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「意味がわからない」「危険では?」理解されなかったごみ拾いとスポーツの融合 スポGOMIの誕生秘話 一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ代表 馬見塚健一さんインタビュー

「意味がわからない」「危険では?」理解されなかったごみ拾いとスポーツの融合 スポGOMIの誕生秘話 一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ代表 馬見塚健一さんインタビュー

ごみ拾いとスポーツの融合。そんな斬新なアイディアから生まれたスポーツが、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブが開催する「スポGOMI」です。

2008年、日本で生まれたスポGOMIは小さな大会から始まりましたが、2023年11月に「スポGOMIワールドカップ」として20ヵ国以上が参加する世界大会を開催するほど、現在は広く認知されています。

スポGOMIとはどのようなスポーツなのか、どのように競技として広まったのか、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブの代表、馬見塚健一さんにお伺いしました。

ごみ拾いとスポーツが融合?スポGOMIとは

――スポGOMIは、ごみ拾いとスポーツを融合させた競技ということですが、どういったルールで行われるのでしょうか。

スポGOMIは3人から5人でチームを組んで行います。あらかじめ運営が決めた1.5~2キロ四方のエリア内で制限時間内にごみを拾い集めることが基本的なルールです。 勝敗はごみの量と種類によって決められます。重さだけで勝敗を決めてしまうと不公平が生まれてしまうので、たばこの吸い殻やペットボトルはポイントが高くなるなど、ごみの種類で加算されるポイントに差がある、という仕組みです。

例えば、燃えるごみが100グラム10ポイントだとすると、燃えないごみは5ポイント、たばこの吸い殻は100ポイント、ペットボトルは120ポイントといった感じに、目に留まりにくい小さいものやプラスチックが含まれるものを注意して拾っていただくためにも、ルールは工夫しています。

このゲーム性が勝敗を左右することもあり、目線の低い小さいお子さんがポイントの高いたばこの吸い殻を集めて、上位に入賞した大会もありました。

また、競技エリア内を走ることも禁止していますが、これらのルールは小さいお子さんから高齢者の方まで、誰もが競い合えるスポーツにしたかった、という意図があります。 そのため、スポGOMIは年齢制限や性別、国籍条項など関係なく、誰でも参加が可能です。

競技の様子

スポGOMIの特徴は、楽しさやワクワク感を演出することで、環境意識のない人たちもスポーツとして環境活動に取り組める点にあり、今後も環境活動ではなく、スポーツとして打ち出したいと考えています。 これには、オリンピックに4回出場、4つのメダルを持ち、ビーチクリーンの活動も行っている松田丈志さんに共感いただき、アンバサダーとしてスポGOMIをスポーツとして広めていただいています。

――ちなみに、競技中に拾われたごみは、その後どうやって処理されているのでしょうか。

約8割は開催エリアの自治体にご相談して回収いただきますが、それが伴わないときは一般廃棄物収集運搬許可業者さんに依頼して適切に処理していただきます。

例えば、自治体さんは土曜日なら回収はしてもらえるけど、日曜日はお休みなので月曜日の朝になってしまう。 場所によっては日曜に回収したごみを月曜まで置いておくことも難しく、そんなときに一般廃棄物収集運搬許可業者さんにお願いしています。

理解されない日々が続いたスポGOMIの誕生

――どういった経緯でスポGOMIは始まったのでしょうか。ごみ拾いとスポーツの融合という斬新なアイディアが誕生したきっかけから教えてください。

きっかけは、私自身スポーツが好きで朝のランニング中に、街のごみが気になり始めたことでした。 スポGOMIを始める少し前、2008年のことです。

当時、私のランニングコースはみなとみらいの周辺でしたが、年間何十万も人がやってくる観光地であるにも関わらず、意外にごみが落ちていて、走ることに集中できませんでした。 自分が気持ちよく走るためにも拾ってしまえばよかったのですが、恥ずかしさや偽善者と思われてしまうのではと考えてしまい、なかなか行動に移せず……。

でも、ある朝に「つべこべ考えず拾ってみよう」と考え、走りながら一個拾ってみました。 さらに、次の日は「ランニングのスピードを落とさないように拾ってみよう」と考え、別の日は「利き手じゃない方で拾ってみよう」と自然にスポーツ的な動きを盛り込み、ごみ拾いを楽しみ始めていました。

そしたら、今までは汚いと思っていたごみが、私の中でターゲットに変わっていたことに気付き、これは何か面白いことができるかもしれない、と感じ始めたのです。 既存のごみ拾いにスポーツ的な要素を組み込めば、ごみとの向き合い方が変わり、楽しいものになるかもしれない。 そう考えてルールを作り始めました。

競技の様子 2023年スポGOMI甲子園より
提供:日本財団 海と日本プロジェクト・SOCIAL INNOVATION NEWS

ルールはトライ&エラーを繰り返しながら考えましたが、縁があって武蔵野大学の環境学部の学生に協力いただきました。 おかげでスポーツとして打ち出せそうな感触をつかめましたが、参加した人の反応を見なければ次のステップに進めないと感じ、第1回大会の開催に踏み切ります。

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そのとき、ちょうど2008年の6月に開催される洞爺湖の環境サミットが話題になっていたため、その直前にごみ拾いをスポーツにした活動をやったら、メディアの取材対象になるかもしれない、と5月末の開催を目指しました。 次は開催地を考えましたが、せっかくならNHKに取材してほしいと思い、局に近い渋谷公会堂の前にある広場がいいだろう、と渋谷区の行政にお借りできないか、話に行ったのですが……。

スポGOMIの説明をしても「意味がわからない」「危険では?」という反応でした。 路上でスポーツを行うのは危険ですし、もし事故があれば渋谷区の責任になってしまうので、当然の反応かもしれません。 それでも「ルールや安全を考慮している」と何度も説明しましたが、ぜんぜん相手にしてもらえず、貸してもらえませんでした。

最初は理解されなかったスポGOMIも現在はたくさんの参加者が

しかし、5月の末がどんどん近付き、このままでは貸してもらえないと、現在は渋谷区の区長である長谷部健さんを訪ねました。 当時の長谷部さんは、渋谷区の区議でありながら、ごみ拾いのNPO団体「グリーンバード」の代表でもあったので、私たちの活動の趣旨を理解してもらえるのでは、と考えたのです。 そしたら、とても共感いただいて、渋谷公会堂の広場をグリーンバードの名前で借りて、その中でスポGOMIを開催してみてはどうか、というお話をいただきました。

これで晴れて2008年の5月に第1回のスポごみを渋谷公会堂の広場で開催。 参加者は一般の方から募っても、よくわからない活動なので集まらないだろうと、大学対抗の大会として行いました。そしたら、8つの大学から学生たちが集まってくれて、さらにNHKに取材依頼をかけたら、しつこく言ったこともあったのか「近いから1カメだけ行きます」と駆け付けてもらえました。

このとき、優勝した日本女子体育大学のバスケ部の方たちがインタビューを受けていたのですが、なぜ参加したのか聞かれると「スポーツだから参加しました」と答えていて、その様子を見たときは「続ければ面白いことになるぞ」と思ったのを覚えています。

理解されないスポGOMI!飛躍のタイミングはSDGs

――最初は理解されなかったとのことですが、第1回大会が好評でスポGOMIの認知は拡大していったのでしょうか?

いいえ。第2回大会も同じことがありました。港区で開催する予定でしたが、行政は「意味がわからない」「危険では?」の繰り返しで……。 そのときは、商店街の方々にご理解いただいて開催できましたが、私たちが名の知れない団体だから皆さんが不安に感じるのだろう、と感じました。

それからは、開催するときは小さいメディアでもいいから必ずプレスリリースを打って、話題になるアクションを模索する日々を繰り返しましたが、状況が変わるきっかけとも言える出来事が2009年の終わりごろでした。 中京新聞に載った小さなスポGOMIの記事を見た、愛知県豊橋市の自治体から「一緒に何かできないですか」と連絡があったのです。

豊橋市と言えばゴミゼロ運動発祥の地。毎年市民に呼び掛け、ごみ拾いを取り組んでいましたが、参加者は高齢者が多く、マンネリ化に悩んでいたようです。 そこで、豊橋市でスポGOMIを開催したところ、それなりの反響があり、子どもの参加者も増えたことから、我々としても大きな実績となりました。 すると、自治体は横のつながりで情報が飛び交うので、愛知県内からスポGOMIに関する問い合わせが増えて、少しずつ私たちも手応えを感じるようになります。

一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブの代表、馬見塚健一さん

スポGOMIが飛躍したとも言える、大きなきっかけは2015年のSDGsです。 SDGsが国連で採択され、世に広まると各自治体だけでなく企業も「何かやらねば」という空気が強くなり、スポGOMIの問い合わせが増えました。

さらに、2020年の東京オリンピックが決まったときも、オリンピックの組織委員会やスポンサードをしている企業と一緒にスポGOMIをやらせてもらい、大会数もぐんぐん伸びました。 あと2019年から日本財団と一緒に始めた、高校生を対象とした「スポGOMI甲子園」も話題になったと思います。

――自治体や企業と協力して開催することが多いのでしょうか。

スタートは自治体がほとんどでしたが、今は半々だと思います。自治体は、ごみ拾いの取り組みをスポGOMIとして行ったり、市制何年という記念だったり、開催の形はさまざまです。 それに対して企業の方は、CSR活動の一環だったり、社員研修や部署間交流だったり、社内のイベントとしてスポGOMIを開催いただくことが増えた印象があります。

スポGOMIが世界へ!今後の展開は?

――現在、スポGOMIは海外からも注目されていますが、それはどういった経緯があったのでしょうか。

まず、スポーツと環境問題というキーワードが世界共通であるため、受け入れられやすかったのだと思います。

きっかけとしては、2016年にロシアのトムスク州で開催できたことでした。 トムスク州の州知事が産業廃棄物をテーマにした会議に参加するため、たまたま日本にやってきたとき、食事会の中で市民にごみ分別の重要性を啓蒙する方法はないか、という話題になったそうです。

そのとき、スポGOMIが話題に出たらしく、州知事が面白がってくださり、すぐに開催の話がありました。 これだけ積極的だったのは、2017年はロシア全土で環境問題を考える1年であり、トムスク州はその前年にスポGOMIを行うことで、ロシアの中でも面白いことをやる州だ、とアピールしたかった、という理由もあるようです。

実際に開催されたときはロシア中のメディアが取材にきて、スポGOMIの知名度は一気に広まったと思います。 同時に韓国やミャンマーなどで大会が決まり、以前からチャレンジしたいと思っていたワールドカップの開催も見えてきました。

ロシアでスポGOMIを開催したときの様子

そして、2023年にスポGOMIのワールドカップが開催されましたが、これはユニクロで有名な株式会社ファーストリテイリングさんと日本財団に協力いただき、20ヵ国以上が参加する大きな大会でした。 20ヵ国で予選大会が行われ、日本でも47都道府県で代表を決め、決勝大会は渋谷区で開催。最終的にイギリス代表が優勝しました。 これだけの規模で開催されるまでスポGOMIが大きくなったのは、たぶん私自身が一番驚いていると思います。

スポGOMIワールドカップ開催についてインタビューを受ける馬見塚さん
提供:日本財団 海と日本プロジェクト・SOCIAL INNOVATION NEWS
スポGOMIワールドカップで優勝したイギリス代表のインタビュー
提供:日本財団 海と日本プロジェクト・SOCIAL INNOVATION NEWS

――海外大会の中でも特に印象に残った国はありますか。

どこも魅力的な大会になりましたが、強いてあげるとしたらパナマで開催したときでしょうか。

パナマの行政にルールを説明したとき、日本ではたばこの吸い殻のポイントが高いと伝えました。すると、彼らは「たばこはいいからストローのポイントを高くしてくれ」と言ったのです。 ストローのごみは、海洋プラスチック問題が取り上げられるときにカメの鼻に刺さっている写真が有名ではありますが、日本ではあまり見ないので少し心配でした。

しかし、実際にパナマの現地へ行ってみると、思った以上にストローのごみが落ちていて……。たばこもありましたが、とにかくストローが多い。

パナマでスポGOMIを開催したときの様子

そこで、原因を調査したところ、パナマではスーパーやコンビニで飲み物を買うと必ずストローが無料でもらえる、という文化があるとわかりました。

これは現地の人たちも気付いていなかったらしく、ストローが多い原因を説明するとみんな驚いていました。 その後、パナマではストローを受け取らないようにする運動が始まったと聞いています。 スポGOMIがきっかけになったと思うと嬉しい出来事ですね。

――日本国内でもスポGOMIがきっかけで参加者たちの意識が変わったと実感できる出来事はあったのでしょうか。

大田区で開催したとき、小学5年生のチームが優勝したのですが、大人たちから褒められたことが嬉しかったのか、大会が終わった後も楽しそうにごみを拾いながら帰っていきました。それを見た大田区の教育委員会が「来年はもっと大きい大会を開催しよう」と言ってくれたのを覚えています。

ただ、そういう行動変容があったと他のごみ拾い団体に発表したところ「社会貢献とは言えない」「主観でしかない」と言われて悔しい想いをしました。 そこで、独立行政法人国立環境研究所に参加者の行動変容・意識調査を依頼し、環境学会で結果を発表したところ、多くの人に理解してもらえた、ということもあります。

あとはスポGOMI甲子園の開催です。スポGOMI甲子園は大会後に先生方がアンケートを取ってくれます。そこには「海洋ごみ問題について考えることが増えた」「卒業まで登下校時に必ずごみを一個拾うという活動を続けた」という高校生たちの声があり、さらにはスポGOMI甲子園に参加した方が社会人になってから一般のスポGOMIに参加してくれた、ということもありました。

スポGOMI甲子園の様子

――他にもスポGOMIとして目指していること、挑戦したいことがあれば教えてください。

日本では小学生の間に必ずごみ処理施設を見学することで、ごみ処分に関する啓蒙が広まっています。 スポGOMIも同じように教育の一部として根付いてほしい。そう考えて既に神奈川県の葉山町に協力してもらっています。 葉山町では、小学5~6年生のときに必ずスポGOMIに参加する。そういう実例を作り、他のエリアに広がることを目指しています。

スポGOMIが日本の教育に根付く可能性も

それから、一般の人に海洋ごみを意識していただくきっかけになることです。海洋ごみ問題は世界的に注目されていますが、一般の方が自分の生活に結びついて考えることは、まだまだ珍しいことです。 これを実感してもらうのは、やはりごみ拾いが一番ではないでしょうか。そのためにも、スポーツとしてスポGOMIの参加を呼びかけ、より多くの人に海洋ごみ問題を意識してもらいたいと思います。

それを国内だけでなく、世界的に広げたいと考えて、スポGOMIのワールドカップを開催しました。だから、2030年までにスポGOMIの開催国をを50ヵ国まで増やしたい、というのも目標の1つです。 2020年にこの目標を立てて、2023年に20ヵ国まで達成できたので、もしかしたら近い将来に50ヵ国に達成するかもしれない、と考えています。

もう1つ大きな目標としては、オリンピックの公開競技として採用してもらうことです。そのためにはスポGOMIの国際連盟をつくる必要があります。 ただ、今回参加いただいた20ヵ国の方々と連盟をつくれたら、それも夢ではないかもしれません。

あとは毎年何百も大会を開催してたくさんのごみを集めているので、どれだけ二酸化炭素を削減できたか見えるようしたいです。 他にも、スポGOMIの参加が地域通貨につながったり、削減した二酸化炭素をオフセットできたり、スポーツだけでなく文化的な活動にしたいと思います。

日本スポGOMI連盟の情報はこちら 公式X(旧Twitter)アカウント
スポGOMIワールドカップの公式サイト スポGOMI WORLD CUP 202

馬見塚健一(まみつか けんいち)
1967年生まれ、鹿児島市出身。一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ代表。1967年鹿児島生まれ。大手広告代理店の営業からプランナーへ転身し、2006年に環境とスポーツをデザインするブランディング集団「まわるプロジェクト」を設立。「ap bank」の連携先として「ゴミは幸せの抜け殻 mawarufukuro」という利益還元型のゴミ袋を発表。2009年、一般社団法人日本スポGOMI連盟を設立。ゴミ拾いという社会貢献活動にスポーツの要素を取り入れた「スポGOMI大会」を主導。現在は「スポーツで、国や地域の社会課題を解決する。」をテーマに、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブに社名を変え、環境保全以外の社会課題の解決にスポーツを掛け算する事業を展開している。

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