リサイクルのデパート、地域に貢献する滋賀県の水口テクノス

リサイクルのデパート、地域に貢献する滋賀県の水口テクノス
水口テクノスの本社建物(右)とリサイクル工場
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

滋賀県甲賀市は、甲賀忍者の里として全国に知られる。人口8万人の田園風景が広がる市では、多くの人が京都市や大津市などに通勤し、ベットタウン化が進む。

そんな地域に定着し、根を張って活動しているのが、株式会社水口テクノス(甲賀市水口町)。家庭や商店、工場の出したごみの収集・運搬だけでなく、家庭から集めた廃プラスチックを破砕・選別し、固形燃料にしたり、電子レンジなどの小型家電を選別・分解したり、集めた生ごみから堆肥を造り、住民に還元したりしている。いわば「リサイクルのデパート」といってもよい。同社のリサイクル工場を訪ねた。

ジャーナリスト 杉本裕明



さまざまなリサイクルに取り組んでいた

水口テクノスは、幾つかのリサイクル工場からなりたっている。甲賀市役所から車で10分。住宅からはやや離れている地区に、工場があった。案内してくれたのは、有吉春智・資源循環グループマネージャー。このリサイクルの業務について10年以上になるベテランの管理職だ。その有吉さんが、「ぜひ、見せたいものがあります」と、連れていかれたのが、生ごみリサイクルの工場だった。表に大量のプラスチック容器が並ぶ。

「住民の方は、自宅からバケツなどに入れた生ごみをごみ集積所に持って行き、そこに置いてある生ごみ回収専用容器に移し替えてもらいます。堆肥にします」と有吉さん。甲賀市は2002年からスタートさせ、すっかり住民に根付いている。地元に根を張る水口テクノスは、10年以上前に堆肥化の仕組みを考案、「生ゴミ循環エコロジーシステム」(特許取得)と呼んでいる。

回収容器の生ごみを奥のピットに落とす
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

トラックで積まれて運ばれた回収容器の生ごみは、建物のピット内にあけられていく。隣の建物には、発酵が進んでいる黒ずんだ小山があった。奥に、少し黄色がかった小山が見えた。

この重機で草と剪定枝を破砕し、生ごみの堆肥に混ぜている
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止
生ごみの小山は発酵が進み黒ずんでいる。奥は草や剪定枝を砕き、発酵させた小山。この2つを混ぜて調整する
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

有吉さんがいう。「奥に見える塊は、草や剪定枝を細かくしたものです。市民が不燃物処理場に持ち込んだ草や剪定枝は、堆肥の重要な成分です。発酵させてできた堆肥の一部も戻し堆肥と呼び、これらと混ぜ合わせ、調整して堆肥をつくります」。一次発酵に約14日、二次発酵に約40日かけると、堆肥が完成だ。

臭いがしない理由は?

「生ごみの山を見ましたが、あんまり臭いがしません。発酵した小山はほとんどないと言ってもよい。他の業者の施設もいろいろ見ていますが、みんな臭いが強くて、住民から苦情を受けたりし、堆肥化が広がらない原因ともなっています」

私の質問に、有吉さんは「そうでしょう。見学にくる方はみな驚かれます。その秘訣の1つは、住民の家庭での生ごみ処理のやり方です」と手振りを交えながら解説してくれた。

甲賀市では、家庭ごみは、集積所に、可燃ごみ、プラスチックごみを品目ごとに、市の「指定ごみ袋」に詰めて出している。生ごみの堆肥化に協力する家庭は、一軒でも参加でき、登録すると、週2回、生ごみを集積所に出すことができ、集積所に置かれた分別容器を回収してくれる。家庭ではバケツなどの密閉できる容器に生ごみを入れる。

集積所から回収されたなまごみを入れる分別容器が並ぶ
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

その際、こつがある。容器の底に同社が用意、配布した「種堆肥」を2センチの厚さで敷き、その上に生ごみをかぶせる。その上に種堆肥を1センチ敷き、生ごみをその上に。さらに種堆肥を1センチ、生ごみと何層にもし、その上で集積所の容器にあける。

このやりかただと、種堆肥が生ごみの腐敗を防いでくれるので、生ごみ特有の腐ったような臭いがしないというわけだ。甲賀市は2002年から、生ごみの堆肥化を始め、いまは年間1,000トンを超える堆肥が造られている。できた堆肥は、参加している家庭に種堆肥として無料で配り、家庭菜園などに活用されている。

水口テクノスでは臭気対策として次のような独自対策をとっている。洗浄水をためる浄化槽には悪臭の原因となる物質を分解する微生物が生息している。これらの微生物が臭気を除去する。その後、脱臭等の上部から散布されたのち、外部へ排出される。

下水道のない家庭から出る生活排水も堆肥・肥料化

同社は、下水道がない家庭の生活排水を受け入れ、処理している甲賀市の「農業集落排水処理施設」から出る汚泥を集めて堆肥と肥料を製造している。「汚泥脱水車」で集めた汚泥は、車内に設置した反応槽で、ポリ鉄と凝集剤を混ぜて、水と水以外に分け、脱水機で絞ると水分80~90%の脱水汚泥になる。

持ち込まれたプラスチックごみをまず重機でより分ける
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

リサイクルセンターで水分調整の上、発酵時に発生する熱を利用しながら約3か月、重機で撹拌(かくはん・かき混ぜること)を繰り返す。これは有機肥料・堆肥の「スーパーコンポくん」の名前で農業や家庭菜園に利用されている。以前は、農業集落排水施設から出る汚泥は焼却施設で燃やしていたというから、大きな進展だ。

大多数の自治体は、燃えない生ごみをプラスチックの力を借りて無理に燃やしている

生ごみの利用については、こうした堆肥化と、メタン発酵発電の二2つのやり方がある。水分を含んだ生ごみは多くの自治体では、焼却施設で燃やされている。国は、燃やして発電した電力について、燃やしたごみのうち、生ごみなどの有機性廃棄物の分は、燃やしてもCO2を排出しないとして、FIT(再生可能エネルギー買取制度)の買い取り対象にし、優遇している。

しかし、実際のところ、生ごみはカロリーが低く、自燃(自分の力で燃えること)できず、キロ当たり1万1,000キロカロリーもあるプラスチックごみや紙ごみといった「高カロリーごみ」に助けてもらって燃やしているのが実情だ。ドイツでは、生ごみを燃やして発電しても再生可能エネルギーとして認めておらず、家庭ごみを集めて有機物を発酵させてメタンガスを取り出す大型のバイオマス発電が盛んだ。

日本もドイツから遅れること20年以上。最近になって生ごみのバイオマス発電に取り組む自治体が出てきているが、数は少なく、しかも小規模。圧倒的多数の自治体はいまだに焼却炉を偏重している。

一方、生ごみの堆肥化はかつて、自治体でブームになったことがある。1990年代、多くの自治体はごみ減量のために、電気の生ごみ乾燥機など家庭用の生ごみ処理機に補助金を出して普及を図ったが、「電気代が高くつく」、「乾燥させた生ごみを可燃ごみとして出して燃やしているなら、リサイクルの意味がない」といった消費者の声が多く、思ったほど効果はあがっていない。いったん始めた助成制度をやめられず、細々と続けられているというのが実態だ。甲賀市も助成制度があったが、2012年にやめてしまった。

甲賀市のような生ごみを回収して堆肥化を実践しているのは、一部の主に農村に限られている。ある自治体の担当者は「実験的にやってみたが、集積所の近隣住民から『悪臭がする』と苦情を受け、数年でやめてしまいました」と語る。

堆肥化を続けている自治体の担当者も「堆肥化施設の入り口にエアーを吹き付ける装置をつけているが、それでも周囲の住宅から苦情を受けている。何より作業する人たちが大変です」と話す。甲賀市のやり方は、他の自治体にも大いに参考になるのではないか。

プラスチックごみは固形燃料やペレットに

次に案内された建物は、プラスチックごみから固形燃料を造る工場だった。建物内には、甲賀市内から集められたプラスチックごみ袋が積まれている。家庭から出るプラスチックごみは、ペットボトルを除くと、レジ袋、食品の容器などの容器包装プラスチックごみと、ボールペン、CD、おもちゃなどの製品プラスチックに分かれる。

市は年間665トンのプラスチックごみを集めている。うち277トンをRPF用としてキロ1.1円、フラフ用として0.5円で水口テクノスに売却している。 日本では、容器包装リサイクル法(1995年制定)で、自治体が容器包装プラスチックごみを集めて、容器包装リサイクル協会が行う入札で、落札した業者がリサイクルする仕組みがある。容器包装ごみを引き取ってリサイクルする費用は、容器包装を製造したり、利用したりしている容器メーカーや飲料メーカー、スーパーなどが負担している。

しかし、製品プラスチックごみは、この仕組みがなく、リサイクルする費用は自治体もちになっている。そのため、甲賀市は、容器包装リサイクル法の制度に乗っからず、独自に水口テクノスと契約し、プラスチックごみの有効利用に取り組んできた。

リサイクルセンターのこの建物には、破砕機と選別機のほかに、大きなRPF(固形燃料)製造設備があった。

プラスチックごみには、金属などの異物がある。それをまずは、重機や手作業で粗選別し、破砕したあと、何回か選別機を通し、鉄やアルミなどの異物を取り除く。

破砕されたプラスチックは、熱を加えて圧縮し、葉巻型のRPFにする。この時、原料として、カロリーの高いプラスチックごみだけでなく、木くずや紙くず、繊維くずを混ぜ、全体のカロリーを石炭の6,000キロカロリー程度に調整し、大手の製紙会社に売却している。

製紙工場では、製紙のために大きなボイラーを備え、石炭を熱源にしているところが多い。1990年代に石炭代替としてRPFが登場すると、地球温暖化の元凶のように言われる石炭の代替燃料として使われ始めた。特に近年は、脱石炭の動きが強まり、RPFブームのなか、RPF業界は設備投資し、増産につぐ増産の勢いだ。

水口テクノスでは、甲賀市が家庭から集めたプラスチックごみだけでなく、工場など事業者が排出した産業廃棄物のプラスチックごみも集め、RPFや破砕しただけのフラフを製造している。フラフの値段はRPFより安いが、これもボイラーの燃料の代替として売却されている。

他社に委託し、ペレットからパレット製造も

甲賀市は2026年度から同じ甲賀市にある株式会社エコパレット滋賀(甲賀市甲南町)に委託し、家庭から集めたプラスチックごみをパレットの製造原料に使ってもらうことにした。水口テクノスは、甲賀市から従来通り、プラスチックごみを収集し、いったんリサイクルセンターに受け入れ、ペレット製造に向いたプラスチックごみを選別し、エコパレット滋賀に渡している。

容器包装プラスチックを中心としたプラスチックごみは、圧縮、ベールにし、パレットの原料になる
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

甲賀市生活環境課の杉田遼平さんは「環境省のプラスチック循環法で、製品プラスチックと容器プラスチックごみを一括回収して事業者にリサイクルをお願いする場合は、委託料ほぼ全額を国の交付金で見てもらえることになったための選択です」と話す。

小型家電は手作業で分解

有吉さんの案内で、別の建物をみた。ここは電子レンジ、電話機、ファクシミリ、デジタルカメラ、プリンター、扇風機、電気ストーブ、ヘアドライヤーなど、環境省が小型家電リサイクル法で定めた小型家電を回収、リサイクルしている。年間、市は93トンの小型家電を引き渡している。携帯電話などの高品位金属類はキロ297円、非鉄金属類は132円、鐵屑は1.1円。それ以外は0.55円で売却している。

ドライバーで小型家電を解体していた
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

リサイクルセンターの建物のなかで、作業者が、手慣れた手つきで電子製品を解体していた。家電リサイクル法で定められた冷蔵庫やテレビなど4品目同様、この小型家電も、手選別と解体が基本だ。基盤、金属、プラスチックなどに分けていく。プラスチックは破砕し、再資源化する。鉄とアルミは原料として出荷。モーターや非鉄金属、高品位の携帯電話などは、精錬所に売却といった流れになる。

有価取引で制度ができたはずが

この小型家電のリサイクルは国の制度のもとで動いているが、制度の課題が幾つかある。有価取引ができるとのもくろみで、小型家電リサイクル法が2013年に施行された。しかし、年14万トンの回収目標に比べ、実績は8万トン強と低迷が続いている。その大きな要因は、集めた自治体や事業者が期待したほどの有価取引ができなくなっていることにある。

2011年に小型家電リサイクル法案を国会に提案するとき、環境省の幹部は「自治体は公共施設にボックスを置いて消費者が持ってきた小型家電を有価で引き渡せる。業者は回収した小型家電を選別、分解し、精錬所などでの処理・リサイクルルートに乗せれば高く売れる。みんなが得する制度です」とアピールし、国会で法案は全会一致で成立した。

特に強調されたのが、スマートフォンなどの携帯電話だった。高価な金が含まれ、高い値段で取引されると、環境省やリサイクル業界は踏んだ。

小型家電の作業現場。小気味よく解体が続けられていた
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止
小型家電を解体して得たプラスチックは破砕機で細かく砕かれる
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

しかし、その後、鉄などの金属市況は下落と低迷が続き、さらに携帯電話は、使い終わると、中古品としてリユース業界に流れたり、法律とは違う別ルートの回収ルートができたりした。このため、自治体が集めた小型家電は平均でキロあたり1円とか2円でしか売却できなかったり、逆にお金を出さないと引き取ってもらえなくなったりした。

水口テクノスはもう少し高い値段で甲賀市から小型家電を引き取っているが、「市況が低迷し、この分野はかなり苦しい」と、有吉さんは言う。

海外ではもっとうまくやっている

EU(欧州連合)は家電リサイクルの指令によって、電気・電子機器の回収とリサイクルを製造業者に義務づけている。メーカーはその費用を製品に上乗せすることになるが、内部化されることで、リサイクルしやすい製品設計をしてリサイクルコストを小さくしようと努力する。競争が激しいので、費用は抑えられ、事実上、メーカー負担となっている。

一方、日本は、2001年に家電リサイクル法が施行され、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機が回収・リサイクルされる仕組みができたが、消費者は廃棄時に家電量販店などに持ち込み、リサイクル券を購入し、メーカーが関与するリサイクル業者がそのお金でリサイクルしている。大半の費用を消費者が払う仕組みだ。

小型家電は消費者がお金を払う必要はないが、回収するのに自治体の費用が発生し、それに見合う有価で売却できないと、税金の持ち出しとなる。名古屋市の担当者は「当初はそれなりの金額で売却できたが、いまは逆有償。お金を出さないと、引き取ってもらえなくなっている」と話している。

市況はそのつど大きく変わる。いっとき高い値段で取り引きされているのに注目し、「みんなが得し、うまく回る」とした環境省の皮算用は、予測不可能な「市況」を将来も変わらないと想定した点で、持続可能な制度ではなかったといえよう。

住民とリサイクルセンターをつなぐのはエコステーション

こうしたリサイクルを進める上で、有効な施設が同社が甲賀市内3か所に設置した「エコステーション」だ。クリーム色のドーム型で、次から次へと車が乗り付ける。ドアを開けて、段ボール、ペットボトル、空き缶、空き瓶、小型家電、雑誌・新聞など、リサイクルできる資源ごみを下ろし、それぞれ配置されたところへ持って行く。

甲南町にあうエコステーションで、利用者の女性に聞いた。「一度にたくさん持ち込めるので助かっています。刈草や剪定枝は、市内にある不燃物処理場へ持って行けばこれも無料で引き取ってもらえる。これが、リサイクルされてまた戻ってくると考えると、環境教育のよいお手本になります」。評判は上々のようだ。

廃食油集め、バイオディーゼル燃料に

水口テクノスのリサイクルセンターには、家庭から集めた廃食油も持ち込まれる。市は年間13トン集め、水口テクノスは10トンの処理を委託している。ディーゼル車を動かす高純度のバイオディーゼル燃料(BDF)の製造装置がある。できたBDFは高品質で、そのまま燃料として、センターで使う車両や重機に利用している。

有吉さんが最後に見せてくれたのが、大型のトラックと、砂と砂利をわけたピットだった。

水口テクノスでは、こんなこともやっていた

大型トラックの運転席にある装置を操作すると、荷台が空き、装置が見えた。スプレー缶とライターの危険ごみを処理する装置で、圧縮機で潰す時に、爆発しないよう隣のタンクからヘリウムが流れ込むようになっている。「これだと爆発せず安心に処理することができ、自治体に危険ごみが貯まると、この専用の破砕車を向かわせ、処理し、よろこんでもらっています」と有吉さんは胸を張った。

車台に設置した危険ごみを処理する装置を見せてくれた有吉さん
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止
がれきは破砕し、粒度で分けて住民向けに販売している
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止

もう1つのピットは3つに分かれ、砂と小石が積まれている。「これはなんですか」と尋ねると、有吉さんは「住民の方が持ち込んだがれきなどを砕き、異物をとって粒度を揃え、家庭で使えるようにしました。有料ですが喜ばれています。わが社は甲賀市民のおかげでなりたっています。少しでも恩返しをと考えてやっています」。リサイクルの道を歩み続ける同社の気概を感じさせた。

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