【外来種 ソウシチョウとは】生息地や生態系に与える影響

【外来種 ソウシチョウとは】生息地や生態系に与える影響

人間と違って自由に空を飛べる鳥は、ペットとして飼育していても、かごから抜け出して野生化してしまうケースが少なくありません。 そんな鳥を「かご抜け鳥」と呼びますが、特定外来種のソウシチョウはその代表と言えるでしょう。

ソウシチョウはなぜ「かご抜け鳥」の代表と言えるのでしょうか。 ソウシチョウの生息地や外来種として生態系に与える影響などもあわせて解説します。

ソウシチョウとは?かご抜け鳥と呼ばれる外来種

ソウシチョウは、鳥綱スズメ目ソウシチョウ科に分類される鳥類で、つがいのオスとメスを分けるとお互いに鳴き交わしを行うことから、その名が付けられました。

全長はスズメと同じ程度で、14~15センチ。 背面の羽毛は暗緑色で、眉斑から頬は薄い黄色、胸部は濃いオレンジ色、翼は黄色と赤の斑点と鮮やかな見た目がソウシチョウの特徴です。

ササ類が茂る標高1,000メートル以下の常緑広葉樹林、落葉広葉樹林に生息。 食性は昆虫類や果実、種子など雑食で、繁殖形態は卵生となり、一度に3個の卵を産みます。

もともとはインド北部や中国南部、ベトナム北部、ミャンマー北部に自然分布していましたが、日本に移入。 日本国内ではガビチョウと並んで「かご抜け鳥(何らかの原因で飼育環境から逃げ出し、野生化した鳥のこと)」と呼ばれる特定外来生物です。 また、日本以外ではハワイで定着されたことも確認されています。

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ソウシチョウはなぜ日本にやってきたのか

ソウシチョウは江戸時代から飼い鳥として輸入されていました。 最初に野生化が確認されたのは、1931年の六甲山。 これは神戸在住の華僑(かつて中国に生まれて後に外国に移住していた人々やその子孫のこと)が祝典の際に放鳥した個体と思われていますが、完全に定着することなく、1945年以降には姿を消しています。

本格的に日本に入ってきたのは1980年以降で、日中国交正常化に伴い、中国大陸からソウシチョウの輸入が激増。 ソウシチョウは雑食であるため扱いやすく、価格も安価だったため、当時はどこのペットショップでも販売される事態となります。 その結果、一般家庭から逃げ出す、経営破綻した業者によって大量放鳥されるなど、ソウシチョウはかご抜け鳥となって生息を広げることになるのでした。

ちなみに、ソウシチョウがハワイで定着した理由は、ホノルルの中華街で大火事があり、華僑が飼育していた個体が逃げ出したことがきっかけと言われています。

また、ソウシチョウは鳴き声が非常に大きく、騒音問題につながる例も少なくありません。 ソウシチョウの鳴き声は、日本野鳥の会のYoutubeチャンネルでも聴けます。

動画で聴く限りは美しいさえずりのようですが、早朝から近くで鳴き続けられたら、我慢が難しいかもしれませんね。

ソウシチョウが生態系に与える影響は

ソウシチョウが生息を広げることで、日本の生態系にどのような影響があるのでしょうか。

現在、騒音問題の他にはソウシチョウによる大きな影響は確認されていません。 しかし、ソウシチョウは環境適応性、繁殖能力、拡散能力が高いため、さらに生息域が拡大された場合、天然自然林の生態系が崩れる恐れがあり、特定外来生物に指定されています。

実際、ハワイではソウシチョウの生息が拡大したことで固有の鳥類が衰退。 日本の生態系においては、営巣場所が競合するウグイスやメジロの繁殖に影響するのでは、と懸念されています。

また、環境省による「自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)」では、ソウシチョウやガビチョウといった外来種が増加する一方、スズメとツバメが減少していると発表されています。 これは因果関係が科学的に証明されているわけではありませんが、ソウシチョウが増えた結果、スズメとツバメといった身近な鳥が大きく減少する未来も否定できないかもしれません。

参考:環境省 自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査(2016-2021年)

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ソウシチョウだけじゃない!外来種の危険性

このように、ソウシチョウは日本の生態系のバランスを崩す恐れがありますが、注意すべき外来種は他にも存在しています。 千葉県で生息域を広めるキョンや、人の指を噛み切る力があるカミツキガメなども、注意が必要な外来種として有名です。

ただ、外来種問題の多くは人間の行動が原因であることも忘れてはなりません。 同じ過ちを繰り返さないためにも、外来種の問題は何が原因なのか、しっかりと把握しておきましょう。

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