楽園タヒチの鳥「タヒチシギ」を滅ぼしたのは誰?【絶滅動物シリーズ】

楽園タヒチの鳥「タヒチシギ」を滅ぼしたのは誰?【絶滅動物シリーズ】

南太平洋に浮かぶ小さな島、タヒチ島。
美しい海に囲まれたその島は、豊かな自然とフランスの影響を受けた絶品料理を味わえる、リゾート地として知られた楽園のような場所です。
そこに、タヒチシギと言われる鳥がいました。
しかし、この鳥は1770年代に滅びてしまったとされていますが、タヒチシギを滅ぼしたのは意外な動物でした。
タヒチシギ絶滅の経緯をご紹介します。

※写真はイメージとなり、実際の動物と異なる場合があります。

タヒチシギとは

タヒチシギはチドリ目シギ科の鳥類で、頭から背、それと翼が褐色で、顔から顎、腹などが山吹色をしていました。
昔に絶滅してしまったため、タヒチシギに関する記録はほとんどありません。
シギやチドリの習性から推測するには、水際で虫や小蟹、ボウフラなどを食べていたのでは、と思われます。
シギ類は水辺でちょっとした巣を作り。そこに4個の卵を産みます。
卵は小石にそっくりで、斑紋でカモフラージュされているため、なかなか外敵に気付かれることがありません。
もし、外敵に巣が見つかってしまった場合、親鳥は「擬傷」と呼ばれる行為を見せます。
擬傷とは、傷付いたふりをすることで、外敵の前で飛びそうで飛ばない状態を見せるのです。
それにより、外敵は親鳥が怪我をしていると勘違いし、巣よりも親鳥を狙います。
親鳥は擬傷によって外敵を引き付けながら、十分に巣から遠ざけたら、何事もなかったように飛び去るのです。
外敵が少なかったタヒチ島では、タヒチシギによる擬傷は、十分に卵を守れる手段であったと考えられます。

人間とタヒチシギ

タヒチ島には、ポリネシア系民族が古くから住んでいました。
彼らはタヒチシギを知っていましたが、その小さな鳥を食べる習慣はありませんでした。
人による乱獲によって種が滅ぶことは多いですが、元々タヒチ島にいたポリネシア系民族の人々は、タヒチシギに悪影響を及ぼすことはなかったのです。
500年ほど前のタヒチ島では、タヒチシギと人間は何事もなく共存していました。

しかし、そんな状況が変わるきっかけがありました。
1522年、マゼランが世界一周を成し遂げたことで、多くのヨーロッパ人が海へと進出したのです。
1769年、イギリスの海洋探検家として知られる「キャプテン・クック」がタヒチ島に来島することになりました。
彼こそが、タヒチシギを滅ぼすきっかけとなったと言えるでしょう。
しかし、彼はタヒチシギを滅ぼすつもりはもちろん、捕らえるつもりもなかったと考えられます。
なぜなら、キャプテン・クックは金星の日面通過の観測が目的で、タヒチ島にやってきたからです。
貿易が目的で動物が乱獲されてしまうことも多々ありますが、タヒチシギが滅びた原因はそれでもなかったのです。
では、タヒチ島に何が起こってタヒチシギは滅びてしまったのでしょうか。

タヒチシギを滅ぼした意外な動物

タヒチシギを滅ぼしたのは、そこにいないはずのイノシシでした。
海に囲まれたタヒチ島には、野生の哺乳類は生息していませんでしたが、現在ではタヒチブタと言われるイノシシが生息しています。
これはキャプテン・クックが連れてきたブタではないかと考えられます。
イノシシが生息するはずのないタヒチ島ですが、キャプテン・クックが訪れた後から、島にイノシシがいる、と報告されるようになったのです。
当時の探検家たちは、新しい島に着くと、ブタやヤギを話して野生化させる習慣がありました。
これは次に島へ訪れたときに、野生化させたブタやヤギを食料にするためでした。
そうすることで、海へ出る前に積む食料を減らすことができたのです。
ブタはイノシシを家畜化した生き物ですが、野生化すると何代かでイノシシに戻ります。
キャプテン・クックが放ったブタたちが世代を重ねることで、タヒチ島にもイノシシが生息するようになったと思われます。

イノシシは雑食で何でも食べます。
タヒチシギの卵も例外ではなかったでしょう。
嗅覚の強いイノシシは、鼻を頼りに食べ物を探したに違いありません。
タヒチシギの卵は、小石のようにカムフラージュされていますが、視覚ではなく嗅覚を前にしては意味がありませんでした。
イノシシから卵を守るために、親鳥のタヒチシギは擬傷を行ったでしょう。
しかし、この擬傷も目を頼りに獲物を探す動物への対策でしかありませんでした。
イノシシは擬傷を行う親鳥には興味がなく、目の前の卵を食べてしまうのです。
これにより、タヒチシギは種を残すことができなかった、と考えられています。

人間が直接的に手を下したわけではありませんが、タヒチシギの絶滅には人間が間接的に関わっていたのは間違いありません。
それだけ、生態系は微妙なバランスで成り立っています。
私たちは、これ以上タヒチシギのような犠牲を出さないように、生態系を守りながら生活を送らなければならないでしょう。

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