竹害とは?放置された竹による問題点と素材としての可能性

竹と言えば和の雰囲気があり、なんとなく身近に感じる人も少なくないでしょう。 しかし、放置された竹林が周囲に悪影響をもたらす「竹害」が問題になっています。
なぜ、竹は放置されるほど増えてしまうのか。そして、どのような問題に発展しているのか。 竹害の問題点や原因をご紹介します。
目次
竹害とは?なぜ放置竹林が増えたのか
竹害とは、放置された竹林の荒廃や拡大、それによる周囲に対する悪影響のことを指します。 竹は1950年代頃までは、竹林やタケノコを目的として積極的に栽培されていました。
しかし、次第に輸入品のタケノコが出回ると、栽培による経済が成立しなくなり、さらには安価で大量生産が可能なプラスチック製品や金属製品が普及したことで、竹製品の需要も減少してしまいます。 また、もともと竹は繁殖力が非常に高くいことが知られ、周囲は深さ約1メートルの空堀を作るなど対策されていましたが、農村地域の過疎化が加速し、竹林の管理者も減少することに。 結果、放置竹林が増え、竹害として周囲に悪影響を及ぼすほどになります。
特に竹害が深刻な地域は京都府、静岡県、山口県、鹿児島県、高知県、愛媛県など。 千葉県に関しては、30年間で竹林面積が平均6.7倍ほど増大したという報告があり、対策が求められています。
参考:千葉県 竹林拡大を防ぐ-放置竹林対策の手引き-
竹害による問題とは?3つの悪影響
放置竹林の拡大が問題になっていますが、どのような悪影響があるのでしょうか。 ここでは竹害の影響として以下の3つを紹介します。
- 生物多様性を低下させる恐れ
- 災害に影響する恐れ
- 農地に悪影響を及ぼす恐れ
それでは、それぞれの問題点を見てみましょう。
生物多様性を低下させる恐れ
竹は地下茎を広範囲に伸ばして繁殖するため、周囲にある樹木の育成を阻害してしまいます。 特にスギやヒノキといった人工林は竹に弱く、枯死してしまうケースも少なくありません。
また、竹は高く伸びるため太陽の光を遮ってしまい、多くの動植物の成長を妨げてしまいます。 そのため、放置竹林では生物多様性の低下の恐れが指摘されているのです。
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災害に影響する恐れ
普通の山や森林では、広葉樹が深く根を張り、地下に水を蓄えて地盤を安定させるものです。 それに比べて、竹の根は浅く、土壌を固定する力が弱いため、豪雨が起きたときに斜面崩壊や土砂崩れが発生する恐れがあります。
また、管理されていない竹林が住宅地まで広がった場合、日が当たらず腐った竹が倒れて、家屋を損傷されてしまうことも考えられます。 しかし、竹林の伐採や整備もコストがかかるため、対策が難しい側面があるのです。
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農地に悪影響を及ぼす恐れ
竹林が農地まで広がると、農作物に悪影響を及ぼしますが、獣害を増加させる恐れもあります。 なぜなら、イノシシはタケノコを採食するため、竹林を餌場として好む傾向にあるからです。 そのため、放置竹林がイノシシの分布を広げてしまい、結果として農作物被害を増加させている恐れが指摘されています。
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竹害の対策は?サスティナブルな素材として注目
多くの問題を抱える竹林ですが、無用の長物なのか、と言えば実はそうではありません。 ここ最近、竹はサスティナブルな素材として注目されています。 竹のどのような点がサスティナブルだと評価されているのか、3つの代表例を見てみましょう。
さまざまなシーンで利用できる素材として
竹は丈夫で柔軟、さらには抗菌性や脱臭性に優れるという特徴があり、さまざまな素材として利用ができる、と期待されています。 例えば、建築材料や家具、日用品など。 近年はプラスチックの代替素材として注目され、ストローや食器、歯ブラシの素材として利用されています。
成長の早さが持続可能な資源に
竹は成長の早さから周辺の生態系に悪影響を及ぼしてしまいますが、しっかりと管理し、素材として利用できれば、持続的な利用が期待できます。 その成長スピードは、1日に1メートル以上成長する種類があり、伐採後も地下茎から再び成長するなど、植え替えの必要がなく、土壌に負担もかかりません。
環境負荷が低いという特徴も
そして、竹は管理が適切であれば、多くの二酸化炭素を吸収するという特徴もあります。 他にも、竹は農薬や化学肥料も使うことなく成長するため、環境へ負荷が少ない素材と言えるでしょう。 さらには、プラスチックの代替素材となるのですから、嫌われ者から一転、多くの環境問題を解決してくれるかもしれませんね。
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竹害のような問題を解決するには
サスティナブルな素材として注目されていますが、竹害の問題は簡単に解決できるものではありません。 複雑に絡み合う環境問題に対し、私たちに何ができるのでしょうか。
1つは問題が起こっていることを理解し、発信することです。 なぜなら、消費者が問題を発信することで企業の動きや考えも変わるからです。 ぜひ、こちらの記事をはじめ、エコトピアで取り上げられる情報をSNSなどで発信してみてください。
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