山岳信仰とは?人が山を神とした理由や対象の山をご紹介!

山岳信仰とは?人が山を神とした理由や対象の山をご紹介!

日本には「八百万の神」という言葉があるように、様々なものに神が宿っていると考えられていました。 その多くは自然現象に対する信仰や畏怖からくるもので、中でも有名なものは「山岳信仰」ではないでしょうか。

山岳信仰とは、日本人にとって、どのような役割があり、なぜ根付いたのでしょうか。 山岳信仰の意味と、山岳信仰として有名な山々をご紹介します。

山岳信仰とは?山を敬う自然崇拝

山岳信仰とは、自然崇拝の一種で、特に山岳と関係の深い民族が、山の自然環境に対して畏怖する気持ちや、山の自然から得られる恩恵に感謝する気持ちから発展した宗教形態です。

山岳信仰がある地域では、山から流れる川、周辺の森林などに衣食住を依存した生活を送り、一方で険しい山の地形や自然環境に命を奪われることを恐れていることから、山に霊力があると信じ、自らの生活を律するためにも、山の圧倒感を利用する傾向にあります。

日本でも狩猟の場、鉱山や森林から得られる恵みと、険しい地形、火山などに対する畏敬から、神が宿る、もしくは降臨する場所と信じられています。 死者の魂は山に帰る、という考えもあり、イタコの口寄せをはじめ都市、先祖霊供養の場としても、山岳信仰は発展しました。

また仏教の世界観でも、世界の中心に須弥山(しゅみせん)という高い山がそびえていると考えられていて、真言宗の開祖である空海が高野山、天台宗の開祖である最澄が比叡山を開くなど、山への畏敬の念が見られます。

現在では、交通機関や道具の充実から登山が容易になり、観光やスポーツ利用などで、山に人々が入り込むことが多くなり、ゴミの放置や環境汚染など、山岳信仰からすると禁忌を破った行為が増えています。

しかし、このような行為が増えたことで、山をなだめるための大規模な祭事を行うこともあり、逆に自然と共存する精神が見直されているケースもあるようです。

日本の山岳信仰として有名な山とは

日本には多くの山岳信仰の対象となった山が存在します。 その中でも有名なものをいくつかご紹介します。

富士信仰

富士信仰

日本を代表する山、富士山も富士信仰として崇拝されていました。 富士山はその美しさから神々しさを感じられますが、それだけではなく太古から噴火により人々が畏敬を抱いていたことも、信仰される原因の一つになったことでしょう。

富士山の周辺には、縄文時代の祭祀遺跡が発掘されていることから、かなり昔から富士信仰の原型が存在したと考えられています。 関東甲信、東海地方には「浅間神社(あさまじんじゃ、せんげんじんじゃ)」が複数存在しますが、これは富士山に対する信仰の神社です。

出羽三山信仰

出羽三山信仰

山形県の月山(がっさん)、羽黒山(はぐろさん)、湯殿山(ゆどのさん)の総称である出羽三山(でわさんざん)は、山岳信仰の場として現在も多くの修験者や参拝者が訪れます。

飛鳥時代、崇峻天皇(すしゅんてんのう)の皇子である、蜂子皇子(はちこのおうじ)が修行を積んだ場として歴史は長く、国宝である羽黒山五重塔を始め、多くの重要文化財も存在しています。

麓山信仰

福島県郡山市にある麓山(はやま)も山岳信仰として有名な山です。

古くから地元で信仰の対象とされ、福島県指定重要無形民俗文化財の「麓山の火祭り」も有名です。 これは400年以上の歴史がある神事で、五穀豊穣を祈るものであることから、麓山が長く信仰された山であることがうかがえます。

日光信仰

日光信仰

栃木県の日光山も信仰される山として知られています。 奈良時代から続く歴史があり、現在も修行の場として峰入りが実施されています。

また、あの徳川家康が死後、自らが眠る地として選んだ場所でもあります。

立山信仰

立山信仰

富山県の立山の山麓には、岩峅寺(いわくらじ)や芦峅寺(あしくらじ)など、信仰登山の拠点が数々存在します。

死者の魂や山の彼方へ行くという山上他界の進行があり、立山を巡拝することで、死後の世界を体験し、修行を積むことで法力を身に着けることができると考えられていたそうです。 立山の地獄谷は有名で、近くにある「みくりヶ池」は血の池とし、剱岳は針山地獄とされていました。

海外にも山岳信仰がある

日本だけではなく、海外でも山々を敬う気持ちから、山岳信仰がありました。 有名なものをいくつかご紹介します。

ギリシアのオリンポス

ゼウスを始めとする十二神で知られる、ギリシアの神々はオリンポス山に住んでいるとされていました。 ヨーロッパで最も高い山であり、植物がとても豊かで固有種の数も多いオリンポス山は、昔のギリシアの人々に畏怖の念を抱かせ、信仰されたに違いありません。

また、オリンポス山麓の町であるリトホロは「神の街」とも言われています。

中国の五岳

中国には泰山、衡山、嵩山、華山、恒山という山々が存在し、これらは五岳として神格化されています。 中国の神話には、盤古(ばんこ)という万物の元となった神が存在し、死の際に五岳となったと言われています。

特に泰山は聖地として名高く、複数の山岳信仰が残っています。

アメリカのシャスタ山

アメリカのカリフォルニア州にある、シャスタ山も山岳信仰があります。

昔からこの地に住むアメリカ先住民には聖なる山として崇められ、登山家で日本山岳会会長の小島烏水氏によると、富士山に類似した部分があるそうです。

また、山頂は万年雪に覆われ、雪解け水はサクラメント川の源で、ミネラルウォーターで有名なクリスタルガイザーの源泉としても知られています。

山岳信仰のように自然を敬う気持ちを忘れずに

このように、山岳信仰の根底は山から与えられる恵みへの感謝や、噴火を始めとする自然災害への恐れがあります。 文明が進んだ現在を生きる私たちは、自然の中に神が宿るとはなかなか信じられないことでしょう。

しかし、環境問題が深刻化してしまった今だからこそ、自然との付き合い方を考え直さなければならないはずです。 山岳信仰はそれを教えてくれる考えの一つではないでしょうか。ぜひ参考にしてみてくださいね。

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