紙おむつをリサイクル?ユニ・チャームの取り組みを紹介

紙おむつをリサイクル?ユニ・チャームの取り組みを紹介

紙おむつの生産・販売を行うユニ・チャームは、廃棄することが多い使用済み紙おむつのリサイクル技術を確立し、事業化へ向けて研究・開発を行っている。すでに2016年から2019年まで、鹿児島県志布志市と共同で「使用済み紙おむつリサイクル再資源化技術」の実証試験を行っており、同市の使用済み紙おむつの廃棄量を低減することに貢献した。2020年には、東京都で使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた収集・運搬手法の実証事業のモデル事業者にも採択されている。

同社が研究している使用済み紙おむつのリサイクル技術と志布志市との実証試験内容、今後の計画まで紹介する。

紙おむつの廃棄量が増加!新たなリサイクル技術誕生か

環境省「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドラインについて」より抜粋。

使用済み紙おむつは、現状、主に焼却処理されており、環境省の調べによると2015年度の廃棄量は約191~210万トンで一般廃棄物全体に占める割合は4.3%~4.8%だった。これだけでもかなりの数量だが、今後日本のさらなる高齢社会を迎えるにあたり、さらに増える可能性がある。

参考:環境省 使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドラインについて

生産量にそのヒントがある。(一社)日本衛生材料工業連合会の統計調査によると乳幼児用の紙おむつの生産量は2017年の159億6,300万枚をピークに少子化を背景とした減少傾向にあるとはいえ、2019年は142億5,400万枚と依然高い水準となっている。

参考:一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 乳幼児用紙おむつの生産数量 推移

一番の問題は、大人用紙おむつだ。高齢者の増加を背景に2011年の58億1100万枚から8年連続で増え、2019年の86億5500万枚まで増加した。

参考:一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 大人用紙おむつのタイプ別生産数量 推移

今後日本では、ますます高齢者は増えていくと考えられ、環境省によると、2030年度の一般廃棄物に占める紙おむつの割合は6.6~7.1%で245~261万トンまで増えると予測している。

使用済み紙おむつの廃棄量が増えることで、焼却した際に発生するCO2の増加や、炉の温度を高めることで生じる焼却炉の損傷、廃棄物処理費用の負担増加などの問題が生じる可能性があり、国内ではその対応策を迫られている段階となっている。

そんななか、紙おむつの大手メーカーであるユニ・チャームは自社独自の紙おむつリサイクル技術を確立した。

紙おむつをリサイクル可能にした独自のオゾン処理技術

使用済み紙おむつリサイクルの流れ。

同社が確立したリサイクル技術は、まず分別回収してきた使用済み紙おむつを投入機に送り、破砕する。破砕したものは水洗浄を行い、その後ふるいにかけ、大まかに「パルプ繊維」「高分子ポリマー」「排泄物やプラスチックなどの異物」の3つに選別する。

こうして選別した「パルプ樹脂」には分離しきれない細かな高分子ポリマーが付着しており、これが今までリサイクルを難しくしていた1つの原因となっていた。

しかし、同社は長年リサイクル技術の研究・開発を行ってきた結果、独自のオゾン処理技術を確立。ふるいにかけた後の少量付着している「パルプ樹脂」にオゾン処理することで、完全に高分子ポリマーの除去と同時に殺菌・消毒することに成功した。その後、脱水処理されたパルプ樹脂を再利用するというリサイクルスキームになっている。

実際に、使用済み紙おむつから取り出したパルプ樹脂や高分子ポリマーを使用した“再生”紙おむつの試作品の生産にも成功。紙おむつ以外にも、再生パルプ樹脂を使用したトイレットペーパー、メモ用紙、紙ファイルなどの試作品の生産にも成功したという。

【使用済み紙おむつのオゾン処理前と後のパルプ比較】

今後は、使用済み紙おむつから取り出したパルプ繊維を科学合成して「レーヨン」繊維にし、洋服やポロシャツなどを作り出す、いわゆる“アップサイクル”※のようなものも研究開発中だ。

※アップサイクル:従来から行なわれてきたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化、その再利用にとどまらず、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すこと。

また、こうしたリサイクル技術を用いて、鹿児島県志布志市と共同で2016年から2019年まで「使用済み紙おむつ再資源化技術」の実証実験を行った。

紙おむつのリサイクル、実証実験で確かな手ごたえ

鹿児島県志布志市との実証試験 イメージ。

実証実験を共同で行った志布志市は、推定人口が約3万人。一般廃棄物を27種類の品目別に分けて収集し、再資源化するノウハウを有しており、一般廃棄物のリサイクル率が市単位では全国1位のリサイクル先進都市でもある。

今回の実証試験の肝である分別回収に関しては、27品目に加え使用済み紙おむつの分別も市民に協力してもらい行った。分別回収した使用済み紙おむつは、同県の曽於郡大崎町にある「そおリサイクルセンター」で年間500トンほど再資源化した。

また、製品化した“再生”紙おむつは、実際に同市の介護施設で使用され「問題なく使用してもらえた。使い心地も、これまでの市販品と遜色ないという感想をもらえた」(企画本部広報室 渡邊仁志氏)という。

使用済み紙おむつのリサイクルを全国に広めたい

東京都の「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」における「効率的な収集・運搬手法」のモデル事業者に採択され、現在東京都で2020年10月から実証事業を開始している。

東京都との実証事業イメージ。

この実証事業では、志布志市で培った使用済み紙おむつの分別回収ノウハウを用い、東京都などの都市部でも有効かどうかを検証し、都内にある高齢者施設や保育園などからの効率的な分別回収スキームの構築を目指している。なお、回収したものはリサイクル施設に運ばれ、サーマルリサイクルされている。

一方、実証試験が終了した志布志市では、具体的な事業化に向けて計画を進めており、2022年から本格的な事業運用を開始する予定だ。

その後も、全国で使用済み紙おむつのリサイクルを普及させるべく同社は「2030年には全国で10カ所以上で使用済み紙おむつのリサイクルを行いたい」(渡邊仁志氏)と目標を掲げている。

※写真は全て「ユニ・チャーム」ニュースリリースより

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