キプロスの世界遺産を紹介!ヴィーナス誕生のエピソードも
人類の財産と言うべき世界遺産ですが、中には驚くような伝説が残されている場所があります。 東地中海に浮かぶ、キプロス共和国にある世界遺産は、有名な観光地ですが、ここにも驚くべき伝説があります。
それは、海岸都市のパフォスにある、ペトラ・トゥ・ロミウ海岸は、女神が誕生した場所だ、という伝説です。しかし、女神が誕生した、とはどういう伝説なのでしょうか。 キプロスの世界遺産と女神誕生の神話をご紹介します。
キプロスとは?世界遺産が複数存在する地
女神が誕生した場所、キプロス共和国は東地中海上に位置する、キプロス島の大半を占める共和制国家です。
キプロスは先史時代から、地中海貿易の中継点として栄えていました。 現存する、最古の記録ではアッシリアに支配されていて、古代エジプト王国やアケメネス朝ペルシャ帝国などの支配後、長い間、ローマ帝国の属州となります。
中世では、1191年から一時的に、イングランド王リチャード1世の支配を受けるキプロスですが、リュジニャン家に譲渡され、そこからはキプロス王国が300年続くことになります。 しかし、リュジニャン家が断絶してしまうと、最後の王となったカテリーナ・コルネーロは、1489年にキプロス王国をヴェネツィア共和国へ譲渡。
さらに、1571年にオスマン帝国に奪われる形で、オスマン領キプロスとなりました。 第一次世界大戦が勃発すると、再びイギリスに併合されますが、第二次世界大戦が終了すると、抗イギリス運動が高まり、1960年にイギリスから独立します。 ただ、キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民に分かれていたため、対立が激化してしまい、1974年に南北に分断されてしまいました。これをキプロス問題と言って、現在も解決に至っていない状態です。
そんなキプロスですが、複数の世界遺産があり、その一つが、神話に出てくる女神が生まれた場所として有名なのです。
キプロスの世界遺産をご紹介
それではキプロスにある世界遺産とは、どのような場所でしょうか。
トロードス地方の壁画聖堂群
キプロス島中心部から西部に広がる、トロードス山脈に残る、9ないし11のギリシャ正教の聖堂と、1つの修道院からなる世界遺産が、トロードス地方の壁画聖堂群です。 このトロードス地方の壁画聖堂群は、1985年に世界遺産へ登録され、2001年には範囲が拡張されています。
ここにある、聖堂・修道院には、ビザンティン様式の美しいフレスコ画が残っていることから、文化遺産して評価されました。
ヒロキティア
ヒロキティアは新石器時代の遺跡で、1998年に世界遺産へ登録されました。 紀元前7千年紀から紀元前4千年紀の集落の跡と墓地で残されていて、その時代のものとしては保存状態が良好であることから、重要な遺跡だと評価されています。
また、この村落は紀元前6000年頃に、未知の理由で突然放棄され、ソティラ人が訪れるまでの1500年ほどの間、無人島になっていたと思われます。
パフォス
パフォスはキプロス共和国南西海岸の都市で、様々な遺跡が残っています。 パフォスが世界遺産として評価された理由は、アプロディテ崇拝に直結した、神殿都市が残り、それが価値あるものとされたからです。
また、ペトラ・トゥ・ロミウと言われる美しい海岸も、大変有名です。 そして、このパフォスの地こそ、女神が誕生した場所と言われているのです。
キプロスの世界遺産とヴィーナスの誕生
1470年代、イタリアで大活躍した画家にサンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)という人物がいました。歴史や美術の教科書には必ずと言っていいほど、登場するため、この名を聞いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。
このボッティチェッリが残した絵画に「ヴィーナスの誕生」というものがあります。 海に浮かんだ貝の上に女性が立っている絵、と言えば頭の中に浮かぶ人もいるでしょう。 この絵は、愛と美と性を司るギリシャ神話の女神、アプロディテが海より誕生した様子を描いています。 そして、このアプロディテは、誕生してすぐにキプロス島の、ペトラ・トゥ・ロミウに降り立ったとされているのです。
そのため、キプロスはアプロディテを崇拝する人たちの聖地となっています。 また、ペトラ・トゥ・ロミウの海岸の美しさは、女神が誕生した地として相応しい美しさだと言えます。
「ヴィーナスの誕生」の絵
ヴィーナスの誕生はボッティチェッリの絵画が有名ですが、その他にも様々な画家が描いています。 ヴィーナスの誕生を描いた画家をご紹介します。
ジャン=レオン・ジェローム
フランスの画家、ジャン=レオン・ジェロームも、1890年にヴィーナスの誕生を描きました。 ジェロームは歴史や東方の絵画を得意とし「トルコの囚人とトルコの刑吏」「ルイ14世とモリエール」などの代表作があります。
また、彼の描いたヴィーナスの誕生については、1991年にオークションで売却され、個人蔵になっています。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
19世紀のフランスの画家ウィリアム・アドルフ・ブグローもヴィーナスの誕生を描きました。 キャンバスのサイズは高さが300センチ、幅は217センチもあり、かなり大きな作品です。 現在はパリのオルセー美術館に所蔵されています。
アレクサンドル・カバネル
アレクサンドル・カバネルもヴィーナスの誕生を描いています。 カバネルのヴィーナスの誕生は、1863年に描かれ、こちらもオルセー美術館に所蔵されています。 また、この作品はフランス皇帝ナポレオン3世が、個人的なコレクションのために買い上げた、という過去もあります。
キプロスの世界遺産は美しい自然
キプロスの地は、美しい風景があることから、神話や絵画のモチーフなったと考えられます。 つまり、自然は人類とって、心を癒す遺産になり、さらに絵や物語などの文化を生み出すとも言えるのです。
このような豊かな文化を残すためにも、キプロスのような自然を守っていかなければなりませんね。 私たち一人一人にできることは少ないですが、リサイクルやリユース、エネルギーの節約などを、ぜひ意識してみましょう。