リサイクル事情はどうなっているの?プラスチック問題を徹底解説!

リサイクル事情はどうなっているの?プラスチック問題を徹底解説!

中国がプラスチックごみの輸入を禁止したために、日本国内に大量のプラスチックごみがたまり続けています。年間約数十万トン。プラスチックは軽くてかさばるので、容積にすると数100万立方メートルにもなります。放置し続けると、不法投棄など環境汚染の原因にもなりかねません。どうしたらいいのでしょうか。

ジャーナリスト 杉本裕明



国内にどれぐらいのプラスチックごみがあるのですか?

国内で生産されるプラスチックの樹脂は年間約1100万トンあり、これが製品に代わり、プラスチックごみとして排出される量は約900万トンになります。このうち、リサイクルされているのが37%、固形燃料にしたり、焼却炉で燃やして発電に利用したりしているのが59%、何も利用せずに燃やすか最終処分場に埋め立てているのが15%となっています(一般社団法人プラスチック循環利用協会の2016年の調査結果)。

利用していないのが15%しかないのだから、そんなに問題ないじゃないですか。

そうでもありません。例えば、発電施設がついた焼却炉で燃やしている場合、政府は「サーマルリサイクル」と呼んで、熱回収し有効利用しているなんて言っていますが、欧米では、こうした利用をリサイクルとは見ていません。熱の利用率は10%ぐらいしかありませんから、プラスチックを燃やして得た熱の大半が利用されないままになっています。

もっと問題なのは、23%を占める材料リサイクルが、実はその大半を中国に頼ってきたことです。材料リサイクルとは、プラスチックごみを細かく砕いてペレットと呼ばれる再生樹脂にし、それを原料にリサイクル製品をつくることを指しますが、国内では需要が少ないために、材料リサイクルに使われるプラスチックごみの3分の2が中国を中心に輸出されていたのです。

日本のリサイクル技術が劣るということですか?

ある自治体のプラスチックごみのリサイクル施設。
清掃車からピットに落としたプラスチックごみをつかんで、破袋機に送る。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

いえ、そうではありません。技術は昔からあります。リサイクルはいまから50年ほど前に始まりました。最初はプラスチック製品をつくる工場からでた商品にならない不良品を買い取り、それを原料に再生品を造りました。新品の製品と原料はまったく同じだから品質がいい。でも、不良品はそれほど大量に出ませんから、需要もあまりありません。

やがて、ごみを減らし、リサイクルしようという社会の動きが起きました。1990年代のことです。お菓子の袋などの容器包装をリサイクルするための法律ができ、市町村が集めて、容器包装を造ったり、製品を詰めて利用したり、販売したりする業者が、費用を出してリサイクルする仕組みができました。そのための技術も開発されました。ところが、いかんせん、せっかくペレットを造っても、それに見合った重要がありません。

人件費も高くつき、プラスチックごみのリサイクル業はあまりもうかりません。それに比べて、中国では経済発展によって原料のプラスチックが不足し、プラスチックごみは資源として高く買ってくれるようになりました。そして大量のプラスチックごみが輸出されるようになったのです。

国内の企業や消費者が、もっとリサイクル製品を買わないといけないということですか?

容器包装プラスチックごみといっても、こんなに汚い。
きれいにして出すとよいリサイクルができる。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

そうです。プラスチックごみを減らそうと言っている時代に、逆行しているように見えますが、要は使い捨てのプラスチックが問題なのです。

一回使ったら捨ててしまうようなものはできるだけ減らそうという政府の呼びかけは正しいと思います。しかし、一方で排出されたプラスチックごみを有効利用しないといけません。よほど汚いものは別ですが、汚れていないプラスチックは新しい製品の原料になります。それをみすみす燃やしてしまうのはもったいない。

中国に向かっていたプラスチックごみは東南アジアに向かいましたが、そこでもいろんな問題を起こしています。これからは年間数十万トンから100万トンのプラスチックごみを新たにリサイクルする必要がでています。

大変な量です。いい手はありませんか?

千葉市にあるグリーンサイクルシステムズのリサイクル工場。クリーンにつきる。
「ごみを扱う工場ではなく、製品をつくる工場です」と工場長は胸を張った。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

環境省はこれまでに100億円程度の予算をとって、事業者がリサイクル工場を建設する場合に補助しようとしています。それを利用しようとする業者も現れていますが、やはり需要が開拓されないといけません。家電メーカーなどは最近、部品の一部をリサイクルされたものに置き換える試みが始まっています。

素晴らしい試みもあります。三菱電機は廃家電製品を解体した後に出るプラスチックごみや金属ごみを回収し、リサイクルする努力を重ねてきました。しかし、どうしても、残渣(ざんさ)とよばれる様々な素材がまざり、リサイクルに不向きなごみが残ります。

グリーンサイクルシステムズの工場の内部。三菱電機の技術陣が開発した選別装置が
いくつも組み合わされ、純度の高い高品質のペレットが製造されている。
杉本裕明氏撮影 転載禁止

「これまでは燃やすしかなかったが、何とかリサイクルの資源に使えないか」と、グリーンサイクルシステムズという子会社をつくり、独自に装置を開発し、ごみに含まれる異物を取り除き、単一素材に分けることに成功しました。この工場で製造されたペレットは、三菱電機や他のメーカーの冷蔵庫の仕切り壁、食洗機の底板、高品質パレットなどに使われています。

こうした取り組みが広がればいいですね。

でもこうした先進的な試みはなかなか広がっていきません。例えばある大手の事務機メーカーでは、東京都のリサイクル業者が開発した高品質のペレットでコピー機のトレーを造ることが決まりかかりました。

ところが契約寸前になって、会社の幹部からストップがかかりました。「純正品と比べると、色具合に差がある。これじゃ、消費者に嫌われて売れない」というのです。肉眼では比較してもわかりませんが、それを分析する装置で差を調べたといいます。このリサイクル業者はこう憤ります。「リサイクル社会なんて言ってるけど、結局は消費者の顔色をうかがってばかりじゃないか」

あるメーカーの製品の設計者はこう悩みを打ち明けます。「環境に優しい設計をしたいが、消費者の目を無視した設計はできない。おのずと純正品にこだわることになってしまう」

消費者にも責任があるということですね。

ドイツなど欧州の消費者は、その点、ちょっとした差を気にせず、むしろ積極的にリサイクル製品や部品を備えた製品を購入する傾向にあると言われています。それに対し、日本は、ちょっとの差を気にし、実際、こうした環境配慮製品の売上ははかばかしくありません。これでは、いつまでたっても本当のリサイクル社会になりませんし、プラスチックごみを減らすことになりません。

先ほどの試みを消費者が応援し、自ら行動するようになれば、メーカーはこぞってリサイクルに取り組むことでしょう。リサイクル市場は広がり、中国や東南アジアに輸出する必要はなくなります。企業も消費者ももっと賢くならないといけません。

政府や自治体の努力も必要です。

国や自治体も補助金を出すだけでなく、こうした高度なリサイクルで造った製品や部品を内蔵した製品を応援する必要があります。

自分たちで率先してこうした製品を購入するため、一定の割合の製品の購入を法律で義務づけたりしたらどうでしょうか。こうすれば、環境配慮製品といわれるリサイクル製品は行政機関を軸に、一気に社会全体に広がっていくでしょう。省庁同士がもっと協力して取り組んでもらいたいと思います。

リサイクルの未来は?

名古屋大学の竹内恒夫名誉教授は、リサイクル業の未来について、とてもやりがいのある、展望のある仕事だと見ています。一つはプラスチックごみを使ったリサイクル。先に紹介した材料リサイクルを進め、家電や自動車の部品に使えるような品質の良いものをめざす。もう一つはエネルギーの利用で、品質のあまりよくないプラスチックごみを固めて固形燃料(RPFと呼ばれる)にし、工場や発電所での利用を広げることを提案しています。そして、使い捨てプラスチックについて、代替品の開発というより、昔使っていた方法があるじゃないか、と、警鐘を鳴らしています。

「昔は、ストローといえば麦で造られていた。食料品の店で買った商品を入れるのは紙袋と決まっていた。それがもとに戻るだけじゃないですか」。数十年前に行われていた普通の営みです。

身の回りの生活の時間を少し元に戻すことも必要なのかもしれません。

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