公害怪獣はこんなにいた!ゴミや環境問題の怪獣・怪人

公害怪獣はこんなにいた!ゴミや環境問題の怪獣・怪人

2021年現在、放送中の特撮ヒーロー「機界戦隊ゼンカイジャー」に、リサイクルをモチーフにした怪人、リサイクルワルドが登場しました。 戦隊ヒーローの長い歴史の中、リサイクルをモチーフにした怪人が登場することは初めてのことで話題に。

ただ、ゴミや環境問題をモチーフにした怪獣や怪人は、特撮の歴史の中で数多く登場しています。 私たち人間の後ろ暗い気持ちを刺激するような、特撮作品の怪獣や怪人をご紹介します。

ゴミや環境問題をモチーフにした怪獣・怪人

さまざまな怪獣や怪人が登場する特撮作品の世界ですが、ゴミや環境問題をモチーフにしたものは、どれだけ登場するのでしょうか。 ゴミや環境問題をモチーフとした怪獣・怪人の中から、いくつかピックアップし、ご紹介します。

ゴミや環境問題をモチーフにした怪獣

まずはゴミや環境問題をモチーフにした怪獣です。ゴジラやウルトラマンといった特撮作品から、驚くような特徴やエピソードを持つ怪獣たちをピックアップしました。

公害怪獣ヘドラ

ゴミや環境問題をモチーフにした怪獣の代表と言えるのが、ヘドラではないでしょうか。 ヘドラは、1971年に公開された「ゴジラ対ヘドラ」に登場した怪獣です。

当時から社会問題になっていた公害がモチーフとなり、その名の通りヘドロの塊のような姿をしています。 宇宙から落ちた隕石に付いていた、鉱物起源の生命体へドリュウムが、都市近海に蓄積していたヘドロや汚染物質と結合。 登場時は、0.1ミリ程度の大きさでしかありませんでしたが、次第に巨大化し、60メートルに及ぶ怪獣に変化しました。

ヘドラは、ヘドロや工場排気を吸い込んで移動するため、環境を改善しているようでもありますが、他の地域に汚染物質を拡散させる特徴があります。 これは「公害問題が工業地帯など限られた地域で犠牲を出している」という批判も体現しているのです。 ヘドロ弾でゴジラの腕や目を溶かすなど、シリーズ屈指の強敵としても、ヘドラは広く知られています。 また、2004年の「ゴジラ FINAL WARS」にもヘドラは登場しています。

ヘドロ怪獣 ヘドロン

1971年の1月から1972年の2月に放送されていた、特撮ヒーロー「スペクトルマン」にもヘドロをモチーフとした怪獣が登場します。 その名も「ヘドロ怪獣 ヘドロン」です。

宇宙猿人ゴリが地球に送り込んだ怪獣で、静岡県富士ノ浦のヘドロを培養して完成。 大きさは20メートル、全身はヘドロに覆われ、7本の触手からヘドロ液を吐き出す、という特徴を持っています。 第2話でスペクトルマンに敗れるものの、13話で復活し、ネオヘドロンとして再登場しました。

廃棄物人間怪獣 ダストマン

スペクトルマンには、公害怪獣であるダストマンも登場しています。 ダストマンは、宇宙人によって誘拐されたトラック運転手が人体改造されてしまい、怪獣となってしまった姿です。 廃棄物がエネルギー源で、とにかくゴミを食べますが、空腹になると狂暴化します。

紆余曲折があり、スペクトルマンによって倒されるダストマンですが、やられた後は人間の姿に戻ります。 しかし、彼の姿は汚染物質にまみれて黒くなり、公害病にもかかってしまうのです。 …なんて強いメッセージ性なのでしょうか。今の私たちも、自らが廃棄物として出したプラスチックを体内に取り入れていると考えられています。ダストマンのような結末を迎えなければいいのですが…。

悪臭怪獣 スカボーン

2018年、話題になったアニメ「SSSS.GRIDMAN」ですが、その原作となった特撮作品が「電光超人グリッドマン」です。 1993年に放送されたグリッドマンですが、その終盤である38話に「悪臭怪獣スカボーン」が登場しています。

スカボーンは、ゴミ処理場の焼却炉を破壊し、ゴミを回収されなくなったことで、街中に悪臭を広げました。 スカボーン自身も尻尾から悪臭を放ち、人々を苦しめましたが、実は戦闘力が低く、グリッドマンに手も足も出ず負けてしまいます。 スカボーンの弱さは、作中に登場する怪獣の中でも異例なものなのだとか。

ちなみに、グリッドマンに登場する怪獣は、藤堂武史という根暗なオタク少年によって生み出される設定です。 その藤堂武史は、スカボーンを作り出し「ゴミと人間は切っても切れない関係。人間どもを苦しめまくること間違いなしです」と発言しています。

ヘドロ怪獣 ザザーン

1971年に放送されていた「帰ってきたウルトラマン」の記念すべき1話に登場したザザーン。 ザザーンは東京湾に出現した怪獣で、全身は藻類に包まれ、その下には猛毒のヘドロが詰まっています。 設定では、ヘドロを利用した毒ガスや炭酸ガスを吐く能力があるとされていますが、未使用のまま。 さらに、ウルトラマンではなく、一緒に登場した怪獣に倒されています。

デブリタウロス

1996年から1997年にかけて放送された「ウルトラマンティガ」に登場したのが、デブリタウロスとデブリファルドです。 ウルトラマンティガの世界では、人類は宇宙進出を達成していますが、いまだにゴミ問題を解決できていませんでした。 それに怒った宇宙魔王が、地球のゴミ捨て場になっていた、木星の宇宙ゴミを怪獣と変えたものが、デブリタウロスです。

デブリタウロスは、デブリファルドに変身し、分離も行ってウルトラマンティガを追い詰めましたが、最終的には破れてしまいます。 デブリタウロスが体現する、スペースデブリの問題は、これからの人類にとって大きな課題になることでしょう。

ゴミ塊物 ユメノカタマリ

1997年から放送された「ウルトラマンダイナ」に登場した怪獣、ユメノカタマリ。 街中に捨てられたゴミが集結・合体した怪獣で、その名前の由来は、東京湾のゴミ処理用埋立地「夢の島」です。

最初は単なるゴミの塊でしたが、落ちているゴミを次々に吸収し、最終的に四足歩行の怪獣になります。 ゴミの圧縮率が高いため、草木が枯れるほどのダイオキシンを含んだ高熱の蒸気を放ちます。 ユメノカタマリは最終的に、ウルトラマンの必殺技によって粉砕されますが、その後は一週間もの間、ゴミの雨が降り続けることになりました。

カオスバグ

2001年から2002年に放送された「ウルトラマンコスモス」も、廃棄物をモチーフにした怪獣が登場しています。 その名もカオスバグといって、群馬県蛍ヶ村に不法投棄されていたゴミに、宇宙生命体が憑りつき、昆虫のような怪獣に変化したものです。 蛍のように発光しながら空を飛び、熱を発するものを襲うという特徴を持っています。 カオスバグは、不法投棄というゴミ問題に一石を投じる怪獣だと言えるでしょう。

ゴミや環境問題をモチーフにした怪人

次に、ゴミや環境問題をモチーフにした怪人をご紹介します。

ヘドロ怪人ウツボガメス

1971年から1973年にかけて放送された「仮面ライダー」も、環境問題を扱った怪人が登場しています。 その名も「ウツボガメス」です。

ウツボガメスはウツボとウミガメが合成された改造人間で、一瞬で人体を骨にしてしまう有毒ガスを口から噴射します。 この有毒ガスを吐くには強力なヘドロが必要で、ウツボメガスは公害研究所を襲い、東京全滅作戦を実行しましたが、仮面ライダーによって倒されます。

原作者である石ノ森章太郎は、仮面ライダーは「文明社会と自然の対立」として、漫画版でも公害に関する言及が何度も行われています。

モニターオルグ

2001年から2002年にかけて放送された「百獣戦隊ガオレンジャー」は、環境汚染や生態系異常により、地球の生命力が減少しつつある、という設定で、その影響で闇の奥底から発生した邪気が具現化した、オルグと呼ばれる邪悪な鬼の一族と戦います。 この時点で環境問題を取り扱った作品と言えますが、中でも象徴的な怪人がモニターオルグです。 モニターオルグは、ゴミ捨て場のゴミの山から誕生した怪人で、アンテナやモニター、クーラーといった家電製品を寄せ集めた姿をしています。

アクタガミ

2006年から2007年に放送された「轟轟戦隊ボウケンジャー」に登場し、環境問題をテーマに扱った怪人が、アクタガミです。 アクタガミは、古い団扇と新しいクーラーに、ゴミが融合して誕生した怪人。

使い物にならないゴミの集合であり、知能が低く、優しい性格の持ち主であったため、悪の組織からは役立たずと判断されますが…アクタガミはその後、偶然にも「知恵の果実」を食し、大天才に変貌します。 優れた知能を持ったアクタガミは、最初はボウケンジャーに協力する姿を見せますが、ある行き違いから人類に絶望。 次第に使命感が膨らみ、地球を救うために人類を滅ぼすことを決意します。 ボウケンジャーの一人に「なぜ人を苦しめるのか」と問われたアクタガミは、こう答えました。

「苦しめる? 車やゴミで地球を苦しめている人間に、自分の愚かさを思い知らせているだけで御座る」

ポルターガイストマイナソー

2019年から2020年にかけて放送された「騎士竜戦隊リュウソウジャー」には、ポルターガイストマイナソーという怪人が登場します。 ポルターガイストマイナソーは、骸骨の意匠の施された屋敷のような見た目をしていますが、その正体は捨てられた道具たちが怪人化したもの。 道具たちの「まだ使えるのにゴミのように扱われた」という悲しみから誕生しました。 また使えるにも関わらず、捨ててしまうことは、道具たちにとって大変悲しいことなのでしょう。

ゴミワルド

2021年3月7日より放送中の「機界戦隊ゼンカイジャー」に登場した、廃棄物の怪人がゴミワルドです。 青いポリバケツを模した頭部が特徴的で、左腕には小さいリサイクルマークが。

ゴミワルドの特技は、頭からゴミを発生させ、そこから「ゴミ電波」を発生させること。 この電波を浴びてしまうと、人間はやる気がなくなってしまうため、ゴミワルドは物理的にも精神的にも、人間界を侵食しようと試みました。

ちなみに、ゴミワルドは「機界戦隊ゼンカイジャー」の第6話に登場していますが、そのスーツは再利用され、第13話にリサイクルワルドとして登場します。

なぜゴミや環境問題を扱った怪獣・怪人は多いのか

ここまで紹介した、ゴミや環境問題をモチーフにした怪獣や怪人は、ほんの一部でしかありません。 特撮作品の中だけでも、これだけの怪獣・怪人が登場しますが、その他の創作物すべてを含めれば、さらに多くのキャラクターやエピソードが存在するでしょう。

それでは、なぜ創作物の中にこれだけゴミや環境問題をモチーフにしたものが登場するのでしょうか。 それは、もしかしたら私たちが心のどこかで、ゴミや環境問題に対し、恐怖を感じているからなのかもしれません。 特撮作品では、そんな気持ちを怪獣・怪人という形にして、登場させていると考えられます。

特撮作品に、ゴミや環境問題をモチーフとした怪獣・怪人が登場しなくなったとき、人類はより健全な生活を手に入れたと言えるかもしれませんね。

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