タパヌリオランウータンとは?ダム建設で絶滅か【絶滅動物シリーズ】
この地球には、まだ発見されていない動植物が数々存在するようです。 タパヌリオランウータンも2017年に発見されたばかりの、新種のオラウータンです。
しかし、タパヌリオランウータンは新種でありながら絶滅の危機に迫られています。 タパヌリオランウータンに何が起こっているのでしょうか。
タパヌリオランウータンとは?インドネシアの新種
タパヌリオランウータンは哺乳類霊長目ヒト科オラウータン族に分類される、オラウータンです。 インドネシアのスマトラ島に生息し、2017年に新種として登録されています。 この発見は、1929年に大型霊長類の現生種として認められたボノボ以来の出来事でした。
1997年の調査で、南タパヌリ県バタントルに孤立したオラウータンの群れが存在することは報告されていましたが、このときは個別の種としては認識されていませんでした。 2017年に行われた調査では、37頭の個体から遺伝子サンプルを集め、33頭のオスのオラウータンの分析を行いました。 その結果、スマトラオランウータンや、ボルネオ島のボルネオオランウータンなどの他のオラウータンとの違いが明確となり、バタントルの群れは個別の種であると認められ、タパヌリオランウータンと名付けられました。
しかし、発見されたばかりのタパヌリオランウータンが絶滅に迫られています。
タパヌリオランウータンがダム建設の影響で絶滅か?
タパヌリオランウータンは狭いエリアに800頭程度しか存在せず、大型の霊長類の中で最も数が少ないと言われています。 そのため、既に絶滅が危惧されていますが、そんなタパヌリオランウータンにさらに追い打ちをかけるような計画が持ち上がっています。
それは、タパヌリオランウータンが生息する、バタントル熱帯雨林の中心に建設されるダム計画です。 水力発電所の施設でもあるバタントルダムは、タパヌリオランウータンの生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
インドネシアの最大の環境保護団体「ワルヒ」は、ダムの建設中止を求めましたが、3月4日に裁判所に却下されてしまいます。 ワルヒは抗議デモやダム建設の資金提供者である中国銀行に協議を申し込むなどの活動を行っていますが、計画の見直しは予定されていない状態です。
なぜ、タパヌリオランウータンの存在があるにも関わらず、建設計画は進んでしまうのでしょうか。
政府は「ダム建設はタパヌリオランウータンへの影響少ない」と主張
政府や裁判所は、ワルヒの訴えを却下した理由としては「ダムの建設は周辺環境への配慮がされているため、オラウータンへの影響もワルヒが訴えているほどではない」と主張しています。 ダム建設の資金提供者である中国銀行も、ワルヒの訴えは注意すべき点ではあるが法律や規則に則ってビジネスを展開する、といったコメントを発表しているため、建設に対して積極的であることが窺えます。
しかし、研究者によると、ダム建設のために原生林が伐採され、オラウータンがその地域から逃げている様子が確認されているそうです。 また、タパヌリオランウータンを新種として認めた科学者の一人で、イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学のセルジュ・ウィック教授は、ダムの建設はタパヌリオランウータンを絶滅に向かわせてしまう、と発言しました。 セルジュ・ウィック教授は、建設計画の環境アセスメントは明らかに問題がある、と見ているようです。
建設に積極的である人々と、否定的である人々の意見は食い違いがあり、どのような結末を迎えるかは、まだわかりません。 タパヌリオランウータンは、ダム建設後もこの地で暮らしていけるのでしょうか。
タパヌリオランウータンに学ぶ環境の繊細さ
大規模な建設を行う際は、環境アセスメントと言われる、調査が必要です。 建設がどれだけ環境に影響を与えるのか、しっかりと確認するための調査です。
しかし、その調査の制度が低かったことで、環境に悪影響を及ぼしてしまうケースは少なくありません。 それだけ、環境は繊細であり、人間の開発によってバランスを崩してしまうものだからです。 タパヌリオランウータンが絶滅しないためにも、建設の見直しが行われることを祈るばかりです。