環境教育を通して身に付く力とは?教育課程特例校「リンデンホールスクール」による学び
福岡県筑紫野市の自然豊かな地に位置するリンデンホールスクール中高学部。文部科学省から「教育課程特例校」の指定を受け、独自の「環境科」をカリキュラムの柱に据える同校の取り組みは、今、国内外から注目を集めています。
今回はリンデンホールスクールの環境の授業や取り組みについて伺いました。
ユニークなカリキュラム「環境科」とは
――リンデンホールスクールは環境教育に力を入れ、環境科というカリキュラムが存在していると伺いました。この環境科ではどういったことを学べるのでしょうか。また、環境教育に力を入れ始めた、きっかけも教えてください。
環境科は英語で「Environmental Science(環境科学)」と呼んでおり、科学的な視点から環境を捉える授業を行っています。単なる知識の習得にとどまらず、地球温暖化や気候変動、環境汚染のメカニズムを学び、それらの課題をどう解決するかという「課題を見つけ、考え、行動する力」を育む授業で、中学1年から3年まで、全生徒が週に1回受講する、当校の特徴的な科目の1つです。
提供:リンデンホールスクール中高学部
当校は「英語イマ―ジョン教育」及び「環境科」をカリキュラムの中に設置している学校として、文部科学省より「教育課程特例校」の指定を受けました。この制度により、既存の学習指導要領の枠組みを超え、国語以外のほぼ全ての授業を英語で行う「英語イマージョン教育」と「環境教育」を高度に融合させたカリキュラムを提供しています。
具体的には、地球温暖化やエネルギー問題といった複雑な地球規模の課題を英語で論理的に考察するだけでなく、ビーチクリーンや校内の広大なイングリッシュガーデンでの生態調査など「実体験」を通じた探究学習を継続的に実践。英語をツールとして使いこなしながら、環境問題に対して自ら問いを立て、解決策を議論できる主体的な人材の育成に取り組んでいます。
都築学園グループは、学園の設立当初から緑化活動や環境保全を大切にしてきました。その背景には、日本が古くから育んできた「自然と共に生きる」という価値観があります。
日本人は、自然を人間が支配するものではなく、共に生き、敬い、その恵みに感謝する存在として捉えてきました。山や森、川、海、そして四季の移ろいの中に美しさを見いだし、自然に寄り添いながら暮らしや文化を築いてきました。そこには、人間もまた自然の一部であるという、日本ならではの自然観があります。その想いを象徴するのが、校舎の裏に広がる約6万平方メートルの「イングリッシュガーデン」です。
提供:リンデンホールスクール中高学部
環境省の「自然共生サイト」にも認定されたこの豊かな庭園は、私たちにとって単なる緑地ではありません。子どもたちが土に触れ、木々や生き物と出会い、季節の変化を五感で感じながら、「私たちは自然によって生かされている」ことを学ぶ、生きた教室です。
私たちが育てたいのは、環境問題について多くの知識を持つ子どもだけではありません。「人間にとって便利か」という視点だけではなく「自然にとってどうなのか」「地域や社会にとってどうなのか」「未来の世代にとってどうなのか」まで考え、自ら問いを立て、異なる意見に耳を傾け、より良い答えを仲間と共に探していける人を育てたいと考えています。気候変動や生物多様性の喪失など、地球規模の課題に直面する今、私たちはむしろ、日本が長い歴史の中で培ってきた「自然との共生」という価値観に、これからの時代を生きるための大切な知恵があるのではないかと考えています。
知識だけでなく体験を通して学ぶ環境教育
――リンデンホールスクールの環境教育は、知識だけでなく様々な体験を通して学ぶことを大切にしていると伺いました。その中に、環境負荷軽減のための取り組みもあるとのことですが、具体的にはどういった内容なのでしょうか。
さまざまな取り組みがありますが、毎年恒例のビーチクリーンでは、ごみを拾うだけでなく、1平方メートルあたりのゴミの量を調査・分析し、その成果を国際サミットや国立大学のポスターセッションなどで発表しています。また、回収したゴミをアート作品として表現したり、近年では生徒が主体となって素材や製造工程から見直した「サステナブルな体操服」へのリニューアルプロジェクトも実施しました。これは、半永久的にリサイクルが可能な「循環型ポリエステル」を素材に採用したもので、卒業後に不要となった服を再び新たな体操服へと生まれ変わらせる循環の仕組みを構築しています。
提供:リンデンホールスクール中高学部
他にも、有志の生徒による「ESD(Education for Sustainable Development・持続可能な社会を作るための教育)委員会」では、環境問題について生徒全体に知ってもらい、学校全体の環境意識を高めるため、校内での普及・啓発活動に取り組んでいます。具体的には、環境問題について調べた内容を発表したり、啓発ポスターを作成したりするほか、ペットボトルにプラスチックごみを詰めてレンガ状にする「エコブリック」の製作なども行っています。
さらに特徴的な取り組みとして、本校では小学部・中高学部の全課程において通年体制のオーガニック給食を導入し、2024年に一条校として日本初となる「有機JAS認証」を取得しました。野菜とお米はすべて有機農法・完全無農薬栽培のものを使用し、肉や魚も国産にこだわっています。
提供:リンデンホールスクール中高学部
「子どもの体をつくる給食をオーガニックにしたい」という想いに賛同してくださる有機農家さん、管理栄養士、調理師が一丸となり、旬の食材のみを使用する献立作りなど、コストや体制のハードルを乗り越えて提供し、地産地消による二酸化炭素排出の削減にも大きく寄与する取り組みです。
この給食で出た野菜や果物の皮、食べ残しはESD委員会が回収して敷地内の畑に撒き、トマトやきゅうりなどを栽培。収穫を行った際は再び調理部へ提供され、給食の食材として提供されます。このように、自ら育てた野菜が再び食卓に届く体験を通じ、生徒たちは自然界の「循環」を肌で感じ、食材の尊さやフードロス問題への意識を高めています。
提供:リンデンホールスクール中高学部
さらに、校内各フロアにウォーターサーバーを設置したことで、生徒のマイボトル持参が定着し、ペットボトルゴミの排出量自体を減らす「リデュース」の意識も浸透しています。
環境教育を通して身に付く主体性と解決力
――非常にユニークな環境教育ですが、学生たちの反応はいかがでしょうか。また、卒業後の生徒はどのような進路を選択する傾向にあるのか教えてください。
イングリッシュガーデンに出て実際に生物多様性を観察したり、実験したりする機会が多いので、生徒たちは「面白い」と感じてくれているようです。教室で学んだ科学的知識が、コンポストやエコブリックといった日常のアクションに結びついていることも、高い納得感を持って取り組める理由かもしれません。
卒業後の進路については、多岐にわたります。というのも、本校には日本人と留学生が約8対2の割合で在籍しており、全国各地から編入してくる生徒も多くいます。ピアノや声楽で世界大会に出場するほど1つの分野に秀でた生徒もいれば、地元の社会課題に対して自ら考え、行動を起こす生徒もいるなど、非常に多様な個性を持った生徒たちが集まっています。
提供:リンデンホールスクール中高学部
そのため、卒業後の進学先も国内・海外の大学を問わず、医学部、ビジネス、芸術系など様々で、環境教育をきっかけにイギリスのプリマス大学で海洋生物学を専攻したり、環境配慮型の新素材研究を志してケンブリッジ大学で学ぶ卒業生もいます。
本校は少人数制なので、一人ひとりの個性を伸ばせる環境にあり、何事にも「主体性」を持って取り組む力が身に付きます。
「なぜだろう?」という問いを大切にし、自分で解決策を探求したいという意欲が育つことから、大学合格をゴールにするのではなく、その先の「自分はどのような道で社会に貢献したいのか」を念頭に進路を選択できるようサポートしています。
教育を通じて、環境に寄り添う暮らしと未来を育む
――環境負荷の軽減のため、3R活動に取り組むリンデンホールスクールですが、廃棄物を削減するためには、どのような意識が必要だとお考えでしょうか。
当校では、3Rの中でも「リデュース(発生抑制)」が重要なテーマだと考えています。
環境に関する取り組みを重ねる中で、生徒たちはごみを回収して再利用するだけでなく、「そもそもごみを出さないためにはどうすればよいのか」という疑問や視点を持つようになりました。
その学びをさらに深めるため、中学3年生のクラスでは「バイオプラスチックの制作」に取り組みました。これまでプラスチック削減といえば「消費者がいかに使わないか」という個人の努力に焦点が当てられがちでしたが、日常で個人が代替品を選び続けることには限界があります。そこで生徒たちは「選ぶ側」だけでなく「出す側(生産者)」の視点にも着目し、企業や政府が代替となる選択肢を社会に提供していく重要性についても学びを深めました。
こういった学びを、生徒たちは日々の探究を通じて得ています。リンデンホールスクールでの日々の中で、周囲や環境に寄り添う暮らしを考える活動を支え、一人ひとりの個性を伸びやかに育てていくことが、私たちが大切にしたい教育のあり方です。
――そんなリンデンホールスクールの学びを体験できる、オープンスクールが行われると伺っています。
オープンスクールは年数回行われ、次回(2026年)は11/14(土)です。 ぜひ多くの方にリンデンホールの教育を体験いただければと思います。
参考:都築学園グループ 国際バカロレア認定校 リンデンホールスクール中高学部
参考:リンデンホールスクール中高学部 2026 オープンスクール










