オウムアムアとは？初の恒星間天体は宇宙人の探査機か

ecotopia編集部
2021年6月30日

2020年、アメリカの国防総省によりUFOらしいものが映った映像が公開され、大きな話題を呼びました。UFOや宇宙人はロマンがありますが、なかなか信じがたいことです。

しかし、2017年にもオウムアムアと呼ばれる宇宙船らしき物体が地球に接近していたことをご存じでしょうか。宇宙船ではないかと話題になった、謎の物体「オウムアムア」をご紹介します。

オウムアムアとは？異星人の宇宙船なのか

2017年10月19日、ハワイにあるパンスターズ(地球接近天体の監視観測計画)の天体望遠鏡によって、ある天体が発見されました。その天体は、9月9日に太陽の約3,710万kmまで接近し、10月14日に地球から2,400万kmのところを通過。 5日後に発見されたときは、彗星であると判断されました。

しかし、その軌道を見る限り、太陽系の重力に束縛されていない恒星間天体、つまりは太陽系の外からやってきた天体という結論に。恒星間天体の確認はこれが史上初めてで、オウムアムアと名付けられます。後にオウムアムアの直径は400m未満程度とNASAが発表し、可視光線の波長の変化などから棒状の細長い形で、回転していると推察されました。

地球の近くを通過したオウムアムアは、2017年10月の時点でこと座のベガから約5度離れた位置にありましたが、約1年後には土星付近の軌道を通過し、太陽系を離脱した後は、ペガスス座の方向に移動すると考えられています。この歴史的な発見とも言えるオウムアムアですが、実は地球外の文明によって建造された宇宙船なのでは、と議論を呼ぶことになるのです。

オウムアムアが宇宙船の可能性？謎の加速の正体は

ここまでの説明では、太陽系外から天体がやってくる、という珍しい出来事だったようにしか思えませんが、オウムアムアは宇宙船ではないかと考えられる現象がありました。通常、太陽からは離れていく天体は、太陽や惑星の重力の影響で徐々に減速します。

しかし、オウムアムアの軌道は重力だけの影響だけでは考えられないもので、不自然な加速があったと考えられるものでした。変哲もない宇宙に漂う岩のようなものが、謎の加速を行ったとしたら「エイリアンがコントールする宇宙船？」と想像する人も多いでしょう。ただ、彗星のようにガスを噴出したのであれば、人工物でなくてもあり得ることで、ハワイ大学などの国際研究チームはオウムアムアを「天然起源の天体」と研究結果を出しました。

この説に異論を唱えたのが、ハーバード大学のシュムエル・ビアリー(Shmuel Bialy)氏とアヴィ・ローブ(Avi Loeb)教授でした。彼らは、オウムアムアからガスの噴出は観測されなかったことを指摘。さらに、ガスが噴出したのなら回転速度や方向に大きな変化があるにも関わらず、オウムアムアにはそれが観測されなかったことも指摘しました。

それでは、なぜオウムアムアが加速できたのかと言えば、彼らは太陽光のエネルギーで動く「ソーラーセイル」を搭載していたから、という可能性を示しました。ソーラーセイルとは、太陽から放たれる光やイオンを薄く広い膜で反射して加速するもので、ヨットに使われる「帆」の宇宙版のようなものです。さらに、もしソーラーセイルだとしたら、未知のプロセスによって生成されているとし、オウムアムアは地球の観測に合わせたような軌道を通過したことから宇宙人が送り込んだ探査機という可能性も否定できない、ということでした。もちろん、これらは可能性の話であって、オウムアムアが人工物である証拠もありません。

ちなみに、オウムアムアという名前の由来は、ハワイ語で「偵察者」や「遠方からの初めての使者」という意味です。ロマンあふれるオウムアムアの正体は謎に包まれたままなのでしょうか。

オウムアムアの正体が2049年に判明する？

オウムアムアは、無人探査機「ヴォイジャー1号」の2倍の速度で地球から離れています。これは年間で地球から木星までの平均距離を移動し、2030年代の後半に星間空間に突入することになります。

このままでは、真相は永遠に謎のまま…と思われましたが、イギリスの非営利団体「Initiative for Interstellar Studies」がオウムアムアを追跡する「プロジェクト・ライラ」を提案しました。これはオウムアムアの発見から2週間後に提案されたもので、世界最大規模のロケットを使った追跡機を打ち上げるというもの。追跡機は2030年に打ち上げを予定し、オウムアムアに追いつくのは2049年頃となる見通しです。

オウムアムアは本当に珍しい恒星間天体です。この追跡プロジェクトが成功したら、価値のある発見があるかもしれませんね。