付喪神とは?付喪神絵巻に登場した古い道具に宿る妖怪たち
人間は様々な道具を使って生活をしていますが、最後まで大切に使い切っているのでしょうか。 長い時間、大事にしながら使いたいものですが、新しいものがすぐに出てくる今の世の中では、すぐに道具を捨ててしまう、ということもあるでしょう。
もし、大事に使わず捨ててしまったら、道具たちが付喪神(つくもがみ)となって仕返しにやってくるかもしれません。 道具の妖怪、付喪神をご紹介します。
付喪神とは?付喪神絵巻に登場した道具の妖怪!
付喪神とは、室町時代に作られた物語「付喪神絵巻」に登場した妖怪です。 「つくも」とは「九十九」とも書かれ、百年に一年足らない、という意味があります。 昔、道具は100年経つと精霊を得て変化する、という言い伝えがありました。 そのため、人々は使用していた道具が100年の年月を重ねてしまう前に、捨ててしまいました。
すると、捨てられた道具たちは妖怪に変化して悪さを働いてしまうのです。 そういった道具が妖怪に変化したものの総称を「付喪神」と言います。
そして、この付喪神たちは「付喪神絵巻」の中で、自分たちを捨てた人間へ復讐を行うのです。
付喪神絵巻とは?道具の妖怪「付喪神」の逆襲
付喪神が登場する「付喪神絵巻」とは、どのようなお話なのでしょうか。
その昔、人々は百年経つと精霊を宿すとされる道具を煤払い(掃除)として、毎年立春前に古くなったものを路地に捨てていました。 すると、道具たちは今まで長い間、人間に尽くしてきたにも関わらず、惜しまれることもなく捨てられてしまったことに恨みを抱きます。
そして、節分の日、ついに妖怪となった道具たちは、恨みを晴らすために大暴れをします。 人間を襲っては大騒ぎをし、やりたい放題楽しむ付喪神たち。
しかし、護法童子という仏教の神様に見つかってしまい、法力によってこらしめられます。 結果、付喪神たちは反省し、仏教に帰依する……と、いうのが「付喪神絵巻」の内容です。
有名な付喪神とは?
それでは、付喪神とは具体的にはどのような姿をしているのでしょうか。 代表的な付喪神をご紹介します。
傘が付喪神に「唐傘お化け」
またの名を「からかさ小僧」というこの妖怪は、付喪神というよりも日本人がイメージする妖怪の代表とも言えるのではないでしょうか。 古い傘に、目玉と二本の腕、一本の足がはえた妖怪、と言えば誰もがその姿を思い浮かべることができるでしょう。 この唐傘お化けこそ、傘という道具が妖怪となった、まさに付喪神と言える存在です。
提灯の付喪神「提灯お化け」
提灯お化けも有名な妖怪の一人ではないでしょうか。 提灯が上下に割れて、その部分が口となり、そこから舌が飛び出ている妖怪です。 中には提灯から顔や手が出てくることもあるそうです。 これも提灯という道具が妖怪になった付喪神と言えるでしょう。
草履の付喪神「化け草履」
草履が妖怪になった付喪神が、化け草履です。 室町時代に作られた「百鬼夜行絵巻」では、藁の手足を持つ草履が、藁の甲冑を身に纏い、トカゲのような馬にまたがった姿で描かれています。
鏡も付喪神に「雲外鏡」
江戸時代の浮世絵師、鳥山石燕(とりやま せきえん)の妖怪画集に登場した鏡の妖怪が、雲外鏡(うんがいきょう)です。 これは、中国の古い物語に出てくる「照魔鏡」がモデルになったと言われています。
経文まで付喪神に「経凛々」
経凛々(きょうりんりん)も鳥山石燕の妖怪画集に登場した経文の妖怪。 平安時代前期の僧、守敏が空海との法力比べに敗れた際に捨ててしまった経文が、付喪神として妖怪になってしまいました。
付喪神は「もったいない」が形になった妖怪
このような付喪神たちは、なぜ創作されるようになったのでしょうか。 それは日本人が持つ「もったいない」という気持ちが、そうさせたのではないでしょうか。
日本では、八百万の神など、あらゆるものに神が宿る「アニミズム」と言われる考えがあります。 これもすべてに神が宿り、それらを大切にしなくてはならない、という考えがあると思われます。 環境問題が悪化し、資源の消費を抑えなければならない今の時代こそ、私たちは付喪神を恐れ、道具を大切にするべきかもしれません。
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日本には「八百万の神」という言葉があるように、様々なものに神が宿っていると考えられていました。
日本には「八百万の神」という言葉があるよ