南北軍事境界線は自然の宝庫?絶滅危惧種も生息する動植物の楽園か
人間同士の争いと言えば、戦争のように自然を破壊してしまうものがほとんどです。 しかし、人間同士が争うことで自然が守られることがあるようです。
韓国と北朝鮮の間にある、軍事境界線がその良い例で、豊かな自然に溢れている、と有名です。 南北軍事境界線に広がる自然をご紹介します。
溢れる自然には事情が?南北軍事境界線とは
南北軍事境界線とは、朝鮮半島の軍事境界線のことで、大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の境となる地域です。 英語では、南北軍事境界線を「Korean Demilitarized Zone」と表記することから、DMZという略称で表されることもあります。
1950年に朝鮮戦争が勃発したことにより、朝鮮半島は二つに分断されることになりました。 1953年、朝鮮戦争は休戦となりますが、その際に二つの国の境界線が設けられました。 この境界線は、国境線ではなくあくまで境界線で、共同警備区域では今も韓国軍と北朝鮮軍が、境界線を隔てて警備をしています。
朝鮮戦争は、平和条約が締結されていないことから、まだ終戦しておらず、休戦中という状態です。 そのため、この境界線は現在もこの地域は凄まじい緊張感がある地域で、一般の人間は寄り付かないような場所となっています。
南北軍事境界線は希少動物が発見されるほど自然が豊富
2019年の5月9日、韓国政府は軍事境界線沿いで、絶滅危惧種であるツキノワグマを確認したと発表しました。 韓国の工科大学が設置したカメラに、ツキノワグマの姿が捉えられていたそうです。
ツキノワグマは、これまで韓国軍の兵士から、目撃情報が寄せられていたものの、写真や映像によって確認されたのは初めてでした。 また、南北軍事境界線の付近では、絶滅が危惧されるトラの足跡も確認され、トラらしい物体を目撃した、という報告もあるそうです。
韓国の環境省によると、この地帯では5097種以上の動植物が生息している、と考えられています。 他にも、タンチョウヅル、アムールヒョウやヨーロッパオオヤマネコなどの目撃情報があり、絶滅危惧種の生息数は100種を超えていると見られています。 これは意外な場所で希少動物が生息している、と言えるかもしれません。
南北軍事境界線は自然の楽園
南北軍事境界線は世界的にも、生物多様性の宝庫として知られています。 厳重な軍事警戒態勢がしかれている地域としても世界的に有名ですが、それによりこの場所は人々から隔離されることになりました。 4キロの幅と、248キロの長さを持つ地域は、約60年もの間、無人とも言える状態だったのです。 そのため、この地域は動植物にとって理想の場所となり、多くの動植物の生息地となりました。
しかし、南北軍事境界線の自然が脅威にさらされている、という指摘もあります。 もともと農地だったこの場所を再び農地として開発する、という計画が進んでいるのです。 人間の手に入れば、そこにある生態系に何かしらの影響が起こる恐れがあります。 生物多様性が損なわれることがないよう、大きな開発が行われないことを祈るばかりです。
南北軍事境界線から人と自然の関係を考える
人が踏み入れることがない、南北軍事境界線に豊かな自然が広がることから、人は環境を破壊してしまう存在だと言えるかもしれません。 しかし、人と自然が正しく共存する道がないわけでもありません。 その手段の一つがリサイクルやエコを心がけることでしょう。 人がいるところにも、豊かな自然が存在するように、ぜひリサイクルやエコを積極的に取り入れましょう。