日本の森林伐採の歴史!原因・目的と環境への影響は何がある?
世界中で森林が失われているという話は、誰もが聞いたことがあるでしょう。 日本は都市部から離れれば、緑に溢れた山々を目にするので、あまり関係がないようにも思えますが…。
実は日本の森林は「手付かずの森林」と言われる原生林が4%以下しか存在しないほど、伐採されていることをご存じでしょうか。 今回は、日本の森林伐採の歴史と環境への影響をご紹介します。
日本は森林が多い?伐採されてない原生林は4%以下
日本の森林面積は約2,500万ヘクタールとなり、これは国土の67%に当たります。 この割合は世界的に見ても、森林が多く存在している国であり、192ヵ国中では17位、先進国の中だけでならフィンランド、スウェーデンに次いで、3位となるほどです。 そのように聞くと、日本では昔から森林が大事にされていたように感じますが、実はそうとも言い切れません。
日本の森林面積を構成する樹種の内訳を見てみると、54%が天然林で41%がスギやヒノキなどの人工林です。 天然林が54%もあれば十分のようですが、天然林とは「伐採など人の手が加わったとしても自然の力で更新している森林」のことを指しています。
つまり、一般的に天然林と呼ばれているものは、実のところ人為的な影響を受けたものなのです。 人の手が入ったことがなく、土地本来の植生や生態系が維持されている森林のことは「原生林」と言い、これは日本の森林のわずか4%以下だと言われるほど貴重なものです。
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日本の森林伐採の歴史
日本はなぜ原生林を失ってしまったのでしょうか。日本の森林伐採の歴史をたどってみましょう。
縄文時代から木が利用されていた
日本人による木材の利用は、縄文時代から既に行われていました。 竪穴式住居の柱として、祭祀用の施設建造のため、小舟を作るため…など、既に木材を利用して生活していたのです。
中には1500年もの間、木材を利用した集落が存在していましたが、森を大きく傷つけるようなことはありませんでした。 つまり、縄文時代では森林を利用した持続可能な社会を築いていたと言えるのです。
弥生時代から始まる建築・農地開発による森林伐採
縄文時代では森林を傷付けることなく、適度に恩恵を受けていましたが、弥生時代からは様子が変わってきます。 それは稲作が本格的に広まったことがきっかけでした。 人々は稲作に必要な農具や水路を作るために、多くの木材を使用し、肥料としても森林の資源を活用するようになります。
さらに、木材の加工技術も向上したことで、大型建造物が誕生し始めました。 田畑や居住地の開発によって森林は次々と伐採され、676年には天武天皇から禁伐令を出すほど、森林の荒廃が始まっていたのです。
燃料として伐採される森林
さらに文明が発展すると、人々は木材を燃料として利用するようになります。 特に必要とされたのは、製塩と製鉄のための燃料です。
まず製塩は、海水を煮詰めて塩を作るために多くの薪を必要とし、その燃料として利用される山林を塩山と呼びました。 奈良時代には広大な塩山が存在した記録があり、多くの森林が伐採されたと考えられています。 製鉄については「たたら製鉄」と言われる火を使う方法が広まり、燃料として木材が必要とされたのです。
人口増加によって激化する森林伐採
中世に入っても、さらに森林はさまざまな用途で利用されます。 住居の建設や水田開発だけでなく、寺院の建設、木製の彫像芸術など。戦国時代に入ると、城や砦の建設、武器製造も盛んになり、さらには戦乱によって焼かれる森林もありました。
また、この頃は戦国大名による領地の開発によって、地方を含めて社会が発展したことで人口も増加します。それに伴い多くも木材が必要と荒れました。 しかし、江戸時代に入ると幕府と諸藩は積極的に森林の保全に取り組みます。森林の伐採や管理を厳しく制限し、森林再生促進にも尽力したのです。その結果、日本の森林資源は回復に転じることになります。
戦後と高度成長期による拡大造林政策
明治維新後、近代産業の発展により建築材や燃料の需要が高まり、森林の伐採が再び加速します。 その勢いは「明治中期は日本で最も森林が荒廃した時期だ」と言われるほどでした。 明治も終わりに近付くと、再び森林を保全する試みが見られますが、世界大戦の始まりによって大量の木材が必要となります。
戦後も復興のため木材が必要となり、政府は「拡大造林政策」を開始します。 この政策は天然林を伐採し、成長が早く経済価値の高いスギやヒノキなどの人工林に置き換えるものでした。 こうして日本の原生林は失われ、国内の森の半分近くが人工林という状態まで至ったのです。
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森林伐採が進むと環境にどんな影響が?
森林が大切なことは、多くの人が知ることですが、具体的にはどのような重要性があるのでしょうか。 まず、最も有名なのは二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するという大気浄化機能でしょう。 他にも、森林は生物を育み生態系を支えています。生態系が人にもたらす恩恵は大きく、これを失うわけにはいきません。
さらに、森林と樹木によって育った土は雨水を貯え少しずつ流し出す、という天然ダムの役割があり、土砂災害を防いでいます。 これらの機能が失われてしまったら、私たちは気候変動や災害に悩まされるだろうことは、想像に容易いことです。
また、1967年に木材の輸入自由化が成立したことで、日本では海外の安価な木材が使われることが多くなりました。 そのため、人の手入れが必要な人工林が間伐されることなく、放置されてしまうことも問題になっています。 人工林が間伐など人によって手入れされない場合、お互いの成長を邪魔してしまい、根を十分に張れなくなります。 そうなると、土壌の保水能力が低下し、雨水を吸いきれずに土砂災害を引き起こしてしまうことも。
そして、人工林を放置してしまうと、二酸化炭素を吸収する機能が低下してしまう恐れもあります。 若い樹木が成長している間は、多くの二酸化炭素を吸収しますが、成熟してしまった場合はそれよりも二酸化炭素の放出量が上回ってしまうのです。
このように人間の生活は森林に依存しています。 森林を大切にするだけでなく、適度に管理も行わなければ、大きな環境問題となる恐れもあるのです。 ぜひこれを機会に森林に対する意識を考え直してみてはいかがでしょうか。