オーロックスとは?娯楽として殺された牛の先祖【絶滅動物シリーズ】

人間は自らの欲望のために残酷になれる生き物です。 絶滅してしまったオーロックスも、人間のそんな一面によって滅ぼされたと言えます。
オーロックスは、現在多くの人が知るウシの先祖であると言われています。 そんなオーロックスはどのように絶滅してしまったのでしょうか。
オーロックスとは
オーロックスは、ウシ科ウシ属に属するウシの一種です。 体長は250~310cmほどの大型で、長い尾の先には長毛が生えていました。 体毛は黒褐色か黒、または赤褐色で、背中には鞍のような白い模様があったそうです。
オスもメスも角が生えていて80cmほどあり、森林や草地に生息し、主食は木の葉や草でした。 交尾期間となる8月は、オス同士が激しく戦っていたと考えられています。 その姿はバイソンに似ていたため、昔から混同されていたようです。
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広い地域で生息していた
オーロックスはユーラシアに広く生息していました。 「賽は投げられた」のセリフで有名なカエサルも、ガリア遠征の際にオーロックスを目撃し「ゾウよりは少し小さいけど、ウシによく似ている」と記述を残しています。
しかしオーロックスは、南アジアでは早い時期にその姿を消してしまいました。 メソポタミアでも、ペルシア帝国時代にも既に死滅していたと思われ、北アフリカではエジプトの古代帝国時代にはその姿を消しています。
なぜなら、その頃からオーロックスは食用として狩りの対象となっていたからです。 1240年のドイツ北東部では、オーロックスが存在していたようですが、他ではフランスやポーランドで見られる程度で、1550年頃にはその姿はさらに減少してしまいます。
娯楽で殺されたオーロックス
オーロックスが減少していった原因は、狩りでした。 オーロックスは体が大きくても、柔和な性格をしていて、狩りの獲物として格好だったのです。
西暦700年頃のフランスでも、オーロックスの狩りは王侯だけの特権でした。 そのことからも、オーロックスが狩りの獲物として好まれていたことと、既に個体数が少なかったことが窺えます。
ヨーロッパの文明が大発展すると、森が開拓され、オーロックスはいよいよ絶滅まで追い詰められます。 すると、16世紀になってオーロックスの保護区がヨーロッパの各地で作られました。 しかし、これはオーロックスを保護するためのものではありませんでした。 貴族たちがオーロックスの狩りをするためだけに保護区を作り、彼らを殺す楽しみを独占しようとしたのです。
やがて、その保護区は次々に閉鎖されます。 それは、オーロックスが絶滅したからではなく、撃つべき相手がいなくなってしまったからでした。
それでも、ポーランドの首都、ワルシャワの近くにあるヤクトルフ保護区でオーロックスは生存していましたが、唯一生き残っていた個体たちも密猟者によって殺されてしまいます。
1620年には、最後の一頭が残りましたが、1627年にそのオーロックスも老衰により死亡が確認。こうして、オーロックスは絶滅してしまいました。
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オーロックスの復元
1920年代にドイツの動物園で、現存するウシからオーロックスに近いもの特徴をもつものを交配させ、オーロックスを蘇らせる試みがありました。 1932年、それは成功して現在もドイツの動物園で飼育されています。 ただ、このウシはオーロックスに近いものではあっても、やや小柄でありオーロックスと言い難いものでした。 このウシは、当時の動物園長の名前(ルッツ・ヘック)を由来にヘックキャトル(Heck cattle)と呼ばれています。
このように、一度絶滅してしまった種を取り戻すのは大変難しいことです。 人は自らの快楽のために、他を傷付けることができますが、同時に理性を持っているはずです。 このような犠牲を増やさないためにも、理性を失うことなく、動物たちとも関わって行かなくてはならないでしょう。
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