火災事故多発のリチウムイオン電池関連製品 業界の自主規制では解決遠く
提供:調布市
リチウムイオン電池やそれを内蔵した製品による火災事故が急増しています。消防長によると、全国の火災事故は2014年度の19件から2020年度は104件、2023年度は167件と急増しています。環境省は4月に全国の市区町村に事故を防ぐために分別回収を求める通知を出し、経済産業省はメーカーに対し、これまで自主回収していた電池だけでなく、モバイルバッテリー、携帯電話、加熱式たばこの3品目を資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」に加えることを決めました。しかし、あくまで自主回収で、発火を防ぐための根本的な対策にはならないと、疑問の声が出ています。
リチウムイオン電池とそれを含む製品を回収する市区町村も増えてきていますが、「不燃ごみ」や「可燃ごみ」「プラスチックごみ」に混じって廃棄されることが多く、それが、ごみ収集車や処理施設の火災事故につながっています。消費者の不注意な投棄が、思わぬ大事故に。廃棄する時には、有害ごみや危険ごみとして出す、回収ボックスにと、自治体は呼びかけています。
ジャーナリスト 杉本裕明
リサイクルの優良工場が大火災
2025年5月23日、午後5時前、東京都大田区の城南島にある高俊興業のリサイクル工場から火の手があがった。地下1階のプラスチック単体を処理する破砕機でリチウムイオン電池が発火し、作業員がすぐに消火にかかった。「消し止めたか」と思った瞬間、火が、破砕機から3階に向かうベルトコンベア上のプラスチックごみに移り、大きくなった炎は、一気に上階に向かった。火の手が広がり、4階の窓から黒煙が吹き上がる。
杉本裕明氏撮影、無断転用禁止
作業員が消し止めようとするが、火の回りが早く、手の打ちようがなかった。東京消防庁から出動した消防車などの車両は約120台。3日後の26日午前9時に鎮火した。現場検証の結果、火事現場から3個のリチウムイオン電池が見つかった。
同社は建設廃棄物のリサイクル施設だ。市川市の工場に高度な選別機械を擁する。東京都のスーパーエコタウンの第一号として進出、国内最高レベルの再資源化率92%を誇る優良企業だった。
施設には、1日300個の袋詰めされた混合・単品の産業廃棄物が搬入される。工場で分別し、異物は混ぜないことになっているが、工事現場の作業員が使い終わったリチウムイオン電池、モバイルバッテリーなどを産業廃棄物の袋に混入して出してしまう。
高俊興業に持ち込まれた袋は、作業員がカッターで開け、異物を取り除いていたが、隠すように混入されるケースもあり、見逃しもある。時々、発火が起き、そのたびに消し止めていたという。火災事故を同社の責任と言えるだろうか。
ごみ収集車が火災に
2025年8月15日午前10時、東京都調布市深大寺の路上で、ごみの収集車から煙が立ち上った。駆けつけた消防車の消防士が消火剤を撒いて消し止めてことなきを得た。ごみ収集車は各家庭から不燃ごみを回収していた。
提供:調布市
写真は、鎮火後、取り出した不燃ごみの燃えかすの原因となったとみられるものだ。黒焦げになったモバイルバッテリー、スプレー缶、ライターが見える。不燃ごみの袋に混入し、収集車の圧縮機で圧力がかかり、発火に至ったとみられる。
調布市は、家庭ごみなど一般廃棄物のリサイクル率が高いので知られる。約33%は全国平均の2倍近い。リチウムイオン電池についても、2019年4月からはモバイルバッテリーと電子・加熱式タバコを有害ごみに加え、月2回戸別回収し、さらに2024年4月からはハンディ扇風機やワイヤレスイヤホンなどの小型電子機器のうちリチウムイオン電池を取り外せないものや電池本体も順次加えるなど、適切な排出・回収に取り組んでいる。
市の資源循環推進課の担当者は「有害ごみとして戸別収集をしていても、不燃ごみや可燃ごみに混ぜて出す人がいる。さらに周知徹底に努めたい」と話す。市のホームページを見ると、
- できるだけ電池切れの状態にしてください
- 金属の端子部分にビニールテープなどを貼って絶縁処理をしてください
- 有害ごみの収集日に、燃やせないごみの袋には入れず、カゴやバケツなどに入れてお出しください
とある。膨張などの異常のあるものは、市の施設に持ち込むよう求めている。
東京都が自治体支援の仕組みづくり
東京都は、環境省の補助金を得て、モデル回収事業を2024年度途中から実施している。契約した業者が事業に参加した自治体を周り、回収する仕組みで、1回の回収量を増やし、効率化を狙った。
2025年度は13の市・区・一部事務組合が参加し、2024年の5から2倍以上に増えた。2025年7月から10月までの回収で約12トンのリチウムイオン蓄電池・モバイルバッテリー(膨張・燃焼後含む)・ ニッケル水素電池・小型内蔵製品・ニカド電池・鉛蓄電池を事業者のトラックで回収した。
先に紹介した調布市は、三鷹市と構成するふじみ衛生組合が参加し、両市が回収し、溜めた上、業者に引き渡している。これらは有価で取引され、事業者は回収量に応じて組合や市区にお金を払う。回収は事業者が行うため、自治体の負担はない。事業者は製錬業者等に売却し、利益を得、希少金属を有効活用するメリットがある。ただ、モデル事業なので、いつまで続けるか不安定さもある。
環境省によると、リチウムイオン電池類は75.4%の自治体が回収していると答えている。その多くが電池と製品両方を回収しているとしていた。小型家電リサイクル法によって、多くの自治体ではすでに回収ボックスによる回収が行われているものと見られる。
新潟市は、不燃ごみ混入、火災事故 分別収集し周知はかる
新潟市ホームページ
2017年、新潟市の新田清掃センターで大規模な火災事故が発生した(上の写真)。家庭から出された不燃ごみを破砕機で破砕していて、混入したリチウムイオン電池が爆発、火災事故が起きた。
この事故で、市は火災検知器と散水機を増やし、さらに破砕機のコンベヤーを難燃剤の材質のものに取り替えた。市循環社会推進課の担当者は「火災事故対策にかかる施設整備に関しては、国の補助があるとありがたいが、当時も現在も支援の仕組みはありません」と話す。
参考:新潟市 充電池使用製品によるごみ処理施設の発火事故が多発しています
容器包装プラスチックの回収の場合、市は「プラマークのついた容器しか収集しません」と周知しており、容器包装プラスチックへのリチウムイオン電池の混入はほとんどないという。
市はリチウム電池類(モバイルバッテリー、加熱式タバコ含む)、ライター、スプレー缶など5品目を2013年から月1回ごみ集積所で回収している。リチウム電池類は、清掃センターで区分けし、野村興産に引き渡し、同社のイトムカ鉱業所でロータリーキルンを使い、製鉄原料などにリサイクルされている。
循環社会推進課は「4月に環境省の通知で回収の促進が促されていたが、すでに行っており、特に見直しの対象はなかった。ただ、火災事故対応のための設備更新には補助を御願いしたい」と話す。
全国の自治体は、国に対策求めていたが
環境省は、火災事故が急増していることから、2025年4月、全国の自治体向けの通知を出し、回収していない自治体には回収を求めるとともに火災事故を起こさないための対策を求めた。だが、「予算の執行の始まったばかりの4月に通知をもらっても対応できない」(ある自治体)と不満が噴出している。それに通知は、「技術的な助言」にすぎないので強制力はない。
そもそもリチウム電池類はメーカーに回収責任を求められており、自治体に回収責任を負わせるのは酷とも言える。ある自治体の担当者が言う。
「通知の時期が悪い。処理施設に検査機器や消火設備を増やそうとしても予算措置が必要。次年度の予算を検討するのは前年度の夏。通知を出すならもっと前に出すべきでしょう。すぐに対応できません。財政支援の動きも見えない」
ごみ収集車や中間処理施設での火災事故が急増し、近年、自治体では危機感が強まっていた。全国の主要市で構成する全国都市清掃会議は、2023年、環境省や経産省などに要望書を提出している。そこでは、リチウムイオン電池について、
- 電池を取り外せるような製品を製造し、できない製品は自主回収すること
- 電池と電池を内蔵した小型家電は表示を義務づけること
- 製造者責任から製造・輸入事業者はJRBCへの加入を義務づけること。破損・液漏れも一括回収すること
- 収集車両・中間処理施設のメーカーに火災になりにくい処理設備、機器の開発指導を行うこと
- (火災防止のため)処分に係る人件費、設備投資費の経費を財政支援すること
事業者の回収量は大幅に増えるか
一方、リチウムイオン電池類を製造するメーカーは、自分たちが製造した製品の自主回収に取り組んでいる。業界がつくる一般社団法人JBRC(以下JBRC)には約400社が入会し、7,000の家電量販店などの協力店、9,000の産廃業者ら、1,300の自治体の施設から回収、再資源化施設に引き渡している。2004年から自主回収が始まり、自治体の多くも参加、この制度を利用している。
国の法律として、リチウムイオン電池を対象としているのは、経済産業省の所管する資源有効利用促進法だ。同法で「二次電池」(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池)を「指定再資源化製品」に指定され、メーカーが自主回収することになっている。JBRC事務局は「ユーザーには電池と製品を正しく使い、安全性が保証されない非純正品は使うのを控えてほしい」とユーザーに訴えている。
海外の製品激増し、制度にほころび
問題は、JBRCの回収量が近年横ばい状態で、リチウムイオン電池や内蔵した製品の激増に追いついていないことだ。リチウムイオン電池の回収量は2004年の67トンからスタートし、2016年236トン、2019年456トン、2023年589トン、2024年510トン。JBRC事務局によると、市町村からの回収は最近頭打ちになりつつあるという。
では、市中にはどれだけのリチウムイオン電池や電池内蔵の製品が出回っているのか。JBRCは「製造している業者すべてが会員になっているわけではありません。輸入・販売業者も会員になっていますが、そうでない業者も多いと思う。全体の量は把握されていません」(事務局)。JBRCは会員の製品を回収するが、会員以外のメーカーの製品が増えているので、回収率をあげるのは難しいのが現状だ。
モバイル電池などを新たに回収へ
そこで、経産省は2025年夏、資源有効利用促進法の自主回収を求める品目に、リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリー、携帯電話、加熱式タバコの3品目を追加した。JBRC事務局によると、これらの製品のメーカー等により、依頼があれば回収の可否を含め検討を始めるという。
火災を起こさないための課題をJBRCは2点あげる。1つは製造上の課題で、密閉型で電池が取り出せない構造を容易に解体できる構造にする、あるいは、発火に至らない構造にする必要があるということ。2つ目は廃棄時の課題だ。使用者がプラごみや不燃ごみに混ぜて捨てない。なるべく電池を使い切ってから捨てる必要があるということだ。
環境省も、事業者の小型家電回収を促進するための小型家電リサイクル法を改正、従来のエアコンなど家電4品目を除く小型家電28品目に、モバイルバッテリー、ポータブル電源、加熱式たばこ機器、電子たばこ機器の4品目を追加する方針だ。10月24日の審議会小委員会で、環境省がこの方針を示した。
環境省の審議会で、委員が危険性と対策を訴え
これに対し、委員の大谷清運社長の二木玲子さんが、体験をもとに発言した。
「私たちの施設も被害を受けています。火災がありました。(リチウムイオン電池類は)価格が安くなり、安全性が担保されていない製品が海外で多く作られているうちに安全性はどこかへ行った。製造者は安全性についてわかりやすく情報を提供すべき。消費者もしっかり安全性で製品を選択して欲しい。そして、各自治体で定められたルールで廃棄して欲しい。このままでは火災を起こした処理施設が悪者になってしまう」
その重みのある発言が他の委員らの心を揺さぶったのだろう。「二木委員に賛成します」「搬入規制の基準をつくり、消費者に告知すべき」「回収している市町村が大きな被害を被っている」と同様の意見が相次いだ。
大谷清運は、廃棄物の収集運搬のほか、東京都足立区のリサイクル施設で、プラスチックごみなどから固形燃料のRPFを製造しているが、2020年5月夜に火災が発生した。消し止めたあと、消防署の現場検証で、廃棄物に混入していたリチウムイオン電池をより分け保管していた容器が出火元とわかった。つまり、きちんと異物を取り除いても火災のリスクは高いということだ。
廃棄物処理会社が検査機を開発した
二木社長は、環境省や経済産業省、東京都、国会議員などにリチウムイオン電池の危険性と対策を訴えた。自分の会社でも取り組まないといけないと考えていたところ、社内の大手製鉄会社OBの役員から「リチウムイオン電池を検知する機械を作ったらどうか」と提案があり、二木社長は二つ返事で機械メーカーと検知器の開発に取り組んだ。苦労の末、「OSLiBソーター」を完成させた。さらに改良型もでき、現場で実証実験を続けている。二木さんは言う。
「火災事故があって近所へ謝りに回りましたが、ある人から、『次はないよ』と言われました。環境省や経産省、議員の方に御願いし、リチウム電池の危険性を訴え、対策をとってくれるよう陳情しました。リチウムイオン電池にも安全性を考えて製造された製品と、安全性に問題がある安価な製品の2種類がある。私たちの日常生活の中にあっという間に普及したリチウム電池。作る人、売る人、買う人、すべての人が安全な使い方と安全な廃棄の仕方をしっかりと認識し、安全に手離す世の中になることを願っています」
二木さんが役員を務める東京都産業資源循環協会は、2024年、東京都に、処理施設に搬入されるリチウムイオン電池類の対策などについて要望書を出した。それを受け都は、モデル契約書を策定、産廃として排出する場合に取り除く責任を明確化し、搬入後に見つかった場合には費用負担することなどを課した。多くの工事事業者がこれを守るか不明だが、例えば国土交通省が建設リサイクル法で対応すれば、工事現場は大きく変わる可能性がある。
自主回収の限界
業界の自主回収の取り組みには幾つかの問題がある。1つは、使用済みのリチウムイオン電池の大半を回収できる仕組みになっていないことだ。JBRCの回収は会員の国内メーカーの電池類に限られている。「リサイクル費用を負担していない非会員企業の分まで、こちらで負担し、再資源化していたらモラルハザードになる。広域認定制度上、集められるものは会員のもの」(事務局)というのは理解できる。
製造者や輸入・販売業者に、回収・再資源化を促す資源有効利用促進法は、処理業者に自治体の許可を不要とすることで、認定業者を増やす。小型家電リサイクル法も、回収・再資源化する処理業者を認定し、同様の特典を与え、回収量アップを目指す法律だ。だから小型家電法での品目追加は当然の流れかもしれない。
しかし、そこには安全性の担保という回収・再資源化に不可欠な要素が欠けている。環境省も経産省も、リチウムイオン電池とその関連製品の危険性に関心を払ってこなかった。火災事故は、処理施設やごみ収集車だけでなく、ユーザーが保持していて電車やエレベーター、自宅で火災が起きているのだ。
安全対策としては、電気用品安全法で、リチウムイオン電池とモバイルバッテリーは製造・輸入業者が審査を受け、PSEマークをつけることが義務づけされている。「大半の業者は遵守しているはずだが、個人輸入と思われるマークのない製品もある」と、自治体の担当者は言う。
参考:環境省 リチウムイオン電池の適切なリサイクルについて
消防庁によると、あらゆる製品が火災原因
東京消防庁によると、火災事故はグラフのように増えている。問題はその製品が多様多岐にわたっていることだ。
消防庁が火災事故125件の用途別内訳を示しているが、それによると、モバイルバッテリー44、スマートフォン17,電動自転車14,コードレス掃除機13,電動工具11,タブレット9,ポータブル電源7,玩具6,ノートパソコン5,加熱式タバコ4,LED3,ポータブルスピーカー3,ワイヤレスイヤホン2,ポータブルプレーヤー2,携帯扇風機2,防犯カメラ2。
どんな時に発火したかを分類すると、いつも通り使用していたが出火したが39,外部の衝撃が18,分解・廃棄が16,充電方法の誤りが16,製品の欠陥が6だった。
また、小型家電リサイクル協会が約40の認定事業者(リサイクル業者)に行ったアンケートによると、2023年度のリチウム電池類による火災は、火花の発生や煙の発生も含めると1,578件、2022年度の1,109件から大きく増えていた。そのうち、出火は181件あり、2022年度の87件の2倍以上だ。
可燃ごみをごみ収集車で収集する際には、車についた圧縮機で切断され、発火、爆発する可能性がある。現に多くのごみ収集車が発火・火災事故を起こしている。独立行政法人製品評価技術基盤機構の行った実験では、モバイルバッテリーをごみ収集車の圧縮機で裁断したところ、発火・爆発することがよくわかる。
処理施設や運搬中でない、ユーザーが持っている時に発火する事故も急増している。電車やエレベーターの中で、家庭で充電中に発火したりしている。
参考:東京消防庁 リチウムイオン電池搭載製品の出火危険
東京消防庁のアドバイス
東京消防庁は、自宅で火災事故が起きた際、アドバイスしている。
- 火花や煙が激しく噴出している場合は、近寄らない
- 火花や煙の勢いが収まったら、大量の水や消火器で消火する
- 消火後、安全に配慮し可能であれば水没させる
そして、以下のチェックと呼びかけている。
- 熱のこもりやすい場所で使用している
- 膨らみ、変形している
- 過去に落下させたことがある
- 充電中や使用中に発熱することがある
- 充電できないなどの不具合がある
最後に火災を防ぐ6つのポイントをあげる。
- 製品に衝撃を与えない。むやみに分解しない。
- 整理整頓された場所で充電する。
- 製造事業者が指定する充電器やバッテリーを使用する。
- 膨張、充電できない、バッテリーの減りが早くなった、充電中に熱くなるなど異常がある場合は使用をやめ、製造事業者や販売店に相談する。
- 熱のこもりやすい場所での使用は控える。
- 万が一の被害に備え、不燃性のケースなどに収納する。
参考:東京消防庁 住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災
総務省が自治体調査し、環境省に対策とるよう勧告していた
2025年6月、総務省は、41の自治体の実態を調査し、様々な問題点を挙げて、環境省に行政評価報告を行っている。指摘されたことについて、環境省は対策を講じることが求められる。
報告書は、環境省の通知について、「(こういう対策を取ればこれだけ回収量が増えるという)定量的な対策の効果が示されていない」と指摘し、調査結果とそこから全国レベルの推測値を出している。
それによると、全国で2,044トン排出されたうち、市町村が1,144トンを回収し、残り900トンは民間が回収と推計。民間回収のうちJBRCは122トン、それ以外は産廃業者らに持ち込まれているとした。つまり、法律でメーカーが自主回収といっても、回収量の56%を市町村が集めていることがわかる。
興味深いのは、市町村の集めた1,144トンのうち、有害ごみ・危険ごみとしての収集は52.6%、不燃ごみが27.9%、可燃ごみが10.3%、プラスチックごみが7.7%あることだ。半分は異物混入がわかり処理施設で初めて回収されたわけだ。これが事態を深刻化させている。
可燃ごみは破砕せず、そのまま焼却炉に投入されるので問題はないが、他の二つは破砕機に掛けるので深刻だ。高俊興業のようなリスクに、多くの自治体が毎日遭遇していることになる。筆者は容器包装プラスチックの選別・保管施設を多数見ているが、大抵の場合、取り除いた異物の中に、電池やライター、小型家電があった。
不燃ごみは、可燃ごみと違い、破砕機で砕かれるので、そのときにリチウムイオン電池類が破壊されると、発火・爆発する危険がある。
容器包装プラスチックごみは、袋を機械で破り、手作業で異物を取り除いた後、破砕機にかけられる。この時、取り残しがあると、ベルトコンベヤから破砕機に送られ、発火と爆発の危険がある。手作業によるより分けは大変な作業だ。筆者は多くの選別現場を見ているが、異物を取り除いたすべてを除去できないことを示している。
報告書は、回収量の過半が市町村のごみとして回収され、その4~5割が可燃、不燃、プラスチックごみとして出されている。市町村の集めた4~5割は埋め立てか、ストックに回っているとし、分別回収の必要性と処理業者の育成を求めている。
経産省の資源有効利用促進法も環境省の小型家電リサイクル法も、メーカーや回収・処理事業者の自主回収を促す法律で、厳格に回収と処理を義務づける法律ではない。その限界を、このリチウムイオン電池の火災事故は示している。










