海洋プラスチック問題を7つの視点から考える②ジャーナリスト 杉本裕明

海洋プラスチック問題を7つの視点から考える②ジャーナリスト 杉本裕明

前回に続き「海洋プラスチック問題を7つの視点から考える」をご紹介します。

③課題山積みの廃プラスチックリサイクル

リサイクルの手法はいろいろある

川崎市の昭和電工では廃プラからアンモニアを製造している
写真は筆者撮影 転載禁止


 こんな状況を解決するには、もちろん、発生抑制、つまり、不必要なプラスチック製品はできるだけ使わないことが求められるが、それとは別に大事なのは、使用済みでごみとなったプラスチックを、適正にリサイクルし、さらに処理・処分することだ。

 その取り組みの優先順位は、循環型社会形成推進基本法などで定められている。

まず、発生抑制、つぎに再使用(リユース)、つぎにリサイクル。そのリサイクルも、素材をそのまま生かして再生品を造る材料リサイクルが優先で、次に製鉄所や化学メーカーなどによる化学リサイクル、固めて燃料にするRPFへと続く。次の処理・処分では、焼却によるエネルギー回収、最後に埋め立て処分となっている。

 これまでの国内の廃プラスチックのリサイクルがどんなふうに行われているかを見たい。廃プラスチックといってもいろんな種類に分かれる。

 一つは、家庭ごみに含まれる容器包装プラスチック(袋、弁当や卵のパックなど、いわゆる容器や袋類)と、ペットボトル。これは、容器包装リサイクル法のもとで、この制度に参加した自治体が収集し、リサイクル業者がリサイクルしてくれる。容器包装は、年間ざっと60万トンが集められ、飲料メーカーなどでつくる日本容器包装リサイクル協会が各市町村の集めた容器包装プラスチックの入札を行い、市町村ごとにリサイクル業者を決めている。このリサイクルにかかる費用は、容器包装をつくるメーカーや、中身をつくるメーカー、さらにそれを販売するスーパー、コンビニなど(これらをまとめて特定事業者という)が負担し、毎年300億円以上かかっている。

 プラスチックのリサイクルは、素材をペレットにして再生品を造る材料リサイクル、コークス炉化学原料化(新日鉄住金)、高炉還元剤に利用(JFEなど)、アンモニア原料化(昭和電工)の化学リサイクル、廃プラスチックと紙ごみを圧縮して造る固形燃料(RPF)化がある。

 一方、廃プラスチックの半分を占める工場、事業所から出た産業廃棄物は、工場の端材を除くと、大半がRPF、セメント工場の原料、焼却・埋め立て処分されている。焼却は、発電設備のある処理施設が増えているが、自治体所有の施設を見るだけでも設備をつけているのは全体の3割にすぎない。発電しても熱回収率は平均で1、2割と低い。地域に蒸気を供給して8~9割の高い熱回収率を誇るドイツなどのEU諸国とは、とても比較にならない。

 材料リサイクルは、1970年頃から工場から出た端材から再生品を造られ始め、現在では家電や車の部品にも使われる高品質の製品もある。しかし、バージン原料による製品が優先され、業界は小さく、国の支援もほとんどない。

 リサイクルの分野に共通しているのは、せっかく再生品や燃料を造っても需要拡大が見込めないことだ。「品質の再生ペレットを造ってもバージンペレットの半分以下」(材料リサイクル業者)、「納入先の製紙工場の需要拡大に期待できず、買い取り価格を下げられる始末」(プラスチックから固形燃料のRPFを製造する業者)では、戦略の実行はおぼつかない。国が、再生材を製品の一部に使う基準を定め、その製品の販売を義務づけるといった施策がないと、なかなか難しい。

 

国内リサイクルに未来はあるか

 「一概に輸出を否定しないが、相手国の事情で突然ストップしては影響が大きすぎる。国内リサイクルをどうしたら増やせるか考えるいい機会と捉えるべきだ」。滋賀県栗東市の近江物産を訪ねると、芝原茂樹会長はこんなことを言った。同社は年間2万トンの高品質のペレットを製造している。車のバッテリーケースなどの自動車部品などに使われているという。

 同社は、工場などで製品にする時の端材や商品として出せなかった不良品を購入し、再生品を造っている。有価で買い取り、ペレットや再生品を売却するので、廃棄物処理業と一線を画す。製造者と呼ぶのがふさわしい。

 栗東市はじめ琵琶湖の周辺には、もともとプラスチック製品をつくる成型加工業者が多かった。石油から造られたバージン原料だけで造っていたが、73年と79年のオイルショックで原油価格が高騰すると、バージン原料もそれを反映して高騰した。成型加工業者から安価な原料を求める声が高まり、安価な再生ペレットの需要が高まった。需要が増えると、参入業者が増えていった。

 77年に設立された近江物産もその波に乗った。調達した原料の成分を調べて、注文してきた企業の求めるペレットを製造する。そのために素材を配合したり、添加剤を入れたりして品質を高めた再生原料を製造している。そのためには、きちんと分別された品質の良い廃プラスチックを調達することが、石油から造ったバージン材料に負けない条件だという。

 時流に乗ったが、2000年ごろから輸出業者が増え始めた。中国で需要が固まり、工場など排出事業者から買い取る価格が上がり始める。中国のバイヤーが高値で買い取るためだ。買い負けることもしばしばあった。芝原さんは「うちは『素材ごとに分別して出して下さい』と求める。高品質のペレットを造るのに必要だが、中国のバイヤーの基準は緩い。排出する工場からみれば、分別が緩い方が楽だ。しかし、最近になって、『やっぱり安定して売却できるところを選びたい』と、戻ってくるお客さんも出てきた」と語る。

RPFの利用も大きくは望めない

 廃プラスチックは、製品を破砕し、熱を加えたりしてパレット、プランター、ハンガーなどの再生品を造る材料リサイクルのほかに、RPF(プラスチックと紙を混ぜ、直径約3センチ、長さ約10センチの棒状に固めた固形燃料)の原料や焼却発電にも利用されている。

 年間130万トンのRPFを製造するRPF業界(約220社)は、製造したRDFの大半を製紙工場に供給し、ボイラーの燃料に使われてきた。製造97社で作る日本RPF工業会は「処分に困った輸出業者から引き合いが増えている。中国は今回、RPFに使えるミックスペーパー(複数の素材が混合した紙)も輸入禁止しており、調達量を増やすチャンス」(石谷吉昭事務局長)ととらえる。

 しかし、一方で紙の需要は低迷し、製紙会社のRPFの購入量は大きな増加が見込めないという。中国の輸入禁止による廃プラスチックのだぶつきもあり、今年に入ってある大手製紙会社はRPF買い取り価格を下げた。関東地方のRPF製造業者は「価格決定権は力の強い製紙会社にあり、今後は値下げ圧力が強まる。またボイラーを傷めないよう含有塩素の少ない良質のRPFが求められる傾向が強まっており、新たな需要先が見つからない限り、生産量は増えない」。結局、行き場のない廃プラスチックは焼却処分か埋め立てとなる。

 環境省は、18年夏に太陽光パネルなどのリサイクル施設などへの補助金15億円の未消化分の約4億円を廃プラスチックのリサイクル施設への補助に振り換え、14社に補助することが決まった。18年度は15億円を確保し、さらに19年度は45億円に増やした。これに対しては、「ありがたい」という業者もいれば、「100万トンもの廃プラスチック処分が対象で、『焼け石に水』という者もいる。

 環境省は自動車、家電などへの再利用を進めるため、専門家による検討会を設置し議論を始めていた。しかし、高品質の再生原料を造る業者をどう増やすか、受け皿となる市場をどう拡大していくかは大きな課題で、そう簡単にいく話ではない。ここは産業界に大きな影響力を持っているはずの経済産業省の出番だと思うのだが、その動きはほとんど見えない。

④国は何をしようとしているのか――資源循環戦略

プラスチック資源循環戦略づくりを急ぐ国

2018年6月に中川雅治環境大臣の記者会見があった。G7で日本政府が「海洋プラスチック憲章」に署名しなかった理由を記者から聞かれた中川大臣は「市民生活や産業への影響を慎重に調査・検討する必要があり、見送ることとしたと聞いている。数値目標が義務的なもので、年限が示され、産業界とも調整した上、政府部内で関係各省と調整をして合意に臨むのが一般的だが、今回は調整を行う時間が足りなかった」と釈明した。

そして19年6月に大阪で開かれるG20までに「プラスチック資源循環戦略」を策定したいと述べた。

 海洋プラスチック憲章は、プラスチックが環境や人の生活、健康に重大な脅威をもたらすとして、使い捨てプラスチックの使用を避け、あらゆる手段で資源効率の良い持続可能な管理を唱えていた。

 そして、具体策として、
▽2030年までに100%のプラスチックがリユース、リサイクル可能に、代替品がない場合は回収可能となるよう産業界と協力
▽使い捨てプラスチックの不必要な使用の大幅削減
▽(国や自治体が率先購入する)グリーン調達で廃棄物を減らし、リサイクル市場と代替品を支援
▽30年までにプラスチック製品のリサイクル材の使用を最低50%増やすため、産業界と協力
▽政策の使用、製品管理、(環境配慮)設計など基準、要件を含む国際的な動機付けでリサイクル市場を支援
▽マイクロビーズを20年までに可能な範囲で削減するため産業界と協力
▽30年までにプラスチック容器包装の最低55%をリサイクルまたはリユースする。40年までにすべてのプラスチックを回収するよう産業界、政府と協力する
などとしていた。

 憲章は「ブループリント」と呼ばれ、中川氏の説明と違い、署名したからと言ってただちに達成が義務づけられるわけではなかった。達成するめどがついて書かれているわけではないが、なぜか、日本政府はこだわった。結局、署名しなかったことが内外から批判を浴びることになる。

 環境省は、戦略づくりのために、8月に中央環境審議会にプラスチック資源循環戦略小委員会を設置し、議論をスタートさせた。 政府は19年6月のG20サミットに戦略を提出すると決めていたから、お尻を切られた形で、急ピッチで戦略案づくりが進んだ。

環境省の審議会で何を議論したのか

2018年11月に開かれた小委員会
写真は筆者撮影 転載禁止


 しかし、小委員会には根本的な欠陥があった。

 小委員会が立ち上がる前に、筆者が会った環境省の担当者は「これから検討組織を立ちあげたい。発生抑制から廃棄、リサイクルに至るまで、関係者を集めて広く議論したい」と抱負を語っていた。ところが、蓋を開けると、小委員会(委員長・酒井伸一京都大教授)の産業界側の委員は経団連、日本プラスチック工業連盟、プラスチック循環利用協会の3人だけだった。学識者の委員で、プラスチック問題にえる程度明るい識者は男性の大学教授7人。肝心のペットボトルなど使い捨てプラスチックに責任のある利用者団体やリサイクル団体は選ばれなかった。

 小委員会が立ち上がる少し前に、こんなことがあったというのはリサイクルにかかわるある団体の職員。こんなことを言った。

「環境省の官僚が訪ねてきて、『小委員会ではリデュースとリユースを議論します。リサイクルはやらないので委員をお願いすることはありません』と言われた。プラスチックをどう抑制し、リサイクルをどう進めるかが大事なのに。国民みんなで使い捨てプラスチックを減らしましょうというだけでは困る」

 原田大臣の記者会見の後に開かれた3回目の小委員会に戦略案が示された。原田大臣も出席した。しかし、戦略には具体策がほとんど書かれていなかった。もちろん、数値目標は示され、先のカナダとEU諸国が署名した海洋憲章を上回る野心的な数字もあったが、その数字を達成するための具体策がなかった。

廃プラスチックの焼却に反対

 11月の小委員会で、高田教授は、廃棄物の焼却に懸念を示し、50年の温室効果ガスの0排出を念頭に、廃プラスチックの焼却を段階的にやめると明記すべきと主張した。「パリ協定で2050年に温室効果ガスを80%削減ということはプラスチックの熱回収ができなくなるということ。プラスチックの有効利用率が84%とされているが、熱回収分が含まれているので、熱回収を含むという表現を削除し、熱回収を段階的にやめると書くべきだ」と言う。

 これに対し、プラスチック資源利用協会の井田久雄専務理事は「ドイツでもリサイクルより、リカバリー(熱回収)の方が大きい。日本は小さい炉が多く、大型化した方が、効果がある」と反論した。

 年が明け、2月に開かれた小委員会では、パブリックコメントの内容を環境省の事務局が報告した。かなり丁寧に対応し、市民からの指摘を報告書の原案に反映させていた。これは、前年の夏に急遽、リサイクル推進室長になった冨安健一郎さんによるところが大きい。小委員会でも評価する意見が相次いだ。

 だが、それでも委員からいくつか注文がついた。高村ゆかり東大教授も前回同様、報告書の最後に「すみやかに具体化し、推進する」の文言を入れるよう求めた。高田教授も焼却処分について前回と同じ文言を入れるよう要望した。しかし、業界側の委員らが反論し、盛り込まないことが決まった。ただ、これは、廃プラスチックの焼却を優先するということではなく、材料リサイクル、化学リサイクルを優先し、次に焼却による熱回収という優先順位があることを、戦略に書き込んだことを環境省が説明し、委員らも確認した。

具体的なEUのプラ戦略

 この戦略づくりは、1998年6月に閣議決定された環境省の循環型社会形成推進基本計画に出てくる。国の役割として「使用された資源を徹底的に回収し、何度も循環利用することを旨として戦略を策定し、施策を進めていく」。事業者の役割として、▽バイオマスプラスチックの利用▽小売業者の容器包装、レジ袋の削減、食品容器の店頭回収▽リサイクル業者の再資源化と再生品の高付加価値化が期待されるとした。

 一方、欧州委員会が98年1月に発表した「プラスチック戦略」は、▽プラスチック製品は、耐久性、再利用、高品質なリサイクルを拡大するように設計。2030年までに拡大製造者責任(EPR)の影響力を最大化する方法を検討し、最も持続可能な設計ができる経済的インセンティブを与える▽2030年までにすべてのプラスチック容器包装を経済合理的な手法によって、再利用可能、リサイクルされ、発生量の半分をリサイクル▽欧州のプラスチックリサイクル能力は2030年までに2015年比で4倍に拡充・近代化▽プラスチックのバリューチェーンが進み、幅広く価値の高い用途で再生材が使われるよう化学産業とリサイクル業者が協働▽マイクロプラスチックのラベル表示、タイヤ・繊維由来のマイクロプラスチックへの要求事項の検討などとしている。

 中国の輸入禁止を廃プラスチックのリサイクルの新たなチャンスと捉え、新産業を造り出そうとしているようだ。

 98年5月には加盟国に使い捨てストローなど使い捨てプラスチックを禁止する法案を加盟国に示した。フランスではプラスチック製の使い捨て容器や食器の禁止法が施行され、英国も今後マイクロビーズを使用禁止し、現在行われているレジ袋の有料化を小規模小売店に拡大すると発表した。

実は、これは、EUによる新しい産業の創出という狙いがある。このため、「EUが新しい基準をつくり、それが世界標準となると、EUが主導して何でも決まることになる。日本もきちんとした計画をつくって対処していかないと、競争に負けてしまう」と、危機感を漏らす官僚もいる。

グリーン調達法を生かせ

 国や自治体が自ら調達する時に、環境に優しい製品を選ばせるために、グリーン調達法という法律がある。これに廃プラスチックをつかった再生製品の購入を義務づけられないのだろうか。この点を環境省の冨安健一郎・リサイクル推進室長に聞くと、「まずは、それが有効だと、関係省庁と協議しているところです」と応えた。

このインタビューは18年11月にしているが、19年2月に、冨安室長が言ったように、グリーン購入法の基本方針が改定された。省庁や国立大学など国の全209機関で、庁舎内の食堂で、プラスチック製ストローやスプーンなどの提供しない、検討会などの会議にペットボトルを提供しない、庁舎内のコンビニは使い捨てプラスチックの削減に取り組むことなどを決めた。 環境省は、この対策で、年間85000本のペットボトルと100トンのレジ袋の削減効果があると試算している。ささいなことではあるが、まずは、一歩として評価したい。今後は、自治体にもこれを見習わせたい。

 冨安室長は、以前、EU委員会に出向し、EUの環境政策について詳しい。それが見込まれて2018年秋に室長に抜擢された。冨安室長は、この戦略の狙いをこう語った。

「戦略の役割とは、名前が戦略というように、大きな方針をつくるところにあります。だから、具体的な細かいことは戦略案に書かれていません。今回、(影響を受ける)産業界から強い反対がないのは、こうした戦略の性格があるからではないか。戦略案には、世界トップレベルの野心的な『マイルストーン』(里程標)を目指すべき方向性として、数値目標を設定しています。ワンウェイのプラスチックを2030年までに累積で25%排出抑制するとうたっていますが、それをどこの業界でどれだけ削減するという形で積み上げて設定したものではありません。戦略ができた後、次のプロセスに移ることになります。どのような形で進めるかについて検討しているところです。『いい答申をいただきました』では終わりになりません。個々の問題に対処していかないといけない」

③に続く。


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