現代にノアの方舟が存在?地球滅亡に備えて種を保存する施設
生物多様性の減少。悪化が進む環境問題。世界各地で行われる戦争。 これらの話題を目にするたびに、地球が滅亡する日がやってくるかもしれない、という不安を抱いたことがある人は少なくないはずです。
しかし、そんな地球滅亡に備えてさまざまな種子を保存する施設があることをご存じでしょうか。 それはまるで、現代の「ノアの方舟」とも言える種を守るシステムですが、少なからず問題点があります。現代のノアの方舟と言える「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」をご紹介します。
地球滅亡を回避する?現代の「ノアの方舟」
旧約聖書に出てくる「ノアの方舟」というお話をご存じでしょうか。 簡単なあらすじは、以下の通りです。
地上が堕落した人々で溢れていることに気付いた神は激怒して、洪水によって人間を滅ぼしてしまおう、と決意します。 しかし、正しい道を歩んでいたノアとその家族に関しては、方舟を作ることを条件に命を助けると約束。 ノアは方舟を完成させると、自分の家族、そして地球上にいたすべての動物のつがいを乗せ、神が起こした洪水から逃れましたが、水が引くまで長い時間、待たなければなりませんでした。
ノアの方舟のイメージ再び地上に戻ったノアは神から祝福を受け、もう二度と洪水は起こさないと約束してもらいます。 その証として神は空に虹をかけるのでした。
ノアの方舟に乗り込んで地球滅亡を回避する…というお話のようですが、これだけスケールの大きい話だとイメージが難しいかもしれません。 しかし、この現代の地球でノアの方舟によく似た取り組みが行われています。 それが「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」という施設です。
現代の方舟!スヴァールバル世界種子貯蔵庫
現代のノアの方舟、スヴァールバル世界種子貯蔵庫は、ノルウェー領スヴァールバル諸島最大の島であるスピッツベルゲン島にあります。 正式名称は「あらゆる危機に耐えうるように設計された終末の日に備える北極種子貯蔵庫」です。 ここでは、100万種を超える植物の種子が世界中から集められ、冷凍保存されています。
スピッツベルゲン島にあるスヴァールバル世界種子貯蔵庫その目的は、今後起こるだろう大規模で深刻な気候変動や自然災害、植物の病気、核戦争などに備え、農作物種の絶滅を防ぐこと。 さらに、世界各地で地域的な絶滅があったとしても、農業再開の機会を提供することも想定されています。
この計画は、デンマークの科学者であるベント・スコウマンが提唱し、2008年2月にビル・ゲイツの主導のもと操業開始。 外側からでは、その入り口しか見えませんが、広大な地下空間に多くの命の種が保管され、地球滅亡レベルの危機に備えているのです。
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現代の方舟が温暖化の影響で危機に?
地球の危機に備えて種子を保存しているスヴァールバル世界種子貯蔵庫ですが、いくつかの問題を抱えています。
その1つが地球温暖化の影響です。 スヴァールバル世界種子貯蔵庫では、最大300万種の種子の保存を前提として、人工的に温度をマイナス18~20℃に保っています。 もし、冷却装置が故障した場合もマイナス4℃を維持できる環境に設置。 地球温暖化によって海水面の上昇が起こっても影響がないよう、海抜約130メートルの岩盤内部約120メートルの地点にあります。 しかし、地球温暖化の進行が想定外のスピードだったため、脆弱性が判明し、緊急の工事が行われました。
この他にも、スヴァールバル世界種子貯蔵庫の問題点は指摘されています。 種子を冷凍保存したとしても環境が変わってしまったら作物が収穫できるのか不確実であること。 大規模停電に備えた施設の脆弱性評価に不確実性があることなど。
地球滅亡を思わせるような大きな出来事があったとき、スヴァールバル世界種子貯蔵庫は現代のノアの方舟としての機能を発揮するのでしょうか。
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現代の方舟は地球滅亡の対策となり得るのか
実は、現代のノアの方舟と言える計画は、スヴァールバル世界種子貯蔵庫だけではありません。 なんと月面に方舟を作るプロジェクトがあるのです。
アメリカ、アリゾナ大学の研究チームは地球上の生命670万種の種子や胞子、精子、卵子のサンプルを、月面の地下溶岩洞を利用したシェルターに保管する計画を2021年3月に発表。 このプロジェクトを「現代のグローバル保険」と命名しました。 2013年、月で200ほどの地下溶岩洞が見つかりましたが、これを利用すれば太陽放射や地表の気温変動、微小隕石から種子を守る完璧なシェルターになると想定されています。 このような取り組みが地球滅亡の回避するような対策となり得るのか。今後も注目されることは間違いないでしょう。
しかし、現代にノアの方舟を用意する理由は、環境問題や戦争など人が原因となるものばかりだと言えます。 私たちは現代のノアの方舟を利用することがないよう、できる限り環境配慮や争いを避けるよう、心がけなければなりません。 まずはどのような問題があるのか知ることからでも始めてみてください。
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