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熱海市の惨事を起こさないために 工事現場から出た建設発生土と産廃汚泥はどこに行くのか①

熱海市の惨事を起こさないために 工事現場から出た建設発生土と産廃汚泥はどこに行くのか①
熱海市の災害復旧工事現場。土を入れた黒色のフレコンバッグが並ぶ
杉本裕明氏撮影 転載禁止

27人の死者・行方不明者を出した静岡県熱海市の土石流事故(2021年7月)から1年。批判を浴びた政府は重い腰を上げ、この3月、宅地造成等規制法を全面的に改正した「宅地造成及び特定盛土等規制法」(盛土規制法)が5月に制定されました。

災害が起きる危険性のある区域を都道府県が指定し、規制区域内での造成を許可制とし、安全基準に基づく計画書の提出やその後の安全確認を義務づけ、罰則も強化されました。

しかし、住民の生活環境や自然環境の保全は対象外としており、これで災害防止や地方に持ち込まれた残土の山が抱える問題解決ができるのか、疑問もあります。そもそも、工事現場から発生する大量の汚染土や産廃汚泥はどこに持ち込まれ、どう処理されているのか、民間事業はブラックボックスのままです。

熱海市で造成された土はどこから持ち込まれたのか、どんな土だったのか、いまだに解明されていません。発生土や汚泥は、手を加え、きちんと管理すれば、再び建設資材としてリサイクルできる。それができていないのはなぜなのか――。

数回の連載記事で、処理の内実を追い、疑問に答えていこうと思います。まずは熱海市で起きた土石流事故とその後を見ます。

ジャーナリスト 杉本裕明



土石流起こした造成地は産廃の捨て場だった

悲惨な事故が起きてから1年たった2022年6月、熱海市を訪ねると、海岸の一角で、埋め立て事業が行われていた。土石流となって流れた土砂を回収し、それを分離し、使える土砂を海岸の埋め立てに使おうというのだ。荷台に土を詰めたフレコンバッグを載せたトラックが埋め立て工事に到着すると、それをクレーンで集積場に積み上げる。別のユンボがそれを埋め立てする場所に運ぶ。埋め立て現場では、海水に半分ほど浸かったユンボがフレコンバッグをつかんでは海中に投入している。

工事業者を指導するのが、静岡県熱海土木事務所だ。事前に土木事務所を訪ねると、工事現場を教えてくれた。「持ち込む前に、堆積した土砂に混じった産業廃棄物を取り除く作業が必要なんです。選別作業を行い、土だけを埋め立て現場に運んでいます」と工事担当者が言った。

「選別作業の様子を見たいのですが」と頼んだが、取材は許可されておらず、入り口で警官が中に入れないようにガードしているという。実際、選別処理現場に近づこうとしたが、職員の言った通りだった。

実はこの土石流となった盛り土は、相当の量の産廃が混じっていることが、業者が盛土工事をしている時から、静岡県と熱海市は把握していた。だが、有効な対策をとらないまま、違法行為を続ける業者に、効力のない口頭指導や文書指導を続けた。結果的に違法盛土を容認したことが悲劇を生んだとも言える。

業者が持ち込み盛土した5万5,000立方メートルのうち土石流となった3万5,000トンは県と国が撤去、埋め立てに使うことになったが、なお、2万トンが残る。そこで熱海市はこの5月、2万トンの撤去命令(措置命令)を前の土地所有者に出した(8月に改正条例の施行に伴い、県が撤去命令を発令)。しかし、業者は従う様子はなく、県が代わりに撤去する代執行になりそうだ。

県が設置した第三者委員会はおなじ5月、盛土に対する行政の対応について、「組織的な対応に失敗した」と総括している。2021年7月中旬、熱海市の被災地を見た。災害が起きた2週間後だった。東海地方から関東地方で記録的な大雨となった7月3日、熱海市では、48時間で321ミリの降水量を記録していた。朝から逢初川に大量の泥水が流れ、午前10時半に巨大土石流が発生した。

現場では復旧作業が続いていた。海に近い国道135号を歩く。危うく倒壊の難を避けた家屋は、しかし、床一面が泥で埋まり、住民がこびりついた泥を外にかき出している。道路沿いに設置されたボランティアの登録所には、若いボランティアが集まり、誰がどの場所で活動するのか、打ち合わせをしている。そのすぐそばに石段があった。長い石段を登った先には、伊豆山神社がある。

熱海市の災害復旧工事現場。土石流は左から右に一気に下った
杉本裕明氏撮影 転載禁止

土石流は、その石段から数十メートルから100メートルほど離れた谷筋を南西方向に、海に向かって走った。その石段添いに住宅が立ち並ぶ。その一軒屋に住む80代の婦人が、当時を思い浮かべた。

「あの日は、風と雨が強く、怖かった。土石流がちょっとでもこちらに寄っていたら、私も自宅も泥水に流され、命はなかったと思う。ここに引っ越して何十年にもなるけれど、こんなことは1回もなかった。危険な盛土をなぜ、市は認めたのか」

土石流は海に向かって一気に流れ、建物をなぎ倒した
杉本裕明氏撮影 転載禁止

その住宅から数十メートル先に土石流の走った跡が見える。傷跡は鋭く、深い。死者と行方不明者27人という大惨事を起こしたのは、「建設残土」と呼ばれる土だ。残土は、建設発生土と建設汚泥からなる。発生土は廃棄物処理法の対象外とされ、汚泥は産業廃棄物とされている。市に提出した計画では高さ15メートルの高さの盛土だったが、実際には50メートルの高さにも積み上げた。

静岡県の調査で搬入された残土は、シルト質で粒径が小さい。雨が降るとぬかるみになり、いわゆる「しめ固め」ができず、土砂崩れや崩落を起こしやすい。長雨で地下水の水位が上がり、下部の盛土が崩れ、上方で土石流を促したと見られている。

畑明郎大阪市立大学元教授(環境政策)はこう語る。
「県の調査では土にカルシウムが8%含まれており、ドロドロの残土や産廃汚泥を工事現場から運び出す時に石灰やセメントを混ぜて固めたものだと思う。雨が降ればどろどろになって滑りやすく災害の危険性がある。こんな残土の捨場が全国各地に散在しているが、国は有効な対策を打ち出せていない」

建設工事現場の土には建設発生土と産業廃棄物の汚泥がある

大惨事は業者が造成した盛土によるものだが、事故発生時から静岡県はこの土が建設発生土であると言い続けている。だが、事故後の県のボーリング調査で大量の産廃が混じっていたことが判明していた。しかも、業者が造成を始めた頃から、市は、これは土ではなく、産廃の建設汚泥ではないかと疑っていた。

廃棄物処理法は無許可営業、事業停止命令違反などに違反した場合、個人に懲役3年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、企業には3億円以下の罰金を科すなど厳しい。さらに行政指導を経ないで即、処罰する「直罰規定」が並ぶ。香川県の豊島事件、青森・岩手県境事件、岐阜市の椿洞事件。幾多の巨大不法投棄事件をへて、規制強化を繰り返し、ここまでたどり着いた。

しかし、建設発生土は廃棄物でないから廃棄物処理法の対象外だ。規制法はない。建設工事現場から出る土には、建設発生土と建設汚泥の2種類がある。静岡県の調査で搬入された残土はシルト質で粒径が小さい。雨が降るとぬかるみになり、いわゆる「しめ固め」ができず、土砂崩れや崩落を起こしやすい。長雨で地下水の水位が上がり、下部の盛土が崩れて土石流を促したと見られる。

熱海市の盛土現場。谷に向かってダンプカーが土砂を落としての造成。土のいろは黒褐色だ。どろどろで運べないので、セメントを混ぜて水分を減らして持ち込んだと思われる
(熱海市のホームページ)

一方、建設汚泥は産業廃棄物とされる。両者の違いは、汚泥はトラックの荷台に積んでその上を歩けないような状態のものなどとされている。汚泥は、脱水し、さらに消石灰やセメントを混ぜて堅くし、「脱水ケーキ」にして最終処分場に運ばれていた。だが、受け入れ料金は高く、処分場の逼迫にもなる。

汚泥は、「改良土」に偽装されるケースがある

そこで中間処理業者がさらに薬品を混ぜて調整し、リサイクル材にし、建設資材として使われるようになった。国土交通省によると発生した約600万トンのうち8割が再生利用されているとされる。

しかし、8割というのは、質問に回答した業者の数字を類推した数字にすぎず、実際に工事現場で使われた数字を積み重ねて出したものではない。かなりの量が、「改良土」の名で土捨て場や残土処分場に持ち込まれているといわれている。今回の熱海市の例では、県の調査で盛土にカルシウムが6~8%含有されていた。県は「市の指導で、業者が盛土を固めるために後からセメントをまいた」と話す。

筆者が「どこを掘ってもほぼ均一の含有率となるのはおかしい。元々、改良土をいれたのではないか。その証拠に熱海市が撮った持ち込まれた土の色は黒褐色。最初からセメントを混ぜないとこんな色にならない」と問うと、職員は「業者がヒアリングに応じないので、確認のしようがない」と、言葉を濁した。

産廃の汚泥にセメントを適当に混ぜて固めたものを「改良土」と呼び、森林や農地の開発・造成に使ったり、発生土の捨て場になっている残土処分場に持ち込んだりする例があとをたたない。国は公共事業での再利用を進めるものの、民間事業の再利用は進まず、「リサイクル偽装」とも言える状況の改善に真剣に取り組んでこなかった。

熱海市は不備のある計画書を受理してしまった

熱海市は実際にどう対応したのか。当時の協議記録や指導文書を公表した。数千枚もの文書から行政対応の推移を追った。

市が業者を指導したり、県と協議したりした記録が残されていた
(熱海市のホームページ)

土地所有者の神奈川県の不動産管理会社が熱海市に「土の採取等計画書」を提出したのは2007年3月9日。計画書は、伊豆山と赤井谷で、隣接地を盛土するため、9,446平方メートルの山林を伐採するとし、盛土量は3万6,276立方メートル。工期は許可日から1年としていた。

そして、伊豆山地内で実施されている(宅地)開発事業開発工事で発生する残土を安全に処分するために「隣接する区域の谷筋にロックフィルダム形式の堰堤を2基築堤、盛土の押さえとする」としていた。計画書を見ると、空欄があちこちにあり、およそ、届け出書類とはいえない。

地図には、谷筋の上流から下流まで集水暗渠(網状管)のパイプ(直径20センチ)の線があった。業者は、地震でも「すべり」が起きないとの試算結果も示していた。災害後の県の調査では集水暗渠も排水溝もなかったのだが――。計画書は土採取等規制条例に基づいての行為で、1ヘクタール未満の規制権限は市にあった。

他県の条例が許可制なのに比べ、静岡県の条例は届出制で規制力は弱い。こんな不備な計画書なのに、市は4月9日受理した。そして、「土の採取に伴う土砂の崩壊、流出により災害が発生するおそれがある時は、災害防止のため必要な措置を取ること。土砂の崩壊、流出で災害が発生した際は、早急に対策を講じるとともに、被災の補償を行うこと」と附帯条件を付けた。

業者の勝手な振る舞いがはじまったのはその2日後だった。

盛り土には様々な産廃が混じっていた

4月11日、市役所に「産廃のようなものを積んだダンプを発見した。盛土をしているので、違法の可能性がある」との通報があった。市職員が現地に行くと、開発地から搬出されたらしい茶色の土砂と別に黒褐色の土砂があった。その土砂を積んだダンプカーがあるが、外から残土を持ち込むという話は計画書になかった。驚いた市職員は、業者を呼んだ。

市「残土処分しているようだが、土の搬出元はどこですか?」
業者「1日10台以下の条件で受け入れている。××の紹介なので搬出場所はわからない」
市「確認して報告して下さい。なぜ、盛土をしているのか?」
市が「仮置きですね」と言うと、業者は同意した。

しかし、それはウソだった。この黒褐色の土は、工事現場から出た建設発生土だと、業者は言った(関係者によると小田原市と二宮町から持ち込まれたともいう)。

しかし、市はそれ以上踏み込まない。翌日、業者の提出した風致地区条例での開発行為申請を、市は許可した。業者がダンプや重機を持ち込み、残土を谷に流し出した。そばを流れる逢初川はまっ茶色に濁り、海に流れ込んでいく。

4月27日、市の農水課から「森林法で許可の必要な1ヘクタールを超える開発が、無許可で進められている」との連絡が県東部農林事務所にあった。1ヘクタールを超えると、森林法による林地開発の許可申請を県に行う必要となり、知事が許認可権者となる。 翌月、農林事務所は業者を呼んだ。

業者が説明した。
「伊豆山の赤井谷で120ヘクタールの土地を購入し、26ヘクタールの宅地造成の計画を進めている。市農林課から指摘されているのは、それに伴い濾過機能のあるロックフィルダムを2基設置すること。開発地からの濁水が逢初川を汚染するのを防ぐためだ。1基当たりの面積は9,800平方メートルで、2基だと1ヘクタールを超えるが、一体ではない」

県は「同一流域内の開発だから一体であり、林地開発許可が必要だ」と回答した。だが、県はその後、土地改変行為の中止を求めたものの、改変した場所に植栽することでよしとした。業者のロックフィルダムを2基造るなんて話は、うそっぱちであった。

市は、指導守らない業者に頭を痛めた

09年1月。業者が風致地区内の行為の変更許可申請(工期の延長)を行った。許可をした時と、状況が変わっており、市と県熱海土木事務所、県東部農林事務所の3者が協議した。

県東部農林事務所「違反行為のあった場所だが、復旧(植裁)した区域であり、林地開発の許可を要する面積(1ヘクタール)以下であり、(森林)法的に言うことはない」
県熱海土木事務所「逢初川への土砂流出を心配する。防災工事を万全に御願いしたい」
市「許可内容通りの施行は非常に困難と思っているので、防災計画を含め、設計変更を促したい」

市は、業者を指導し、土地の形質の変更の工期の変更(08年4月までを10年4月までに延長)を許可した。だが、業者は指導におかまいなく、神奈川県から工事残土をどんどん持ち込み、埋め立てを強行していた。4月に市と県が、業者を呼びだし、1ヘクタールを超える開発は、(洪水防止のために)逢初川の改修が必要になると言って、業者を抑制しようとするが、業者は「1ヘクタール未満を幾つもやっていくしかない」。

その年の11月、再び会議が開かれた。総勢17人。市から産業振興課、まちづくり課、建設課の6人が出席した。

土木事務所「先日の台風の時に現場に立ち入って調査した。斜面の土砂の崩落があった。濁水処理も行われず、ずさんな状態である。川も土砂で閉塞し、今後も雨が降れば同様の状態になる。工期を延長した時に市は止められなかったのか。土採取条例ではすでに工期が切れている」。

協議の結果、土採取条例と風致条例それぞれでできる法的手続きを行うが、土採取の法的措置(計画変更の勧告、措置命令、停止命令)には、手順を追っての処理が必要になり 、それまでに時間がかかる。そこで行政指導として工事の一時停止を命じ、その間に是正措置を行わせ、その状況を見て法的措置へ移行することで意見がまとまった。

産廃が見つかった

2010年8月、市は現地で、残土に木屑が混入しているのを見つけ、県の県東部健康福祉センター(産廃を所管)に連絡し、両者で再度確認した。木屑は産廃なので、産廃で造成すると、廃棄物処理法違反(不法投棄)となる。県は撤去を要請した。

土地売却された跡も違法に残土搬入

2011年3月。市が現場に行くとダンプがあった。外部からどんどん残土が持ち込まれていた。そこにいた運転手に聞くと、こう答えた。「空いているところにおろせと指示を受けている。二宮(町)の現場から。12台体制で運搬しているんだ」。2日後、市は県と対応策を協議した。

市「まずは、文書での任意の行政指導を行い、リアクションがない場合、条例による措置をとりたいがどうか」
県「行為の停止のみでよいのか。防災措置までを求めるかにより違ってくる」
市「当然、両方を望んでいる」
県「土採取条例の措置では効果が弱い。市が条例をつくることも効果的である」
市「早急に対応できない」

そして、翌月、市長名で、県条例に基づき現況と経過、安全対策の報告を求め、それまでの間は「土砂の搬入の行為を中止されますよう」との要請文書を送った。

従おうとしない業者に、市のまちづくり課は、弁明の通知をし、期限内にない場合に措置命令を出すことを起案した。防災措置等、安全対策の実施計画書の提出、②安全対策の速やかな実施、③土砂搬入中止の3点を挙げ、事業停止(土砂搬入、盛土行為)を命じる内容だった。しかし、起案だけに終わり、再び防災対策を求める行政指導の継続となった。

熱海市の盛土現場。急斜面で、危険なことがこの写真からもわかる
(熱海市のホームページ)

業者は工期と手法の変更届けを提出し、沈砂池の浚渫など、形だけの作業を始めた。8月の台風で、斜面が崩壊した。市を訪ねた新たな業者が言った。「流れた土は150~200立方メートル。区域内で処理するが、崩落は自分たちに関係ない」。土地はすでに新しい業者に売却され、区域内で太陽光パネルの設置計画が進められていた。市が返答した。「お金を市は出せない。市は土嚢の設置ぐらいしかできない」

措置命令を出そうとしたが、空振りに終わる

これらの記録から、市は措置命令の準備をしていたことがわかる。ただ、搬入停止などの措置命令を出しても業者が従わなければ、告発し、静岡県条例(1976年制定)の罰金の上限20万円で終わる(県は条例改正で、届出制を許可制、罰金を100万円に引き上げようとしている)。市が自ら撤去する「代執行」という手もあるが、工事後に費用の弁済を求めても、業者が応じたかどうか。

3カ所の仮置き場にある残土5万1,000立方メートルのうち、1万立方メートルは熱海港の護岸工事、残りの4万1,000立方メートルは県の防波堤工事で海岸埋め立てに利用される予定だ。市の関係者によると、当初は廃棄物相当の処理を検討したが、費用の安く済む埋め立てに決まったという。

県の第三者委員会は「組織的な対応に失敗」

県が行政の対応のどこに問題があったのかを検証する弁護士らからなる第三者委員会(委員長・青島伸雄弁護士)は、2022年5月、報告書を県に提出、「組織的な対応の失敗があった」と総括した。報告書は、4つの失敗からなる。

1つ目は「最悪の事態想定の失敗」。報告書は「盛土を造成した会社は、2007年ごろに今回の土地以外にも違法な行為を繰り返していた」とし、「この会社に適切な対応を行わないと、どのような最悪の事態が生じるかを県と熱海市がともに想定すべきだった」。さらに安全性の基準の15メートルの3倍以上業者が積み上げ、極めて危険な状態になっていたにもかかわらず、県や市の担当者は最悪の事態=崩落を想定していなかった。

2つ目は、「初動全力の失敗」。市はそもそも、あちこち空欄のあるような申請書類を受理し、初期のころから崩落が起きていたのに、崩落防止のための措置命令を出さず、県との連携もできていなかった。

3つ目は、「断固たる措置をとらなかった行政姿勢の失敗」。

4つ目は、「組織的な対応の失敗」。一連の経過から県と市で情報を共有し、連携し、積極的な関与をすべきだったとしている。

この報告書について、難波喬司副知事は「しっかり受け止めて、今回のような災害が二度と起こらないように、行政対応の改善を行っていきたい」。斉藤栄熱海市長は「ご指摘いただいた、市として反省すべき点、この点は真摯に受け止めなければならないと思っております。被災者のみなさまには本当に申し訳なく思っております。ただ一方で、この報告書の全体の構成を見ると、問題点があると思っております。記述の根拠となる証拠や資料に偏りがあるのではないかと、このような感じを持っております」と語った。

それから10日ほどたって、熱海市は、ホームページに「報告書を受けた熱海市としての問題意識」を公表した。盛土条例下で所管となった熱海市の対応を中心に取り上げられていることから、県が所管する森林法による隣地開発許可規制行政で、行為規制のできる砂防指定地にしなかったことが適切だったかなどが検証されていないと、不満を表明した。

なぜ、県は砂防指定地に指定し、開発規制しなかったのか

実は、この盛土を行った区域の直下は砂防指定地になっており、関係者から、県が一帯を指定していたら、このような惨劇は起こらなかったという指摘が出ていた。

これに対し、県は7月、「砂防指定地に指定する必要性は認められないと判断したことは、現時点で評価しても行政裁量として認められる範囲内であった」(難波喬司理事)と反論している。

一方で、当時、業者が1ヘクタールを超えたとする林地開発の図面を出していた。開発面積が1ヘクタールを超えると県の権限となり、許可違反として強い対応ができる。しかし、県の当時の担当者は「業者が示した図面は正式の文書ではなく、森林法に基づく申請を業者がしてこなかった」と、曖昧な答弁をしている(熱海市議会に設置された百条委員会での県職員の発言)。結局のところ、関連する法律や条令をつかって危険な開発行為をやめさせ、元に戻させようとの強い意志が、市と県になかったということだろう。

筆者が注目するのは、ここに持ち込まれた土は、工事現場から出た建設発生土ではなく、実は産廃汚泥ではなかったか、ということだ。実は全国各地で、産廃汚泥にセメントを混ぜ、「改良土」と称して、宅地造成に使われたり、土のみを受け入れる残土処分場や土捨て場に持ち込まれているという。この行為は廃棄物処理法違反行為で、不法投棄になる。

被害者の会が刑事告訴と民事で損害賠償請求訴訟

熱海市の盛土をめぐっては、この記事でも触れたように大量のセメントが含まれていたことが確認されている。県は、業者が持ち込み造成した後、セメントを注入するよう市が指導したからだと説明している。

しかし、一方で、元々、セメントが混じった産廃汚泥が持ち込まれたのであれば、業者に対する指導は産業廃棄物を所管する県が行うことになる。市も県も悪質な業者に強い態度で出ることには億劫で、責任を回避していたように思える。一方、最大の責任者である元の業者と土地をその業者から買った現在の地主(会社)は、違法行為を否定し、土石流が起きたことへの責任を否定している。被害者の会は、2021年夏、新旧の土地所有者2人を重過失致死傷容疑などで静岡県警に刑事告発したほか、200億円の損害賠償請求訴訟を静岡地裁沼津支部に起こしている。また所有者らへの対応に過失があったとして、静岡県と熱海市に対しての損害賠償を求めて夏をめどに追加提訴するという。

次回は、首都圏と近畿圏から残土と産廃汚泥が船で運び込まれて、大きな山があちこちに築かれた三重県の紀北町・尾鷲市と伊賀市を訪ねる。

参考:熱海市 盛土に関する調査経過報告について

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