牛のげっぷが温暖化を促進?農業がメタン発生の原因に
環境問題の中でも、世界的に恐れられているものは、地球温暖化です。 温暖化に温室効果ガスが関わっていることは、昔から言われ続けています。
工場や自動車の排気ガスなど、人間の生活によって増えるイメージがある温室効果ガスですが、意外なところから排出されている温室効果ガスが、温暖化を促進していると言われています。
それは、牛や羊のおならやげっぷ、です。 環境問題とは無縁に思える動物が、なぜ温室効果ガスを排出しているのでしょうか。
牛のげっぷからメタンが?温暖化促進の原因か
世界中には、数多くの牛や羊が繁殖し、飼育されています。 しかし、実はこの牛や羊のおならやげっぷには、温室効果として脅威があるメタンが含まれているのです。
4つの胃を持つことで有名な牛ですが、その第一の胃には、膨大な微生物が存在しています。 牛が食した植物は、胃の中で発酵分解されますが、その際に水素が副産物として発生します。 その水素を一部の微生物がメタンへと変換してしまうのです。
メタンの温室効果は二酸化炭素の28倍と言われる、恐ろしい気体です。 牛や羊たちがげっぷやおならをする度に、そんなものが排出されていると思うと、なかなか恐ろしいことではないでしょうか。
牛のげっぷに含まれるメタンを減らすには
牛や羊は人間の生活にとって重要な存在であり、もちろん駆除してしまうわけにはいきません。 だとしたら、おならやげっぷを抑える方法が必要です。 そのために重要なことは、牛や羊の食事を改善することだと考えられています。
こうして、現在は多くの研究者や企業が牛や羊の餌を研究しています。 そんな中で、餌にカギケノリと言われる海藻を加えることで、メタンを抑える効果があると発見されました。 この研究によると、牛に与える餌に1%のカギケノリを混ぜることで、メタン排出を50%抑えることが判明し、牛乳の味に影響がありませんでした。
しかし、農業によるメタンの発生は、カギケノリを与えることで解決したわけではありません。 実権が行われてアメリカのカリフォルニア州では、2030年までにメタンの排出量を40%削減するよう農場経営者に義務付ける法案が決まっていますが、今のままではカリフォルニア州中の牛たちに与えるカギケノリを確保することは難しいと考えられています。
牛のげっぷが原因?農業メタンは課題が山積み
カリフォルニア州以外でも、農業によるメタン発生の研究を進めています。 ニュージーランドでは牛や羊のげっぷを減らす研究をし、外見からは分からないものの、メタンの排出量が少ない羊と多い羊がいると判明しました。 なぜ排出量に違いがあるのかはわかりませんが、メタンを作り出す微生物の動きを理解することで、自然な制御方法を見出せるかもしれないと期待されています。
他にも、スイスの企業が牛から排出されるメタンガスを削減できるだろう製品を開発したと発表しました。 それは、ニンニクと柑橘類由来のもので、メタンの排出量を30%以下に減らすことができると言われています。
別の企業は、クローブとコリアンダーの実から作った飼料用添加物によって、メタンガスの排出を抑えられると発表しています。 しかし、スイス連邦経済省農業研究センターの研究員は、これらの手段が有効とは言えないと考えているようです。 長い時間をかけて進化した動物の過程を変えてしまうことは、望んでもいない副作用を生む恐れもあると言い、メタンガスの排出を抑えるためには、人間が動物由来の食品を減らすべきだ、とも主張しました。 確かに、牛や羊が排出するメタンを削減したことで、また別の問題が発生してしまうことも考えられるかもしれません。
牛のげっぷ問題はどうなる?
牛や羊からメタンが発生する問題の解決は、非常に難しいようです。 人間にとって理想の状態に、環境や動物を制御する方法もありますが、その反動で不都合が起こることも考えられます。
私たち人間は、環境や動物の行動を歪めてしまわないよう、正しい付き合い方を模索しなければなりません。 難しいことではありますが、これらを意識しながら、多くの環境問題と向き合ってみましょう。