もったいない素材を再発見!アートに再定義・再生するプロジェクト「ReReRe」が町田モディにリデザインされたこけしを展示
東京都町田市にある町田モディ1階のポップアップストア「まいにち蚤の市」に、色鮮やかにデザインされたこけしが登場しました。これらのこけしは、社会福祉法人友愛学園、友愛学園成人部の利用者をはじめとするアーティストたちによってデザインされたものです。糸で装飾されたこけし、だるま落としのような形のこけし、さらには木琴のように音を奏でるユニークなこけしも販売されています。
実はこれらのこけしは、行き場を失い廃棄される運命にあったものたちです。こけしを通して日本文化の一端が垣間見えるのも興味深く、こけしが新たに生かされることとなった背景や、アップサイクルの活動についてご紹介していきます。
目次
ReReReプロジェクトについて
これはReReReと名付けられたプロジェクトで、 Refound(再発見)、Redefinition(再定義)、Reborn(再生)という3つの「Re」をテーマに「もったいない資材」を再発見し、 アーティストやデザイナーの方に再定義・再生いただくプロジェクトです。日本人は古くから『物を大切にする』ことを心に刻んで生きてきましたが、現状は多くの行き場のない資材が焼却処分されています。
こうした資材を継続的に再利用してくださる方を募集し、もったいないの輪を広げ、環境や生活に貢献していきたいという考えのもとReReReは発足されました。アップサイクルの現状やその考え方、そしてもったいない素材の背後にある物語や文化的な意味を伝えることが、このプロジェクトの目的です。そして第一弾としてこけしが扱われました。
こけしが選ばれた背景
素材となるこけしは株式会社浜屋(以下「浜屋」)から提供されました。浜屋は日本国内の不用品をリユース・リサイクルする企業で、こけしもその一環として扱っています。集められたこけしの多くはヨーロッパに出荷され、そのかわいらしい見た目が好評を得ていますが、わずかなひび割れや色あせがあるだけで市場に出すのが難しい場合もあります。
素材としての良さは十分に残っているため、「もったいない」と感じたことが活用のきっかけでした。そして、什器のアップサイクルやリース・販売を行う株式会社uragamiとの連携により、ReReReプロジェクトが始まりました。
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こけしの価値転換への挑戦
形を変えてこけしを活用する過程では、「こけし」という存在に対するさまざまな意見が交わされました。特に、顔が描かれたこけしを加工することについては、「顔のあるものには魂が宿る」といった日本独自の考え方もあり、慎重な議論が行われました。
一方で、こけし工人に直接話を伺うと、「形が変わっても作品として残ることが嬉しい」という肯定的な意見をいただきました。こうした声に支えられながら、プロジェクトは多くの共感を得て進行しています。
もったいない素材「こけし」を活かす友愛学園成人部の制作活動
友愛学園成人部の利用者の方々が行き場を失ったこけしを使い、個性豊かな作品を制作しました。それぞれの作者が持つ独自の表現力によって、唯一無二のこけしが生まれています。以下に、作者とその作品をご紹介します。
金村勇宏さん
日常の創作ではダイナミックな身体表現を用い、刺繍や作画を通じて感情を表現しています。今回のこけし制作では、ろくろでこけしを回しながら大胆に絵の具を垂らし、踊るような動きで作品を仕上げました。
久下智香さん
こけしを手渡すとすぐに布で包み、丁寧に刺繍を施しました。編み物や粘土、刺繍など、多岐にわたる素材を使う久下さんの作品は、技法が変わっても一貫性を持つのが特徴です。
臼田祐太さん
素材やサイズを問わず、大胆かつ繊細に表現するのが臼田さんのスタイルです。こけし制作では一つひとつをじっくり選び、優しい眼差しで丁寧に着色と装飾を行いました。
永瀬洋昌さん
幼少期から動植物や戦隊ヒーローの作画、粘土オブジェの制作を続けている永瀬さん。今回もこけしに真剣に向き合い、作画と立体化を通じてダルマのモチーフを完成させました。
大竹明さん
薪用の広葉樹を削ることから始まった彫刻活動を、数十年にわたり続けている大竹さん。こけしという高品質な木材を前に、ヤスリを使った制作がさらに捗った様子です。
佐藤由喜男さん
地図や漫画を題材に独自の作画を行う佐藤さんは、こけしを地図のような線で装飾し、漫画的な色彩を使ったユニークな作品を生み出しました。
小林太さん
彫刻刀を用いた線の表現と80年代カルチャーを取り入れた作画が特徴の小林さん。こけし制作でも、彫刻刀で細かな線を描き込む手法を活かしました。
廃棄こけしから生まれた炭「すみこ」
ポップアップストアでは、廃棄予定だったこけしを炭化して再生した商品「すみこ」が販売されています。「すみこ」は、重金属や不純物を取り除き、安全な炭化炉で作られた高品質な炭です。こけしづくりに使用されているミズキやイタヤカエデといった硬質の木材により、炭素含有量が高く、精錬度の高い特性を持っています。叩くと金属のような澄んだ音が響き、導電性もあるため、さまざまな用途に活用可能です。以下が「すみこ」の用途となります。
- 燃料
- 消臭剤・空気清浄インテリア
- 浄水材
自然のエネルギーを活かした「炭生活(チャコールライフ)」を、ぜひお試しください。
ReReReプロジェクトの目指す未来
ReReReプロジェクトでは以下の目標を掲げています
- 継続的なReuseを促進するために素材を活用してくれる方を募ること
- 「もったいない」を楽しむ文化を広めること
- 新しい価値観を創造すること
- Refound、Redefinition、Rebornを実現し、持続可能な商品提供の仕組みを作ること
今後も「もったいない素材」 を活用し、新しい価値の創造を楽しんでいただける方を募集しています。興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。今回のこけしプロジェクトの全体像を紹介する動画が、ポップアップストアで流れています。作品に込められたストーリーや想いを、ぜひ映像を通して感じていただければと思います。
株式会社uragami
チラシやコピー用紙の”裏紙”をメモ書きとして再利用するように、一度消費され廃棄される物の価値を再発見し、再び世の中に提供する事を目指しています。廃棄予定の家具や什器を選別・回収し、修復やリデザインを施すことで新たな価値を見出します。町田モディ1Fポップアップストア「まいにち蚤の市」ではヨーロッパからの輸入品をはじめとするアンティーク品も販売中。町田モディのポップアップ「まいにち蚤の市」は9/1~11/30まで。
什器のリース・買取 株式会社uragami https://uragami-re.com
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社会福祉法人友愛学園 友愛学園成人部
東京都青梅市で、日中活動として表現活動を行っています。主に知的障害を持つ方々を対象に支援を提供しており、木々に囲まれた自然豊かな気持ちのよい環境で約60名の方が利用しています。活動は月曜日から金曜日に行われ、「工房YUAI」と「みおん」という2つのグループがあります。一人ひとりの幸せに向かって表現し、希望を見つけて叶えながら、日常生活に潤いを与え、生活リズムを整えています。表現した際の達成感を大切に、利用者一人ひとりを支えています。
友愛学園 成人部 | 社会福祉法人 友愛学園 https://www.yuaigakuen.or.jp/office/adult/