buøy、海洋プラスチックごみが色鮮やかな工芸品に生まれ変わる①

buøy、海洋プラスチックごみが色鮮やかな工芸品に生まれ変わる①
海洋プラ工芸品「buøy(ブイ)

現在、世界中で年間約800万トンのプラスチックごみが海に流れ、海洋汚染や生態系に影響を及ぼしている。日本も島国のため海岸に漂着してくるプラスチックごみが多く、景観はもちろんプラスチック類に含まれる有害物質により海岸自体が汚染されることも懸念されている。

そんななか、プラスチックメーカーの株式会社テクノラボは、海岸に漂着したプラスチックごみを100%原料にしたプラスチック工芸品を作ることに成功。「buøy(ブイ)」というブランド名でECサイトでの販売を開始した。林光邦社長と、buøyブランドオーナーの田所沙弓さんにブイの想いを聞いた。

海洋ごみを100%原料に工芸品を作る

――ブイとはどのような製品ですか。

海岸に漂着したプラスチックごみを100%原料にして生産したプラスチック工芸品です。海岸には、さまざまなプラスチックが漂着し、色や素材もバラバラなため、生産工程で発生する模様は100個あれば100通り違います。それぞれが世界で1 つしかないものになっているのが大きな特徴です。

原料である海洋ごみは、実際に社員が海岸で拾ってきたり、ゴミ拾いのボランティア団体と協力したりして集めています。

――ブイのプロジェクトはどのように始まったのですか。

3年ほど前から「Plas+tech project(プラステックプロジェクト」という名目で、プラスチックの新たな生産技術の研究開発を行っていました。そのなかで、自然に海洋ごみ問題が議題に上がりまして、プラスチックメーカーとしてどうにかできないか、と考えたのが最初のきっかけです。

林光邦社長。

――海洋ごみを製品にするのは非常に難しいと聞きますが。

そうなんです。廃プラスチックを再生する場合は溶解してペレットにするのが通常のやり方で、PPならPP、PEならPEと素材の種類を単一にして、なおかつ色も揃え、金属やごみなどの異物が混入していない品位の高いものを原料とします。でないと、生産したペレットがユーザーの必要とする品質基準をクリアすることができません。

一方、海洋ごみは素材も色もバラバラで、海洋を漂っていたことでプラスチックへの汚染がかなりある。海中には重金属や油が非常に多く浮遊していて、そういったものを海洋プラは吸い寄せてしまうんです。選別作業には限界があるし、元々品位の高いプラではない。ではどうやってプラスチック製品にするのか、みんなで頭を悩ませました。

熱プレス加工を施すことで色鮮やかな模様が

そこで、通常のペレット化する方法ではなく、素材の種類や異物などが混ざった状態のままでプラ製品にすることにしました。海岸で拾う際に色だけは簡単に分けて、粉砕しておきます。

その後、通常のプラ製品を作る際は射出成形機というものを用います。これは粉砕したプラをホッパーと呼ばれる投入口に入れ、その先についている加熱筒シリンダの中で200~300度で溶かしながらシリンダ内にあるスクリュを回転させ押し出します。最後は、機械の先端にある金型に流しこみ、すぐに冷却して成形品を作る機械です。しかし、今回の海洋プラで同様の方法を用いると異物があるためスクリュが詰まって成形することができない。

――どうしたのでしょうか。

熱プレス加工という手法を用いました。プレス機を使って、熱をかけて潰しながら成型します。ただ、射出成形と違って時間が非常にかかります。射出成形だと40秒~1分で1つ作れるのですが、熱プレスだと1つ作るのに15分もかかります。また、先ほどお話ししたように汚染されたプラが多いため、直接人の手に触れないようにPPの薄い膜でコーティングを施しました。

熱プレス機。

――それは大変ですね。

でも、この方法にしたおかげで模様のある工芸品にすることができました。射出成形では、プラスチックが溶けきってしまうので、模様をつくることはできないんです。最初は苦労しました。素材がバラバラのものが入っているので融点が異なり、完成後にでこぼこになったりしました。温度設定やどれぐらいの時間プレスするのが一番良いのかを探るのに試行錯誤して、ようやく完成にこぎつけました。

苦労して手間暇かけたおかげで、製品一つ一つが異なり、文字通り世界で1つしかないものになったのです。私たちが今回ブイに込めた思いを見事に体現してくれました。

世界で1つだけのものを長く愛用してもらいたい

――どのような思いがそこにはあったのでしょうか。

プラスチックが何故捨てられると思いますか?それは、安価で代替が利く製品だからです。そのため、大した思い入れもなくすぐに手放してしまう。プラスチックメーカーの我々としては、それが非常に残念でしたし、もしかして私たちが作ってきたプラ製品というのは、社会では必要なかったものだったのかと感じて、かなりショックでした。

そこで、すぐに捨てられずに長年使っていただけるような商品にしたいと思い今回のブイを作ったんです。自然物には出せない発色、また海洋プラだからこそ出せる世界で一つの模様、落としても割れないプラのメリットも活かした商品になりました。

通常のプラ製品の価格と比べると少し高いと思われてしまうかもしれませんが「それでも欲しい」と思う方に販売して長く使ってもらおうという狙いがあります。手間暇を考えるとこれでも採算は合わないのですが(笑)

私たち自身の生活を変えるには、まず一般の方が海洋ごみの問題を知る必要があります。通常のプラ製品とは異なるブイの製品を見て「なにこれ!」と注目してもらい、海洋ごみの問題を考えるきっかけになってくれれば嬉しいです。

林社長と田所さん。

buøy公式ホームページ:http://www.techno-labo.com/rebirth/
buøyオンラインショップ:https://buoy.stores.jp/

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