未来少年コナンに見る環境問題とリサイクル【アニトピア】
環境問題やリサイクルについて、多くの人が関心を持つ時代ですが、日本が誇るコンテンツの一つであるアニメでも、環境問題やリサイクルを取り上げたものがあることをご存知でしょうか。
エコトピアでは、幅広い人に環境問題やリサイクルを知っていただくために、環境やエコを取り上げているアニメや漫画をご紹介します。
今回、紹介するアニメは、宮崎駿の作品として知られる「未来少年コナン」です。
未来少年コナンでは、どのような環境問題やリサイクルが登場するのでしょうか。
目次
未来少年コナンとは
まずは未来少年コナンがどのような作品であるかを解説します。
作品の概要
未来少年コナンは、1978年4月4日から日本放送協会(NHK)で、全26話放送されたアニメです。
スタジオジブリ設立前の宮崎駿が初めて監督した作品として有名で、不朽の名作と名高いアニメの一つです。
原作はアメリカの小説家、アレグザンダー・ケイ(Alexander Key)によるSF小説「残された人々(原題:THE INCREDIBLE TIDE)」で、これを設定やストーリーを大幅に変えた上で、コナンは制作されました。
あらすじ
2008年、核兵器以上の威力持った「超磁力兵器」を用いた最終戦争が勃発したことで、ほとんどの文明は滅び、都市は海の底に沈んでしまいました。
未来少年コナンでは、そんな地球全体を巻き込んだ戦争から20年後に生きる人々が描かれます。
「のこされ島」と言われる孤島で主人公の少年、コナンと「おじい」は慎ましくも平穏な日々を暮らしていました。
ある日、海岸にラナと名乗る少女が漂着しているのをコナンは発見します。
ラナを介抱するコナンですが、彼女を追ってのこされ島に謎の戦闘員がやってくるのでした。
コナンは彼女を守ろうとしますが、その戦闘員たちに、ラナは連れ去られてしまいます。
ラナを守ろうとしたおじいも命を落としてしまい、コナンは島に一人残されることに。
コナンはラナを救うことを考え、旅立ちを決意します。
そして、旅立つコナンを待ち受けるのは、深刻なエネルギー問題を抱える科学都市「インダストリア」でした。
未来少年コナンは、ボーイ・ミーツ・ガールと言われる典型的な物語の始まり方(少年が少女に出会うことで物語が始まるパターン)ですが、環境問題や自然との共存に関する様々な設定があり、いつかこんな未来がきてしまうかもしれない、と思わせられます。
また、回を重ねる毎に、ラナのために常に全力を尽くすコナンを応援したくなるのも、この物語の魅力です。
登場人物
多くの人物が登場しますが、主要人物となる三人をご紹介します。
コナン
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1978のこされ島で生まれた、心優しい12歳の少年。宮崎駿の作品に登場する少年少女の多くが、凄まじい身体能力を有していますが、コナンはその中でも驚異的な身体能力を持っている(特に足の指の筋力がやばい)と言えます。また、不屈の精神を持っていて、どんな危機的な状況でも、冷静な判断力でラナを救い出します。魚を獲るのが得意で、水中で長時間活動できる肺活量があり、銛を自在に操るのが得意。
ラナ
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.197812歳の少女でこの物語のヒロイン。テレパシー能力で祖父のラオ博士と意思疎通ができることから、インダストリアにさらわれてしまいます。他人を想う気持ちが強く、いざというときは身を挺して行動することができる、優しくも勇気ある女の子として描かれています。
ジムシィ
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1978コナンが旅立って最初に出会った10歳の少年。コナンに劣らない身体能力を持ち、コナンの相棒とも言える存在となります。気分屋なところもありますが、友情に厚く何だかんだ言いながらコナンを助けてくれます。また、食いしん坊な一面もあり、物語の後半では養豚に興味を持ちます。初めて飼った豚の名前は「うまそう」。
コナンから見る環境問題
このような背登場人物や背景によって描かれる未来少年コナンでは、多くの環境問題が描かれています。
それは、どれも実際に起こってしまうのでは、と思わせるエピソードばかりです。
行き過ぎた文明
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1978本編で多くは語られませんが、未来少年コナンの世界では、私たちが暮らす世界よりも発達した文明がかつて存在したことがうかがえます。
地球脱出を可能とするロケットや、科学都市インダストリア、ロボノイドと言われる作業用ロボット、などの登場により文明崩壊の前は優れた文明があり、人々は豊かな暮らしをしていたのだと考えられるのです。
しかし、そんな文明は「超磁力兵器」の使用によって滅びてしまいます。
大陸は変形し、地軸も曲がってしまう、この「超磁力兵器」は行き過ぎた文明が自然を酷く歪めてしまうことを表していると言えます。
人間の文明が発達することで、人間の活動が環境問題に発展してしまう場合があります。
それが悪化してしまうと、人間の生活にも危機が起こり、アニメの世界と同じように文明が崩壊する恐れにもつながってしまうでしょう。
頻繁な災害
コナンの世界では、文明崩壊後も頻繁に地殻変動や災害が起こります。
本編の中でも町が津波に襲われるシーンや、地震による事故のシーンもあります。
コナンの世界の中では、崩壊前は発達した文明が存在していたことから、私たちの世界と同じように、多くの環境問題があったと考えられます。
環境問題と災害は別のものですが、環境問題が多くの災害を招くことがあります。
温暖化による異常気象や、森林伐採による洪水の発生など、環境問題がやがて自然災害につながる恐れがあるのです。
コナンの世界でも崩壊前の発達した文明によって発生した様々な環境問題、そして行き過ぎた文明の象徴と言える「超磁力兵器」によって、頻繁な地殻変動や災害が起こるようになってしまったと思われます。
エネルギー問題を抱えるインダストリア
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1978物語の序盤でコナンが目指したインダストリアは、崩壊前の文明を残した科学都市です。
都市と言っても、インダストリアの中心と言える、三角塔に人が住むばかりで、周辺にある家屋は無人の状態です。
これは極度な都市化が進んでしまった社会を思わせます。
また、多くの人は三角塔の地下に住み、塔の上部には一部の権力者だけがいます。
その権力者たちのみが、エネルギーや食糧の管理を行い、地下に住む人々は、粗末な生活を強いられ、衣類もぼろぼろです。
住民たちは、生活の態度や成果によって、権力者に点数が付けられ、点数が高ければ一等市民の称号を与えられるようです。
つまり、インダストリアは徹底した管理社会であり、格差社会であると言えます。
そんなインダストリアが抱える問題は、深刻はエネルギー不足です。
三角塔の施設は機械やコンピューターによって操作され、電力は原子炉によって賄われています。
しかし、文明崩壊によって資源は底を尽きつつあり、原子炉も寿命が近いために、絞り出すようにしてエネルギーを作り出しています。
そのため、プラスチップ(おそらくはこの世界のプラスチック)をリサイクルして石油をエネルギーとしています。
私たちの世界でも、資源が尽きてしまう日がやってくるかもしれません。
いくら優れた技術があったとしても、資源がわずかであれば、インダストリアのように徹底した管理社会の中で、一部の人間が良い生活をして、ほとんどの人間が苦しい環境の中で、それを支えるような世界になってしまう恐れもあるでしょう。
プラスチップ村
コナンが旅立ってから最初に辿り着く島で、相棒のジムシィと出会うのが、プラスチップ村です。
プラスチップ村ではゴミの山がたくさんあり、住民はインダストリアの人間に指示されるがまま、それを漁ってリサイクルできそうなプラスチップを探します。
掘り出したプラスチップはインダストリアの人間が持ってきた品物と交換ができるため、住民は必死にゴミの山を漁るのです。
プラスチップ村は、昔のゴミ捨て場があった地域と思われ、崩壊前の人類が熱心にリサイクルをすることなく、ゴミを捨てていたのではないか、と考えられます。
農業や業業が盛んなハイハーバー
©NIPPON ANIMATION CO.,LTD.1978ヒロインであるラナが住んでいた島、ハイハーバーは文明崩壊後に残された人々が、新たな生活を始めた土地です。
ここでは、インダストリアのように、機械に頼ることはなく、農業や漁業など自然から得られる恵みを利用して生活しています。
誰もが穏やかに暮らしていますが、島の南側にある荒れ地にはオーロという不良少年をリーダーとするグループの縄張りとなっています。
オーロたちは地道に働くことを嫌い、自由気ままに生きることを選び、理不尽な交渉や納税を強要するなど、横暴な振る舞いを見せます。
オーロたちが生活する荒れ地には、崩壊前の文明が残したと思われる壊れた機械類が放置されています。
それはまるで、オーロたちのように、自然と共存することを放棄してしまったものの末路を表しているようでもあります。
慎ましい生活をするハイハーバーの人々ですが、文明が発達していないためか、不満を解消できない若者たちが存在しています。
そう考えると、自然と文明のバランスは非常に難しいものなのかもしれません。
私たちの世界の延長
このように、コナンたちの世界は、私たちが生活する世界の延長とも言えます。
さらに、環境問題が悪化し、リサイクルを怠った結果、大きな間違いが起こってしまえば、このような世界になってしまう恐れは十分にあるでしょう。
私たちの今の生活が長く持続させるためにも、私たちは文明と自然のバランスを保ちながら、地球に優しい社会を目指す必要があります。
ちなみに、物語の終盤では崩壊前の文明によって作り出された破壊兵器、ギガントが登場します。
それは、間違った文明の形であり、自然を捻じ曲げる象徴だとも言えます。
そして、私利私欲のためだけにギガントを復活させようとするものがいます。
インダストリア行政局長であるレプカです。
コナンは仲間たちと、間違った文明を間違った使い方をするレプカを止めようとします。
また、物語の最後でコナンたちが選ぶ新しい世界も、注目すべき点だと言えます。
ぜひ、物語の結末をご自身で確かめてみてください。