パンダ保護で他の肉食動物が犠牲に?【絶滅動物シリーズ】

パンダ保護で他の肉食動物が犠牲に?【絶滅動物シリーズ】

日本でも人気ある動物、ジャイアントパンダは個体数が減少したことから、保護区が作られました。 このような保護活動によってジャイアントパンダの個体数には回復が見られています。

しかし、その保護区で一部の肉食動物が消滅しつつある、という衝撃的な事実が発覚しました。 ジャイアントパンダの保護区で何が起こっているのでしょうか。

生息数が減ったパンダを守る自然保護区

ジャイアントパンダは中国の四川、陝西、甘粛省の高山地帯に自然生息する大型のクマ科動物です。 繁殖力は低い部類ではありますが、竹林伐採や農地開発による生息地の破壊、毛皮目的の密猟、ジャコウジカ猟用などの罠による混獲によって生息数が減少。 そのため、1963年に保護区が設置され、1995年の時点で13か所、5,827平方キロメートルが指定されました。

1989年からは保護区の増設、伐採や狩猟の規制といった試みも進められ、2016年の時点では生息数が増加傾向にあると確認。 しかし、将来的には気候変動による竹の減少に伴って、生息数が減少すると推定され、現在も中国政府と国際社会はパンダの保護と生息地の回復に力を入れています。

また、パンダは独特な外見と稀少性から、世界中で保護の象徴になるほど、多くの人から親しまれています。 そんなパンダの保護区ですが、別の問題の原因となっていると指摘されているのです。

パンダ保護区でユキヒョウやオオカミが減少

ジャイアントパンダは絶滅に瀕していた時期があり、人々は積極的に保護活動を行いました。 そのため、ジャイアントパンダは自然保護のシンボルと言えるような存在となりましたが、その活動が必ずしもすべての動物を守るものではありませんでした。 ジャイアントパンダを保護する活動は、同じ生息地を共有する大型哺乳類が守られていない、と指摘する論文が発表されたのです。

その論文は北京大学生命科学学院の李晟氏によるもので、1960年代以降から保護下にあるジャイアントパンダの生息地の大半では、ヒョウ、ユキヒョウ、オオカミ、ドールなどの大型捕食動物類が、ほとんど消滅しているという内容でした。 1950年代から1970年代の調査データと、2008年から2018年におよそ8,000台のカメラを使って収集した情報を比較した結果、ヒョウが81%、ユキヒョウが38%、オオカミが77%、ドールが95%も消滅していたと判明。 行動範囲が狭いジャイアントパンダのために作られた保護区は、これらの動物にとって狭く、他の地域まで餌を求めに行く必要があり、そこで密猟や病気の影響にあったことから、個体数が減ってしまったと指摘いう指摘も。

ジャイアントパンダの保護区で大型捕食動物類が絶滅してしまうと、生態系のバランスが崩壊し、最終的にはパンダにも影響があります。 この問題を解決するにはパンダの保護だけではなく、生態系全体を考えた自然保護政策が必要だ、と考えられています。

参考:Nature Ecology & Evolutionhttps Retreat of large carnivores across the giant panda distribution range

パンダ保護区で減少する動物の現状

ジャイアントパンダの保護区で減少しつつある、動物たちの生息はどのような状況なのでしょうか。 ヒョウ、ユキヒョウ、オオカミ、ドールをご紹介します。

ヒョウ

パンダの保護区で減少するヒョウ

ヒョウはネコ科ヒョウ属に分類される食肉類です。 アフリカ大陸からアラビア半島、東南アジア、ロシア極東などに分布し、ネコ科の構成種では最も広域に生息しています。 淡黄褐色の毛に黒い斑点が入る姿が特徴的で、ヒョウ柄と表現され、ファッションなどにも取り入れられることで有名です。 柄の美しさのせいもあり、狩猟の対象とされることが多く、それが原因で個体数を減らしています。

ユキヒョウ

パンダの保護区で減少するユキヒョウ

ユキヒョウもネコ科ヒョウ属に分類される食肉類です。 アフガニスタン東部、インド北部、中国西部などに分布しています。 毛の柄はヒョウに非常に似ていますが、淡灰色に暗色の斑点が入っていることが特徴的です。 こちらも毛皮目的や骨が薬用になると信じられたことで、狩猟の対象となり、個体数が減少してしまいました。

オオカミ

パンダの保護区で減少するオオカミ

オオカミはイヌ科イヌ属に属する哺乳動物です。 北半球に広く分布し、多くの亜種に細分化されますが、地域によっては絶滅しています。

かつて日本にもニホンオオカミが存在しましたが、害獣として駆除されたことで絶滅しました。 オオカミは獲物となる草食動物が人間に奪われてしまったことにより、人間によって駆除される危険を冒して家畜を襲うようになりました。 そのため、害獣として人間に駆逐されてしまい、絶滅してしまった地域が数多くあるのです。

ドール

パンダの保護区で減少するドール

ドールとは、イヌ科ドール属に分類される食肉類で、別名をアカオオカミと言い、インドやカンボジア、中国などに分布しています 人間からは狩猟の競合相手とされ、毒餌や報奨金をかけられ駆除されることがあり、個体数が減少。

他にも、道路建設や農地開発などによって、生息地が破壊されることも減少の原因であると考えられています。

パンダ保護される原因は?密猟や気候変動も関係か

そもそも、ジャイアントパンダはどのような理由で、減少してしまい保護される対象となったのでしょうか。 ジャイアントパンダは古くから珍しい動物として人々に認識されていました。 そのためか、毛皮を寝具にすると予知夢を見られると信じられていた過去もあります。

しかし、竹林伐採や農地開発によって生息地は破壊され、毛皮目的の密猟によって個体数が減少し始めることに。 さらに、香水の原料となることで狩猟されている、ジャコウジカを捕えるための罠に混獲されることもありました。 現在では、ジャイアントパンダの個体数が増加傾向にありますが、気候変動により竹が減少することで、再び個体数が減少するのではないか、と推測されています。

あわせて読みたい

関連タグ

カテゴリー

人気の記事

  • 先月
  • 全て

人気のタグ

おすすめの記事

スペシャルコンテンツ

関連リンク