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批判から始まったまちづくり活動は「若者たちの居場所」に 鯖江市役所JK課の発足から活躍まで

批判から始まったまちづくり活動は「若者たちの居場所」に 鯖江市役所JK課の発足から活躍まで
提供 鯖江市

SDGs普及や地方創生の重要性が高まり、多くの自治体がまちづくりに注力する中、福井県の鯖江市は一風変わった取り組みを行っています。 それは女子高校生が中心となって、まちづくりを進める「鯖江市役所JK課」です。 2014年に発足した鯖江市役所JK課の活動は、さまざまなメディアから注目されています。

今回は鯖江市役所JK課のこれまでの活動や発足時に苦労された点などを、鯖江市市民主役推進課の方にお伺いしました。

まちづくりの中心は女子高校生?鯖江市役所JK課とは

――鯖江市役所JK課は行政の取り組みの中でも、非常にユニークな印象を受けますが、実際はどのような活動を行っているのでしょうか。コンセプトや参加要件などを教えてください。

鯖江市役所JK課は、2014年にスタートした市民協働推進プロジェクトで、地元の女子高校生たちが中心となって、自由にアイディアを出し合い、市民や団体・地元企業、大学、地域メディアなどと協力しながら、新しいまちづくりを目指す活動を行っています。

JK課という課が実際にあるわけではなく、仮想的に行政組織の課名を模したもので、行政から最も遠い存在と思われがちな女子高校生たちが、独自の「ゆるさ」を持ち味に活動を展開するという特徴は「市民主役」や「ジェンダー平等」を掲げる鯖江市にとって象徴的な存在です。

コンセプトとしては「やりたいことをやる」で、女子高校生が自ら企画した地域活動に挑戦し、高校生の感性とアイディアを酌み取りながら、成果を求めず、今までの常識や価値観を変化させることを目的に、あくまで彼女たちが主体となって本当にやりたいまちづくり活動を行っています。

提供 鯖江市

また、若者、特に女性が進んでまちづくりに参加するきっかけとし、ふるさとである鯖江市に対する愛着の醸成も目的です。 メンバーは市内在住・通学者で、2024年現在は34名が所属しています。参加要件は以下の通りです。

  1. 鯖江市内在住、または鯖江市内の高校や福井工業高等専門学校に通う1年から3年の女子高校生
  2. 活動に対し、保護者および学校の同意を得られる方

選考はおこなっておらず、毎年4~5月に体験会を行っています。 活動頻度はテスト期間などを避けて、定期開催ではなく自由にミーティングを実施。そこから出てきたアイディアを基に年間70~100日程度の活動がありますが、そのうち20回程度は公の前に出るものです。

鯖江市役所JK課はこうして生まれた!批判と現在の反響

――鯖江市役所JK課はどのようなきっかけで「女子高校生を中心にする」というコンセプトに至ったのでしょうか。また、当初はJKという略称に批判もあったと聞いています。どんな批判内容だったのか、それを乗り越えた現在の反響を教えてください。

JK課が発足する前、鯖江市のまちづくり活動は、ありがたいことに知識が豊富で参画意識も高い方に多く参加いただいていましたが、逆に関心が薄い市民の方は巻き込めずにいました。これまで関心がなかった方に参加いただくことで、より多様な発想を取り入れたい。また「持続できる自治体経営には若い女性の地域参加が必要ではないか」という課題もあった中、全国の学生から新たな事業を募集する「鯖江市地域活性化プランコンテスト」の大人版を初めて開催したところ「女子高校生だけで編成されたプロジェクトはどうか」という提案がありました。

当時は、女子高校生はまちづくりから遠い位置にあるとされていた存在ですが、常にブームの起点となり、自由で豊かな発想を持っています。 彼女たちなら大人たちを巻き込みつつ、これまでにない変化を起こせるのではないか、という期待から鯖江市役所JK課の事業化が決まりました。

2014年に発足されたときのJK課
提供 鯖江市

しかし、プロジェクトが発表されると、1週間で100件を超える批判のメール・電話が全国から殺到します。 その多くはJKというネーミングに対して「隠語ではないか」「行政が使うにはふさわしくない」という内容です。

ただ、そういった批判の大半は県外からで、鯖江市内からはほとんどありませんでした。 と言うのも、プロジェクトが始まる前から住民の方々に対しては、シンポジウムを開催し、丁寧に説明を行って一定の理解を得ていたからです。

現在は、地元に対する愛着を持つ子が増え、まちづくりにおける女性活躍の先進事例として取り上げられることもあり、多くの人から応援の声をいただいています。 また、JK課の成功をきっかけに、OC(おばちゃん)課が立ち上がるなど、世代を超えた横の展開が生まれたことや、若者と一緒に何かやってみようと考える住民の方が増えたという印象です。

さらに、県全体で女性の転出率増加が顕著でしたが、JK課卒業生の中から地元に残り、公務員として2名採用されるなど、若者たちにとって鯖江市が「ただ住む場所」から「居場所になった」という変化も、この事業の大きな成果だと考えています。

鯖江市役所JK課の活動内容は?素朴な発想から大きな反響へ

――具体的にどのような活動があるのでしょうか。

若手パティシエ・グループと協働してオリジナルスイーツの開発、ローソンの新商品コラボなど多岐に渡り、その活動は高校の家庭基礎、家庭総合の教科書へ掲載され、現代社会の副読本の表紙にも抜擢されるなど広く認知されていますが、恒例のイベントとしては、ごみ拾い企画「ピカピカプラン」があります。 こちらは、JK課1期目から続くイベントで「通学路に落ちているごみを何とかしたい」という素朴な想いから始まったものですが、今のSDGsにつながる素晴らしい取り組みです。

2023年はピカピカプランで集めたごみ(ペットボトル)をリサイクルし、サングラスを製作するという取り組みもありました。 作成したサングラスはメガネの産地である鯖江市の象徴と言える「めがねミュージアム」で販売され、これが全国版のテレビで放送されるなど、たくさんの反響をいただいています。

鯖江JCの60周年記念事業として旧丹南高校でフォトスポット制作
提供 鯖江市

最近では、市内の保育園・幼稚園児たちの交通安全教室用の信号機の製作、フォトスポットイベントの開催、福井県や福井県産婦人科医師連合と協働し、子宮頸がんワクチンの啓発活動などが挙げられますが、どれも大人たちにとって耳あたりの良いPRをするのではなく、彼女たちが実現したいことを重視しています。

2015年に総務大臣賞を受賞
提供 鯖江市

また、その活動が評価され、平成27年度ふるさとづくり大賞「総務大臣賞」や、平成30年度国土交通省地域づくり表彰「全国地域づくり推進協議会会長賞」といった賞もいただきました。

JK課はまちづくりと若者たちの居場所に

――最後に、鯖江市役所JK課は今後どのような形を目指しているのでしょうか。また、2014年から10年続いたJK課は、鯖江市にとってどんな存在なのか教えてください。

鯖江市役所JK課は、地元の女子高校生による、自由なまちづくり活動を表現している象徴的事業であり、今後もメンバーの主体性・自主性を尊重していきたいと考えています。

また、メンバーには誰かに押し付けられるのではなく、自分の住む地域に興味や関心・愛着を持ち、日常生活の中で気軽に地域活動に参加し、JK課卒業後も自分事として楽しみながら協働のパートナーとしてまちづくり活動を続けてもらいたいと願っています。

JK課は若者たちの居場所をつくり、鯖江市の未来をつくる
提供 鯖江市

そして、鯖江市役所JK課は、当初は批判のある中でのスタートしたプロジェクトではありますが、現在は女子高校生を中心に「若者が自分を発揮できる新たな居場所」になったと考えられています。 行政が若者の居場所と出番を用意し、そしてサポートに徹することで、現在は市民主役事業の1つとして成立しました。

市としては今後もふるさと愛を育んでいただくために、これからも若者の居場所づくりと出番の創出に努めてまいります

参考:鯖江市役所JK課 公式ページ
参考:鯖江市 鯖江市役所JK課プロジェクト

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