廃プラのリサイクル!企業や自治体による対策や有効活用法は?

廃プラのリサイクル!企業や自治体による対策や有効活用法は?

中国は環境規制の影響で、2017年末に廃プラスチックの輸入を全面的に禁止した。それに追随するように中国の代替国となっていた東南アジアなども廃プラの輸入に規制をかけ始めた。日本を含めた先進国各国は、廃プラ処理を今まで輸出に頼ってきていたため、今後、持続可能な社会の実現には、自国でのリサイクルが必須となってくる。

そんななか、政府は、廃プラ問題の解決に向けて審議会などを定期的に開いている。経済産業省は6月23日に有識者たちが意見交換を行う「第3回中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループの合同会議」を開催した。そのなかで、先進的な取り組みをしている企業・自治体の事例が発表されたのでいくつか紹介する。

パナソニック、高度な選別技術で製品の再生プラスチック利用を増加

パナソニックは、サーキュラーエコノミー(循環型経済) の実現に向けて、自社で設計・調達・生産・リサイクルまで一貫して行うことに力を入れている。

使用済み家電製品から廃プラを取りだし、異物を除去した後、強度と寿命を回復させ、エアコンのフィルター枠や冷蔵庫のカバーダクトなどに使用している。

再生プラの利用量は、年々増加しており、2014年度はわずか1万6,000トンだったのが、2018年度は7万9,000トンまで増加した。

再生プラの活用を可能にしているのは、パナソニック独自の高度な選別技術だ。近赤外線センサーを駆使して、コンベアから流れてくるPP・PS・ABSの種類の異なるプラスチックを識別し選択的にエアーで吹き落としている。選別されたそれぞれの再生プラの純度は99%以上を誇る。

CO2削減の取り組みとして、ほかに植物由来のセルロースナノファイバーを添加した複合樹脂を開発。コードレス掃除機などにすでに使用されている。

品質・環境本部環境経営推進部サーキュラーエコノミーユニットの石橋健作氏は「こういったサーキュラーエコノミーの取り組みは1社だけでは難しいので、今後は競合他社との連携も視野に入れています。また、循環に最適なサプライチェーンの構築にも努めていきたいです」と考えを示した。

ほかに、石橋氏は、「リサイクルを前提とした解体のしやすさを視野に入れた組み立て方などが、製造ラインのロボット化やデジタル化などの影響もあり、普及し進んでいくのではないでしょうか。また、工場から発生する廃プラに対して売り手と買い手がマッチングするようなプラットフォームサービスができればいいのではないかと思います」とした。

ライオン、3R+ Renewable へ

ライオンは、資源循環型社会に向けて3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(持続可能な資源)を推進し、2050年までに製品に使用する再生プラおよびバイオマスプラスチックの使用量を倍増することを目標に掲げている。

具体的な取り組みとして、製品の濃縮化や、詰め替え用ボトルの販売で、プラスチック容器を小さくしたり購入する頻度を少なくしたりすることで、プラの使用量を削減している。

また、台所用洗剤容器には再生PETを使用し、衣料用洗剤容器にはバイオマスプラスチックを活用して再資源化している。

ほかに、使用済みハブラシを全国で回収している。2015年から行っており、全国で延べ約62万本を回収した。ただ、同社ではハブラシは年間で数億本販売しているため、さらなる回収量増加が課題だとしている。

今後、2030年までに容器・包装で使用する化石資源由来のバージンプラスチックを25%排出抑制する計画だ。新しい素材・構造の開発を進めたり、新しい品質基準を設定したりするという。

生産技術研究本部執行役員の岡野知道本部長は、「製品のリサイクルやプラの使用量削減などに関しては、業界全体で取り組まないとならない問題だと考えていますので、同業他社との連携も今後必要だと思っています」と話した。

すかいらーくホールディングス、ストローやレジ袋を石油由来からバイオマスプラスチックへ

国内外で約3,200の店舗を展開する外食チェーンのすかいらーくホールディングスでは、2019年7月までに全業態でドリンクバーに設置している石油由来のプラスチック製ストローを廃止し、ストローが必要な客には植物由来のバイオマスストローを提供している。

これにより、プラスチック製のストローを年間約1憶本の削減に成功し、CO2を年間約67%削減したと発表した。

ほかに、宅配・テイクアウト用レジ袋(年間使用枚数約1,500万枚)とカトラリー(ナイフ、スプーン、フォーク)を石油由来のものからバイオマスプラスチックに変更した。

今後の取り組みとして、2020年内に箸袋をプラスチック製から紙製に変更し、2020年9月から、弁当容器を石油由来のプラスチック以外の素材に変更予定だ。

日本チェーンストア協会、店頭回収量増加に向けて

東急ストアやイオンなどのチェーンストアを営む企業などからなる日本チェーンストア協会は、「地球温暖化の防止」と「循環型社会の構築」を2大柱として「環境保全自主的行動計画」を1997年から定めている。

具体的な取り組みとして、例えば商品の容器は高さを低く設計し、重量を20%削減していたり、各種詰め替え商品の販売や食品トレイなどの店頭回収をしたりしている。

ただ、近年、店頭回収量は横ばいか減少している品目が多いという。問題点として、「回収ボックスへの異物混入や不分別」「回収ボックス増設や回収頻度の変更、人員による回収コストの増加」「リサイクル業者がいない地域や契約できなくて処理に苦慮する事例」「回収した資源の運搬に際し、自治体により解釈が異なる点」などが挙げられ、これらの問題点を解決していきたいとした。

全国地域婦人団体連絡協議会・市民団体の環境への取り組み

全国48団体からなる全国地域婦人団体連合協議会(地婦連)は、1952年に設立された。男女平等の推進や、家庭生活並びに社会生活の刷新に努めることなどを目的に掲げている。

当団体は、物品販売斡旋を行う「ちふれ化粧品」(地婦連から名前がとられた)が、1974年6月25日に日本でいち早く詰めかえを始め、プラスチック削減に貢献した。ほかに、全国にある地婦連では、レジ袋の削減、ペットボトル回収運動などを数十年前から行っている。

団体の一つである富山県婦人会では、昭和60年代からマイバッグ持参運動を展開。平成20年には、全国で初となる富山県内全域のうちスーパーなど28社・208店舗でレジ袋無料配布の廃止をスタートさせた。この取り組みには、小泉環境大臣も昨年視察に訪れ、令和2年7月から始まった全国レジ袋有料化のモデルになったという。

また、「とやまエコ・ストア制度」を立ち上げ、店頭での資源回収に取り組む事業者を応援。資源回収量は着実に伸びており、平成25年は1,768トン(うちプラ969トン)だったのが平成30年には3.506トン(うちプラ1,728トン)まで増えた。

今後は、プラスチックトレイを削減するべく、富山県内のスーパーと協力し商品を袋・ラップ・ばら売りに入れるノートレイにしたり、紙主体トレイ・紙トレイ・バイオマスプラスチックトレイなど代替トレイにしたりするためのモデル事業を実施していく予定だという。

岩田繁子会長は「国民一人ひとり が、もっと地球温暖化の問題に目を向けてほしい。そのための活動を今後継続していく予定です」とした。

日野市、プラスチック分別収集で資源化率向上へ

東京都日野市では、プラスチック類のごみが増加し不燃ごみの約8割を占めていることで、資源化率が低迷している。そのため、今年1月から不燃ごみに入れていたプラスチックと、無料で回収している発泡スチロール・トレイを一括でプラスチック類ごみとして分別収集を始めた。

回収したプラスチックがそれぞれ、容器包装プラは日本容器包装リサイクル協会へ、製品プラはRPFにして再資源化している。廃プラリサイクルの施設運転費は、年間約1億7,500万円かかっているという。

このプラスチック分別収集により、焼却ごみの削減につなげ、令和8年までに廃プラを含む資源化率を45%までに上げるという目標を掲げている。

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