タイのコミュニティと共に成長するサスティナブルブランドPIPATCHARA デザイナーピパチャラ氏インタビュー
「サスティナブルファッションにデザイン性は期待できない?」
そんなイメージを覆すのがタイの姉妹が手掛けるサスティナブルブランド「PIPATCHARA(ピパチャラ)」です。2018年に設立されたこのブランドは、ハイブランドでのデザイン経験を持つピパチャラ氏と、国連での勤務経験を持ち、サスティナビリティの専門知識が豊富な姉のジットゥリーニ氏によって運営されています。
彼女たちが生み出すプロダクトは、ファッショナブルでありながらサスティナブルという理想を体現したものばかり。特に注目を集めているのが、ブラックピンクのリサ氏が着用したことで話題となった「インフィニチュードコレクション」。このコレクションは、デザイン性とサスティナビリティを見事に融合させた一例です。
今回はデザイナーのピパチャラ氏に、ブランドに対する熱い想いや今後の展望についてお話を伺いました。
母の言葉がブランドビジョンを変えた
――PIPATCHARAとはどのようなブランドか教えてください。
PIPATCHARAは、単なるファッションブランドではなく、コミュニティのためのブランドです。私たちは、ブランドを通じて人々の持続可能性への意識を高めたいと考えており、常にサスティナビリティをビジネスの中心に据え、製品作り、ブランドの運営を行ってきました。
ピパチャラ ケオジンダ氏とジットゥリーニ氏ブランドビジョンは、母からの「高級な製品を作るだけでなく、誰かを助けるために何かできないか」という問いかけから生まれました。私たちはまず、慣れ親しんだメーホンソーン地域に恩返しをしたいと考え、コミュニティの人々に芸術と工芸のスキルを教えることからスタートしました。
そんなPIPATCHARAでは、すべての製品をタイのさまざまな地域のコミュニティで作っています。これにより彼らが新しいスキルを習得する機会を創出するとともに、雇用が行き届いていない農村地域の方々に副収入を提供しています。また、原材料にもこだわり、高品質なイタリアサスティナブルレザーやサボテンレザー、廃棄プラスチックを利用した製品を展開しています。
インフィニチュードコレクションの材料である廃棄プラスチック自分たちのできる方法で世界をより良くするために行動を起こす、私たちはそんな人を増やすきっかけになりたいと思っています。
地元コミュニティと共に創るマクラメコレクション
――”マクラメコレクション”はどのようなコレクションなのかご説明をお願いします。また、地元コミュニティとの協力はどのように始められたのでしょうか。
私たちは芸術と工芸に強く惹かれており、美しい結び紐の技術である「マクラメ」が最初のコレクションのインスピレーションとなりました。マクラメコレクションは、マクラメ編みと厳選された高品質レザーを組み合わせ、伝統と現代のデザインを融合させたアート性の高いバッグです。このコレクションの特徴であるマクラメは、独特な模様を表現するために、一つ一つ繊細に手編みしています。
マクラメ編みが施されたガヤ バッグ次に地元コミュニティがどのように作られたかについてお話しします。
制作の拠点となっているタイ北部のメーホンソーンは、かつて小さな縫製工場が多く存在していましたが、タイの経済成長の停滞によりほとんどの工場が閉鎖してしまいました。
最初は、メーホンソーンにコミュニティはなく、私たちはこの地域の方々が芸術や工芸のスキルを持っているかどうかもわかりませんでした。そこで、彼らにマクラメを教える短いセッションを行い、その可能性に気づきました。そして徐々にメンバーを増やし、コミュニティを構築していきました。
マクラメを編んでいる様子熟練した才能のある多くの地元の人々をサプライヤーとして登録することで、彼らの収入、知識、スキル、そして「幸せ」に貢献できていると感じています。
また、このコレクションでは、原材料の調達から製造、仕上げ、パッケージングまで、サプライチェーンのすべてのステップを可視化し、社会的または労働上のリスクがないように徹底しています。
プラスチックの再生から生まれるインフィニチュードコレクション
――”インフィニチュードコレクション”はどのようにして出来上がったのでしょうか。また、苦労した点があれば教えてください。
姉と私は、海洋プラスチックゴミの問題に対して何かできないかと、長年話し合いと研究を重ねてきました。そんな中で生まれたのが、廃棄プラスチックを再生したインフィニチュードコレクションです。このコレクション名は「無限」を意味し、私たちの創造性と持続可能性への取り組みが無限に続くことを表現しています。
インフィニチュードバッグインフィニチュードコレクションのチャームのデザインはサンゴから、色は自然界の美しい色彩からインスピレーションを得ています。原材料は、ボトル蓋やヤクルトボトル、食品容器などで、それらをアップサイクルして作っています。プラスチックのアップサイクルプロセスは、プラスチックの寿命と私たちの生活がどのように無限に変化するかを示しています。
インフィニチュードバックの材料であるボトル蓋このコレクションの開発には数年を要しました。使用済みプラスチックのみでチャームの色やデザインを再現することや、生産における信頼できるパートナーを見つけるために多くの試行錯誤を重ねました。また、プラスチックのアップサイクルについて啓蒙し、日常生活での使用を受け入れてもらうためのアイデアを考えることも大きな課題でした。
様々な困難を乗り越えて完成したこのコレクションを通じて、誰もがサスティナブルな生活を理解し、地球にポジティブな影響を与えることができると示していきたいです。
持続可能性の未来を切り開くPIPATCHARAの挑戦
――「ファッション×環境」の未来はどのように考えていますか。また、今後挑戦したいことがあれば教えてください。
ファッション市場はますます適応力を高め、持続可能性への意識も急速に高まっています。これからは、消費者の選択肢が広がり、消費行動にも大きな変化が生まれると考えています。私たちは常に「誰かの助けになるにはどうすればよいか」という問いを胸に、さまざまな側面でブランドを拡大していきたいと思っています。特に、製品の素材とデザインにおいてサスティナビリティをさらに追求し、世界的な持続可能性の動きに積極的に貢献していきたいと考えています。
INFINITUDE – KAIA R/Cの制作過程PIPATCHARAが切り拓く、サステナビリティの新たなスタンダード
今回は、デザイン性とサスティナビリティを見事に融合させるブランド、PIPATCHARAを取り上げました。彼女たちは、地元コミュニティとの協力を通じて、ファッション業界におけるサスティナビリティの新たなスタンダードを確立し、世界中の消費者にインスピレーションを与えています。これからもPIPATCHARAは、「誰かの助けになるにはどうすればよいか」という問いをモチベーションに、持続可能なファッションの未来を切り開いていくことでしょう。
そんなPIPATCHARAのアイテムを試せるポップアップショップが、東京と大阪で開催されます。是非、この機会にポップアップショップへ訪れてみては。
<高島屋日本橋店ポップアップショップ>
期間:2024年9月11日(水)~24日(火)
場所:高島屋日本橋店1階
<高島屋新宿店ポップアップショップ>
期間:2024年9月25日(水)~10月1日(火)
場所:高島屋新宿店2階
<阪急百貨店梅田本店ポップアップショップ>
期間:2024年10月30日(水)~11月5日(火)
場所:阪急百貨店梅田本店1階
PIPATCHARA KAEOJINDA(ピパチャラ ケオジンダ)
タイ・バンコク出身。Pipatcharaはアメリカ・サンフランシスコでファッションデザインの学位を取得後、ニューヨークのRalph Lauren本社でファーストキャリアをスタートし、パリのGivenchy本社など一流ブランドでデザイナーとしての経験を積みました。
その後、タイを代表するファッションブランド「Jaspal」を完成させています。
彼女の持つトレンドスタイルへの鋭い視点は、アート(芸術)やクラフト(伝統技法) を日常のスタイルに表現することへの情熱となり、その夢を追求するために「PIPATCHARA」はスタートしました。