【レコテック野崎衛社長インタビュー】廃棄物の“見える化”で循環型社会を目指す①
地球温暖化の問題から、世界中で、廃棄物を減らしリサイクルすることへの関心が高まっている。そんななか、日本では一般廃棄物のマテリアルリサイクル率は全体の約20%と少なく、多くを焼却処理しているという現状だ。
そうした課題を解決しようと活動しているのがレコテック株式会社。同社は、ごみの発生から、運搬、リサイクルまでの資源循環のすべての過程をスマホ・タブレットで情報連携できる資源循環プラットフォーム「POOL」を提供している。
資源循環を“見える化”することにより、大量消費都市である日本を大量供給都市にする未来を掲げる同社社長の野崎氏に話を聞いた。
「POOL」で廃棄物の“見える化”を行い、回収コストの削減を
「POOL」の画面イメージ(レコテック株式会社のリリース資料より)
――どのような理由から「POOL」のサービスに至りましたか。
「POOL」のもとになっているのは、Material Pool System(MPS)というプラットフォームとGOMICOというアプリです。そしてこのプラットフォームを作った背景にあるのは、日本の一般廃棄物のマテリアルリサイクル率の低さです。リサイクル率は、廃棄物全体のわずか20%で、残りの大半は焼却処理してしまっています。
この理由として考えられるのが、例えば、事業系一般廃棄物でいえば、店舗やコンビニ、百貨店などさまざまな場所で、リサイクルすれば資源になり得るような廃棄物が多数輩出されています。ただ、店舗一カ所ごとに出る量が少ないため、分けて資源化するより焼却する方が、コストが安いという現状があります。
そこで、私たちのプラットフォームを使って廃棄物を“見える化”し、リサイクルコストの削減に貢献していきたいと考えています。店舗や会社といった排出元のごみの種類を分別して見える化し、地域単位で横串を通すことで、一番コストがかかるとされている運搬事業者の移動範囲や積載効率を極限まで下げることができると考えています。
「POOL」を活用した資源循環スキーム(レコテック株式会社のリリース資料より)
――確かに、運搬事業者が効率の良い回収ルートを確立するだけでもかなりのコスト削減になりそうですね。
次に、その資源を原料として再製品化するメーカーの協力も必要です。昨年5月に花王や三菱地所らと丸の内エリアで廃プラスチックの回収・製品化の実証実験を行いましたが、メーカーとしては、今までリサイクル原料は品質管理や調達管理で安定していなかったことで使いづらかったという話を聞きました。
その課題に対しても、「POOL」を使用すれば、廃棄物が毎日どれぐらい発生するのかが分かりますので、原料供給の安定化も実現できます。どのような種類の資源がどれぐらいの量送られてくるのかが分かるので、再製品化にリサイクル原料を使いやすくなります。
まずは、回収コストを下げていく。さらに、排出元と使う側のニーズを満たしていくことが重要です。当然、トレーサビリティもしっかり提供していきます。
各プレイヤー間の情報連携のイメージ(レコテック株式会社のリリース資料より)
――実際のシステムの流れは。
商業施設や店で排出される生ごみや廃プラがどの程度かというのを、まず計量装置で図り、地域ごとに一元的に管理します。計量器の位置情報などが、地図上にプロットされ、どこになんのごみがどの程度あるのかというのが地図上において、一目で分かる仕組みになっています。
数年にわたり、実証実験を繰り返してきた
――「POOL」リリースにあたり、実証実験も多く行ってきましたね。
ええ。6年前からこのプロジェクトに着手して、それ以降、さまざまな企業と共同で実証事業を繰り返してきました。
例えば、一昨年11月に福岡市で、プラごみの分析・可視化の実証事業を行いました。これは、ある商業施設に計量管理装置を置いて、そこから排出するプラごみを調べました。量子コンピュータ×AIサービスを提供するグルーヴノーツに協力してもらい、どういう頻度やどういう時期にそのようなごみが発生するのかをデータ化し、AI機械学習で検証しました。
また、この取り組みには、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)で実証を行い、プラスチックリサイクルの専門家である福岡大学の八尾滋教授に参加してもらいました。事業系の排出プラには、どうしても異物の混入や汚れがありますので、どこまで資源化できるのかを検証しました。双日 のプラスチック専門商社には、そのリサイクル原料は、実際に使用できるのかの品質評価もしてもらって、選別をきちんとすれば製品化に耐えうる原料になることが分かりました。
福岡県で行った実証実験で目指したイメージ(レコテック株式会社のリリース資料より)
同時期に神奈川県川崎市でも実証を行ったのですが、これもある商業施設から発生するプラごみの量を検証しました。この実証事業では、そこで集めた廃プラをエム・エム・プラスチックで実際にペレット化し、花王でその原料を使った容器を作ってもらい、強度試験や衛生試験なども行いました。
こうした実証事業を繰り返した結果、事業系の一般廃棄物のプラごみはきちんと選別すれば、リサイクルして再資源化できることが分かりましたので、今回の「POOL」のローンチにつながったというわけです。
続きはコチラから【レコテック野崎衛社長インタビュー】廃棄物の“見える化”で循環型社会を目指す②
資源循環を“見える化”することで、マテリアルリサイクルを増やし、サーキュラーエコノミーを実現しようと
資源循環を“見える化”することで、マテリ
参考:レコテック株式会社 資源循環プラットフォーム”POOL”を新たにローンチしました。 – テクノロジーでごみを資源に
野崎衛(のざき・えい)
北欧の廃棄物処理設備日本総代理店にて営業責任者を務め、製造、物流、流通などあらゆる業界への設備の導入及び資源循環に関するコンサルティングを行う。
レコテック社設立後は、食品リサイクルに対応するドイツの食品廃棄物向けメタン発酵技術を日本に輸入建設するプロジェクトのPMを務めるなど、先進的な資源循環システムのハード・ソフトの導入を行う。また、国内外の廃棄物問題に取り組み、JICA事業チーフコンサルタントなど官民の事業にも関わっている。