ウシガエルはなぜ日本で増えた?影響や外来種問題を解説
子どものころカエルを捕まえて遊んだ経験がある方はたくさんおられるかもしれません。 しかし、昆虫や爬虫類も抵抗なく捕まえられた子ども時代も、ウシガエルが相手となると少し恐ろしく感じなかったでしょうか。
迫力のあるウシガエルですが、実は特定外来生物に指定された、日本国外からやってきた生き物です。 ウシガエルの生態や特定外来生物に指定された理由を紹介します。
ウシガエルとは?巨大な特定外来生物
ウシガエルは、無尾目アカガエル科アメリカアカガエル属に分類されるカエルで、原産はアメリカ。 分布はアメリカ東部と中部、カナダの南東部、メキシコの北東部に自然分布し、日本や韓国、台湾、キューバ、メキシコ、ヨーロッパなど、各地に外来種として定着しています。
体長は12~18センチ、体重は500~600グラム程度。 雄は背面が暗緑色で、斑紋がまばらに見られます。それに対し、雌は背面が褐色で斑紋が雄よりも多いことが特徴です。
水草が多く流れが緩やかな川や湖、湿地に生息し、警戒心が強く、昼間は暗所を好む夜行性。 食性は肉食で、昆虫類、甲殻類や節足動物だけでなく、魚類、鳥類、小型の哺乳類も捕食対象です。
また、ウシガエルという和名の由来は、鳴き声が「ブオー、ブオー」というウシに似ていることからきています。
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ウシガエルはなぜ日本にやってきた?
アメリカ原産のウシガエルですが、なぜ日本にやってきたのでしょうか。 ウシガエルが日本にやってきた理由は、1918年に動物学者の渡瀬庄三郎が食用としてアメリカから輸入したことで、その17匹が最初の個体となります。
当時の農商務省は貧困に苦しむ農民に、副業としてウシガエルの養殖を進めていたため、多くの養殖場が作られますが、日本でカエルを食用とする習慣はなかなか根付きませんでした。 1932年からは冷凍肉の対米輸出が始まり、多くの養殖場が誕生しますが、太平洋戦争によって貿易は途絶えることに。 この時期、大半の養殖場が閉鎖されると同時に、多くのウシガエルが逃げ出してしまいます。
戦争が終わると、アメリカに対する輸出が再開され、ウシガエルの漁が盛んに行われ、水産庁が資源保護のために捕獲制限を通達するほどでした。 そして、1969年には輸出量が967.6トンに達するほどでしたが、シアトルで日本産のカエル肉から農薬が検出されたことで、翌年から貿易量が激減。 捕獲されることもなくなったウシガエルは各地で繁殖を続けることになるのでした。
ちなみに、アメリカザリガニはウシガエルの餌用として持ち込まれ、2023年に条件付特定外来生物に指定されています。
なぜ特定外来生物に?ウシガエルの危険性とは
2005年に特定外来生物に指定されたウシガエルですが、どのような危険性があったのでしょうか。
ウシガエルは大型かつ貪欲で、環境の変化に強いという特徴があります。 先述した通り、何でも食べてしまい、小型のカエルにとっては天敵となるアオゴミムシやゲンゴロウ、タガメも、ウシガエルは捕食してしまうほどです。
そのため、在来カエルの減少が問題視され、日本だけでなく、アメリカや韓国といった地域でも、ウシガエルが生息する水域では、カエルが見られなくなったという事態も発生しています。
また、ウシガエルは繁殖力も凄まじいものがあります。 トノサマガエルによる一腹の卵数は、1,800~3,000個ですが、ウシガエルは最大で40,000個に及ぶほどです。 たくさん生まれて、たくさん食べるとしたら、他の生物にとって脅威だということも頷けますね。
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ウシガエルのような特定外来生物に出会ったら
ウシガエルは特定外来生物に指定されているため、外来生物法が適用され、飼育や生きたままの運搬は禁止されています、 そのため、生きたまま捕獲し、家に持って帰って家族に見せることも禁止です。 お子さんが生き物に興味がある場合は、ウシガエルについてしっかり教える必要があるかもしれませんね。
また、このように人間の手によって持ち込まれ、分布を広げた結果、悪影響を及ぼした生物はウシガエルだけではありません。 身勝手な行動によって、生態系を破壊しないためにも、自然と接触する際は慎重な行動を心掛け、日ごろから環境問題のためにできることがないか、意識してみましょう。
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