な目でした。バスに乗っていると、所沢駅前の賑やかな街並みから、次第に畑が多くなっていき、自然豊かな木々に囲まれた「三富今昔村」が現れます。

料金

里山の保全活動費として、入村料500円(税込)を支払います(2019年8月現在)。学生、未成年、障害者手帳をお持ちの方は、入村料が免除(無料)です。

2019年10月から、土日・祝日・特定日の開園日には入村料は大人一人800円(税込)に変更になりますのでご注意ください。平日の開園日の入村料は、これまで通り500円(税込)となります。

入村料を支払うと、大人は緑色、子どもは赤色、体験プログラム参加者は青色の「専用パス」が配布されます。服やバッグなど、見えるところに貼り付けてから入村します。

「専用パス」を貼り付けてから入村する

利用するための独特のルール

三富今昔村に入村するためには、里山の自然を守るための独自のルールを守る必要があります。以下に、行く前に知っておいた方がよいルールを5つピックアップしましたので、事前にチェックしておきましょう!

  1. ペットは「くぬぎの森交流プラザ」の駐車場とテラス席まで
  2. 里山の中の植物や虫を採らない
  3. 出したゴミは持ち帰る(おむつや生理用品も)
  4. 手作りのお弁当や水筒以外の飲食は持ち込めない
  5. フリスビーやバドミントンなどの遊具の持ち込みはNG

バスの時刻表や、料金、ルールは変更になることもありますので、公式ホームページでのご確認をおすすめいたします。

参考:三富今昔村公式サイト アクセス

三富今昔村で自然やリサイクルを学ぼう!

家庭で出たゴミを資源ゴミに出す機会はあっても、なかなかリサイクルの工程やどんな製品に生まれ変わるのかまでを学習する機会は少ないもの。三富今昔村は、それを体験できる珍しい施設でした。最新のリサイクル技術から、普段捨てているゴミの行方を考えてみませんか。

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