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林業の今後はコロナ失業者の受け皿に?NPO法人自伐型林業推進協会代表理事 中嶋健造氏②

林業の今後はコロナ失業者の受け皿に?NPO法人自伐型林業推進協会代表理事 中嶋健造氏②

赤字経営となっている現行の林業方式(前回の記事を参照)。また、施業を大規模化したことで山では風倒木や土砂災害など災害を誘発してしまっている。②では、中嶋氏が提唱する自伐型林業をすることでどのような変化やメリットがあるのか紐解いていく。

林業も問題を解決?自伐型林業とは

自伐型林業とは、文字通り山林所有者が自ら行ったり山守(※)と共同で経営・施業を行ったりする林業形態だ。現行林業と比べた最大の特徴は、多間伐施業にある。現行林業が50年皆伐・再造林する手法に対し、自伐型は10年に1度、2割以下の間伐を繰り返す。

※山守:不在山林所有者の多い林業地で、所有者に代わって森林の管理、保護をする人。

専業で管理する山の適正規模は約50haを協会は勧める。その場合は毎年5ha間伐し、10年間で1回の間伐が終了する。こうした多間伐施業により、面積あたりの木材の本数は減るが材積は増え、伐採しながら蓄積量が増加する。そのため、樹齢を重ねるごとに高品質材になり単価が上がることで利益を継続的に生みだすことができるという。

ほかに、小規模の森林経営のため、大規模な森林機械は必要とせず小型の機械だけの導入で済むメリットがある。中嶋氏は「最初に作業道を作る過程で少しコストがかかるので補助金などを活用してもらい、その後2~3回の間伐作業が終わる2~3年後には収益が安定することが多いです」と話す。

皆伐や過間伐ではなく、適度な間伐をすることで山にはつねに木が密集している状態が保たれる。そのため「台風や豪雨が発生した際も風倒木や土砂災害が起こりにくく災害に強い森林となる」と中嶋氏は語る。作業道も小型機械しか通らないため、2.5メートル以下の小規模なもので頑丈に作るため崩壊も起きないという。

自伐型林業者の作業風景(作業道敷設)

林業で地域活性化!中山間地域での雇用創出へ

中嶋氏は「地方で林業を始める人が増えると、必然的に中山間地域での雇用創出となり地域活性化につながります。特に、日本の国土は約7割が森林。中山間地域では約8割にも達します。中山間地域での地域創生には森林での就労創出が絶対に必要だと思います」と中嶋氏は熱く語る。

協会では、専業だけでなく林業を兼業するスタイルも推進している。例えば、農業を主にして秋冬の伐採期に林業を行うなどだ。その地域の漁業・観光業を生業にしている人や、アーティストやフリーランスなど仕事の場所を選ばない職種でも兼業は可能だ。

現在、自伐型林業推進協会で林業を学んだ参加者が各地域で推進団体を作っている。推進団体は全国で40団体ほどになり、協会設立から6年経つが、全国で5,000人の新規林業従事者を増やすことができた。

中嶋氏は「例えば高知県佐川町。5年間で自伐型林業を行う従事者が50人増えました。移住者がそのうち33人で、またその家族も移住してきました。林業が雇用を生み、移住者を増やし、地方創生に一役買った好例です。また、その林業従事者の方々も3年で年収400~500万円は林業だけで稼いでいます。全国で森林がある市町村は1,500以上あるので、各地域で自伐型林業従事者を増やすことができれば、全国の林業従事者を今の4万5,000人から3倍以上の15万人ほどに増やすことも夢ではないと思います。そうなれば、各地域で雇用が生まれ、産業が潤います」と力を込める。

自伐型林業者の作業風景(軽架線搬出)

林業がコロナで失業した人の受け皿に

「今後は、新型コロナ感染症の影響で失業した人や都市部から地方へ移住したい人の受け皿になれればと考えています。林業への転職を進めていきたい」と中嶋氏。自伐型林業の研修会をコロナショックで雇用に影響を受けた人向けに全国で開催する予定だ。

また、自伐型林業を行う際にネックとなるのが、多くの費用がかかる作業道設置作業だ。そこで協会では、自伐型林業に理解のある国会議員の団体である自伐議連と協力して、政府に対し補助金増額の働きかけを行っている。

中嶋氏は「今は、コロナショックで木材の需要が下がっており、原木市場は活発に動いていないです。新型コロナもあと2~3年間は収束しないと考えると、この期間に作業道を作っていれば、いざコロナが収束した際に伐採した木材をすぐに売ることができます。林業従事者へそうしたコロナ対策の補助金を出してくれれば、コロナ禍の間、自伐の方は耐えしのぶことができます」とした上で「これは林業への投資になるし、中山間地域への移住の呼び水にもなります。また、林業の現場は山奥で作業するため、新型コロナに感染する心配もないです」と語る。

最後に中嶋氏は「日本は、温帯地域で降雨量も豊富です。世界を見回しても、日本ほど質の良い木が育つ環境に適している国はほとんどありません。そうして育った木は、住宅を建てる際に、無垢材で使用できるようなA材になります。そのため、国産材は、今後富裕層を中心に日本だけでなく海外のマーケットでもニーズがあるでしょう。自伐型林業の従事者を増やしていき、“儲かる”林業を推進することで、日本の資源である美しい山を後世に残していきたい」と語った。

中嶋健造(なかじまけんぞう)
昭和37年高知生まれ、高知県いの町在住。愛媛大学大学院農学研究科(生物資源学専攻)修了。IT会社、経営コンサルタント、自然環境コンサルタント会社を経てフリーに。平成15年、NPO法人「土佐の森・救援隊」設立に参画し、現在理事長。山の現場で自伐林業に驚き興味を持ち、地域に根ざした脱温暖化・環境共生型林業が自伐林業であることを確信し、「自伐林業+シンプルなバイオマス利用+地域通貨」を組み合わせた「土佐の森方式」を確立させた。平成26年に全国の自伐型林業展開を支援するNPO法人「自伐型林業推進協会」を立ち上げ現職に至る。自伐型林業で衰退産業化した現行林業を根本から立て直し、森林率7割の日本林業・木材産業で100万人就業を実現させ、『世界をリードする森林大国日本』を目指して活動にまい進している。

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