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廃材・端材をiPhoneケースやブックカバーに―ごみ拾いから商品開発まで幅広く活動する「環境ロドリゲス」とは?好きなことから意識が変わり環境問題に取り組む 湯浅晶さんインタビュー

廃材・端材をiPhoneケースやブックカバーに―ごみ拾いから商品開発まで幅広く活動する「環境ロドリゲス」とは?好きなことから意識が変わり環境問題に取り組む 湯浅晶さんインタビュー
早稲田大学のインカレサークル、環境ロドリゲスはさまざまな大学の学生が参加している

学生による環境サークルは数々存在しますが、早稲田大学の「環境ロドリゲス」は1997年設立と歴史が長く、さまざまな活動に取り組んでいます。 その活動は非常にユニークで学生たちにとって居心地のいいサークルであることはもちろん、積極的に環境問題の解決に取り組み、企業と協力して商品開発を行うなど、活動は幅広いものです。

今回は、そんな環境ロドリゲスの魅力を参加する学生さんたちに語っていただきました。また、後半はメンバーの一人である湯浅晶さんにフォーカスを当て、インタビューを行っています。 環境ロドリゲスの活動内容から、学生たちの環境問題に対する意識など、多方面にわたる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

多様性のある環境サークル「環境ロドリゲス」とは

――早稲田大学最大の環境サークル「環境ロドリゲス」とは、どのような組織なのでしょうか。珍しい名称の由来や設立の経緯も含めて教えてください。

環境ロドリゲスは「学生が主体となって、多様なアプローチから環境問題の解決に貢献する」という理念のもとに活動する早稲田大学のサークルです。 学生環境NPOでもあり、メンバー同士で積極的に環境問題の解決に取り組むこともあれば、学生らしく合宿や遊びに行ってわいわいすることもあり、環境意識が高い人も、そうでない人にとっても、居心地のいいサークルを目指しています。

設立は1997年で、この年に開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)に多くの学生が参加する姿を見た創始者が、早稲田大学による環境活動の不足を感じたことをきっかけに立ち上げた、と聞いています。 「ロドリゲス」という名前は、絶滅してしまった「ドードー」という生物が最後まで生息していた「ロドリゲス島」が由来で、ロドリゲス島のような豊かでかけがえのない自然を大切に受け継いでいこう、という想いから名付けられました。

環境ロドリゲスのロゴ。こちらもドードーがモチーフになっている

参加人数は現時点で130人近く所属していて、早稲田大学内の環境ボランティアサークルの中では最大規模です。 メンバーの構成は、早稲田大学内だけでも理工の環境系学科の生徒や政治経済学部、法学部と多様で、ほとんどの学科の学生が集まっています。

また、環境ロドリゲスはインカレサークルなので、他大学の学生の参加も可能です。 2024年7月現在は日本女子大学、法政大学、学習院大学など幅広い大学の方が加入してくださっています。

ごみ拾いから商品開発まで!環境ロドリゲスの7つの企画

――具体的には、どのような活動を行っているのでしょうか。

環境ロドリゲスの活動体制はユニークで、その時々のメンバーの興味関心に合わせた活動に取り組める点が大きな特徴です。 活動は1つだけでなく「企画」と呼ばれるグループごとにテーマを掲げ、それに沿った活動に取り組んでいます。

メンバーの興味や熱意によって活動は柔軟に変化し、あらゆる分野から環境問題にアプローチしますが、現在は7つの企画が活動中です。

うみさんぽ

うみさんぽのメンバーがビーチクリーンに参加する様子

うみさんぽは「環境×海」をテーマにした企画で、具体的な活動としてはビーチクリーンや河川敷の掃除、あとは水中の生態系に影響を与える外来種「ミズヒマワリ」の駆除が挙げられます。

他にも、海に関する環境問題の勉強会やSNSによる情報発信も、うみさんぽの活動です。 学生の立場から海洋環境問題に取り組むことで、日々の環境意識を高めることが理念となっています。

えこのわぐま

えこのわぐまのテーマは「環境×早稲田」です。ここで言う「早稲田」は、早稲田大学のことでもありますが、早稲田地域の「早稲田」でもあります。

具体的な活動は、新入生歓迎期間キャンパス内に散らばるサークルのビラ回収、早稲田地域で行われるお祭りでごみの分別指導を行うボランティアなど。 早稲田からエコの輪を広げる、ちょっとだけ環境を考えてみよう、という理念のもと活動しています。

ecoSMILE

子どもたちに環境問題の重要性を伝えるメンバー

ecoSMILE(エコスマイル)は主に子どもを対象とした企画で「環境×教育」をテーマに、楽しみながら「環境」に興味を持って自ら行動を始められるきっかけとなれるような活動を目指しています。

具体的には、さまざまなイベントにブースを出展して、子どもたちが環境について学ぶ機会を提供、福井県鯖江市の小学生を対象に公民館で環境プログラムを開催するなど。 環境問題は、次の世代も継続して取り組まなければ解決できないものなので、子どもたちにもちゃんと知ってもらう、意識してもらえる機会をつくる活動です。

やまなび

里山の実態を学び、現状を発信する活動

やまなびのテーマは「環境×里山」です。 里山は人の活動によって維持され、私たちに多くの恩恵をもたらしますが、荒れ地の増加や人口減少などの問題を抱えています。

そんな里山の実態を学び、現状を発信することがやまなびの活動で、屋外の活動を中心に森林整備や草刈り、ログハウスづくりのお手伝いなど、幅広く取り組んでいます。

えこねくすと

えこねくすとは「環境×キャリア」をテーマにした企画で、7つの企画の中では最も新しいものです。 活動内容は、環境系のキャリアを持つ方にインタビュー、SNSで環境に関する情報を発信して解説するなど、環境に絡んだキャリア形成のサポートを行う企画となっています。

2023年に開始したばかりですが、既に6名の方にインタビューを行い(2024年6月現在)、SNSも頻繁に投稿しているため、今後が注目される企画です。

参考:note えこねくすと@早大環境ロドリゲス

REC

新型コロナウィルスの感染拡大前は積極的に佐渡島で活動していた

REC(レク)は、新潟県の佐渡島を活動拠点として、自然環境を活かした地域活性を目指して活動しています。 古民家を改修して地域のコミュニティセンターをつくったり、棚田を整備して観光名所の景観を維持するといった活動を行ったり、さらには大規模なツアーを主催して観光客を呼び込むなど、かつては積極的に活動していました。

そのため、経済の地域活性化に貢献したと評価され、環境省による第2回グッドライフアワードを企画単位で受賞するなど、多くの実績を残しましたが、新型コロナウィルスの感染拡大がきっかけで、その時期から活動が縮小されている状況です。

現在もオンラインで会議したり、どきどき佐渡を訪れたり、活動は続いているので、これからどのように復活するのか注目されています。

Re-Cover

多様な商品開発は企業からも注目される

Re-Cover(リカバー)は「環境×商品開発」をテーマに、資源循環型社会実現のために再生素材の普及を目指す企画です。 主に廃材・端材を活用してアップサイクル商品の開発を行い、本来捨てられてしまうものをみんなの心が躍るような宝物に生まれ変わらせています。

他にも、地域のイベントでアクセサリーの制作体験を子どもたちに提供するなど、環境に興味を持ってもらうきっかけをつくっています、

両立が難しい「商品販売」と「想いを届ける」

――Re-Coverは企業と協力して商品を販売していると聞きました。主にどのような商品を開発し、販売してきたのでしょうか。また環境と開発を両立させる上で難しいと感じた点があれば教えてください。

過去に販売した商品としては、再生プラスチックを用いたiPhoneケース、横断幕で使われるターポリンという素材を使ったブックカバー、カスタネットを作る過程で出る廃材を使った箸置きやカレンダーなどです。 現在は着色した鮭のウロコや砕いたペットボトルを使った、レジンアクセサリー、スノードームの他にも、環境問題ガチャを開発しています。

ターポリンを使ったブックカバー
ブックカバーはRe-Coverが販売した商品の中でも大変人気だ
鮭のウロコや砕いたペットボトルを使ったレジンアクセサリー

環境問題ガチャもクマの形をしたレジンアクセサリーですが、全部で7種類あって、色ごとに対応した環境問題に関する説明を書いた紙も一緒に入っていることが特徴です。 青色だったら海洋汚染に関する説明文、緑色だったら生物多様性に関する説明文といった感じで、アクセサリーを集めると同時に環境問題に関する知識が深まるガチャとなっています。

環境問題が知屋は全7種類のアクセサリーと環境問題に関する説明が書かれている

ちなみに、アクセサリーで使われる鮭のウロコに関しては、食品関係の企業の工場で出た廃材です。 鮭のウロコは軽くて小型、さらに着色も容易であるため、アクセサリーと相性がいいだけでなく、ワークショップに参加してくれる子どもたちに廃材の利用について説明しやすい、というメリットがあります。

鮭のウロコは食品関係の工場から出た廃材を利用

商品化にあたって苦労している点としては、啓蒙と販売数を両立させることです。 Re-Coverの理念は、廃材や端材を使った商品の販売を通じて、循環型社会の概念を認知してもらうことですが、それを実現するには多くの商品を販売しなければなりません。

以前はiPhoneケースやブックカバーなど業者に発注して大量に生産することもありましたが、現在はメンバーがつくるハンドメイドのアクセサリーがほとんどです。 そのため、販売できる数も少なく、お客様にメッセージを伝える機会も減っています。

他にも、商品販売も工作体験も本来の目的である循環型社会の概念を広めるまで至っていない印象です。 ただ商品の販売や工作を行いがちになり、メッセージを伝えきれていないので、その辺りはさらに意識して取り組みたいと考えています。

「好きな気持ち」から変化した環境意識

――湯浅さんは、どういった経緯で環境ロドリゲスに参加したのでしょうか。また、参加したことで意識が変わったこと、今後取り組んでみたい活動があれば教えてください。

私は高校生まで、部活や習い事に打ち込む普通の学生で、環境問題もそれほど興味はありませんでした。 大学に入ってサークルを探すときも、ボランティア関係ならいい人が多いかも、といった気持ちで……。

それでも、環境ロドリゲスに興味を持った理由は「商品開発」というワードが目に入ったからです。 実は以前からモノづくりに興味があり、伝統工芸品やインテリアなど、作る人と使う人が空間を超えてつながる感じが好きだったので、商品開発に携われる部分はとても魅力に感じました。

最初こそモノづくりの部分しか興味がなかったのですが、活動を通して「環境問題って思っていた以上に深刻だ」と感じるようになって。 これだけ大きい問題に対して何ができるのか考えるうちに「大きい問題だからこそ、ひとりひとりが小さい行動を起こす必要がある」と考えるようになりました。

それには社会を変える前に、個人が変わる必要がある。むしろ私自身の行動も変えなければ、と考えて「環境×教育」がテーマのecoSMILEも参加しました。

そのため、今はモノづくりだけでなく、環境問題を解決するために、人々の意識を変えるにはどうしたらいいのか、というテーマも考えるほど、私自身の意識も変わったと思います。 そういう意味では、今後取り組んでみたい活動として、早稲田大学のキャンパス内に「環境のために日頃から私たちにできること」をテーマにしたポスターを貼ってみたいと考えています。

今までの活動は福井県や佐渡など少し離れた場所が多く、自分たちの足元が見えてないような感じがありました。 関わる世代もかなり上の人か、子どもが多く、そもそも私たちが生活している早稲田大学の学生たちに興味を持ってもらえない状態だと気付いたのです。

だから、早稲田大学の環境サークルとして一番足元を見たときの活動は、まず同じキャンパスにいる学生たちの意識を変えることではないかと。 早稲田大学の学生から、ひとりひとりが小さい行動を起こせるよう意識を変え、それが同世代に広がり、やがて社会全体に広がることにつながれば、と思います。

他にも、早稲田や新宿の地域で、環境ロドリゲスが主催する環境系のイベント開催も目指したいです。 環境団体や環境サークルは、東京だけでも数えきれないほど存在していますが、どこもつながりは薄いように感じています。 そこで、環境ロドリゲスが27年間かけて築いてきた基盤を活用して、多くの団体やサークルと連携し、社会にインパクトを残せるような活動ができたら、多くの人に何かを届けられるのではないか、と道を模索している途中です。

これまで環境ロドリゲスは数々の賞を受賞している

また、早稲田大学の学生褒賞の中で最も名誉ある賞として「小野梓記念賞」がありますが、2002年度に受賞してからは縁がないままとなっているため、長年の活動を経た環境ロドリゲスの姿で再び表彰されるよう、これからもさまざまな取り組みに力を入れて行きたいです。

入り口が広ければ意識変化の機会は増える

――最後に、この記事を読んで環境ロドリゲスに興味を持った方々へメッセージをお願いします。

まず、環境ロドリゲスに参加を考えている学生に対しては、とても活動しやすく、さまざまな経験ができるサークルだと伝えたいです。 活動のしやすさについては、やはり7つの企画に分かれ、幅広いテーマを扱っている点が大きいと思います。

これにより、環境問題に興味がなかったとしても、私みたいに自分の好きなものから入っていける。 さらには自分で企画を作ることもできて、比較的好きなことを始めやすくて、多様な活動もできるため、積極的に経験を積めると思います。

また、環境ロドリゲスは広報、経理、渉外など役割を分けてサークルを動かしているため、組織の運営を学べる場でもあります。 他の組織と連携して活動することも多いので、社会に出てから役立つような経験もたくさんあるはずです。

次に、学生以外の方に興味を持ってもらいたい点としては、環境ロドリゲスは多様性のあるメンバーとさまざまな経験によって問題解決力を養った学生がたくさん参加しているということです。 そのため、もし企業の方からアプローチいただけたら、お互いに活動の幅を広げられると思います。

これは、環境ロドリゲスに限った話ではなく、多くの学生が環境問題に関心を持っているので、ぜひ企業側からアプローチする機会を増やしていただきたいです。 そうすれば、活動の幅が広がり、環境問題に興味がない学生だけでなく、多くの人に影響して社会規模で意識に変化が見られるかもしれません。

私がそうであったように、環境問題を意識する入り口が広ければ広いほど、そういった機会は増えるはずなので、環境ロドリゲスとしても学生と企業の関わりを重視し、増やしていければと思います。

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