なぜアホウドリは絶滅危惧種に?原因や名前の由来【絶滅動物シリーズ】
名前が特徴的な鳥、アホウドリ。 その姿を知らなくても、名前を聞いたことがあるという人は多いでしょう。
そのアホウドリも環境省のレッドリストに入っている動物の一つです。 アホウドリはなぜ絶滅が危ぶまれたのでしょうか。そして、実際に絶滅してしまったのでしょうか。
絶滅危惧のアホウドリとは?名前の由来に驚き
アホウドリはミズナギドリ目アホウドリ科に属する鳥類です。 その特徴的な名前の由来は、人間が近づいても全く逃げることなく、簡単に捕らえられてしまったことから、アホウドリと名付けられたそうです。
アホウドリはかつて、伊豆諸島や小笠原諸島、沖縄の尖閣諸島などで繁殖していました。 伊豆諸島には「鳥島」と言われる島がありますが、この島の「鳥」とはアホウドリのことを指し、特に生息数が多かったそうです。
アホウドリは10月頃に鳥島に戻って卵を産み、ヒナを育てます。 10月の下旬に卵を産むと、翌年の4月までは子育てに専念し、それからは海上生活に戻ります。 夏はアラスカ近くの、ベーリング海峡やアリューシャン列島など、北太平洋で過ごします。
関連記事ライチョウが絶滅危機に?温暖化で減少も50年ぶりに確認
ライチョウという、まるで伝説の生き物のよう名前の鳥をご存じでしょうか。 もちろん、伝説の生き物
ライチョウという、まるで伝説の生き物のよ
アホウドリ絶滅危機の原因は?名前の由来も関係
アホウドリが激減するきっかけになったのは、明治時代のことでした。 鎖国を終え、国際社会に仲間入りした日本は、外国から輸入するものは多くても、輸出するものが少ない状態でした。 そんな中、羽毛は貴重な輸出品であり、アホウドリやトキなどが乱獲されることになったのです。 アホウドリと呼ばれるようになってしまったのもこの頃で、近づいても逃げないことから、猛烈な勢いで乱獲されることになってしまいました。
人間が近づいてもアホウドリが逃げないのは、理由があります。 アホウドリは人がいない島で暮らしている鳥でした。 そのため、外敵が近づいてきても、巣に座り込んで卵を守る習性があり、それでも近づいてくるのであれば消化中の魚や甲殻類を吐きかけることで追い返していたのです。
これでは人間を追い払うことはできず、次々とアホウドリは犠牲になってしまいました。
関連記事トキは絶滅したのか?経緯や理由を探る【絶滅動物シリーズ】
トキと言えば、絶滅を危惧された動物の中でも有名な鳥ではないでしょうか。 トキの絶滅や繁殖に関す
トキと言えば、絶滅を危惧された動物の中で
一時は完全に絶滅と思われたアホウドリ
乱獲の他にも、繁殖地でリン資源が採取されることもあり、環境が破壊されてしまったことから、アホウドリは行き場を失ってしまいます。 1932年の調査では、アホウドリは残り数百羽から数十羽であると報告されました。
さらに1939年、アホウドリにとって本拠地とも言える鳥島で、火山が噴火してしまいます。 これの影響により、アホウドリの生息は絶望的となりました。 1949年、再びアホウドリの調査が行われますが、結果はその姿を発見することはできませんでした。
そして、アホウドリは絶滅した、と報告されることになるのです。
関連記事スズメ・ツバメが減少傾向に?絶滅危惧種に指定される恐れも
動物は自然の中に生息し、人間と関わることは稀なことですが、私たちの日常の中に定着していることもありま
動物は自然の中に生息し、人間と関わること
絶滅を逃れたアホウドリ
しかし、1951年に鳥島の気象庁の測候所員が生きたアホウドリを発見します。 島の南端に少数の親鳥がヒナを育てていたのです。
このアホウドリたちは、何年か前に外国へと飛び立った幼鳥たちで、親鳥が絶滅したにも関わらず、鳥島まで帰ってきたのだと考えられています。 1962年には特別天然記念物に指定され、国際保護鳥にも指定されました。
測候所の所員たちに見守られていたアホウドリですが、1965年に鳥島の火山が再び活発化したことで、測候所は閉鎖されることになり、鳥島は無人島になりました。 火山の噴火はなかったものの、1973年の調査でアホウドリの生息を調べたところ、その回復は予想以上に遅いものでした。
アホウドリが増えない原因を調べると、卵を育てる場所の斜面が砂と小石の砂礫であったため、卵が転がり落ちて死んでしまっていることが判明しました。 これを防ぐために、鳥島にハチジョウススキを移植することで地面の安定を試みます。 結果、アホウドリは急激に増え、2018年現在では5000羽を超えたことが確認されています。
参考:東邦大学 アホウドリ復活への軌跡
ただ、鳥島には火山があり噴火の恐れが消えたわけではありません。 そのため、尖閣諸島に繁殖地を移す計画も進められていて、鳥島以外でもアホウドリが住めるように研究が続いています。
動物も資源も限りあるものであり、人間が自分の都合で過剰に使用しようとすれば、尽きてしまいます。 他の種が尽きてしまうことは人間にとっても不利益なことです。 私たちは、他の種の存続にとって弊害にならないよう、気を付ければならないのでしょう。