ホッキョクグマが絶滅危惧種に?原因は気候変動と環境汚染か

気候変動を始めとする環境問題の進行によって、個体数を減少させている動物は多く存在していますが、ホッキョクグマもその1つです。 ホッキョクグマは1980年代から急激に減少し、国際自然保護連合(ICUN)によって絶滅危惧種に指定されています。
彼らは何が原因でその個体数を減少させてしまったのでしょうか。 ホッキョクグマの生態や減少の原因をご紹介します。
絶滅が危ぶまれるホッキョクグマ!その生態を解説
ホッキョクグマは哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類で、全身が白い体毛で覆われているように見えることから、シロクマと呼ばれることもあります。
体長は雄で200~250センチ、雌は180~200センチほどで、分布は北極圏の沿岸や北アメリカ大陸の北部、ユーラシア大陸北部など。 氷上で狩りを行うため、海と氷が接するエリアで生活しますが、中には生涯にわたって一度も大地を踏まずに過ごす個体も存在します。
食性は肉食でアザラシを主食としますが、魚類や鳥類、クジラの死骸を食べることも。 アザラシを捕食する際は、優れた嗅覚で存在を察知し、氷を掘って巣穴にいる個体を襲います。 他にも、氷上にあるアザラシが呼吸用に使う穴や流氷の縁で待ち伏せる、氷上にいる個体に忍び寄るといった方法を取り、学習能力も非常に高いと考えられています。
生活圏に天敵はほとんど存在しませんが、水中でシャチに襲われた場合は逃げ切れません。 ただ、基本的には銃を持った人間以外は脅威となる敵は存在しないと言えるでしょう。 そんなホッキョクグマがなぜ絶滅危惧種になってしまったのでしょうか。
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ホッキョクグマ減少の原因は気候変動が関係
ホッキョクグマが減少した原因は気候変動による温暖化現象が大きく関係しています。 地球温暖化の影響が深刻になり始めた1987年頃から、ホッキョクグマの子どもの生存率が減少。 現在の個体数は26,000頭となり、2100年にはホッキョクグマが絶滅すると予測された論文も発表されています。
なぜ、温暖化の進行がホッキョクグマを減少させるのでしょうか。それは、温暖化によって海氷が減少してしまうと、ホッキョクグマの主食となるアザラシに接触する機会が減少してしまうからです。 ホッキョクグマはアザラシが呼吸するタイミングを狙い、氷上で待機しますが、温暖化によって氷が減ってしまったため、得意な方法で狩りができません。 そのため、母グマが栄養不足に陥り、結果として子グマの死亡率が高くなっているのです。
また、アザラシは氷上で生活するため、温暖化の進行によって生息地が奪われ、彼らも個体数を減らしている、という悪循環もホッキョクグマの減少に関係しています。 さらには、海氷が激減したことでホッキョクグマは海を泳ぐ距離が長くなってしまい、シャチに覆われる危険性が高まって、絶滅に拍車をかけているという指摘も。
そして、生息地を脅かされたホッキョクグマが、食べ物を求めて人間の居住区に現れるといった問題を増加しています。 実際、ロシアの町ベルーシャ・グバでは、2019年2月にホッキョクグマが頻繁に出没するようになったため、非常事態宣言を発出したというケースもあるほどです。
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ホッキョクグマの絶滅を加速させる環境汚染
ホッキョクグマが減少してしまった原因は、気候変動だけではありません。 近年の調査によると、世界各地で発生しているダイオキシン類や農薬などによる残留性有機汚染物質(POPs)が、風に乗って北極圏へ集まり、環境汚染が起こっていると考えられています。
この有害物質は熱帯地域などで散布された後、土壌にとどまらず大気中に拡散、気流に乗って北極圏へ。 他にも、先進国の工場から流れた河川の水も、海流と共に北極圏へ流れ込んでしまいます。 そのため、有害物質が発生した地域よりも、北極圏の汚染濃度が高くなるケースも少なくありません。
また、POPsは海水に溶け込み、植物プランクトンの体内に入ってしまうと、それを食べる小魚に、さらにそれを食べる動物に、といった形で食物連鎖に影響を及ぼします。 そして、この汚染物質は分解も代謝もされず、体内に残留し続けるため、ホッキョクグマのような生態系の上位に位置する生物は、より高濃度な汚染物質を取り入れてしまうことになるのです。
高濃度な汚染物質を取り込んだホッキョクグマは、繁殖力と抗体生成に悪影響が出てしまい、子グマの死亡率を引き上げてしまうと考えられます。 これはホッキョクグマだけでなく、人間に影響する恐れも十分にある問題です。 2001年にスウェーデンのストックホルムにて「残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約」が採択されましたが、汚染が止まったわけではありません。 今後も、私たちは生活スタイルに注意し、環境に配慮した行動が必要だと言えるでしょう。
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ホッキョクグマの絶滅を防ぎ、自分たちの健康を守るために、私たちは何ができるのでしょうか。 それは身近なリサイクルや節電など、環境問題のためにできることを、簡単なものから意識することです。
小さな行動では何も変えられないと思ってしまうかもしれませんが、多くの人が意識すれば、世界は変わります。 そのため、親しい人に環境問題の恐ろしさを伝えるだけでも意味があることです。 まずは、この記事をシェアすることもから始めてみてはいかがでしょうか。 環境問題を解決する、第一歩になるかもしれません。
エコトピアでは、環境問題に関する問題を日々取り上げていますので、ぜひ他の記事もチェックしてみてください。
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