ノートルダム大聖堂で鉛汚染が?原因や修復問題など火災が残した傷跡
今年2019年の4月、パリの世界遺産、ノートルダム大聖堂で起こった火事は、多くの人に衝撃を与えました。 しかし、この火事による一件は、まだ終わったわけではありませんでした。
8月に入り、ノートルダム大聖堂の周辺地域で、高濃度の鉛汚染が発見されてしまったのです。 ノートルダム大聖堂で何が起こったのでしょうか。また、鉛汚染によって、どのような事態が予測されるのでしょうか。
ノートルダム大聖堂の周辺が鉛汚染?
8月6日、高濃度の鉛汚染が、ノートルダム大聖堂の周辺で発見されました。 実は、火災が起こった直後から、フランスの環境保護団体「ロバンデボワ(Robin des bois)」は鉛汚染の恐れを主張していました。 ノートルダム大聖堂の屋根や尖塔では、少なくとも300トンの鉛が使われていたため、火事によりそれが溶けて飛散した、と考えていたのです。
大聖堂は「有毒廃棄物」のような状態である、と保護団体は指摘しましたが、政府は十分な措置を講じませんでした。 後に政府は汚染防止対策が不十分だったと認め、復興作業は中止、周辺の学校も夏休み中に徹底清掃が実施されることに。
ノートルダム大聖堂の周辺の空気や地面はもちろん、すぐ脇にはセーヌ川も流れていることから、汚染の広がりは懸念されていましたが、7月の時点でパリ市当局は、鉛汚染が市民に危険を及ぼすことはないと発表しています。 そのため、8月に発見された、ノートルダム大聖堂周辺の高濃度の鉛汚染に対し、政府がどのような対策を取るのか、注目が集まっています。
鉛汚染はどんな恐ろしさが?
それでは、鉛汚染が広がってしまった場合、どのような事態が予測されるのでしょうか。 鉛は体内に蓄積されることが、大変恐ろしいと言われています。
体内に吸収された鉛は、体内に蓄積され排泄が追い付かず、その毒性によって様々な症状で健康に悪影響を及ぼします。 急性中毒であれば腹痛や嘔吐の症状、慢性中毒であれば、消化器症状や神経症状が認められます。
鉛の毒性は古くから知られています。 古代ローマでは水道管やワイン保存に鉛を利用していたことから、深刻な鉛中毒が起こってしまい、それがローマ帝国衰退の一因になったと言われるほど、大きな被害があったようです。
このように恐ろしい中毒性を持つ、鉛による汚染が身近で広がってしまったら、とても生活が不安になることは間違いないと言えるでしょう。
ノートルダム大聖堂の再建は?
以前、ノートルダム大聖堂の再建のため、国際建築コンペティションが開かれると発表がありました。 中にはエコ大聖堂や、光で棟を演出する、という案も。 様々な新しいデザインが提案される中、火事の前の姿を忠実に戻してほしい、という意見はかなり強く論争になっているようです。
しかし、ノートルダム大聖堂を忠実に再現する場合は、鉛の仕様も必要となり、現代の軽い金属に替えるべき、という意見もあるのです。 また、歴史的な建造物に対する国内法も様々あり、ベネチア憲章と言われる国際的なルールもあることから、簡単には例外的な法案も作ることはできないようです。
もし、火事前の姿を忠実に再現するのであれば、政府が発表した「5年後にノートルダム大聖堂を再建」はかなり難しいものだと考えられています。 このような状況もあり、ノートルダム大聖堂の再建がどうなってしまうのか、世界が注目しています。
環境調査は非常に重要
ノートルダム大聖堂がそうであったように、人間が作り出したものの中には、環境に大きな影響を与えてしまうものがあります。 そのため、自然の上に何かを作り出すときは、しっかりとした環境調査が必要となるでしょう。
建築物や道路、橋など建築の前の環境アセスメントが重要です。 また、ノートルダム大聖堂の火事のように、事後の環境調査も重要です。 調査を行うことで、環境汚染を最小に食い止めることができるかもしれないのです。 自然に干渉する際は、ぜひこのことを意識してみてください。