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プラスチックの一括回収でリサイクル進める東京・日野市 高リサイクル率目指しSDGs未来都市宣言

プラスチックの一括回収でリサイクル進める東京・日野市 高リサイクル率目指しSDGs未来都市宣言
東京都日野市の選別施設。できたばかりの施設だ

プラスチック資源循環促進法が施行されておよそ半年。マイクロプラスチックによる海洋汚染の深刻化が世界的な問題となり、世界各国が使い捨てプラスチックの削減やリサイクルの動きを進めるなか、これまでの容器包装に加え、製品プラスチックも回収し、リサイクルに取り組む自治体が増えています。いち早く一括回収を導入した東京都日野市の選別施設を訪ねました。日野市はSDGs未来都市とプラスチック・スマート宣言を宣言し、プラスチック削減に取り組んでいます。

ジャーナリスト 杉本裕明



プラスチックを一括回収

東京都日野市は2020年1月からプラスチックの分別収集を始めた。容器包装リサイクル法で容器包装の分別収集が開始された2000年からかなりたっての実施で、100%近くの実施率を誇る多摩地域の中では周回遅れの感がある。だが、日野市の担当者は「選別施設が必要で時間がかかったが、容器包装プラスチックと製品プラスチックを一括回収しているのが特色です」と語る。

各家庭は「プラスチック類ごみ専用袋」と書かれた半透明の水色の袋にプラスチックごみを入れてパッカー車が戸別回収して回る。パッカー車を車で追うと、浅川沿いに清掃工場の煙突が見えた。浅川清流環境組合の焼却施設で、構成する日野市、国分寺市、小金井市の可燃ごみを焼却している。

パッカー車がプラスチックごみをおろす
杉本裕明氏撮影 転載禁止

パッカー車はその隣の「日野市単独のプラスチック類資源化施設」に入った。構内に降ろした大量のプラスチック袋の中には菓子袋や卵パックなどの容器包装とハンガー、文具などプラスチック製品が混じる。

ピットから破砕機に送られるプラスチックごみ
杉本裕明氏撮影 転載禁止

施設の2階に3列の選別ラインがあった。2列のコンベヤーをプラスチックごみが流れる。作業員らが、異物をより分け、異物用の穴に落とす。その一方で、このラインのプラスチックごみに混じった製品プラスチックを採取し、もう1つある製品プラスチック用のコンベヤーに投げ入れている。そのコンベヤーは破砕機に向かう。

プラスチックごみの袋にはこんな異物が混じっている
杉本裕明氏撮影 転載禁止
プラスチックごみは選別ラインに流され、作業員らが異物を除去する
杉本裕明氏撮影 転載禁止

この施設では、破袋機で中身を取り出し、風力選別機に送り、軽い容器包装プラスチックと重い製品プラスチックに分けてコンベヤーに送るが、製品プラスチックは量が少ないのでためておいて特定の日だけ動かしているという。案内役の施設課の職員は「大半が容器包装プラで、製品プラスチックは約1割と少ない。月に約20トン出ている」と語る。

回収したプラごみを容器包装と製品に分ける

このように同じプラスチックごみを2つに分けるのには理由がある。 容器包装は容器包装リサイクル協会が引き取り、容器包装の製造・販売・利用業者が、協会の入札で落札したリサイクル業者にリサイクルしてもらう。これに対し、製品プラスチックは、選別施設でより分け、独自に契約した業者に引き取ってもらっている。

プラスチックごみのベールを点検する日野市の職員
杉本裕明氏撮影 転載禁止

容器包装協会は、プラスチック資源循環法が制定され、一括して引き取ることが可能となったが、日野市では、それ以前からこの制度を導入したため、「ラインを2つに分け、それに合わせて破砕機も別々に設置した。一括して協会に送るためには設備更新が必要となり、事実上不可能だ」と市の担当者は話す。

プラスチックの破砕機
杉本裕明氏撮影 転載禁止

容器包装リサイクル協会によると、2022年度の日野市による容器包装プラの落札量は、材料リサイクルのリ・パレット(千葉県富津市)1,200トン、コークス炉でコークス代替に使う日本製鉄の君津プラスチック再商品化工場(千葉県君津市)1,400トンの計2,600トン。

回収量が増えるメリット

人口で日野市の3倍ある杉並区の容器包装の落札量は4,164トンなので推計すると日野市の落札量は杉並区レベルの約2倍回収している勘定になる。

容器包装プラスチックだけの回収だと、他のプラスチック類の大半が可燃ごみとして排出される。しかも、容器包装だけ分別して出すのは面倒なので、かなりの容器包装が可燃ごみに混ざっているというのが、環境省の見解だ。同じプラスチックごみなら、製品プラスチックも一緒に回収した方が効率的だ。そんな考えで、日野市が一括回収に取り組んでいる。回収したプラスチックごみのうち、製品プラスチックは1~2割と少ないが、容器包装プラスチックの回収量も増えた。市の担当者が語る。

「一括回収のメリットは家庭が排出する時に悩まずに出せることです。多くの自治体では、容器包装プラスチックのマークがあれば容器プラスチックの袋、なかったら可燃ごみ袋となるが、わかりづらい。相当の容器包装プラが可燃ごみに行っている。日野市では以前は不燃ごみ袋に入れてもらっていたが、約6割がプラスチックごみでした」

危ないナイフも混じっている
杉本裕明氏撮影 転載禁止

職員が「こんなものも入ってくるのですよ」と言って、選別ラインの脇にある箱を見せた。金属ごみ、リチウム電池、使用した後の医療用品があった。住民に周知徹底し、これを減らすのも課題だ。

ごみ改革からSDGs未来都市を宣言

容器包装プラスチックを分別・収集している自治体は1,162市区町村。全体の66.7%で、人口カバー率は75.9%。いずれも容器包装リサイクル協会が行う入札で落札したリサイクル業者が引き取り再生品化を行う。一方、製品プラスチックは対象外で、大半の自治体は可燃ごみか不燃ごみとして収集している。日野市ではプラスチックごみは不燃ごみ扱いだが、多摩地域の自治体でつくる東京たま広域資源循環組合が日の出町で運営する最終処分場の延命化のため、不燃ごみから取り出し焼却処理してきた。

見学コースにはパネル展示もされている
杉本裕明氏撮影 転載禁止

市は2000年に取り組んだ第一次ごみ改革で多摩地域の先陣を切る形で、市民参加によるごみ減量に着手、集積所のダストボックスの廃止、戸別収集、指定ごみ袋の有料化を実施した。次にプラごみのリサイクルを予定したが、リサイクル施設の建設がネックとなり実施に至らなかった。

年月がたち、当初30%台を誇ったリサイクル率も、他の自治体が次々と容器包装プラスチックの分別収集を実施して40%台になり、影が薄くなってしまった。

浅川清流環境組合を構成する3市は、焼却量を2030年までに40%削減することで合意した。他の2市はすでに容器包装プラスチックを分別収集している。日野市は既設の日野市の焼却施設が休止し、環境組合の焼却工場がそれに替わる時期に合わせて資源化施設の整備が決まり、市民にわかりやすい一括回収が選択された。

東京都の策定したプラスチック削減プログラム。プラスチックごみの4割削減を2030年までに達成するとしている
東京都環境局の資料より

日野市は一括回収も含めた方策でリサイクル率を30年に45%に引き上げ、多摩地区のベスト5を目標にする。SDGs未来都市を宣言しており、プラスチック・スマート宣言を行い、市内の事業者、団体などのSDGs、プラスチック削減の取り組みを認証する制度を創設するとしている。

参考:東京都環境局 プラスチックの持続可能な利用について

立川市と多摩市も一括回収

リサイクル率の高い多摩地域では立川市と多摩市も一括回収をしている。立川市では、容器包装リサイクル法で回収が始まる前の1996年10月からプラスチックの分別収集を始め、選別施設で容器包装と製品プラスチックに分け、日野市と同様、製品プラスチックを独自処理し、資源再生業者に渡している。

19年から家庭で容器包装プラスチックと製品プラスチックに分けて収集する方式に変えた。その上でリサイクルセンターの選別ラインを二重化し、手選別で選別を徹底している。こうした選別を徹底するのは、汚れたプラスチックや異物の混入で、その他のきれいなプラスチックが汚れてリサイクルできなくなってしまうからだ。

作業員らはみな高性能マスクをつけて選別している
杉本裕明氏撮影 転載禁止
選別の様子は、見学者も窓から見えるようになっている
杉本裕明氏撮影 転載禁止

市がまとめたプラスチックごみの搬入量に占める資源としての搬出量の比率を見ると、14年の81.6%から17年には71.1%に下がっていた。こうしたことからプラスチックごみを2つに分けての回収となった。多摩市も市のエコプラザ多摩で容器包装プラスチックときれいな製品プラスチックを回収している。汚れたり、劣化したりしているプラスチックは可燃ごみ扱いにし、製品プラスチックとして出せるのはCD、薬ケース、ハンガーなどに限定しているので、年に10~20トンにとどまっているという。

焼却からリサイクルに方針転換した東京都

一括回収を行う自治体はまだまだ少ない。しかし、これまでプラスチックごみは清掃工場で燃やし、発電に使えばよいと唱えていた東京都が、2019年にプラスチック削減プログラムを策定して、その方針を180度変えた。2030年までに現在の年間70万トンのプラスチックごみの焼却量を4割削減し、40万トンに削減する計画を打ち出している。

製品プラスチックは破砕し、こちらに送られる
杉本裕明氏撮影 転載禁止

都内の自治体を見ると、これまでは、多摩地域の大半の自治体が容器包装の分別・リサイクルに取り組む一方、11の区は容器包装すら分別せず、可燃ごみとして焼却処分していた。都がその方針を改め、リサイクルに転換し、11の区にプラスチックごみのリサイクルを働きかけ、補助金を出す仕組みをつくり働きかけるようになった。環境省のプラスチック資源循環法が2022年4月に施行され、自治体の一括回収を進めようと、環境省が検討する自治体に補助金を出したこともあり、一括回収に乗り出す区もでてきた。

都の担当者は「海洋プラスチック汚染問題と地球温暖化問題で、流れが変わった。目標を達成するためにはリサイクルを進めないといけない」と、区の尻をたたく。こうしたことから一括回収の動きが出て、都内では、従来から実施していた港区と千代田区に続き、渋谷区が2022年7月から、北区の一部地域が同年10月から一括回収を始めた。全国を見渡すと、政令都市の仙台市が2023年4月から一括回収を開始すると宣言している。

製品プラスチックの使い道に苦労も

ただ、一括回収に課題はある。容器包装は、容器包装リサイクル協会が引き取り、容器包装を製造・販売・利用業者が、リサイクルの費用を負担しているのに対し、製品プラスチックは自治体が費用負担をかぶることだ。

日野市がつかっているパッカー車
杉本裕明氏撮影 転載禁止

日野市では、一括回収して集め、選別施設に持ち込んだプラスチックごみから製品プラスチックを取り出し、独自処理しているが、製品プラスチックのリサイクルに頭を痛めている。というのは、当初、製品プラスチックを材料リサイクルしたいと考え、業者を探したが、引受先が見つからず、RPF(固形燃料)を製造する業者と契約した。製造業者は、製紙工場などにボイラーの燃料として販売する。RPFは化石燃料からできたプラスチックだけでなく、二酸化炭素を出さない紙屑と木屑が混じっているので、その分、CO2を削減できるというわけだ。

日野市が収集したプラスチックごみ。容器包装が多いが、CDなどの製品プラスチックもまじっている
杉本裕明氏撮影 転載禁止

市は、これならいいと考え、委託したが、まもなく、業者から「RPFを購入する製紙会社の基準が厳しくなった」と、断りを入れてきた。製品プラスチックには大量の塩素を含む塩ビ製品が混じっており、RPFを燃料にする際、ボイラーを腐食させる塩素が嫌われるからだという。低濃度の塩素濃度を保証できないことから、結局、市は、別の業者に委託し、焼却施設で燃料として使ってもらうことになった。一括回収はわかりやすいが、市民の歓迎するプラスチックごみからプラスチックの再生品を造る「材料リサイクル」やRPFには使いづらく、今後の検討課題となりそうだ。

環境省は「一括回収では、材料リサイクル業者には施設を高度化させるための交付金制度があり、それを継続させることで、自治体の負担を減らしたい。塩素を含むプラスチックもあるが、使い道はあるはずだ。自治体には調査のための補助制度を用意し、支援を強めたい」と話している。

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