買取価格の競争激化に警鐘 3Rの普及発展に悪影響の恐れ【リユースを考える】

買取価格の競争激化に警鐘 3Rの普及発展に悪影響の恐れ【リユースを考える】

昨今、フリマアプリ普及の影響もあり、至る所でリユースショップを見かけるようになり、以前に比べてリユースが市民権を得てきたように思います。そのリユースショップの看板や買取ECサイトなどにおいて、「高価買取」というフレーズをよく目にします。リユースショップが増えれば競争も激化しますので、各社負けじと高価買取合戦を繰り広げます。利用者にとっては、1円でも高く買ってもらえることは嬉しいことであり、それがリユースの普及を広げた要因の1つであることは間違いありません。しかし、ここから先、これまで以上にリユースを普及させていくために、この高価買取合戦がかえって足を引っ張るかも知れません。

過剰正当化仮説

過剰正当化仮説というものがあります。これは外発的動機(金銭的報酬、など)が内発的動機(面白い、楽しい、など)を駆逐してしまうというものです。これだけだとなかなかイメージできないと思いますので、具体的事例を挙げます。

ロチェスター大学のエドワード・L・デシ教授は学生を対象にある実験を行いました。学生たちにあるパズルを解いてもらい、1つのグループにはパズルを解くと外的な報酬、つまり金銭を渡し、もう一方のグループには報酬を渡しませんでした。

この2つのグループの休憩時間を観察すると、報酬を渡していないグループは休憩時間も純粋にパズルを楽しんでいたのに対し、報酬を渡したグループは渡していないグループに比べパズルに費やす時間がずっと少なかったのです。

これが何を意味するかと言えば、本来楽しむためにパズルを解いていたはずなのに、金銭という外的報酬が導入されると、パズルを解くことが報酬を得るための手段となり、純粋にパズルを楽しむことができなくなってしまったということです。結果的に報酬のない休憩時間にはパズルをしなくなってしまいました。

つまり、金銭的報酬という外発的動機が、パズルを楽しむという内発的動機を駆逐してしまったということです。これが過剰正当化仮説です。

リユースにおける過剰正当化仮説

この過剰正当化仮説をリユースに当てはめて考えてみます。例えば、このようなケースです。

Aさんは要らなくなった洋服を処分しようとしましたが、「まだ使えるのに捨てるのはもったいない」と思い、リユースショップを利用することにしました。使用感があったので買取価格はあまり期待しておらず、「せいぜい数百円くらいだろう」と思っていました。

しかし、実際には予想に反して3,000円の買取価格となりました。Aさんは喜びました。「そういえば、使っていないブランドの服やカバンがまだあったはず!」と思い、家中からかき集めました。すると、思っていた以上にありました。「よし、また持っていこう!」と思いましたが、これだけの量があるので少し慎重になり、ネットで色々調べてみました。ネットによれば、「相見積もりをした方が良い」とのことです。先の3,000円で売れた洋服も、相場を調べてみると、実はもっと高く売れそうだったことがわかりました。

Aさんは近所のリユースショップを調べ、3店舗で相見積もりを取りました。ある店舗は他より見積価格が低かったのですが、そのことをAさんが伝えると、「わかりました!では、この金額でいかがでしょうか?」と他の店舗より高い見積価格を再提示してきたのです。Aさんは一番高かったこの店舗に売ることにしました。

結果としてAさんの財布はとても潤いました。身の回りもすっきりした上に財布も潤う、これに味を占めたAさんは他にも要らなくなったものを売ろうと考えました。あまり着る機会がない内にサイズの合わなくなってしまった夫の服がたくさんあったので、その相場を調べたところ、せいぜい数百円にしかならないことがわかりました。「売りに行く手間を考えたら割に合わない」と思い、結局捨ててしまいました。

Aさんは、最初は「捨てるのはもったいない」という動機によってリユースショップを利用しましたが、意外と高く売れることがわかりそれに味を占めるようになると、「捨てることがもったいない」という内発的動機はいつの間にか消えてしまいました。この話はもちろんフィクションですが、このようなケースは十分にあり得ると思います。

リユースのさらなる普及発展のために

あまりに高価買取に走り過ぎると、高価買取には適さないけれども、リユース品としての価値は十分にある商品のリユースを阻害しかねません。もちろん、価値のあるものを高く買い取ることは当たり前のことであり、それ自体を否定するつもりはまったくありません。むしろ、価値のあるものを不当に安く買うことの方がはるかに問題のある行為です。報酬という外発的動機を前提としつつも内発的動機を損なわせない新たなリユースの形が創り出されることによって、リユースのさらなる普及発展に繋がっていくのではないでしょうか。

仕事を思い浮かべてみて下さい。私たちは金銭的報酬のために働きます。誰でも生活があるので、それは当然のことです。しかし、それだけのためでは決してないのではないでしょうか。お客様のため、仲間のため、世の中のため、何か役に立ちたいという貢献意欲を、少なくとも潜在意識の中では、誰しもが持って働いています。その意識、すなわち内発的動機が強いほど、良いパフォーマンスを発揮できるし、働くその人自身の幸福度もきっと高いはずです。

リユースについても、もちろん高額買取は否定しません。しかし、「捨てるのはもったいない」「次の人に大事に使ってもらいたい」という、内発的動機も大事にすることによってリユースが促進され、より豊かな社会になっていくのではないでしょうか。

あわせて読みたい

関連タグ

  • この投稿に「関連タグ」はありません

カテゴリー

人気の記事

  • 先月
  • 全て

人気のタグ

おすすめの記事

スペシャルコンテンツ

関連リンク