引越のお困りごとを解決し、循環型社会の形成と環境保全を目指す サカイ引越センター リユース課次長 朝比奈和徳さん インタビュー

提供:サカイ引越センター
引越のとき、たくさんの不要品が出て困ってしまった。そんな経験がある方も多いかもしれませんが、業界の中でも最大手の「サカイ引越センター」はリユースによって、引越時に出る不要品の問題解決を目指しています。 サカイ引越センターによるリユースの取り組みとは、どういった内容なのでしょうか。 サカイ引越センターのリユース課次長 朝比奈 和徳さんにお伺いしました。
サカイ引越センターのリユースが便利と話題に
――サカイ引越センターでは、リユース事業の展開に力を入れていると伺いました。リユースに注目したきっかけや具体的なサービス内容を教えてください。
サカイのリユースは歴史が長く、支社の横に仮設置されたプレハブのお店で、引越の際に回収した不要品を、地域の方に販売していたことから始まっています。 これは創業者が「もったいない」という気持ちを大事にしていたこともあって、2005年から小規模で行われていましたが、2021年9月にリユース事業部を立ち上げ、本格的に推進しているところです。
また、近年リユース業界の成長が著しく伸びていることも背景の1つと言えます。 リユースは、まもなく4兆円市場に達するビジネスの可能性があり、循環型社会の形成、SDGsの達成に深い関わりのある業界です。 それに対し、我々の事業は引越の過程で廃棄物を出してしまうため、企業の責任としてどうなのか、という葛藤がありました。 引越で出る不要品を少しでも削減するにはどうするべきか。その方法を模索していましたが、だとしたら私たちが自ら不要品を引き取らせていただき、二次流通に回していく役割を担えばいい、という結論に至りました。
最初、リユースは関西地区を限定としたサービスでしたが、引越の需要が高い関東地区でも出店数を増やしている最中です。 2021年に1店舗、2022年に2店舗、2023年に6店舗、24年に2店舗と順調に数が増え、つい最近も横浜南に新店舗をオープン、金沢市でも新店舗のオープン準備を進めています。 リユース事業のミッションとしては現在年間で約63億円の売上を、2027年までに100億円事業までに成長させることです。
具体的なサービス内容は、引越時に出る不要品のリユースとなります。先ほども触れたように、引越は住む環境が変わるため、多くの不要品が出てしまい、その処分方法はお客様にとって大きなお困りごとです。 そこで、引越時に出る不要品をスタッフが訪問の際に査定。その場で決定した金額で買取らせていただいています。
他の買取サービスと違う点は、引越の当日までそのまま使っていただけることです。 引越先に不要品は降ろさず、我々が回収するため、お客様の負担を抑えられる買取サービスだと言えるでしょう。 家具家電の回収はコストが高いこともあり、対応している企業は少ないという現状の中、弊社は引越から一気通貫して行えるため、この利便性が市場の確保につながっています。

提供:サカイ引越センター
その他にも、郵便宅配や店舗の持ち込みなど、一般的なリユースサービスと同じ買取方法も扱っています。 また、引越は不要品が出ると同時に、新たな家具や家電が必要になるため、弊社のグループ会社による物販サービスで買い替えの提案も行っています。 お使いになっていたものは下取りも可能であることから、費用を抑えて新生活に備えられることも、弊社のサービスをご利用いただくメリットです。

提供:サカイ引越センター
ちなみに買取らせていただいたものは、自社の店舗で販売させていただくこともありますが、まだ展開できていないエリアもあります。 そこは、パートナー企業様に販売、もしくは国内外にリユース・リサイクル事業を展開する株式会社浜屋様に提供させていただいている状況です。 私たちは引越で年間約82万件のお客様と接していますが、お客様から不要品の処分についてお困りの声を多くいただくため、全国に展開できていないことを非常に心苦しく思っていました。 そのため、パートナー企業様や浜屋様にご協力いただきながら、全国展開を進めていく予定です。
寄付とリユースで新しい循環を
――2023年12月から不要品の寄付サービスもスタートしたと伺っています。これはどういった経緯で始めたのでしょうか。サービスの概要や反響なども教えてください。
寄付サービスに関しては、浜屋様と業務提携をスタートしたことがきっかけでした。 背景としては浜屋様の「もったいないに価値を与える」という企業理念と、私共の創業者が「もったいないから地域社会に貢献する」という考えが合致したことがあります。 我々は物を集める最前線にいる中で、リユース業界でパイオニアと言える浜屋様とタッグを組んだら何ができるのか。 それを模索したところ、不要品を売り買いするだけでなく、社会貢献につながる付加価値を加えられないか、という話から寄付と言う方法に至りました。

提供:サカイ引越センター
海外ではリユースと寄付は密接に関連したビジネスですが、日本ではそれほど定着した文化ではありません。 だからこそ、浜屋様とタッグを組んで、寄付から社会貢献につながる仕組みを広めていきたいと考えています。 今の日本は少子高齢化が大きな課題となっていますが、遺品整理や生前整理といった事業が1つの大きなポイントとなり、そこで出たものを子どもたちにつないで行くことも重要です。
現役世代の方々が持っているものをリユースして資産化する。そして、それを子どもたちに投資して行く。 そういう流れを構築できれば、リユース業界がさらに盛り上がるだろう、という考えが念頭にありますので、これからも寄付という取り組みを重ね、さまざまな企業様にご賛同いただけるよう、サービスを展開していきたいです。
反響としては、お客様から引越の利便性が高まったというお声が多く届いたこと、社内的なところで言えば営業から他社と差別化できたため、成約率アップにつながったという話が出ています。 他にも、それまでは寄付と言えば金銭によるものだったところが、その形に変化が見られ始めました。 例えば、子ども食堂に集まる方々に不要品を持ち寄っていただき、それを我々がお預かりした後にリユースを通して収益化し、寄付金としてお戻しするような形です。 寄付とリユースのつながりが具現化し、活動が膨らんでいくような実感もあるため、社内的にも社外的にも反響があったように感じています。
これからは環境に良い引越も選択肢に
――環境保全も力を入れていると伺っていますが、どのような取り組みがあるのでしょうか。「エシカル引越」というサービスもあるようですが、こちらはどういった内容なのか教えてください。
まずリユースによって、ダイレクトに廃棄物が削減できています。我々はトラックを何千台と動かす本業がありますので、そこで発生する二酸化炭素とリユースを取り組むことで削減できる二酸化炭素をイコールにする。リユース事業はそういった側面もあって取り組んでいます。
その他、環境保全に関する取り組みは昔から意識して、1999年に本社拠点でISO14001を認証取得し、環境目標として廃棄物や自動車燃費、電気使用量の削減を行ってきました。 近年は世界的にカーボンニュートラルへ向けた動きが加速していることもあり、我々も東証のプライム市場に上場しているため、TCFDという気候変動に関する財務情報を開示する義務があり、事業に関連して排出されている温室効果ガス排出量も測定しています。
エシカル引越については業界唯一の取り組みで、お客様と一緒に脱炭素社会を実現しましょう、というサービスです。 具体的な内容としましては、年間の取扱引越件数で二酸化炭素の総排出量を割って、一件当たりの引越で排出される二酸化炭素の量を割り出し、それをオフセットするための金額1,100円(税込)を頂戴します。さらに、その金額を三重県の尾鷲市と協力して取り組む森林保全の活動に充てて、排出した二酸化炭素の量を回収する、というものです。

提供:サカイ引越センター
エシカル引越をご利用いただく魅力としては、環境に負荷をかけず引越できるだけでなく、世界に1つしかないデジタルアートを取得できる点があります。 これは尾鷲市にちなんだアート作品となり、ランダムに提供されますが、エシカル引越を利用して二酸化炭素をオフセットしたことの証明になるものです。 特に若い世代の方には好評で、環境に良い引越ができるのなら1,100円も低額と認識いただけているのか、地球に住む義務として利用したい、というお声もいただいています。
サカイが目指すリユースによる社会課題の解決
――その他にご紹介いただける環境保全の取り組みがあれば教えてください。また、今後のリユース事業の展望については、どのようにお考えでしょうか。
最近の取り組みで言うと、岸和田市の竹林整備による環境保全活動に参加しました。 これは、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドの「パンダバンブーアートプロジェクト」という取り組みで、里山を荒廃させる竹を伐採し、ジャイアントパンダの食事として活用する、というものです。
サカイのイメージキャラクターもパンダであるため、何かできないかと考えたところ、竹の運送・搬入を協力させていただくことになりました。 竹林整備によって伐採された竹を我々のトラックがアドベンチャーワールドに運び込み、パンダの食事になる。 しかし、パンダはグルメなところがあり、笹の部分しか食べないため、残った竹の部分でアート作品にするというプロジェクトに参加いたしました。 竹を処分するためにも、廃棄コストと環境負荷が発生するため、さまざまな課題に対して貢献する取り組みだと言えるでしょう。
他にも、大阪万博の「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」という施設・設備・什器の移築・リユースを実現するプロジェクトに役務提供で協賛していますので、ぜひ内容をご確認いただければと思います。
参考:ジャイアントパンダ保護共同プロジェクトサイト パンダバンブーアートプロジェクト
参考:万博サーキュラーマーケット ミャク市! 公式ホームページ
リユース事業の展望という点については、特別大きなことをするよりは、お客様の困りごとをひとつひとつ解決するために何ができるのか、コツコツと実績を積み重ねていく段階だと考えています。 リユース市場は約4兆円、隠れ資産が約60兆円と言われていますが、その中で我々にしかできない何かがあるはずです。 リユースの手段として、メルカリのようなプラットフォームがありますが、使ったことのない人も多いと思います。 他にもリサイクルショップを利用する、という手段はありますが、そこまで持ち込むのも大変です。
そんなところで引越のタイミングで不要品を手離せるなら便利ですし、実際にお客様からそういった声をいただいています。 その声をしっかり活かしながら、我々はできることをコツコツとやる。 そして、自社販売に限らず業界のサプライヤーとしての立ち位置で、リユース業界を盛り上げていければ、社会課題である循環型社会の形成に少しでも貢献できるはずです。 そういった目線で今後もリユース事業の拡大に力を入れ続けたいと思っています。
参考:サカイ引越センター 引越しの料金・費用の見積もりは引越しのサカイへ
参考:サカイ引越センター リユース&買取のサカイ
参考:総合リサイクルショップのジャングルジャングル 公式サイト
参考:ブランド買取のJJコレクション 公式サイト
参考:リサイクルショップドリーム 公式サイト
リユース課 次長 朝比奈 和徳
サカイ引越センターで現業職、支社責任者、ブロック責任者を経験後、2020年に現職のリユース課に異動。リユース課の責任者として、関東エリアで「リユースのサカイ」の出店にも尽力。