バッタが大量発生!食料危機をもたらす蝗害の被害や原因とは?

バッタが大量発生!食料危機をもたらす蝗害の被害や原因とは?

この世界には、災害により作物が失われてしまい、食料不足に陥ることがあります。 災害と言えば、大雨や台風、日照りなどが想像されますが、虫の大量発生もその一つです。

実際に、2020年の2月、アフリカのソマリア政府はバッタの大量発生により、国家非常事態を宣言したほどです。 バッタの大量発生による災害、蝗害(こうがい)とはどのような被害をもたらすのでしょうか。

バッタが大量発生で食糧危機!蝗害とは?

2020年の2月、東アフリカでバッタが大量発生しました。 あらゆるものを食べ尽くすバッタは、農作物に大変な被害をもたらし、ケニアやエチオピア、ソマリアで食糧危機を引き起こしました。

このような、バッタ類の大量発生による災害を蝗害と言います。 日本ではあまり見られない現象ですが、蝗害は古くから世界中で恐れられている災害です。 中国やヨーロッパでは、紀元前から蝗害による被害の記録があり、神の仕業として例えられることもありました。

そんな蝗害が2020年も猛威を振るいました。東アフリカで発生したのは、サバクトビバッタという種類で、いくつもの国で被害が出ています。 東アフリカから被害は拡大し、パキスタンやインド、中国まで広まりつつあります。 この状況に対し、中国は専門家を国境地域に配置して観測を強化、侵入防止策を準備しています。

バッタの大量発生による世界の被害

バッタが大量発生することで、世界各地で被害が起こっています。 その事例をご紹介します。

アフリカ

2020年2月よりも以前に、アフリカでは何度も蝗害が起こっています。 2013年に起こったマダガスカル蝗害は、トノサマバッタが大量発生し、農作物や牧草に被害が発生。 2013年3月時点の国際連合食糧農業機関による試算では1,300万人に被害が及び、必要な緊急支援費は2,200万ドルと見積られました。 2007年もエチオピアでサバクトビバッタが大量発生。北ソマリア経由でインド洋を飛び越え、パキスタン、インドにまで到達したと報告されています。

中国

中国も古くから蝗害による被害の記録が存在しています。 12世紀には本格的な対策が考えられるようになり、村単位で管理や予防が事実上義務化されていました。

その後も対策が行われていましたが、現代も蝗害がなくなったわけではなく、2005年の夏も海南省で被害が発生しています。 2020年6月、ラオスから雲南省へバッタの侵入が見られた際は、小型無人機によって防除作業が行われました。

中東・南アジア

1980年代のアフガニスタンではモロッコトビバッタのによる被害があり、紛争と重なって深刻な飢餓に発展しました。 国際連合食糧農業機関は2002年から対策を開始。2005年5月ごろの一掃作戦では幼虫の駆除に成功しています。

2019年もインドのグジャラート州でバッタが大量発生し、農作物に大きな被害が出ました。 この地域では鍋など金属を打ち鳴らし、バッタを追い払う風習が残されていたため、古くから大きな被害に悩まされてきたとが垣間見えます。

アメリカ

アメリカではロッキートビバッタによる被害が見られました。 1819年はミネソタ州が襲われ、地面に10センチ以上ものバッタが積もったという記録が残されています。

1870年代にはグレートプレーンズにロッキートビバッタが発生。当時の計算によると1,240億匹以上のバッタが発生したと記録されています。 ただ、1879年を最後に大規模な群れは観察されず、1902年ごろにロッキートビバッタは絶滅。その理由は現在も不明です。

日本

日本は狭く平原が少ないことから、トノサマバッタが集団生活をする条件が整いにくく、比較的に蝗害の被害は少ない地域です。

日本で発生した有名な明治初期の北海道で発生したケースです。 1875年9月の台風直撃によって未曽有の大洪水が発生。その影響でイネ科の植物が生い茂る草原が出現し、数年間好天が続いたため、トノサマバッタの繁殖に適した環境が整いました。

1880年、ついに北海道で大量のバッタが発生し、各地で壊滅的な被害をもたらし、政府は本州へ波及することを懸念します。 調査と駆除が行われましたが、蝗害は続き、最終的には1884年9月の長雨によって多くのバッタが繁殖に失敗し、この事件は終息を迎えました。

バッタが大量発生する蝗害の原因とは?

なぜ、バッタが大量発生してしまったのでしょうか。 それは、繁殖環境の変化が大きく関わっています。

普段は単独行動を好むバッタは「孤独相」と言われますが、環境の変化によって、集団行動を取る「群生相」になります。 この変化を「相変異」と言い、蝗害と大きな関りを持つのです。 相変異は、砂漠では珍しい大雨があると起こります。 普通であれば、乾燥地では雨が少ないため、バッタの餌となる草はすぐに枯れてしまい、彼らは新しい生活の場を求めて旅立ちます。

しかし、大雨が降ると、草が枯れずに残る期間が長く、高い繁殖力を持つバッタは数世代連続で生まれるのです。 そして、仲間が多くなったバッタは別の個体との接触が多くなり、この刺激が相変異を起こさせます。 孤独相から群生相に相変異したバッタは、翅が長くなり、色も変化し、群れて行動するようになるのです。

2020年も、気候変動によってインド洋の海面温度が上昇し、多くの雨やサイクロンが発生したことが、サバクトビバッタの大量発生につながった、と考えられています。

大量に発生するバッタの対策として食料に

大量発生し、農作物をあっという間に食い尽くしてしまう蝗害ですが、どのような対策が取られているのでしょうか。 蝗害対策は、国際連合食糧農業機関(FAO)という世界の飢餓撲滅や食料生産の改善を目的とした、国連の機関によって行われています。

各国により、殺虫剤でバッタを駆除するにも、1日で150キロを移動するため、結果はいまいち…。 そのため、最新鋭のドローンを使い、大群を追跡して殺虫剤を撒く計画も立ち上がっています。

このバッタの大量発生…流行りつつある(?)昆虫食で解決できないか、と考えた人も多いのではないでしょうか。 しかし、このサバクトビバッタは1km2の中に、約4,000万匹も発生しているため、捕らえることも難しければ、とても食べられる量ではありません。 また、バッタは外骨格や足が硬く、消化に悪いことから、処理も大変であまり昆虫食に向いていないのだとか…。 蝗害だけでなく、災害対策はどれも困難なものばかりですね。

バッタの大量発生は自然の猛威

このように、蝗害はとても恐ろしい自然の猛威です。 これら災害は環境問題との関係も指摘され、人間が自然のバランスを崩してしまうことで、頻繁に起こってしまうとも言われています。

私たち一人一人が環境問題に対して、大きな変化をもたらすことは難しいことです。 しかし、すべての人が無関心でいたら、環境問題は悪化するばかりでしょう。 ぜひ、少しずつでも自然やエコに関する意識を高め、環境の改善を目指しましょう。

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