環境アセスメント
環境アセスメントとは、環境影響評価のことで、道路やダム建設のような地域開発や公共事業など、環境に大きな影響を及ぼすと考えられる計画は、事前に環境への影響度の調査や予測、評価を行うことで、自然破壊を未然に防ぐものです。
科学的な調査はもちろん、地域住民の意見も反映させる特徴があります。
環境アセスメントの概要
環境アセスメントは、1997年に制定された、環境影響評価法(通称:環境アセスメント法)によって、法制化されました。
環境アセスメントの対象となるのは、以下の13の事業です。
1.道路 | 高速自動車国道 | 首都高速道路など | 一般国道 | 林道 |
2.河川 | ダム、堰 | 放水路、湖沼開発 |
3.鉄道 | 新幹線鉄道 | 鉄道、軌道 |
4.飛行場 | – |
5.発電所 | 水力発電所 | 火力発電所 | 地熱発電所 | 原子力発電所 | 風力発電所 |
6.廃棄物最終処分場 | – |
7.埋立て、干拓 | – |
8.土地区画整理事業 | – |
9.新住宅市街地開発事業 | – |
10.工業団地造成事業 | – |
11.新都市基盤整備事業 | – |
12.流通業務団地造成事業 | – |
13.宅地の造成の事業 | 住宅・都市基盤整備機構 | 地域振興整備公団 |
出典元:環境省 環境アセスメントの対象となる事業
このうち、規模が大きいと判断される事業を「第一種事業」とし、環境アセスメントを必ず行う必要があります。
第一種事業に準ずる規模の事業「第二種事業」については、手続きを行うかどうかは、個別に判断されます。
環境アセスメントの経緯
環境アセスメントが、環境影響評価法によって義務付けられるまでには、様々な経緯がありました。
まず、環境アセスメントの始まりは、1969年にアメリカで法制化されたNEPA(国家環境政策法)でした。
これは環境配慮のために民主的な意識や科学的判断形成の方法として考案されたもので、その後世界各国で制度化が進みます。
日本でも、当時の環境庁が自然破壊防止のため、これを取り入れ、1972年に行政機関が管轄する公共事業を対象に、環境アセスメントを実施することを提案し、閣議了解を得ました。
1976年、環境影響評価法案を国会に提出を目指しましたが、当時の通産省、電気事業連合や経済団体連合会などの反対があります。
その後も、環境影響評価法案の調整は難航し、1981年に法案を国会に提出しますが、廃案となります。
しかし、1984年になって、大規模な事業を対象とする環境アセスメントの実施が閣議決定(閣議アセス)。
1997年、ついに環境影響評価法が定められます。
日本の環境影響評価法は、OECD加盟国の中で最も法令化が遅かったと言われています。
環境アセスメントの問題点
環境アセスメントについては、いくつかの問題点があることが指摘されていました。
例えば、事業者がアセスメントを行うことから、結論が「影響は少ない」となってしまうこと。
また、アセスメントを行う時期が、代替案を採用するには遅すぎることも問題となっていました。
他にも、環境アセスメントは地域住民の意見も参考にされるため、住民や専門家などの意見を広く聴く機会は用意されるものの、実際に住民の意見が反映されるには、機会が足りないとも言われ、多くの問題点が指摘されていたのです。
2011年、法改正によって事業実施前の計画段階で、環境評価や代替案を検討する戦略的アセスメント(SEA)が導入されました。
事業者に説明会の開催や関係書類をインターネットで公開することも義務付けるなど、環境アセスメントの問題点が一部改善されたと言えます。