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夢と教育で持続可能な社会を目指すNPO法人「DEAR ME」 学生代表 田村美有さん インタビュー

夢と教育で持続可能な社会を目指すNPO法人「DEAR ME」 学生代表 田村美有さん インタビュー

ファッション産業は私たちの生活に欠かせないものであり、多くの人に愛されています。 しかし、その一方で多くの環境問題や社会問題が指摘されています。

今回は、そんなファッション業界の抱える問題に立ち向かうNPO法人「DEAR ME」をご紹介します。 夢と教育を通して持続可能な社会実現を目指すDEAR ME。その活動内容を学生代表である田村美有(たむら みう)さんにお伺いしました。

夢と教育で持続可能な社会を目指す「DEAR ME」とは

――DEAR ME(ディアミー)は、ファッションと教育を扱ったNPO法人とのことですが、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。また設立の経緯なども教えてください。

私たちNPO法人DEAR MEは、代表の西側(西側 愛弓さん)がまだ学生だった2015年に立ち上げた団体です。 メンバー構成は、社会人3名と全国から集まった大学生です。社会人と学生で年齢は離れていますが、それに関係なくひとりひとりがお互いをリスペクトしながら自主的に動いています。

テーマは「夢と教育を通して持続可能な社会実現を目指す」となり、ファッションが持つ力を信じて、複雑に絡み合った社会課題を1つの線につなぎ、皆で1歩ずつ解決へ進んでいくことを目指して活動しています。

この世界にはたくさんの社会課題が存在していますが、注力している問題は貧困問題と環境問題です。 まず貧困問題についてですが、私たちの活動はフィリピンの貧困地区に重点を置いています。 フィリピンは人口1.1億人のうち約23.7%が貧困状況にあると言われ、貧困地区で働く人々は日雇い労働者やごみを拾って売る「スカベンジャー」と呼ばれる人々が多く、その日暮らしの生活がほとんどです。 そんなフィリピンの貧困地区に環境と雇用の循環をもたらし、そこで暮らす人たちにファッションを通して新たな未来の選択肢をつくる。そして、貧困率の削減に貢献することを目指し活動しています。

フィリピンで開催されるファッションショーにモデルとして参加する現地の子どもと、NPO法人「DEAR ME」の学生代表を務める田村美有さん

また、ファッション産業は世界2位の環境汚染産業と呼ばれています。 私たちが大好きなファッションが地球を汚してしまうのではなく、守っていくための存在であってほしい。 そんな想いを形にするためにも、企業様と協業して、規格外品のアップサイクルや、衣類の生産廃棄の問題を伝える情報をSNSで発信するといった活動を行い、次世代に美しい地球を引き継ぎたいと考えています。

DEAR MEの具体的な活動は3つです。1つは、フィリピンの貧困地区で生活する子どもたちと協力して開催するファッションショー。2つ目は企業様と消費者がともに社会課題を学び、課題解決を目指すTimeless Worth Project(タイムレスワースプロジェクト)という活動。3つ目は今年2023年に開校したファッションスクールの運営です。

現地の子どもたちと開催するファッションショー

――フィリピンで開催するファッションショーが、DEAR MEの軸となる活動だと聞いています。具体的にはどのような活動なのでしょうか。

フィリピンの貧困地区で生活する子どもたちと協力して行うファッションショーは、過去に9回開催しています。 DEAR MEはこちらのファッションショーを開催するため、子どもたちとの交流や集客も自分たちで行い、1年を通して準備を続けているような状況です。

フィリピンの子どもたちと交流を深めるDEAR MEのメンバー

フィリピンの子どもたちが自らモデルとして出演し、ランウェイの上で夢を描くというコンセプトを掲げ、こちらを通して新たな自分の発見、自分に自信を持つ体験を創出しています。 また、この活動によってファッションの力を通じて、世界中の子どもたちが平等に夢を描き、胸を張って生きることにつながっていく、と考えています。

――モデルの子どもたちが身に付ける衣装は、どのように準備されているのでしょうか。

私たちは年に2回、フィリピンに渡航していますが、9月頃に子どもたちから実際にどんな衣装を着たいのか、デザインを描いてもらいます。 2月に開催されるファッションショーまでに、デザインを改修して準備するという流れなのですが、これは日本の服飾専門学校の学生やSNSで募ったデザイナーの方が形にしてくれています。

衣装の素材ですが、ご協力いただいている企業様から、古着や廃棄衣料を募って使わせていただいている形です。 アパレル関係や繊維商社の方々からいただいた、デッドストックなど倉庫で眠っている商品を制作者の服飾専門学生にお渡しして、子どもたちがイメージしたデザインに近い衣装へ仕上げていただく、という流れになっています。 なので、参加する子どもたちは世界で1つだけ、自分だけの衣装を身にまとってランウェイを歩くことになります。

ファッションショーの様子

あと、ご協力いただく企業様はアポ電を必死にかけて、1社1社お願いしています。ファッションというと煌びやかな世界であるように捉えられがちですが、こういった泥臭い部分は少なくありません。

企業と消費者がともに課題解決を目指すプロジェクト

――Timeless Worth Projectとファッションスクールの運営について、その他の活動もあれば、説明をお願いします。

Timeless Worth Project(タイムレスワースプロジェクト)は、企業と消費者、NPOといった団体の垣根を越えて共に社会問題を学び、解決を目指す活動です。 企業様と協力したワークショップやイベントの開催、商品開発が主となりますが、過去の事例としては繊維商社であるYAGI様と一緒にツバメタオル様での工場見学ツアーを開催したこと、規格外品をアップサイクルしたタオルを企画して販売したことが挙げられます。

他にも、サスティナブルな事業活動を目指す企業様と合同イベントを開催して、Z世代やミレニアム世代にサスティナブルを身近に感じてもらう活動も行いました。

Timeless Worth Projectで行った勉強会の様子
企業と協力して販売したアップサイクル品のタオル

ファッションスクール、coxco Lab(ココラボ)は初年度である今年は10名の学生がイラストやアート、縫製技術を学び始めました。 coxco Labでは、学生に無償でファッションや美容の技術を提供。学生たちが新たな選択肢を見つけるきっかけを生み出す場となります。 こちらの運営は社会人メンバーの方がメインとなり、私たち学生も部分的に携わらせてもらっています。

その他の活動としては、ファッションショーの準備に向けたSNSの更新、私たちの活動を支えてくれる方を増やすため、フィリピンの現状を周知、社会課題の発信などです。

DEAR MEに参加して感じた変化や新しい価値観

――田村さん自身はどのような経緯でDEAR MEに参加したのでしょうか。また、参加してから3年という月日が経過したとのことですが、その間にあった変化や発見があったら教えてください。

私は高校生のとき、とある家族の事情をきっかけに将来のことを考えたのですが、未来の選択肢は自身が置かれている環境が大きく影響するのでは、と感じました。 同時に、私自身が誰かの未来にポジティブな影響を与えられるような人間になれたら、と考えたことを覚えています。

そして、大学生になって何かできないかと自分の在り方を模索していたとき、大学のサークルを紹介するSNSアカウントでDEAR MEを見つけました。 もともとファッションに興味があったので、DEAR MEに興味を抱いたこともありますが、人の夢や将来の選択肢をつくる活動に取り組んでいると知り、私にとって唯一無二の団体だと参加を希望させていただきました。

DEAR MEに参加して、まず驚いたことはグループLINEのやり取りがとにかく頻繁だったことです。 内容も活動報告や情報共有だけでなく、グループに参加している人全員が「ありがとう」とか感謝を伝えるコミュニケーションが多くて。 学生のグループLINEは、誰かが発言しても反応がないことは珍しくありませんが、DEAR MEは感謝や感想などレスポンスが必ずある。 それが風通しの良さを生んでいて、コミュニケーションの大切さを実感できました。 だから、私たちの代も常に連絡を取り合って、感謝の気持ちと新しい発想が絶えないよう心がけています。

DEAR MEは風通しがよく、学生同士で常に意見が飛び交っている

あと、大きな変化と言えば、誰かのことを第三者視点で考えられるようになった、という点です。 DEAR MEに入って、フィリピンの子どもたちに出会い、その子たちの現状を知ったことで、自分の行動が誰かにいい影響を与えることもあれば、悪い影響を与えてしまうこともあるのだ、と実感するようになったのです。 だからこそ、誰かの未来にポジティブな影響を与えられる人間になりたいと、それまで以上に意識するようになりました。

――一緒にファッションショーをつくるフィリピンの子どもたちには、どのような印象を持たれているのでしょうか。

現地の子どもたちは、とにかく明るいという印象です。貧困地区の子どもたち、と聞くとショッキングでマイナスなイメージを抱いてしまうかもしれません。もちろん、そういう実状はあり、私自身もそのイメージを持っていましたが、いざ接してみると子どもたちの明るさやパワーに驚かされ、触発されました。

堂々とランウェイを歩くフィリピンの子どもたちからはエネルギーやパワーを感じられる

私たちよりも明るくダンスなんかで自分を表現することも上手で、ランウェイを歩くときも堂々としてオリジナル性もある。 彼ら彼女らが持つエネルギーやパワーは偉大で、可能性に満ちていると感じました。

だからこそ、DEAR MEは社会課題だけを伝えるのではなく、子どもたちが持つ未来の選択肢をできる限り増やすような活動に、これからも力を入れなければ、と考えています。

DEAR MEが創出する未来の選択肢

――今後、DEAR MEはどのような活動に取り組むのでしょうか。また、DEAR MEを応援する方法があれば教えてください。

今年度から、DEAR MEは大阪成蹊大学様のファッションコスチュームデザイン学科の学生さんと協力して、フィリピンのファッションショーをつくることになりました。 私たちのアイディアだけでなく、普段からデザインに携わる方々の考えを融合させたファッションショー。 これは長年温めてきたプロジェクトでもあり、凄く楽しみにしています。

他にもcoxco Labが開校したので、そこの生徒たちの成果物をクラウドファンディングによる販売、ファッションショーで発表など、協力し合えることが増えるので、それも楽しみです。

DEAR MEの支援方法ですが、個人の方であればスポット、もしくはマンスリーで寄付いただける方を募集しています。 今後はフィリピンの実情を知りたい人向けに、現地のスタディツアーも実施する予定ですので、公式SNSをチェックしていただければと思います。

あとは、企業様向けに協賛プランも用意しています。私たちの活動を通して企業様のロゴをメディアに露出し、企業認知の拡大、企業内のSDGsの活動の促進、社会的価値の向上に貢献いたします。

DEAR MEの支援についてお問い合わせはコチラ → info@npodearme.com

――環境問題の深刻化やSDGsの重要性が高まり、ファッション業界は多くの改善点が指摘されています。そんな中、ファッションが好きだという気持ちを抑えてしまう方もいるかもしれません。そんな方々にメッセージがあればお願いします。

私自身、DEAR MEに参加するまでは、ただファッションが好きで着たいものを着るだけでした。 だから、大好きなファッション業界が環境や誰かを傷付けていると知って、大変なショックを受けました。 しかし、DEAR MEの活動を通してひとりひとりが手を取り合えば、解決は不可能ではないと感じています。 そのためには、まず現状を知るということが大切ではないでしょうか。

今は選択肢がとても増えている時代です。 例えば、DEAR MEの代表、設立者である西側のファッションブランド「coxco(ココ)」では、ペットボトル100%の洋服を販売していて、デザインも可愛く、さらに売上の一部がファッションスクールに寄付される仕組みになっています。 こういったポジティブな情報を知った上で気に入った洋服を長く着る、という選択を多くの人が心がければ、より良い未来に近付くはずです。

誰かを傷付けることを怖がってファッションを楽しむだけでなく、ちゃんと背景を知って正しい選択をする。 そうすれば、大好きなファッションが誰かのためになっていると感じられ、さらに好きになれるかもしれません。 そういった選択肢や現状を多くの人が知る機会を増やし、かつアクションできる場所を創出するためにも、DEAR MEはこれからも活動していきたいと思います。

NPO法人 DEAR ME https://npodearme.com

田村美有(たむら みう)
関西学院大学総合政策学部国際政策学科に通う大学4年生。誰かの夢やきっかけ創りに携わりたいと思い、大学2年生の時にNPO法人「DEAR ME」に参加。2023年度から学生代表を務める。

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