プラスチックを分解する微生物!サカイエンシスが発見される
プラスチックの問題がこれだけ世界中で恐れられている理由の一つとして、プラスチックは驚くほど丈夫で、分解が難しく、自然界に残り続けてしまうことが挙げられます。 そのため、多くの動物がプラスチックを摂取してしまい、生態系に大きな影響を及ぼしてしまうことも考えられています。
しかし、そんなプラスチックを分解する酵素、サカイエンシスが登場した、と話題になりました。 プラスチック問題の解決の糸口になるかもしれない、サカイエンシスとはどのような酵素なのでしょうか。
プラスチックを分解する微生物!サカイエンシスとは
海洋汚染に始まり、ストローやレジ袋など、多くの問題の原因となっているプラスチック。 自然界で分解されることのない、この物質は環境問題の中心に存在している、とも言えるでしょう。
そんなプラスチックを分解する酵素の研究が、アメリカの米科学誌「サイエンス(Science)」で発表されました。 その酵素を持つ細菌の名を「イデオネラ・サカイエンシス201-F6株」と言い、プラスチックをテレフタル酸とエチレングリコールに分解し、消化する特徴があると研究が進められていました。
この酵素は発見されてから、イギリスのポーツマス大学と、アメリカの再生可能エネルギー研究所(NREL)によって、どのような働きがあるのか解明するために、以前からその構造の研究が進められていました。 この細菌の研究中、さらに強力な分解力でプラスチックを分解する新たな酵素が、偶然見つかったそうです。
この酵素はこれからも研究され。産業レベルで使えることが目指されるそうで、プラスチック問題の解決の糸口として期待されています。
プラスチックを分解する微生物を発見したのは日本人
プラスチックを分解する細菌「イデオネラ・サカイエンシス201-F6株」ですが、実は日本で発見されています。 サカイエンシスの「サカイ」とは、発見された場所、大阪の堺市にちなんで命名されたのです。
堺市のペットボトル処理工場で、サカイエンシスを発見したのは、京都工芸繊維大の小田耕平教授。 小田教授はもしPETを分解するバクテリアが存在するとしたら、きっとPETが多くある場所だろう、と推測し、ペットボトル処理工場で試料を採取した結果、狙いが当たり、それを見つけ出しました。
分子サイズが大きいPETは、微生物が体内に取り込むことができない、と考えられていましたが、サカイエンシスは2種類の酵素を使って、PETの低分子化が可能です。 以前から、PETを分解する微生物は発見されていたそうですが、サカイエンシスはそれらに比べて、分解力が非常に強いそうです。 それも、この酵素によるものだと考えられています。
参考:アットホーム株式会社「こだわりアカデミー」 ペットボトルを食べる細菌を発見 小田 耕平 氏
プラスチックを分解する微生物は70年で進化した?
サカイエンシスの発見は明るい未来を想像させる、素晴らしいことではありますが、一つ疑問が残ります。
それは、サカイエンシスの進化です。 通常、進化というものは長い年月をかけて、ゆっくりと変化していくものです。 しかし、このサカイエンシスは急激な進化を遂げたことになるのではないか、と言われています。
なぜなら、ペットボトルが生産されるようになってから、たったの70年程度であるにも関わらず、サカイエンシスはそれに適応し、プラスチックを分解できるように進化した、とも考えられるからです。 生物が生態系に与える影響や、その進化はまだまだ謎が多いものです。
このサカイエンシスの進化が、人類にとって素晴らしい発見であり、マイナスになり得る副作用と言えるものが存在しないことを祈るばかりです。
微生物によるプラスチック分解は問題解決の糸口か
サカイエンシスの登場と研究成果は、リサイクルや環境問題にとって大きな意味があると考えられます。 世界中で問題になっている、廃プラスチックの問題が解決する糸口になるかもしれません。
しかし、私たちは油断してはならないでしょう。 これからもプラスチックが自然界に出てしまうことがないよう、ゴミの処理や使用する製品には気を配るなど、注意しましょう。