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最終処分場の仕組みとは?日本が世界に誇る福岡方式 田中綾子教授 インタビュー

最終処分場の仕組みとは?日本が世界に誇る福岡方式 田中綾子教授 インタビュー

私たちは日々の生活の中、必ずごみを排出しています。 そのごみが行き着く先は「最終処分場」であることは、多くの人が知るところです。

しかし、最終処分場は具体的にどのような施設で、どのような仕組みとなっているのでしょうか。 最終処分場の仕組みや寿命について、福岡大学工学部工学部、資源循環・環境工学専攻の田中綾子教授に伺いました。

最終処分場の区分と行き着くごみの種類

――私たちは最終処分場の存在を知っていても、具体的にどのような廃棄物を受け入れているのか、理解していないことがほとんどだと思います。最終処分場とは、どのような廃棄物を受け入れる施設なのか教えてください。

まず廃棄物は、種類や成分が同じものであっても産業廃棄物と一般廃棄物の2つに分類されます。 産業界から運ばれるもののうち、法令で規定された20種類の廃棄物が産業廃棄物で、市民から排出され自治体が処理するものが一般廃棄物です。

一般廃棄物を受け入れる最終処分場は、1970年以前は家庭から出たすべてのごみが、何も処理されることなく、直接送られてくることが当然でした。 しかし、比較的に温暖で雨の多い日本で、そのような処理を行うと、微生物が繁殖したり、悪臭が発生したり、さまざまな問題が出てしまいます。 それを解決するため、1970年代に本格的に導入されたものが、焼却という中間処理です。 そのため、現在の最終処分場に入ってくる廃棄物の6~7割が、焼却されて残った廃棄物の灰(焼却残渣)になります。 残りの2割は、不燃物を破砕選別処理し、鉄・アルミや可燃物を取り除いたことで、若干可燃物が含まれた破砕残渣。 残りの1割は、火事や被災にあった人が直接搬入した廃棄物などです。

福岡市の一般廃棄物最終処分場
出典:福岡市環境局

産業廃棄物を受け入れる最終処分場は、さまざまな産業から発生する廃棄物を受け入れています。 運び込まれる廃棄物の種類は、処理業者が契約している企業が排出するものを受け入れるため、その内容は処分場によって異なることが特徴の1つです。 また、産業廃棄物の処分場は、安定型、管理型、遮断型の3種類があります。

安定型の処分場は、特別な処理を行わなくても、ある程度は自然に還る廃棄物が対象です。 具体的には安定5品目(廃プラスチック類、金属くず、ガラス陶磁器くず、ゴムくず、がれき類)と言われるものを受け入れています。 この割合も業者によって変わり、廃プラスチックを多く受け入れるところもあれば、がれき類を多く受け入れるところもある、といった状態です。

管理型は一般廃棄物の最終処分場に似ています。 産業廃棄物の場合は、焼却残渣を燃えがらと言い、それが入ってくることもあれば、廃酸・廃アルカリなどの廃水や廃水処理汚泥、鉄鋼業の鉱滓などが管理型の対象です。

遮断型は、管理型に埋め立て処分するための基準を満たしていないものが対象となるため、比較的に有害なものが廃棄されます。 これは管理が大変で、施設は頑丈に作る必要があり、多くは遮断型に該当しないよう、何らかの処理を行って、できるだけ管理型に廃棄することがほとんどです。 そのため、遮断型の処分場は数多くは存在していません。

このように、最終処分場はいくつか種類があり、一般廃棄物に関しては、どれも特徴は似ていますが、産業廃棄物は業者の契約によって、受け入れるものはさまざまです。

――最終処分場の残余年数があとわずかだと懸念されています。捨てられたごみを土に還して、再び廃棄物処分場として利用することは可能なのでしょうか。

家庭から出された廃棄物が、最終処分場に直接運び込まれていた時代は、悪臭やメタンを発生させていましたが、その原因のほとんどは厨芥類(野菜くずや生ごみ)でしたので、廃棄物中に生息している微生物によって汚濁の原因となっている有機物は分解され、時間はかかりますが土壌に還元できました。 それは、枯れた草木が微生物の活動によって土壌に還るような、自然界の中で起こることと同じ現象です。 しかし、現在は最終処分場に入るものは、焼却処理によって灰になっています。 その灰は草木を燃やしたものではなく、プラスチックを始めとするさまざまな人工物質を焼却した灰ですので、ダイオキシンなどの微生物に分解できない物質が含まれていることから、自然界の中で分解するにはかなりの時間がかかり、何かしらの工夫が必要です。

また、灰になることは、その物質に入っていた成分が濃縮され、ものによっては自然に還りにくいことになります。 例を挙げるとしたら重金属です。 重金属は分解されませんが、鉱物化すると水への溶解性が低くなり、毒性が小さくなりますので、鉱物化させることが望ましいです。自然界の中で、マグマが噴出して火山灰が降り注いだら、それが土壌となるまで、物凄い年月がかかりますが、重金属はこれとよく似ています。 そのため、私は焼却残渣を火山灰と似たようなものと捉え、それが土壌に変わるプロセスを研究しています。 自然界で何億年かかるプロセスを、もう少し短い期間でどうにかならないか、と。 自然界で土壌が作られるということは、物理や化学的作用に加え、生物作用があって初めて実現します。 それは歴史の中でわかっていることなので、最終処分場の廃棄物についても、いかに生物を関与させるのか、ということが重要だと考えています。

ちなみに、最終処分場を掘り起こして再利用することは可能です。 実際に、次世代型最終処分場という形式が提案されています。 これは、古い最終処分場を掘り起こしてプラスチックなどの可燃物を回収し、焼却するというもので、その分だけ隙間ができて、新たな廃棄物を受け入れられる、というものです。 ただし、最終処分場を掘り起こすだけでもかなりのコストが発生し、ふるい分けにも精度の高い分別機が必要となるため、財源面での制約があります。

最終処分場の再利用は難しいものですが、私たちの生活に必要なものです。 最終処分場の残余年数が懸念されますが、新たに作ることは周辺住民の反対が強く、なかなか実現しません。 だから、廃棄物を早く土に還し、普通の土地として利用できれば、新たな用地も確保しやすく、いわゆる循環が可能です。 そのためにも、どのように廃棄物を土に還し、土地を安定させるか、という研究は重要なことだと私は考えています。

海外でも絶賛!日本の標準方式「福岡方式」とは

――日本の最終処分場は、福岡方式が標準方式と定められていますが、これはどういった技術なのでしょうか。環境に優しいと言われる仕組みや、開発の経緯を教えてください。

従来の最終処分場は、オープンダンピング式と言って、ただ廃棄物を投棄し、ごみを覆う覆土もないため悪臭が発生していました。 例え覆土で悪臭を抑えたとしても、嫌気的状態となり、メタンガスや高濃度の汚濁物を含んだ浸出水も発生します。 メタンガスの発生は、火災や爆発の原因となり、非常に強い温室効果もあります。浸出水については、地下水を汚染する恐れもあり、かつての最終処分場は周辺の環境に悪影響をもたらしていました。

埋立構造の分類
出典:福岡市環境局

しかし、福岡方式はそういったリスクを抑える最終処分場で、仕組みとしては、処分場の底部に集排水管と、それに竪型のガス抜き管を連結し、酸素を取り入れる、というものです。 酸素を取り入れることで、廃棄物の中に存在する微生物が活性化します。 そうすると、活性化した微生物によって、有機性汚濁物質の分解が行われ、メタンガスの発生を抑制し、浸出水もある程度は浄化されます。

福岡方式の要は集排水管とガス抜き菅
出典:福岡市環境局

また、環境に優しいだけでなく、福岡方式は経済的に優しい面もあります。 福岡方式の処分場は、汚水を排出させ、酸素を取り入れるための管が重要で、経済が発展している地域であれば、パイプを使い、その周りをぐり石で覆います。 しかし、そのような素材を調達できない地域は、竹を管として利用したり、ぐり石の代わりにがれきを使ったり、自然や廃材を利用して福岡方式の再現が可能です。 耐久性も問題なく、経済的に厳しい途上国でも環境に優しい最終処分場を建てられる、ということは大きなメリットだと言えます。

さらに福岡方式は、好気性微生物(酸素を使う微生物)の活性を高める方式ですので、有機物は最終的に二酸化炭素に変換され、メタンガスの発生を抑制するだけでなく、他の最終処分場と比べて廃棄物の安定化が早い、という特徴があります。 安定化が早ければ、埋立地の再利用も早く実現できる、ということです。 実際に福岡市では、最終処分場の跡地に、小学校、市民農園や老人介護施設も建設されています。

福岡方式が開発された経緯は、福岡市からの依頼がきっかけです。 1970年代、福岡市の最終処分場は途上国と変わらず、廃棄物を投棄するだけで、メタンガスによる火災や、漏れ出した汚水による作物被害も発生していました。 その状況を改善するため、当時の福岡市の環境局から、福岡大学の花嶋正孝現名誉教授に相談がありました。 そこから2~3年、環境庁(当時)から研究費をいただき、ごみの研究を続けました。

そのとき行った実験が、エアーコンプレッサーを使って廃棄物に空気を送り込んだ状態と、何もせず廃棄物を放置した状態を比較する、というものです。 空気を入れた方は廃棄物の分解は進みましたが、何もせず放置していた方も同様の結果でした。 空気を入れずとも、廃棄物の分解が進んだ原因は何だったのか調べたところ、データを取るために毎回水を抜いていたことにありました。 水を抜くための管が常に外気に晒され、酸素の出入り口になっていた。 これにより、微生物が活発化して熱が発生し、内部温度と外部温度の差によって熱対流が起こり、酸素が自然と流入したことがわかったのです。 失敗事例ではありましたが、原因を突き詰めていった結果でした。

福岡方式の仕組みは、酸素によって活性化した微生物が熱対流を起こし、分解を促進させている
出典:福岡市環境局

まだ仮説段階だったこの現象を福岡市に報告したところ、新規に建設する最終処分場に導入しようということになりました。 これは当時の環境局局長の英断だった、と言えます。それがなければ、福岡方式はこれだけ広がっていなかったでしょう。 さらに、全国都市清掃会議の発表会でもこれを発表したところ、多くの自治体が導入を決めました。 その後、導入した自治体のすべてから、浸出水中の汚濁物質が減ったという報告があり、それが実証につながります。 そして、これら実用レベルでの成果が証明されたことによって、国の補助金で一般廃棄物の最終処分場を建設する場合は、福岡方式を基本構造として設計するよう、規定されるまでに至りました。

――福岡方式は、日本のみならず海外でも導入されています。海外に展開されたのは、どのような経緯があったのでしょうか。

福岡大学の松藤康司名誉教授が、JICA(Japan International Cooperation Agency:独立行政法人国際協力機構)の依頼により、専門家としてマレーシアに2年間派遣されたことがきっかけです。 マレーシアの最終処分場は、毎日のように火災が発生し、作業員は火を消す作業ばかりで、廃棄物を適切に処理することは、ほとんど対応できていない状態でした。 そこで福岡方式を導入したところ、火災もなくなり、周辺の環境が改善されます。

海外の最終処分場に導入される福岡方式
出典:福岡市環境局
導入コストを抑えられる福岡方式は途上国を中心に広がった
出典:福岡市環境局

この成功事例によって、松藤が日本に戻ってから、JICAの研究生が福岡大学に訪れるようになりました。 さらに、JICAの研修生が母国に帰国後、日本政府に福岡方式の埋立地の建設を支援してほしい、という要請もあって少しずつ広まり、国連ハビタットも福岡方式に注目するようになり、 国連ハビタットの支援の下で、アフリカにも広がり、現在は世界17ヵ国で福岡方式が導入されています。

最終処分場の残余年数は本当に限界なのか

――最終処分場は以前から、残余年数がわずかである、と指摘されていますが、実際のところはどういう状況なのでしょうか。

確かに、ここ20年ほど最終処分場の残余年数が限界を迎える、と言われていますが、延命が続いています。 延命の原因はいくつかありますが、まずは技術の進化により焼却率が上がったことで、最終処分場に直接入る廃棄物が減ったことがあります。 さらに、3Rの推進によって廃棄物の排出量が削減されたことも事実です。 寿命が延びることはありませんが、工夫が重ねられ、現状維持が続いているイメージではないでしょうか。

しかし、将来的に新たな最終処分場の用地を確保する必要があることも確かです。 ただ、住民の反対があり新しく作ることは難しく、海面埋立処分場という手段も、財源的に難しい部分もあります。 ここ最近で見られるケースは、砂利を採取していた業者が、掘った穴を利用して最終処分場として利用するというものです。

――最終処分場を延命する、最新の技術はあるのでしょうか。

最終処分場の中で何らかの処理を行うというよりは、その前の段階の処理が重要です。 産業廃棄物最終処分場の安定型であれば、プラスチック処理が重要だと思われます。 プラスチックは分解しなければ、圧密も難しいことから跡地利用についても問題があります。 生分解性のプラスチックが広まるだけでも、最終処分場の延命に関して、効果があると言えるでしょう。

あとは覆土です。国の規定で、廃棄物を何メーターが投棄したら、必ず覆土をしなければなりません。 この規定に従うと、埋立地の全体の20~30%を覆土が占めることになり、その分だけ廃棄物が入らなくなる。 また、以前は受け入れ廃棄物の大部分を生ごみが占めていましたので、飛散・悪臭を防止するため、覆土は大きな意味がありました。 しかし、最近の廃棄物は多くが灰となるため、昔に比べると覆土の重要性が変わっているはずです。 そのため、覆土をどう考えるか、ということが最終処分場の延命にとって、重要なポイントだと言えます。

最終処分場の延命のため私たちができる行動は

――最終処分場の残余年数が限界を迎えないために、私たちが普段の生活で心がけるべきことは、何が挙げられるのでしょうか。

それはもちろん、できる限り無駄を避けて廃棄物を削減することです、 それから、リサイクルやリユースも大事なことですが、これを効果的に行うためには、自治体が指導している廃棄物の排出方法・ルールを守ることが大事と言えます。 ルールを守らず、分別を行っていない場合は、適切にリサイクルが行われません。

市民がこれをきちんと行えば、最終処分場が長く使えるし、跡地利用も有効活用できるでしょう。 持続可能な社会を実現するためにも、ぜひ心がけてほしいと思います。

FUKUDAism 工学部の田中綾子教授が、令和3年度環境大臣賞を受賞
福岡大学工学部 水理衛生工学実験室
福岡大学 大学院 工学研究科 資源循環・環境工学専攻
廃棄物資源循環学会 https://jsmcwm.or.jp
画像出典 福岡市 廃棄物処理に係る国際環境技術協力(「福岡方式」パンフレット)

田中綾子(タナカ・アヤコ)
薬剤師の道を捨て、廃棄物の研究者の道に入って35年以上になる。私が大学に就職した時代は、女性研究者といっても男性研究者のお手伝い程度の扱いであったが、研究をしたいという私の熱意を理解し、指導してくれる良き上司や働く女性を応援してくれる家族に恵まれて、私のライフワークである“生物学的手法を用いて廃棄物埋立地を無害化・安定化し、環境と調和した埋立地に変えるための研究”が続けて来られている。
また、工学分野の研究者が多い中で薬学出身という異質の研究者であったことや目的を変えず長く研究を続けたお陰で、廃棄物研究に特化した学会である日本廃棄物資源循環学会から研究奨励賞や論文賞などをいただくことができ、十数年前から学会の理事、九州支部長や副学会長等の任を得て学会運営に携わっている。これら学会活動が評価され、令和3年度廃棄物・浄化槽研究開発功労者として環境大臣表彰を受けた。
研究分野では、ジェンダーフリーへの一里塚となることができた一方で、私が所属する工学部では教授会メンバーである専任教員職(講師以上の職)70数名の中で女性は私一人であり、京都議定書が採択され、環境保全が社会的ニーズとなり、大学に環境学部創設ブームが起こらなかったら現職に就いていないのではと思うほど、未だ女性の上位職への道は厳しい環境にあるが、学生の成長を楽しみに教育にも励んでいる。
ここ十数年間は、国連機関の要請を受けて開発途上国のごみ埋立地の改善業務に携わり、ごみの投棄場であった場所が日に日に衛生的なごみの処分場となっていくことや現地のスタッフの成長に喜びとやりがいを感じている。これからも、エネルギーの続く限り発展途上国の廃棄物処分場の改善のための研究と現地改善業務に取り組む予定である。

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