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セルフレジ開発のパイオニア「寺岡精工」が環境事業を深める理由とは?ボトルスカッシュ・環境Naviから見る環境ソリューション

セルフレジ開発のパイオニア「寺岡精工」が環境事業を深める理由とは?ボトルスカッシュ・環境Naviから見る環境ソリューション
取材に協力いただいた寺岡精工 環境事業部の皆川さん

株式会社寺岡精工は1925年に敏感自動秤を開発してから、POSシステム、自動包装機など、流通小売や食品製造分野を中心に、現場主義で新しい常識を創造するソリューションを展開していますが、環境に配慮された製品を世に出し続けている点でも注目され続けています。

今回は寺岡精工が世に与えた影響から、環境に配慮した製品の開発を始めた経緯、今後のビジョンなどをお伺いしました。

寺岡精工が世に出したセルフレジは大きな革新だった

――スーパーマーケットなど量販店のレジで「TERAOKA」のロゴを見ない日はありませんが、寺岡精工は主にどういった事業に取り組んでいるのでしょうか。また寺岡精工はセルフレジのパイオニアとして知られていますが、開発の経緯や社会に与えた影響についても教えてください。

寺岡精工は「流通小売」「食品製造・加工」「製造・物流」「飲食・専門店」の4分野を柱に事業を展開しています。 2025年現在の連結従業員数は約3,900名。今年で創業から100周年となります。 開発拠点としては大田区にある本社。製造拠点としては株式会社デジアイズというグループ会社が岩手県奥州市に。海外の製造拠点が中国、シンガポール、イギリスにあります。

元々計量器やラベルプリンターといった、スーパーなどの食品小売業さんでお使いいただく製品を展開しており、より幅広く多面的なサービスによってお手伝いできればと、1980年代からPOSレジ市場に参入しました。ちなみに、同時代にはバックヤードにおいても、食品の計量・パック・ラベル貼りを一台で完結する世界初の自動包装計量値付機を開発するなど、次第にトータルソリューションを提供する企業へ変化していきました。

そんな中、2000年代後半から小売業で人手不足が大きな問題となります。当時スーパーのレジでは、1つのレーンに従業員の方が2名入り、スキャニングと袋詰めの担当に分かれるという、人手が必要となる体系でした。

この問題を解決するため、2010年に弊社はセミセルフレジを初めて世に出します。 セミセルフレジは従業員がスキャニングだけ行い、お客様がご自身で会計と袋詰めを済ませる仕組みで、店舗にとっては人手の削減に。さらにはレジ待ちの解消につながり、お客様にとってもメリットがありました。

寺岡精工の東京ショールームに設置されたPOSレジ

さらに近年では、フルセルフレジの普及が進んでいます。フルセルフレジはスキャニングから袋詰めまで、全てをお客様 が行うのでレジ一台当たりの時間はかかってしまいますが、セミセルフレジと組み合わせた最適なレジエリアをご提案したり、どなたでも使いやすいレジの筐体・UIを開発した結果、TERAOKAのセルフレジは広く認知されるようになり、国内でトップクラスのシェアを誇っています。

スマホを使ったセルフレジ「Shop&Go」は、さらに手間や待ち時間が削減される

最近ではセルフレジをさらに進化させた、スマホレジ「Shop&Go」を展開しています。 こちらは、お店で商品を選びながら、スマホでバーコードをスキャニングし、最後に専用の精算機で会計だけを行うため、レジ待ちがほとんどない新しいお買い物を体験できるアプリとなっています。

環境に配慮された製品開発を始めた経緯は

――セルフレジで知られる寺岡精工ですが、環境に配慮された製品も数多く世に送り出している印象があります。環境配慮に着目したタイミングなどあったのでしょうか。

正直に申し上げると、最初から環境配慮に着目したわけではなく、セルフレジの開発がそうだったように小売業さんのニーズに応えてきた結果、そこに至ったという経緯になります。 ごみの廃棄やコストにお困りだとか、投資家や消費者から「環境対策に力を入れられているのか」という点も見られるようになったなど、お困りごとの解決策を模索しているうちに、少しずつラインナップが増えていったという形です。

代表例としては、ライナーレスラベルという製品が挙げられます。 お肉やお魚といった食品では値付けラベルが貼られていますが、年々法令によって添加物や栄養成分など、表示すべきものが増えています。 しかし、かつては同じサイズのラベルが台紙に貼られている形だったため、表示が少ない商品にも、印字が多いものと同じラベルを使ってしまっていました。 そのため、商品によっては余白も多く、ラベルの単価が無駄に上がり、台紙ごみも排出されている状況だったのです。

ライナーレスラベルによって多くの台紙ごみが削減された

これを防ぐために、ラベルの大きさを自由に調節できないか、という発想から、ガムテープのように台紙が無いラベル(ライナーレスラベル)に必要な情報だけ印字して、必要なサイズでカットするプリンターを開発しました。 最初はコスト削減と効率化を意識して開発されたものですが、結果的に紙資源を節約し、廃棄物も削減されて、環境負荷を低減した製品の代表例と言えます。

ペットボトル回収がリサイクルの入り口になる

――他にもペットボトル減容回収機「ボトルスカッシュ」や廃棄物計量管理システム「環境Navi」といった環境に配慮した製品をいくつも世に出していると思います。これらの製品はどういったものでしょうか。

まずボトルスカッシュですが、小売業さんのお悩みを聞いているなかで、ペットボトルの回収のことで皆さんが困っていると分かりました。 ペットボトルは消費者にとっても身近で、プラスチック削減も大きな社会課題の1つです。 だとしたら、ペットボトルの回収は小売業さんが起点となって消費者に参加いただけるリサイクルで、取り組みとして分かりやすいのではないか。つまり、ペットボトルの回収機はリサイクルやSDGsを体験するうえで、入口となるような製品と考えられました。 ただ、回収機を設置するだけでは意味がないので、リサイクル業者や再製品化の商品を取り扱うメーカーさんも含んだスキームで小売業者さんに提案していきました。

ボトルスカッシュは全国のコンビニやスーパー、商業施設など日常的に利用する場所に設置され、回収したペットボトルを約1/3に圧縮して減容します。 導入実績としては全国で5,300台ほど。一番設置いただいているのは大手コンビニエンスストアで、10月に47都道府県すべてに導入されました。

そのコンビニでは、回収本数に応じたポイント付与を行い、お客様のリサイクル参加を促しています。回収後はボトルを再びボトルに再製品化する、いわゆるボトルtoボトルというリサイクルを行います。

ボトルスカッシュ。回収したペットボトルを圧縮して減容。利用者にポイント付与やクーポンの発行などメリットを付加することもできる

ビオセボンというイオングループさまのオーガニックストアでも、ボトルスカッシュが設置されていますが、こちらは社会貢献団体に対して、ペットボトル1本で1円を寄付できるという仕組みです。 ボトル回収によるインセンティブは店舗に合わせてカスタマイズが可能で、ポイント付与や寄付の他にも、クーポンの発行があります。

また、ボトルスカッシュは設置した店舗側にとってもメリットがあります。1つはポイント付与のようなインセンティブによる集客効果ですが、もう少し現実的なところだと人手不足の改善です。 多くのスーパーでは店頭に回収ボックスがあり、ペットボトルが集まると袋を交換しますが、その回数は想像以上で、夏場であれば1日に何十回も繰り返すケースも珍しくありません。 しかし、ボトルスカッシュはボトルが減容されるため、袋の交換回数も減少。それまでは瓶や缶などの混ざり物を分別する手間もありましたが、ボトルスカッシュはセンサーで自動的にはじいてくれます。 回収された大量のペットボトルで圧迫されていた店舗のスペースも、減容によって保管効率がアップ。リサイクル業者に引き渡すトラック輸送の回数も減るため、二酸化炭素排出が削減できるという効果もあります。

ボトルスカッシュによって圧縮されたペットボトル

こういった効果は、内蔵されているワイヤレスルーターによってクラウドに随一実績が送信されるため、実績の見える化も可能です。 回収本数がどれだけあって、二酸化炭素がどれだけ削減されたのか、そういったデータを店頭やオフィスのモニターに設置し、リアルタイムで確認できることで、リサイクルに対する意識を高めることにつながります。

あとは、小中学校の文化祭などの場でリサイクルを体験してもらう「エコ育」のような機会でもボトルスカッシュは活躍しています。また、公益社団法人発明協会が主催する令和7年度関東地方発明表彰において「ペットボトル横入れ構造をもつ減容回収装置」(特許第7216446号)の発明で「発明奨励賞」を受賞しました。

ラベルによる徹底管理で廃棄物削減

環境Naviは廃棄物を計量・管理できるシステムで、例えばスーパーでは、どの部門から、どのようなごみが、どれだけ排出されたかを把握できます。 開発の背景にはフードロスの問題が大きく関係しています。以前から食品廃棄はスーパーを始めとする食品小売業の中で大きな課題で、さらに海洋プラスチックも問題視されるようになり、削減方法についてご相談いただいていました。

まずは見える化が必要だろう、という話になったのですが、もちろんスーパー側も取り組んでいなかったわけではありません。 バックヤードにある大きい秤を使って計量し、それを手書きで記録し、パソコンに入力を繰り返す、といった運用がほとんどでした。それを一年中続けるとなれば簡単なことではなく、さらにバックヤードでは紙も汚れて正確な記録も困難という問題もありました。 こういった手間を削減すると同時に、食品廃棄物の「発生抑制」「減量化」「リサイクル」を目的とした法律、食品リサイクル法に対応するための、「見える化」の手段、というコンセプトで環境Naviが開発されます。

使い方はシンプルです。ごみを出すときは部門ごとに発行されたバーコードをスキャニングし、品目を選んで秤に乗せます。 すると、ラベルが発行できるので、それをごみ袋に貼っておく。 これだけで、どこの部門からどんなごみが出ているのか、品目と量までリアルタイムで集計できます。計量済かどうかもラベルが貼ってあるかチェックするだけで判断できるので、重複して集計することもありません。 やみくもに廃棄を減らそうと右往左往するよりも、データを集計して分析し、ごみの出所と量が正確に分かれば対策も進められる。その第一歩として環境Naviは活用いただけます。

環境Navi。左側卓上の機器にバーコードを読み込ませ、右下の秤でごみを計量するだけで廃棄量を正確に把握できる

また、収集運搬業者に廃棄物を回収してもらうときも、量を正確に量られているため、適正な価格で委託できる、というメリットもあります。 廃棄物を削減できて経費節約の効果もあり、どこでも設置しやすいので、スーパーの他にもショッピングモールやホテル、百貨店、自治体の市役所、病院など幅広くご利用いただいています。 環境Naviも最初は小売業さんをメインに開発したものですが、環境に関連する製品に関しては、その他の業種の方々にも購入いただいている印象です。 だから、環境Naviは消費者の皆さんの目に触れられる機会は少ないものの、隠れたヒット商品と言えるかもしれません。

――そのほかに、環境に配慮された製品はどういったものがあるのでしょうか。

たとえば、お肉やお魚、お総菜などの食品をMAP包装(ガス置換包装)する「LX-5600」は、食品の鮮度を保ち、消費期限を延長することのできる包装機です。店舗で期限内に売り切れなかったり、家庭で期限が過ぎてしまったりすることで発生する食品ロスを削減できると考えています。これまでMAP包装ができる機械は、食品工場に設置するような大型の包装機が一般的でしたが、LX-5600はスーパーのバックヤードにも設置できる大きさです。計量・値付機能も一体となっているので、働く人に余計な負担をかけることなくMAP包装が導入できます。

お肉やお魚、お総菜などの食品を包装する「LX-5600シリーズ」も、ライナーレスラベルを採用し、高性能なストレッチ機能でフィルムの性能を最大限に活かして使用量を削減するなど、省資源に貢献する製品です。 省エネ設計のため、消費電力を大幅に削減し、鮮度保持に優れているため、廃棄ロスの削減に貢献します。

LX-5600は食品の包装から計量、値付けまで一台でこなす。食品の鮮度を保持し、ライナーレスラベルも採用しているため、食品ロスや廃棄物を削減してくれる

環境に優しい製品を作り続ける寺岡精工の今後は

――今後、環境に配慮された商品はより求められると思われますが、そんな中で寺岡精工としてはどういった立ち位置で製品を開発していくとお考えでしょうか。

弊社としてはお客様のニーズに応えて製品を世に出してきましたが、今後の社会は環境意識がより高まるだろう、と実感しています。 同時に、弊社が環境配慮に関するお悩みに何かしらの提案ができる企業だと広く認知されつつある、と捉え始めています。 それはボトルスカッシュの実績を見ても感じていることで、今後も力を入れていきたいです。

今後、増えるだろう環境に関するニーズにも積極的に応えていきたいと話す皆川さん

現在は我々環境事業部が中心となり、リサイクル関連の専門知識などを体系化しています。この知識を全社の営業担当者に共有し、お客様との対話に活用してもらうべく展開を進めています

「環境について何かをしたい」と考えたときに「とりあえず寺岡に相談しよう」と思っていただけるような、頼れる相談相手となることが弊社の理想的な立ち位置であると考えます。

参考:寺岡精工 公式ホームページ
参考:寺岡精工 公式X(旧Twitter) アカウント
参考:寺岡精工 公式Facebook アカウント
参考:ボトルスカッシュ 公式Instagram アカウント

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