新型コロナウイルスと闘うー大阪と埼玉のリユースと廃棄物処理の現場を見る

新型コロナウイルスと闘うー大阪と埼玉のリユースと廃棄物処理の現場を見る
浜屋の大阪支店は、大阪府岸和田市の埠頭の近くにあり、前は海が広がっている。コンテナを積んだトラックが手前に、不用品回収業者のトラックが次々とやってくる。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

新型コロナウイルス感染症の拡大で、工場が閉鎖されたり、人の行き来が途絶えたり、イベントがなくなったり。経済社会に大きな影響が出ています。住宅街を回って家庭から中古の家電製品など不要品を回収する人たちも同様です。少しでも接触を避けたいという消費者心理が働くのを懸念して、「安全と安心」を持ってもらいたいと、回収業者の多くはマスクを着用してハンドルを握って回っているようです。回収量の減少はリユース業界の縮小につながりかねません。

また、マスクを廃棄する方法がわからず、自治体に問い合わせをする消費者もいるようで、環境省はホームページで処理方法のチラシを掲載しています。リユース業界や廃棄物の処理業界では感染を防ごうと、マスクの着用と手洗いの励行に必死です。これらの人々はどんな行動をとっているのか。大阪府と埼玉県を訪ねてみました。

併せて大阪府知事や東京都知事が行動自粛を訴えるのに使った説得力のある大学教授の現状分析と提言書も紹介しましょう。

ジャーナリスト 杉本裕明



不要品回収業者の回収量が減少

大阪府岸和田市の(株)浜屋の大阪支店。大阪湾のすぐそばの倉庫などが並ぶ一角にある。浜屋は中古品の家電製品や雑貨などを、不要品回収業者や大手量販店などから買い入れ、途上国を中心に輸出する業者の最大手だ。全国の支店網の中で大阪は埼玉と並んで扱い量が多い。

大阪湾に面した大阪支店を訪ねると、トレーラーに積んだ大型コンテナ(40フィート)に、マスクをつけた社員2人が冷蔵庫などを積み込んでいた。大阪南港から海外に向かう予定だという。この大阪支店に集め、保管された中古品の家電や家具、日用品、衣類などは、タイ、フィリピン、カンボジアなどに向かっていく。だが、今後、それらの国に新型コロナウイルスの感染の影響が出はじめた時にどうなるか。

大阪支店で中古品をコンテナに積み込む社員。二人ともマスクをし、真剣だ。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

難しい時期の支店を切り回すのが高橋淳支店長だ。宮城県出身の40歳。17年前に入社し、仙台市店から札幌支店長、千葉支店長を歴任。この1月に大阪支店長として赴任した。西日本の支店を統括する西エリアマネジャーの要職も兼ねる。

高橋支店長が言った。「回収業者さんはがんばっておられますが、このコロナウイルス問題で、回収業者さんとの接触を避ける動きがあるようです。なんとか不要品の回収に影響が出ないようにと願っているのですがーー」

浜屋大阪支店の高橋支店長は千葉支店長から1月に転勤したばかり。「お客様の気持ちを大事に」がモットーだ。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

回収業者に聞くと、こんな声が聞こえてきた。「住宅地を回るが、反応がもう一つよくないんや」。これはマイクで呼びかけながら、住宅地を回る人だ。消費者は人との接触を避けようと無意識に反応しているのかもしれない。回収業にはもう一つ、事前に回収日時を書いたチラシを配り、その日に玄関先に出してもらい、回収業者が受け取りにくるやり方がある。いまはこのチラシ型が増えている。ある業者は「これだと接触がないので、影響は少ない」。

大阪支店の事務所に入ると、受付で売却した中古品の代金を受け取っていた不要品回収業者はマスクをつけていた。

受付の奥村江利さんはマスクをひとときも外さず応対している。
「私は貝塚市から通っていますが、手洗いをこまめにしています。うがいも励行。お客さま(回収業者のこと)の多くはマスクをしていますが、していない方もいます。でもお客さまに『付けてください』と強制することは難しい」

大阪支店の受付でパソコンに向かう奥村江利さん。「職場でも、自宅でも、手洗い励行です」。
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そのかわりに、マスクを持っていない回収業者に無料でマスクを提供しているという。 大阪支店で働く18人の社員の多くは岸和田市と貝塚市から通っている。高橋支店長は「年齢は23歳から60歳まで。社員たちは回収業のお客さまといい関係を保てるよう心がけています。私のモットーはお客さまにどうしたら喜んでもらえるか考え、それを実行すること」と話す。 インタビューの合間に、高橋支店長は、回収業者に優しく声をかけ回っている。新任の支店長なので早く顔を覚えてもらわねばならない。良い関係をつくって信頼を得ようと努力していることが手に取るようにわかる。

専門家会議の新型コロナウイルス対策の指示

大阪支店の構内には手洗い場があり、社員たちは1日最低三回は丁寧に洗っている。もちろん、不用品回収業者さんたちも利用する。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

そこへコロナウイルスが襲った。2月後半、本社からコロナウイルス対策の指示が来た。

  • 検温を全社員実施、毎朝確認する。37度を基準とし、それを超えたら自宅で待機する
  • マスクは全社員着用義務(会社配布)
  • うがい手洗いの注意喚起
  • バランスのいい食事、十分な睡眠の喚起(免疫力を高めるため)
  • 私生活でも感染の予防の注意喚起など

大阪支店では全員がマスクをつけて働いているが、マスクの調達はどうしているのか。 本社の人事総務部は「マスクの調達については、懇意にさせていただいているお取引先から2,000枚いただいたり、取引先から購入したりして、足りなくなりそうな事業所に送っています。ただ今後コロナの影響が長引くことを考え、マスクを洗って使用するように、洗い方と合わせて呼び掛けています」と話す。

浜屋大阪支店(大阪府岸和田市)では、支店事務所に紫外線を出すクリーナーを設置(お茶などの給湯器の左隣のガラスの棒で組んだ形のもの)。閉店後に動かし、店内を殺菌している。隣には、マスクの着用をお願いする紙が貼られている。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

本社では、加湿器を設置し、中に次亜塩素酸水の希釈水を入れて使っている。 大阪支店では、朝10時と昼休み、午後3時の休みの3回、社員たちが手を洗うことを励行している。出社前には体温計で検温が義務づけられ、37度を超えると自宅待機が義務づけられているという。

マスク着用でフォークリフト操作(浜屋所沢支店)。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

大阪支店のカウンターの横には、紫外線のクリーナーが設置されている。高橋支店長は「お客さんから提供され、設置しました。効果があるということで、タイマーをかけて、午後6時ごろから1時間稼働させて、事務所の室内を除菌しています」と話す。 大阪支店の作業現場を見た。先のコンテナに家電製品を積み込む作業の傍らでは、フォークリフトに乗った白マスク姿の社員が、家電製品を乗せて倉庫に運びこんでいる。

マスク姿で、検品の結果をiPadで確認する大阪支店の辻林宏典さん。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

倉庫の中では、回収業者がトラックで運び込んだ不要品を、社員が、iPadを手に検品作業をしていた。「〇〇は〇〇円。これはーー」。値段つけをするのだが、年式や汚れなどによって買い取り価格が違う。検品と値付けが終わった画面を回収業者さんに見せて、オーケーをもらうと、回収業者は、事務所でお金を受け取る。いくらで買ってくれるのか、やや厳しい顔つきだった回収業者さんは、お金を受け取る時には和んだ顔つきになっている。

大阪支店に中古品を持ち込む不用品回収業者のトラック。マスクは必需品だという。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

窓口でお金をもらうと、回収業者はトラックの運転席に乗り込み発進。浜屋の社員が「ありがとうございます」と、大きな声でお礼の言葉を述べる。検品をしていた辻林宏典さんは「いつも気を付けて手洗いを励行していますよ。もちろんマスクは欠かせません」。 大阪支店ではこれまで年に5回、会社の補助を得て懇親会をしていた。社員同士が気を許して語らう場だったが、いまは中止しているという。

消費者がおっくうになっている

回収業者たちに聞くと、消費者が中古品を出す行為が鈍っているようだという。
「住宅地を回ってもこれまでのように心やすく出してくれなくなっている。感染を心配して接触するのを嫌がっているのかもしれない」(ある回収業者)。「うちは解体業者などを回るので大きな影響はないが、それでも減っている。これからが心配」(別の回収業者)。経済活動が鈍り、それが影響を与えているという。

高橋支店長は回収業者たちから事情を聴いている。こんな背景を推察する。
「チラシを配って、自宅の玄関先に置いておき、あとから回収して回る方式は接触感染の恐れはありません。ただ、もうひとつのマイクで呼びかけて回って集めるやり方は、消費者と回収業者が顔を合わします。玄関先なら野外なのでほとんど問題がないとは思いますが、家電製品など重い中古品を運ぶ場合は、回収業者が家屋に入ることもあります。見知らぬ人、あるいは知った人でも、できるだけ接触することを消費者は心配しているのかもしれません」

大阪支店の事務所ではマスクの着用をお願いする文書を掲示している。

埼玉県では

今度は関東地方に目を転じよう。

埼玉県の4月7日の感染者は219人。県は情報公開に積極的で、確認された感染者の居住地、性別、年代(40代とか)、濃厚接触者の状況(ご家族2名健康観察中とか)を公開している。隣の東京都は同7日現在で1,195人。

小池百合子都知事は3月28、29日の週末の外出を控えるよう都民に要請すると、埼玉県の大野元裕、千葉県の森田健作知事も東京都への不要な移動を控えるよう県民に要請し、協力体制をとった。しかし、平日埼玉県から東京都の職場に移動する人も多く、移動の制限は難しい。不要品回収業者もそうだ。埼玉県東松山市にある浜屋の本店、所沢市にある所沢支店には、県内で活動するだけでなく、都内を活動拠点にしている不要品回収業者も中古品を持ち込んでくる。

所沢市で「やっぱりマスクだね」

どんな状況なのか。所沢支店を訪ねた。

マスクをつけた不要品回収業者が軽トラックの窓を開けて話してくれた。
「住宅地を回っても接触を避けたいのか、影響が出ているようだ。私はチラシを配って、中古品を集める日時に玄関先に出してもらうようにしている。スピーカーで呼びかけるのに比べたら、消費者と接触することがないから安心して出せる」

別の業者はポケットからマスクを取り出した。筆者に配慮し、マスクをつけて話してくれた。
「マスクをつけるよう心がけています。私は電器店を中心に回っています。店内に入って店主さんと会話になるので絶対マスクです。コロナウイルス問題で不安が広がっているからか、消費者が壊れるまで電気製品を使おうとする雰囲気が強まっているとのことでした。これまで通り中古品を提供してくれるといいのですがーー」

所沢支店の事務所の扉に、マスクの着用と手の消毒を呼びかけた紙が貼られている。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

所沢支店の事務所の入り口には、二枚の張り紙があった。一枚は、「おねがいマスク着用にご協力下さい」とマスクの絵を描いた紙。もう一枚は、「入退室の際は手指の消毒をお願いします」。アルコール消毒液を手に刷り込む絵が添えられていた。店長の若生陽介さんは「3月から支店の従業員全員はマスクを着用。1日3回、手を洗っています。そして出社時の検温。感染者が出ないよう心がけています」と話す。 新型コロナウイルスに感染するのは次の3条件が重なる場合と言われる。一つは換気の悪い密閉空間、二つは大勢がいる密集場所、三つは近距離での会話屋や発声。これを見ると、不要品回収業者の回収作業は3条件を満たすものではなく、室内をできる限り避ける、受け渡しや会話は距離を保つことなどに配慮すれば、それほど問題はないようだ。

不用品回収業者も所沢支店の若生支店長もマスクの着用を励行。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

ただ、「安全」と「安心」とは違う。実際のところ、回収業者のマスクの着用率はあまり高いとは言えない。「安心」のイメージを高めるためにも、業界全体でのマスク着用、手洗いの励行が望まれるところだ。

国や大阪府から次々と通知が

大阪市にある公益社団法人大阪府産業資源循環協会の事務局を訪ねた。マスクをしながら松田裕雄専務理事が語る。「コロナ対策で国や大阪府から次々とFAXやメールが入っています。感染性廃棄物の扱いについての注意喚起と、処理方法の確認です」

文書を見せてもらった。 大阪府を経由し、環境省の「新型コロナウイルス感染症に係わる適正処理等について」という通知が送られてきたのは3月4日のこと。感染性の廃棄物の扱いについて、新型コロナウイルスとそれ以外の場合と区別するのかどうかということに触れていた。結論は区別せずに処理せよという。

廃棄物を適正に処理しつつ、それ以外の廃棄物の処理も安定的に行われるべきだとし、「医療関係機関等から排出される感染性廃棄物についてはマニュアルに基づき適正に処理すること」「正当な理由なく、新型コロナウイルス感染症に係わる廃棄物とその他の感染性廃棄物の分別や特別な表示を求めることは慎むよう周知すること」としていた。特別扱いせず、感染性の廃棄物としてこれまで通りやってくださいという。

マスクの取り扱いについても触れている。環境省は新型インフルエンザが流行した時に処理の方法を示したガイドラインを作成している。

マスクはゴミ袋に入れてしっかり縛る。汚れたマスクに触れないこと

それによると、「新型インフルエンザの感染者が使用したマスクやティッシュ等の呼吸器系分泌物が付着した廃棄物はごみ袋に入れ、封をして排出するなど、通常のインフルエンザの感染に伴い家庭から排出される廃棄物と同様の取り扱い方法で適正に処理されれば、廃棄物を媒体とした新たな感染をもたらす恐れはないと考えられる」。

役所らしい回りくどい表現だが、これまで通りのやり方で大丈夫と言っている。 また自治体が、住民から問い合わせがあった場合には、これと同様の取り扱いとすることで「感染を防ぐことが可能だ」と説明するように求めている。マスクは普通のごみとして扱えば良く(ただし、接触しないことが重要)、ごみ袋に入れ、しっかり封をして排出してほしいと言っている。

環境省が示したマスクの捨て方(環境省ホームページから)。

これをまとめたチラシは環境省のホームページでも掲載されている。 感染系の産業廃棄物を扱っている関東地方の処理業者は「他の感染系廃棄物と同様、密閉した容器に入れて、完全焼却をしています。その間に作業員が容器を空けたりすることはありません」

この会社では授業員がつけるマスクの確保に苦労している。社内感染のリスクを減らすために、営業職は毎日会社に出社する必要はないとし、まとめものを行う仕事などは自宅で行っても良いと指示しているという。

参考:環境省 新型コロナウイルスなどの感染症対策としてのご家庭でのマスク等の捨て方

廃棄物の取扱量が減少の動き?

さて、この環境省の通知は、自治体だけでなく、全国産業資源循環連合会とその傘下の地方組織を通じて1万5,000社の加盟業者に流された。

環境省の環境再生・資源循環局の担当者は「新型インフルエンザのときにガイドラインをつくったが、それと同じ対応をしてもらえばよい。新型コロナを特別に扱うと、かえって業務に支障を招く。市町村も住民から質問があった場合には、そのように説明してほしい」と話している。

こうした衛生・安全面での国からの要請はともかく、廃棄物の量が減少し、処理業者に影響が出ているようだ。関西地方のある処理業者は、新型コロナの影響で取引のある工場が操業を一時止めたりしたため廃棄物の取扱量が減り、「かなり深刻な状況」という。一方、関東地方の業者は「いまは影響はほとんど出ていないが、先行きが心配です」。別の処理業者も「こんな様子なので悪化しなければよいが」と不安を漏らす。

動脈産業の活動が鈍れば、当然静脈産業も影響を受ける。2008年夏に始まったリーマンショックの時もそうだった。産業廃棄物は08年度から09年度にかけて1,400万トン(3・5%)減少した。家庭ごみも前年度の5,082万トンから08年度に4,811万トンに、09年度は4,625万トンに減った。一般家庭の消費が冷え込んだのが主な原因とみられる。

吉村大阪府知事と小池都知事が引用した大学教授の警告文書

ところで、吉村洋文大阪府知事が、三連休を控えて兵庫県との往来の自粛の呼びかけを行い、兵庫県の井戸敏三知事が「事前に協議がなかった」と不快感を表し、ぎくしゃくしたことがあった。その際、吉村知事が根拠とした資料を紹介したい。厚労省のコロナ対策本部クラスター班の専門家の西浦博北海道大学大学院教授が作成した資料「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)」。厚労省が自治体に流した内部資料扱いのものだ。

西浦教授は「現状分析」として

「感染源不明(リンクなし)症例が感染世代(5日程度)ごとに増加。1人が生み出す2次感染者数の平均値が兵庫県で1を超えている→みえないクラスター連鎖が増加しつつあり、感染の急激な増加が既に始まっていると考えられる」
「感染者報告数がこれから急速に増加し、来週には重傷者の医療提供が難しくなる可能性あり」

必要な対策として

段階1警戒段階
「大阪府・兵庫県全域で、今後3週間の市民の感染対策の強化の呼びかけ。学校休校・イベント中止の呼びかけの継続、大規模イベントの自粛の呼びかけ継続、感染拡大リスクの高い(3要素を満たす)施設の使用自粛、集会の自粛の呼びかけ、大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」

段階2積極的介入段階
「全域の不要不急の外出自粛の要請(緊急事態宣言も考慮)、施設の使用制限(同)」
医療提供体制の確保
(以下略)

ここに書かれているのは、首都圏でもまったく通用する内容である。

「空から次々と焼夷弾(しょういだん)が降っている状態」

西浦教授はさらに幾つかのグラフを使って警告を発している。

一つは大阪府と兵庫県での感染源不明発症者数のグラフ。感染から発症までに平均5日あるが、その5日ごとに感染源が不明な感染者が増加しているという。東京で現在、大きな問題として浮上している問題をここで提起している。これを防がないと、パンデミックを起こす可能性が高い。

もう一つは、イタリア、イランの急激な感染者数の推移を示したグラフだ。急激に右肩上がりになっている。教授が示したグラフは3月中旬までのデータで、最大で約1万5,000人。3月30日現在イタリアは10万1,739人、イランは同4万1,495人だから、さらに急激に増えていることがわかる。ちなみに米国は同15万3,246人で最大である。

西浦教授は、欧州などでは国レベルでの急速な増加が見られ、1つの地域で集中的に、指数関数的(2倍、3倍といった増え方でなく、10の2乗といった増え方を指す)に増加することが特徴。2~3日で新規患者数が倍増。急速な増加が始まると、増加を認識してから1週間以内に圏域内の医療体制に莫大な負荷がかかるーーと指摘している。

西浦教授はまた、医療従事者用のサイトに投稿している。中国から帰国した1~2月上旬を「ミサイルが5~10発命中した程度」なら、3月は「空から次々と焼夷弾(しょういだん)が降っている状態」。火事を一つ一つ止めるために、50人以上の大規模イベントへの参加、3条件(密閉空間、濃厚接触、大きな声で会話・発声)の重なるスポーツジム、ライブハウス、展示商談会、接待飲食、懇親会などを控えるよう求めている。

この西浦教授の分析や警告は、その後、小池都知事も都民に自粛の要請をした際に使い、記者会見に同席してもらい、危機を訴えた。 西浦教授の懸念が杞憂(きゆう)に終わるのか、それともそうでなくなるのかは、まさに人々の行動にかかっている。

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