悪質な不要品回収業者の見分け方は?プロに聞く業界の未来(後編)
前回に続き、日本リユース・リサイクル回収事業者組合「JRRC」、岩楯氏へのインタビューを掲載いたします。
不用品回収業者の実態や、噂に聞く違反業者の見分け方など、プロの視点で語っていただけます。
前半をお読みでない場合は、ぜひこちらからチェックしてください。
前回記事:不要品回収業者とは?プロに聞いた利用のメリットや問題点(前編)
業界の新たな可能性「遺品整理」
――不用品回収業者が抱える悩みに対して、JRRCはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
岩楯学氏(以下、岩楯):不要品の回収という仕事に付加価値を付けられないかと考えています。
「付加価値」とはサービスを受ける側が、つまり消費者や行政側から見て、有用なサービスだと実感できることが大切だと思います。
事業者の抱える悩みとして先ほど「雑品スクラップ」のお話をいたしました。(前回記事を参照)
これは国内外の環境問題に対する枠組みの中で、各国が施策を講じていく部分でもあり、当団体の力でそれに影響力を行使するのは不可能です。
従って、「社会ニーズとマッチした高付加価値サービスは何か?かつ従来の回収事業で培った販売チャネルやノウハウを活用できる新たな領域は何か?」と2年くらい前に理事会で検討を重ねた結果、遺品整理・生前整理事業にたどり着いたのです。
既に「遺品整理サービス」と銘打って事業展開されている所、遺品整理にまつわる民間資格を発行する団体など既存の事業者は多くあります。
しかしながらこの数年、「遺品整理」に関連するトラブルがメディアを通して報道され、国民生活センターも消費者へ向け啓蒙活動を行う事態になっています。
つまり見方を変えると「遺品整理」の業界が、まだ安定して良質なサービスを提供できる状態に育っていないと捉えることができます。
――先ほども生前整理の問題について触れていましたね。
はい。こういった現状を踏まえJRRCではコンプライアンスと顧客満足を両立した生前整理・遺品整理サービスを展開して行こうとしています。
その為には、まず会員向け研修をしっかりと行い、この研修をクリアしたことを証する「遺品3Rディレクター」という資格制度を設けました。
実際に受講された会員からは好評を得ておりまして、既に他団体の同分野の民間資格を得ている方からもJRRCの方が「内容がしっかりしている」とお褒めの言葉を頂きました。大変有難いと思っております。
また、有資格者を対象に協業提携の話が舞い込んでおります。なんとかこの話も実現させ有資格者会員が飛躍して頂けるように事務局として取り組んでいる最中です。
そういった有資格者が飛躍する姿を見て、他の正会員が資格取得を志す、またはまだ会員になっていらっしゃらない回収事業者も会員になり資格を取得して新たな事業展開をしていくという流れになるといいなと思っています。
遺品整理のやり方とは?具体的な内容や注意点を解説
遺品整理、という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。 遺品整理は読んで字のごとく、故人が残した
遺品整理、という言葉を耳にしたことはある
業者と消費者の両方にメリットを
――不用品回収業者にとってJRRC会員になるメリットは何でしょうか? また回収を依頼したい一般の方にとって、JRRC会員の回収業者にお願いすることは、どんなメリットがあるのでしょうか。
岩楯:不要品回収業者の団体が今まで存在していませんでした。それが故に行政側も我々の事業がいかに社会に役立つものかが認知できていないという状態が続いていたのです。
JRRC設立以降、中央省庁はじめ地方公共団体などと訪問させて頂き意見交換を重ねる中で「コンプライアンスを守っている回収事業者が存在する」という認識を持っていただける様に少しずつ変化が起きていると思います。
もちろん、有言実行が大切なので行政側から「○○地区のJRRCの会員の事業者□□について…」と活動について問合せが入る事があります。
話を伺って、事業者に実態確認をし、行政に説明を行ない事業者のサポートをしますが、間違った事をしている場合には事業者にハッキリとNG行為だとわかり易く説明することが大切です。
反対に行政側も誤解している事もあり、その場合は行政に対して違法性は無いという見解をぶつけ理解してもらう事に務めます。回収事業者の方は口下手な方もいて、役人や消費者に問いただされると上手く説明出来ない場合も多々あるようです(笑)。
――そういった部分に対してもフォローされているのでしょうか?
そうですね、基本的にJRRCは会員の為の組織体なので、あれしろ、こうしろと日頃口やかましく指示する組織ではありませんが、基本的なコンプライアンス教育としてガイドラインを配布したり、メルマガなどで情報発信したり、時に全国行脚でセミナーを開いたりして参りました。
月額1000円(年払いですと10000円)という安価な会費にしているのは、多くの回収事業者にコンプライアンス意識をもって参加して頂きたいという思いもあるからです。こうしたことから会員になるメリットは十分とは言えませんが「アリ」だと思っています。
一般の消費者の方へお伝えしたいのは、「JRRC会員の回収事業者はコンプライアンス意識のある事業者の集まりですよ」という事です。ですからお宅から出た不要品が空き地に不法投棄される事はありませんので安心してご用命下さい。
それと不要品回収事業者も「生活者」としての側面を持っている事をご理解頂きたいという事です。
事務局では会員に対して「出来ないものは出来ないと消費者に言いなさい」というスタンスで指導しています。
つまり、リユースのあての無い不要品の回収を強要され、それを断ると後々口コミでの悪い評判をたてられる事を恐れるのか、渋々消費者の要求を呑んでしまう回収事業者が多くいます。
一例ですが、「古い冷蔵庫の処分を電器店に聞いたら10000円以上掛かると言われたが、タダで持っていて欲しい」と回収事業者に違法行為をしろと言わんばかりの要求をする消費者も極一部ですが現実に居ます。
「客なんだから、言う事を聞け!」というクレーマー気質の方ですね。そんな時、消費者を説得しきれない事業者が事務局に現場から連絡をしてきて、事務局が消費者に対し日本の法律や制度に関して説明を行ない、理解を頂くこともあります。
回収事業者は法令遵守で事業を行わないといけない立場と同時に生活の為に仕事をしています。ですがクレーマー的な消費者の方は、回収事業者に無理難題を吹っかけ、その結果回収事業者が法令違反で摘発されても、回収事業者の生活の面倒を見る事はありません。
そして、例えば廃棄物処理法の罰則規定も一般消費者を罰する条文はありませんから、安全なところに逃げ込んで言いたい放題やっているという状態に気付いて欲しいです。
こちらとしては、消費者の方への啓蒙も兼ねご説明を行なっていますので「ああ、そういう事なのか!」と認識を新たにして頂く機会と捉えていただければ幸いですね。
悪質な業者の見分け方とは
――悪質な業者が存在すると耳にしますが、どのように見分ければ良いのでしょうか。
岩楯:一般的な話で申し訳ありませんが、やはりビジネスマナーを守れない業者は「怪しい」と見てもらっていいと思います。
別に、ホテルのコンシェルジュのような物腰やトークをする業者を選べという事ではありません。方言でも口下手でもいいのですが、相手を尊重しながら話せない業者はダメだと思って下さい。
それと約束の日に連絡もしないでスッポかす業者ですね。いい加減な対応は、仕事全体の質にも通じる部分があります。
ポスティングチラシ等も、その内容に要注意です。これは廃棄物処理関連の法令知識を持たない消費者に対して、誤った情報を与え安心感を持ってもらう演出としてでしょうが、産業廃棄物処理関係の許可番号を列記していたりします。
特に消費者のご家庭の「粗大ゴミ」を回収すると謳っている場合、産業廃棄物処理の許可や産業系一般廃棄物許可でもダメで、家庭系一般廃棄物許可が必要です。
こういった事を消費者の方は知らないので、その無知に付け込んで、如何にも役所から正規の許可をいただいている優良業者だと誤認させる目的だと推測されるんですね。
実際行政はこういったチラシをストックしてて指導の機会をうかがっていると担当部署の方の話を聞きました。
それとトラブルになり易いのが料金面です。業者に頼む際は不要品を出す場合の状況を出来るだけ判りやすく、誤魔化さないで業者に伝え「料金が発生するのか?」の確認をした方がよいでしょう。
チラシなどで無料と謳っていても、「無料」となるには必ず一定の条件に当てはまる場合が対象の筈です。条件から外れる場合、例えば2人で自宅の3階から1階に下さないとダメだとか付帯作業が発生するなど条件がズレてれば、別途費用が掛かる場合が普通です。
依頼を受けた業者側も、電話で聞いていた内容と違う、隠し事をされてたんじゃ叶いません。はじめから正直に状況を話し費用面の合意をする事が重要だと思います。
会話だけで料金をコミットできない場合もあるでしょうから、作業の始まる前に内見してもらい料金の合意をしてから作業に入ってもらう事も重要です。
もちろん、自宅に来て頂くだけで料金が発生するしないも、事前に探りをいれておく方がいいでしょう。見積は無料という業者が多いので、その中から選んでください。
総合するとJRRCの会員の中から選んでいただくと事故はほぼ起こらないと思います。万が一、何かトラブルがあったとしてもJRRCが顧問弁護士に法律の解釈などを確認し、中立的立場で相談に乗ることが出来ます。
遺品整理をお考えの方はこちら→ JRRC遺品整理
リサイクル・リユース、不用品回収業者の未来
――リサイクル・リユース、不用品回収業者の今後について、どのような展望があるとお考えでしょうか。
岩楯:本音で言うと、今までのような業態は限界に来ていると思います。つまり、単純にモノを集め、それを転売するというやり方です。
理由は幾つかありますが、一例を申し上げますとリユースとして価値のあるモノが集まり難くなっているという事です。
例えば電化製品の生産国を見て下さい。メイド・イン・ジャパンは一握りになってしまいました。
個人の感覚ではジャパン・クオリティといわれる日本で販売する仕様の製品ですら、新品購入から数年すると問題を抱えるモノが多いような感じを受けます。
単純に安い電子部品の多用で利益を得る為と、RoHS指令(電子・電気機器の特定有害物質の使用制限に関する欧州の法律)という事でハンダから鉛成分を排除したことで基板と部品との接点の密着に問題を抱える製品が多く、経年劣化とともに接点不良を発生させているのではないかと推測します。
鉛を含有しないハンダを使う場合、ハンダ付け時の温度管理は有鉛ハンダに比べシビアになります。完全自動化した生産ラインなら制御も出来るでしょうが、センサー等のメンテナンスがきちんとされていないと…、ましてや人手で作業を行うと非常に怪しいのではと思います。ともあれリユースとして売買に耐えうる製品が少なくなっていると思います。
――製品の再利用が難しくなっているのですね。
そうなんです。更に世界規模で環境規制が厳しくなっています。先に申し上げた雑品スクラップの取引ストップの話や、バーゼル条約(正式名称を「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」と言って有害物の海外輸出を禁止する条約)の強化もそれです。
廃棄物かそうでないかの判別にコストを掛けないと対応しきれなくなると予想され、そのコストを販売価格の中に吸収できないものは「リユース市場で価値が無い」と判断されます。
ですから、不要品回収と枠から飛び出してサービス業に進化していかないとなりません。サービスの提供は正当な対価を得て成り立ちます。このサービス料金が市場で納得の得られるものであれば、回収事業者は家財全般の整理に関するプロフェッショナルとして生き残れると考えています。
そうする中で社会に不要品回収業者の社会的認知がすすみ、グレーな業界イメージが払拭され、社会に有益な事業者の集団だと変っていくと思います。
きっと回収事業者はそうなっていくと思います。それだけの逞しさを持った人が多いと思います。我々JRRCもそういった回収事業者の方々を強力に支援していけるような団体に成長していきたいと思います。
――なるほど。本日はありがとうございました。
岩楯:ありがとうございました。