資源リサイクルをIT・デジタル化!環境省のプロジェクト始動
出典:環境省 環境省報道発表資料より(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114352.pdf)
環境省は、「資源循環×デジタル」プロジェクトを推進している。本プロジェクトは、使用済製品や有用金属などを国内で効率よく回収し、リユース・リサイクルすることを目的としており、モノのトレーサビリティやコミュニケーション機能を有した情報プラットフォームの構築を目指している。
デジタル技術との連携
国内の資源循環において、リユース品や有用な金属のリサイクルなど、まだまだ有効利用ができず廃棄物として処理している事例が数多くある。これらの資源を有効的に活用するためには、特に回収・リユース・リサイクルに関する経済性や技術的な課題を改善することが急務である。
そうした背景があるなか、環境省は、急速に進化しているAI、IoT、ブロックチェーンなどのデジタル技術に着目。これらの技術の特性であるトレーサビリティ(追跡可能性)や情報を元とした関係主体間のコミュニケーションの促進機能を活用して、国内で使用済み製品や有用金属などを効率的に回収するために、資源循環に関する情報プラットフォームの構築に乗り出した。
すでに、プラットフォームの構築に向けて方向性を探るべく資源循環に関わるメーカー、素材事業者、リユース、リサイクル事業者などにヒアリングを実施し、必要な要素、分野、ニーズなどの検討を行った。一方で、ITプラットフォームの運営者からもヒアリングを行っており、プラットフォーム運営に必要な要素やもたらせる付加価値などの検討も行った。参加者・運営者両者の意見を踏まえ、2021年度以降に進めていく具体的な実証の候補となる2つのビジネスモデルを発表した。
使用済太陽光パネルリサイクルのフローに情報プラットフォームの導入を
一つ目は、「特定製品に関するリユース・リサイクルの一体的運営」を想定した情報プラットフォームを構想している。具体的には、使用済み太陽光パネルの回収からリサイクルまでの一連の過程に情報システムの導入を目指す。(下図)
使用済太陽光パネルリサイクルの目指すフロー。出典:環境省 環境省報道発表資料より(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114352.pdf)
2012年に開始した固定価格買取制度(FIT)を背景に、短期間で太陽光パネルは急速に普及した。その結果、2030年代には耐用年数が過ぎた使用済太陽光パネルが大量に市場に排出されることが予想される。
現在でもすでに災害や施工不良などの理由で一部排出されているが、リユースやリサイクルしているものは少なく、大半は破砕・埋め立て処分となっている。
このビジネスモデルでは、そうした使用済太陽光パネルを廃棄せずになるべくリサイクルし、資源循環を促すことを目的としている。
情報プラットフォームの役割としては以下のものを想定している。
- 適正価格による適正処理を促し、トレーサビリティの管理
- 発電事業者へのワンストップサービスの提供
- 処理事業者の適正処理プロセスを促進
- 回収した使用済み太陽光パネルの二次市場に見合った性能検査をサポート
工場排出物の管理合理化
「工場排出物の管理合理化」のイメージ。出典:環境省 環境省報道発表資料より(https://www.env.go.jp/press/files/jp/114352.pdf)
2つ目は、「工場排出物の管理合理化」。複数の工場からの排出物(端材、包装材、廃棄となった製品、更新に伴う廃棄設備などを含む)を対象に、それぞれの現場で発生した排出物を共通の分類条件などで分ける。情報プラットフォームに排出物管理データを一元化することにより、従来は排出元がそれぞれその量や性状などの情報をもっていたが、このプラットフォームを使えば横断的に事業者間で情報共有が可能となる。
排出物情報データベース、取引情報データベース、処理加工情報データベースをそれぞれ共通分類などにより整理することで、「排出事業者とリサイクラーのコミュニケーション促進」「排出から再生材製造までの性状や処理プロセスをトレース可能な状態での情報保管」「排出事業者の合意の範囲内での排出物情報の共有」などができるようになると想定している。
金属リサイクル、車載用リチウムイオン電池リサイクルの実証も推進
今後、金属リサイクルプロセスについてもシステム実証を行う。日本は、廃棄物収集システム、破砕・選別技術のリソースが発展しており、一方で製錬などの金属回収技術の水準も高い。しかし、それぞれの事業者は独立しており、製造からリサイクルまでのネットワークについては脆弱な部分がある。そこで、情報プラットフォームを確立し、破砕・選別機器メーカー、破砕・選別事業者、製錬事業者などのリサイクルに関する事業者間での連携を強固にすることで、より効率の良い資源循環を目指す。
ほかに、自動車用車載電池(リチウムイオン電池)についても実証を行う。ハイブリッド車用の使用済電池が排出し始めていることに加え、今後自動車電動化の流れを踏まえると、使用済みの電池が大量に排出されることが予想されるため、経済産業省では電池資源の有効活用やリユース市場の創出に向け、車載用電池の適正評価や二次利用促進に必要な環境整備の検討を進めている。環境省も、引き続き、リユースに向けたユースケース構築に向けた取り組みや効率的なリサイクルに向けた実証などを推進していくとしている。
参考:環境省 報道発表より https://www.env.go.jp/press/108265.html