アライグマは危険?外来種指定の原因と被害内容とは

アライグマは危険?外来種指定の原因と被害内容とは

アライグマと言えば、その可愛らしい見た目から人気があり、キャラクター化されやすい動物の1種と言えます。 そのため、親しみを感じている人が多いかもしれませんが、実はアライグマは特定外来種に指定されている動物です。

なぜ、アライグマは特定外来種に指定されたのか。そして、アライグマに危険性はあるのでしょうか。 アライグマの特定外来種としての側面をご紹介します。

実は外来種?アライグマの生態

まず、アライグマとはどういった動物なのか改めて確認してみましょう。

アライグマは哺乳綱食肉目アライグマ科アライグマ属に分類される哺乳類です。 体長は40~60センチ、尾長20~40.5センチほど。灰褐色の体毛に、目の周りから頬にかけた黒い斑点が特徴で、タヌキと見間違われてしまう見た目となっています。

タヌキとの見分け方は、長くてふさふさした尻尾に、黒い文様があること。タヌキの足は黒っぽい色をしていますが、アライグマは白っぽいといった点が挙げられます。 森林や湿地帯、農耕地だけでなく、都市部など幅広い環境に生息し、泳ぎや木登りも得意です。

また、アライグマ属の動物の中では最も広く分布している種で、原産地はメキシコやアメリカ、カナダなど。 日本では1962年に岐阜県で野生化したと考えられ、各地に分布が広がっています。

特定外来種アライグマによる被害と危険性

北米原産のアライグマですが、ドイツ周辺の国々や日本で定着が拡大し、問題となっています。 可愛らしいアライグマですが、なぜ定着が問題視されているのでしょうか。

経済的な被害

アライグマが定着してしまった土地では、農作物や養殖魚が食べられてしまう被害が発生。トウモロコシやスイカ、メロンが食べられてしまうほか、乳牛の乳首が噛み切られたといった被害も見られています。 さらに、家屋や神社の屋根裏に侵入し、そこで住み着いてしまうため、歴史的建造物が汚損するといった被害も。

農林水産省によると、2022年度のアライグマによる農作物の被害額は4.5億円に達すると報告されています。 これは前年度と比較し、0.4億円の増加となるため、被害が拡大していることが分かります。

参考:農林水産省 全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和4年度)

生態系の影響

アライグマは食性が幅広く、繁殖力も強いため、在来生態系に影響を与えると考えられています。 アライグマによる捕食が原因で影響が考えられている種は、エゾアカガエル、アズマヒキガエル、エゾサンショウウオなど。 他にも、フクロウ類とオオタカの巣の略奪、アライグマより小型であるキツネやタヌキといった在来哺乳類との競争も問題となっています。

感染症の恐れ

アライグマはアライグマ回虫、狂犬病、レプトスピラ症といった感染症を保持している恐れがあります。 アライグマ回虫に関しては、人体に感染すると死亡するリスクがあり、アメリカでは幼児が命を落としたケースも報告されているほど、危険な感染症です。

こうした感染症を予防するため、アライグマに触れる際は手袋の着用、肌の露出をできるだけ抑え、汚物や血、それに汚染された土は素手で触らないよう、注意しなければなりません。 また、アライグマと接触した際に使用した衣類や道具は、消毒する必要があります。

人やペットを襲う恐れも

アライグマが積極的に人間を襲った事例はありませんが、偶然による咬傷被害は報告されています。

また、アメリカではペットのイヌやネコが襲われた事例があり、狩猟犬がアライグマに殺されるという話も。 見た目に反して性格は凶暴であるため、不用意に近付くと咬まれてしまい、さらには感染症につながる恐れもあるため、遭遇してしまった場合は注意が必要です。

アライグマが特定外来種になった経緯

北米原産のアライグマが日本で初めての野外繁殖が確認されたのは1960年代のことでした。 きっかけは、愛知県犬川市にある日本モンキーセンターで飼育されていた、アライグマのうち12頭が脱走したこと。 ほとんどは回収されたものの2頭が未回収となり、その翌年の1963年に付近の農家から「尻尾に縞模様があるタヌキを見た」という情報が寄せられます。

そして、1977年に犬山市と隣接する岐阜県可児市でアライグマを住民が捕獲。正式に野生化が確認されました。 また、そのアライグマを捕獲した住民は繁殖を試み、1982年に30~40頭を放しています。 さらには、1979年に北海道の恵庭市で飼育個体の約10頭が逃亡。付近の酪農地帯に定着しました。

飼育されていたアライグマの逃亡や遺棄は、その他の地域でも起こっていたと考えられています。 なぜなら、1970年代当時は、テレビアニメ「あらいぐまラスカル」の人気もあって、ペットとして年間1,500頭ものアライグマが輸入されていたからです。 ペットとして飼育されたものの、アライグマは手先が器用であることから脱走が多く、アニメの最終回では「動物は自然の中で暮らすのが一番」というシーンがあって、意図的に森へ放す飼い主も少なくありませんでした。

他にも、可愛らしい見た目に反して凶暴だったため、それに耐えられなかった飼い主が放したというケースもあり、天敵や競争種が日本にいなかったアライグマは、その繁殖力も高さから各地域に定着。 2005年に外来生物法が施行されると、特定外来生物に指定されました。

危険かも?アライグマを見かけたら

アライグマを偶然見つけたら、どうすべきなのでしょうか。 アライグマは意外に凶暴な面もあることから、餌付けや自ら捕獲するようなことは危険なので、見つけたとしても不用意に近付かないようにしてください。

もし、アライグマによる被害を受けていても、勝手に捕獲してはなりません。 なぜなら、アライグマは「外来生物法」によって許可なく捕獲することは禁じられているからです。 アライグマの捕獲は自治体によって対応が異なるため、まずはお住まいの市町村の鳥獣被害担当窓口へご連絡ください。

参考:日本野鳥の会 各都道府県の野生鳥獣担当機関の連絡先リスト

また、特定外来種に指定された動物はアライグマだけではありません。 アライグマのような動物を増やさないためにも、外来種の危険性や影響を十分に理解しましょう。

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